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女装はしないで?
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翌朝。
朝食後、サファーロが散歩に誘ってくれましたの。
湖のほとりを、2人で手を繋いでゆっくりと歩きます。
サファーロが私を見る瞳が、いつもより親密に思えて。
握る手が、少し強引な気がして。
そんな些細なことで、私たちは婚約したんだと実感してしまいました。
太陽の光を反射して、湖面がキラキラと輝いています。
こんな穏やかな風景を、あなたと一緒に見れて、一緒に歩けて、シャルルはとても幸せです…。
サファーロの髪がサラサラと風に靡いています。
なんて綺麗な横顔なのでしょう。
うっとり見つめている私に、振り向き微笑んでくれる。
どきどきわくわく。
あなたにときめいて、心が温かくなる、この幸せな雰囲気が好き。
も…もう婚約者なのだし、私からハグしてもかまいませんわよね? もう受け身じゃなくても…。
そっと、サファーロの逞しい腕を引き寄せようとしたら、瞬間移動されてしまいました。
えっ? もしかして、今、私… 逃げられました?
ど~して? さっきまであんなに甘~い雰囲気でしたのに…?
どこからか覗いていたのか、モーリスとエミリーが駆けつけてきましたわ。
「シャルル様! 抱きしめようとしたのに逃げられたからって、気にされることはありませんよ!」
モーリスさん。そんなにはっきり、逃げられた なんて言われると、かえって凹みますわ!
「あっ! サファーロ様! その女の子はどうしたんですか?」
女の子ぉ?!
私と会ってる時に、他の女の子を連れてくるなんて?
思わず、近くに落ちていた石を握り潰してしまいましたわ。
ハッと気づくと、モーリスさんが顔面蒼白で私を見ていますし。
いやだわ。いつの間にこんなに握力がついてしまったのかしら。
貴方を想うと、怪力になってしまうみたい。
「サファーロ様。シャルル様を怒らせないほうがよさそうですよ?」
モーリスさんがこっそり呟くと、サファーロが呆れたように言いました。
「何か誤解されてるようだが、この人が湖で溺れているのを見かけたから瞬間移動で助けに行ってただけだ」
そっと振り向くと、びしょ濡れの少女を横抱きにしているサファーロが立っていました。
ホッとしたのも束の間、サファーロは少女を地面に降ろすと、
「呼吸をしていない。速く助けないと」と言っています。
マウスツーマウス?!
嫌よ! 私の目の前でサファーロが他の女の子と!
でも、急がないと少女は助からないわ!
「私がやります!」
初めてのキスはサファーロとしたかったけど、仕方ないわ。
サファーロの唇を奪われるよりはマシよ!
驚いてるサファーロを押しのけ、マウスツーマウスをしようとすると、
「シャルル! そんなことしなくても、ヒールで助けられるから!」
そういえば、ここは魔法の使える国だったわ!
つい、日本にいた頃の救助方法が頭をよぎって焦ってしまったけど…。
サファーロの回復魔法で、少女はあっさり助かったわ。
ああ、よかった…。
「…お嬢様…サファーロ様と進展されないと思っていたら、女性のほうがお好きだったのですか?」
エミリーの、とまどい気味の視線が痛いわ。
「ちっ、違うのよエミリー! 私は焦って前世の救助方法を思い出しただけで、百合じゃないのよぉ~!」
それに、なんで進展してないって知ってるのよ~!
「サファーロ様、これからは女装されたほうがよろしいかと」
モーリスさんまで! 違うってば~!
「シャルル。僕はどんな君でも受けとめていくよ。結婚って、そういうものだろう?
君が女性を好きなら、僕もこの筋肉を落として、女装して、君の理想の姿に近づけるように頑張るよ!」
ダメ~! サファーロの筋肉カッコイイのに~! ちゃんと見たことないけど~!
サファーロが女装したら、私より綺麗になっちゃうじゃない~! ダメよぉ~!
イケメンがお釜になるなんて、もったいないお化けが出るわよ~!
「さすが! サファーロ様、漢ですね~! シャルル様を想う気持ちは世界一ですね~!」
「あたりまえだ!」
ドヤ顔で頷くサファーロ。
貴方の愛が深いのはとても嬉しいのですけど…、私、すっかり百合だと思われていますわ~!
