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初めての嫉妬
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どこまでも広がる青い海。ふんわり浮かぶ白い雲。
おだやかな陽射しが道を照らし、小鳥たちが楽しそうにさえずっている。
「では、出発しましょう」
サファーロの優しい声が響き、
「「「はいっ!」」」
隊長に群がる隊員のように元気よく、楽しそうに返事をするシャルルたち。
「そういえば、シャルル嬢。そのドレスは素敵ですが、旅をするには不向きです。
エミリーさんも侍女のお仕着せのままでは…。私とモーリスも、服を変えなければ」
「サファーロ様。私が魔法使いのローブや戦闘用の鎧を売る店にご案内いたします!」
「モーリスは頼りになるな」
「そんなこと…ありますっ!?」
ふざけるモーリスに、サファーロは屈託なく笑う。
シャルルとエミリーも思わず吹き出してしまった。
モーリスは幼少時からサファーロと一緒に育ったせいか、従僕らしくない。
たまに友達のような言動があるが、サファーロは咎めたりしなかった。
上下関係をはっきりさせて威張る、という行為をしたくないようだ。
「サファーロ様。私はシャルルお嬢様の侍女なのですから、エミリーと呼んでください」
さん付けされる立場ではないと思ったエミリーが申し出るが、サファーロは迷っていた。
シャルルは、サファーロがエミリーを呼び捨てにしたら嫌だ、と思った。
サファーロがエミリーを見ることすら、嫌なのだ。
サファーロを独り占めしたい…。
こんな些細な事で心を乱す自分に呆れながらも、初めて知った嫉妬というドロドロとした感情を持て余していた。
サファーロはシャルルのそんな気持ちに気付いたのか、「あなたを呼び捨てにしたくありません」と言った。
シャルルは安堵しつつ、そっとサファーロの横顔を見つめる。
いつかシャルルと呼んで欲しいと、強く願いながら…。
モーリスが案内してくれた店で魔法使いの杖やローブ、護身用の鎧や剣を買ってから、白竜の情報を集めるためにギルドと図書館へ行く。
書店で大きな地図を買い、白竜が生息していそうな所に何か所か印を付けた。
「ではまず、ここを目指しましょうか」
てきぱきと物事を進めてゆくサファーロに、シャルルはますます魅かれてゆくのだった。
「シャルルお嬢様っ!」
エミリーが小さな声でウキウキと話しかけてくる。
「サファーロ様って、美形で背も高くて素敵な方ですね。
道行く女性たちが皆、振り返って見とれていましたわ!お嬢様の恋人なのですよね?
夜にサファーロ様と2人で会われるのでしたら、私がお嬢様の傍に居てはお邪魔ですわよね。
私、そんな時はどうしてたらいいのでしょうか~」
と、クネクネ踊りだすエミリー。まったく困った侍女である。
「そんな余計な気を遣わなくていいのよ。サファーロ様が、夜に私に会いにくるわけないじゃないの」
自分で言った言葉に寂しくなってしまうシャルルだった。
「あっ、そうですよね。サファーロ様は紳士ですもの。
夜の散歩に誘ったりなんてされませんよね~。
私、こういうことに慣れてなくて、お嬢様の恋を邪魔したくなくて焦ってしまいました~」
まだクネクネしている。
私も全くの恋愛初心者なんだけど…とシャルルは思ったが、わざわざ言わないことにした。
「モーリス様も美形ですよね。薄紫色の長い髪をかきあげる仕草が不良っぽくてカッコイイというか…。
ちょっとおっちょこちょいだけど、性格は良さそうな方だし」
「剣と魔法の達人だそうよ」
エミリーの興味をモーリスだけに向けようと、実際より盛って説明してしまうシャルル。
「えっ!そうなんですか?ステキ~♪」
目論見通りにいって、思わずガッツポーズを決めるシャルルだった。
おだやかな陽射しが道を照らし、小鳥たちが楽しそうにさえずっている。
「では、出発しましょう」
サファーロの優しい声が響き、
「「「はいっ!」」」
隊長に群がる隊員のように元気よく、楽しそうに返事をするシャルルたち。
「そういえば、シャルル嬢。そのドレスは素敵ですが、旅をするには不向きです。
エミリーさんも侍女のお仕着せのままでは…。私とモーリスも、服を変えなければ」
「サファーロ様。私が魔法使いのローブや戦闘用の鎧を売る店にご案内いたします!」
「モーリスは頼りになるな」
「そんなこと…ありますっ!?」
ふざけるモーリスに、サファーロは屈託なく笑う。
シャルルとエミリーも思わず吹き出してしまった。
モーリスは幼少時からサファーロと一緒に育ったせいか、従僕らしくない。
たまに友達のような言動があるが、サファーロは咎めたりしなかった。
上下関係をはっきりさせて威張る、という行為をしたくないようだ。
「サファーロ様。私はシャルルお嬢様の侍女なのですから、エミリーと呼んでください」
さん付けされる立場ではないと思ったエミリーが申し出るが、サファーロは迷っていた。
シャルルは、サファーロがエミリーを呼び捨てにしたら嫌だ、と思った。
サファーロがエミリーを見ることすら、嫌なのだ。
サファーロを独り占めしたい…。
こんな些細な事で心を乱す自分に呆れながらも、初めて知った嫉妬というドロドロとした感情を持て余していた。
サファーロはシャルルのそんな気持ちに気付いたのか、「あなたを呼び捨てにしたくありません」と言った。
シャルルは安堵しつつ、そっとサファーロの横顔を見つめる。
いつかシャルルと呼んで欲しいと、強く願いながら…。
モーリスが案内してくれた店で魔法使いの杖やローブ、護身用の鎧や剣を買ってから、白竜の情報を集めるためにギルドと図書館へ行く。
書店で大きな地図を買い、白竜が生息していそうな所に何か所か印を付けた。
「ではまず、ここを目指しましょうか」
てきぱきと物事を進めてゆくサファーロに、シャルルはますます魅かれてゆくのだった。
「シャルルお嬢様っ!」
エミリーが小さな声でウキウキと話しかけてくる。
「サファーロ様って、美形で背も高くて素敵な方ですね。
道行く女性たちが皆、振り返って見とれていましたわ!お嬢様の恋人なのですよね?
夜にサファーロ様と2人で会われるのでしたら、私がお嬢様の傍に居てはお邪魔ですわよね。
私、そんな時はどうしてたらいいのでしょうか~」
と、クネクネ踊りだすエミリー。まったく困った侍女である。
「そんな余計な気を遣わなくていいのよ。サファーロ様が、夜に私に会いにくるわけないじゃないの」
自分で言った言葉に寂しくなってしまうシャルルだった。
「あっ、そうですよね。サファーロ様は紳士ですもの。
夜の散歩に誘ったりなんてされませんよね~。
私、こういうことに慣れてなくて、お嬢様の恋を邪魔したくなくて焦ってしまいました~」
まだクネクネしている。
私も全くの恋愛初心者なんだけど…とシャルルは思ったが、わざわざ言わないことにした。
「モーリス様も美形ですよね。薄紫色の長い髪をかきあげる仕草が不良っぽくてカッコイイというか…。
ちょっとおっちょこちょいだけど、性格は良さそうな方だし」
「剣と魔法の達人だそうよ」
エミリーの興味をモーリスだけに向けようと、実際より盛って説明してしまうシャルル。
「えっ!そうなんですか?ステキ~♪」
目論見通りにいって、思わずガッツポーズを決めるシャルルだった。
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