「サファーロ、女装は無用ですわ! それよりも、彼女を家まで送ってさしあげましょう」
「そうだな。お嬢さん、家はどちらですか?」
回復した少女は立ち上がり、お辞儀した。
銀色の艶やかな長い髪の少女ですわ。
「危ないところを助けていただき、ありがとうございました。お気持ちは嬉しいのですが、うちは山の上の複雑なところにありますので…」
「大丈夫ですよ」
私たちは少女の家の詳しい場所を聞きながら転移を繰り返して、崖や森をくぐりぬけ、なんとか辿りつきました。
山の奥深く、人が近寄れそうもないところに、白亜の宮殿が聳えていました。
朝食後、サファーロが散歩に誘ってくれましたの。
湖のほとりを、2人で手を繋いでゆっくりと歩きます。
サファーロが私を見る瞳が、いつもより親密に思えて。
握る手が、少し強引な気がして。
そんな些細なことで、私たちは婚約したんだと実感してしまいました。
太陽の光を反射して、湖面がキラキラと輝いています。
こんな穏やかな風景を、あなたと一緒に見れて、一緒に歩けて、シャルルはとても幸せです…。
サファーロの髪がサラサラと風に靡いています。
なんて綺麗な横顔なのでしょう。
うっとり見つめている私に、振り向き微笑んでくれる。
どきどきわくわく。
あなたにときめいて、心が温かくなる、この幸せな雰囲気が好き。
も…もう婚約者なのだし、私からハグしてもかまいませんわよね? もう受け身じゃなくても…。
そっと、サファーロの逞しい腕を引き寄せようとしたら、瞬間移動されてしまいました。
えっ? もしかして、今、私… 逃げられました?
ど~して? さっきまであんなに甘~い雰囲気でしたのに…?
どこからか覗いていたのか、モーリスとエミリーが駆けつけてきましたわ。
「シャルル様! 抱きしめようとしたのに逃げられたからって、気にされることはありませんよ!」
モーリスさん。そんなにはっきり、逃げられた なんて言われると、かえって凹みますわ!
「あっ! サファーロ様! その女の子はどうしたんですか?」
女の子ぉ?!
私と会ってる時に、他の女の子を連れてくるなんて?
思わず、近くに落ちていた石を握り潰してしまいましたわ。
ハッと気づくと、モーリスさんが顔面蒼白で私を見ていますし。
いやだわ。いつの間にこんなに握力がついてしまったのかしら。
貴方を想うと、怪力になってしまうみたい。
「サファーロ様。シャルル様を怒らせないほうがよさそうですよ?」
モーリスさんがこっそり呟くと、サファーロが呆れたように言いました。
「何か誤解されてるようだが、この人が湖で溺れているのを見かけたから瞬間移動で助けに行ってただけだ」
そっと振り向くと、びしょ濡れの少女を横抱きにしているサファーロが立っていました。
ホッとしたのも束の間、サファーロは少女を地面に降ろすと、
「呼吸をしていない。速く助けないと」と言っています。
マウスツーマウス?!
嫌よ! 私の目の前でサファーロが他の女の子と!
でも、急がないと少女は助からないわ!
「私がやります!」
初めてのキスはサファーロとしたかったけど、仕方ないわ。
サファーロの唇を奪われるよりはマシよ!
驚いてるサファーロを押しのけ、マウスツーマウスをしようとすると、
「シャルル! そんなことしなくても、ヒールで助けられるから!」
そういえば、ここは魔法の使える国だったわ!
つい、日本にいた頃の救助方法が頭をよぎって焦ってしまったけど…。
サファーロの回復魔法で、少女はあっさり助かったわ。
ああ、よかった…。
「…お嬢様…サファーロ様と進展されないと思っていたら、女性のほうがお好きだったのですか?」
エミリーの、とまどい気味の視線が痛いわ。
「ちっ、違うのよエミリー! 私は焦って前世の救助方法を思い出しただけで、百合じゃないのよぉ~!」
それに、なんで進展してないって知ってるのよ~!
「サファーロ様、これからは女装されたほうがよろしいかと」
モーリスさんまで! 違うってば~!
「シャルル。僕はどんな君でも受けとめていくよ。結婚って、そういうものだろう?
君が女性を好きなら、僕もこの筋肉を落として、女装して、君の理想の姿に近づけるように頑張るよ!」
ダメ~! サファーロの筋肉カッコイイのに~! ちゃんと見たことないけど~!
サファーロが女装したら、私より綺麗になっちゃうじゃない~! ダメよぉ~!
イケメンがお釜になるなんて、もったいないお化けが出るわよ~!
「さすが! サファーロ様、漢ですね~! シャルル様を想う気持ちは世界一ですね~!」
「あたりまえだ!」
ドヤ顔で頷くサファーロ。
貴方の愛が深いのはとても嬉しいのですけど…、私、すっかり百合だと思われていますわ~!
「サファーロ、女装は無用ですわ! それよりも、彼女を家まで送ってさしあげましょう」
「そうだな。お嬢さん、家はどちらですか?」
回復した少女は立ち上がり、お辞儀した。
銀色の艶やかな長い髪の少女ですわ。
「危ないところを助けていただき、ありがとうございました。お気持ちは嬉しいのですが、うちは山の上の複雑なところにありますので…」
「大丈夫ですよ」
私たちは少女の家の詳しい場所を聞きながら転移を繰り返して、崖や森をくぐりぬけ、なんとか辿りつきました。
山の奥深く、人が近寄れそうもないところに、白亜の宮殿が聳えていました。
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