3 / 24
あなたのためなら
しおりを挟む
「答えたくありません」
サファーロは、きっぱりと言った。
「…そうですか」
そう言われたら、無理に聞き出すわけにもいかない。
「僕が前世で誰だったか、シャルル嬢に推理してほしいのです。
そうすれば、答えが出るまで、あなたは僕の事を考えたり、気になったりするかもしれない。
一瞬でも、あなたの頭の中を僕で占領したいのです」
気障なセリフをさらっと言ってのけるサファーロに、赤面して俯いてしまうシャルル。
「魔法学校の授業も終わっている時間ですし、今日は息抜きしませんか?
シャルル嬢の行きたい所へお連れしますよ。瞬間移動しますので、遠方でも大丈夫です」
春風のように優しい雰囲気のサファーロを見ていると、なんだか懐かしい気持ちがこみあげてくる。
確かに、前世で会っているような…。この雰囲気を纏っていたのは…多分…。
でも、確信ではない。もしも違う人の名前を言ってしまったら、彼は傷つくだろう。
そう思うと、迂闊なことは言えないと思うシャルルだった。
「…では、おばあさまにお会いしたいのですが、かまいませんか? 隣町なのですが」
魔法学校で寮生活をするようになってから、祖母に会えなかった。
子供のころ、いつも可愛がってくれた優しい祖母に久し振りに会いたくなってしまった。
「承知しました」
サファーロに祖母の家の場所を説明し、魔法で転移する。
「シャルル嬢、顔色が悪いですね。心配なので、お屋敷の中まで付き添います」
「でも、男性をお連れしては祖母が驚きますし…」
「大丈夫です。女装もできますから」
サファーロは一瞬で美少女に変身した。
若干、強引な気もしたが、門の外で待っていてもらうのも悪いと思い、一緒に訪ねることに。
祖母の家の呼び鈴を鳴らすと執事や侍女が出迎えてくれた。
「シャルルお嬢様、お久し振りでございます。大奥様も会いたがっておられました。どうぞこちらに」
「彼女は友達なの」
「ようこそ。歓迎いたします」
門からエントランスまで、おばあさまの好きな薔薇たちが優美に咲き誇っていた。
廊下を皆で歩いていると、執事が言いにくそうにつぶやく。
「実は…大奥様は最近、お体が悪くていらっしゃいます。もちろん、お医者様にも診ていただいているのですが…」
「そんな…おばあさまはどんな病気なのですか?」
「病気…というか、魔法で良くなるらしいのです。魔導士が言うには、白竜の住む谷の湖にある宝玉の光を浴びれば治るかもしれないと…」
「白竜の住む谷って、何処にあるんですか? どんな色や形の宝玉なのですか?」
「それは…私にはわかりかねます…」
執事は己の無力さを残念に思い、詫びるように答えた。
おばあさまの部屋を訪ねると、ベッドで休んでいて顔色も少し悪い。
シャルルは心配で、ベッドに駆け寄った。
「おばあさま。シャルルです。お会いしたかった。お体は大丈夫ですか?」
そっと目を開けたおばあさまは、嬉しそうに笑ってシャルルの手を握った。
「シャルル。会いたかったわ。あなたに会えて嬉しい…」
痩せた手と握力の無さに、シャルルは大きな不安を覚える。
「おばあさま、白竜の住む谷の湖にある宝玉の光を浴びたら、おばあさまの体は良くなるのですか?」
シャルルは、おばあさまの儚げな手をそっと握り返す。
「…わからないわ。そんな危険な所へ行っては駄目よ。シャルルには安全な所で幸せでいてほしい…」
「でも、おばあさま…」
「心配しないで。大丈夫よ…」
大丈夫なわけなどないのに、大丈夫なふりをして微笑むおばあさまを見ているのがつらくて、シャルルは長居できずにおばあさまの家をあとにした。
門の外へ出た途端、心配で足元をふらつかせ倒れそうなシャルルをサファーロが抱きとめる。
「シャルル嬢。僕が探してきます。白竜の住む谷の湖にある宝玉を」
シャルルは信じられないという表情で、サファーロを見つめる。
「すぐには無理ですが、なるべく早く。明日の朝にでも出発します」
「…そんな…そこまで甘えられません! 私が行きます。
サファーロ様には関係の無いことです。こんな危険に巻き込むわけには…」
「僕が、自分の意志で行きたいのです。
シャルル嬢、あなたのためなら何だってしたい。
あなたが宝玉を探しに行くなら、勝手に護衛しますよ」
サファーロの熱意と熱い視線に、説得は無理かもしれないと思うシャルル。
でも、彼を危険な目に遭わせるわけにはいかない。
そう思いながらも、宝玉を見つける自信もなくて不安に揺れるシャルルを、サファーロは強く抱きしめるのだった。
サファーロは、きっぱりと言った。
「…そうですか」
そう言われたら、無理に聞き出すわけにもいかない。
「僕が前世で誰だったか、シャルル嬢に推理してほしいのです。
そうすれば、答えが出るまで、あなたは僕の事を考えたり、気になったりするかもしれない。
一瞬でも、あなたの頭の中を僕で占領したいのです」
気障なセリフをさらっと言ってのけるサファーロに、赤面して俯いてしまうシャルル。
「魔法学校の授業も終わっている時間ですし、今日は息抜きしませんか?
シャルル嬢の行きたい所へお連れしますよ。瞬間移動しますので、遠方でも大丈夫です」
春風のように優しい雰囲気のサファーロを見ていると、なんだか懐かしい気持ちがこみあげてくる。
確かに、前世で会っているような…。この雰囲気を纏っていたのは…多分…。
でも、確信ではない。もしも違う人の名前を言ってしまったら、彼は傷つくだろう。
そう思うと、迂闊なことは言えないと思うシャルルだった。
「…では、おばあさまにお会いしたいのですが、かまいませんか? 隣町なのですが」
魔法学校で寮生活をするようになってから、祖母に会えなかった。
子供のころ、いつも可愛がってくれた優しい祖母に久し振りに会いたくなってしまった。
「承知しました」
サファーロに祖母の家の場所を説明し、魔法で転移する。
「シャルル嬢、顔色が悪いですね。心配なので、お屋敷の中まで付き添います」
「でも、男性をお連れしては祖母が驚きますし…」
「大丈夫です。女装もできますから」
サファーロは一瞬で美少女に変身した。
若干、強引な気もしたが、門の外で待っていてもらうのも悪いと思い、一緒に訪ねることに。
祖母の家の呼び鈴を鳴らすと執事や侍女が出迎えてくれた。
「シャルルお嬢様、お久し振りでございます。大奥様も会いたがっておられました。どうぞこちらに」
「彼女は友達なの」
「ようこそ。歓迎いたします」
門からエントランスまで、おばあさまの好きな薔薇たちが優美に咲き誇っていた。
廊下を皆で歩いていると、執事が言いにくそうにつぶやく。
「実は…大奥様は最近、お体が悪くていらっしゃいます。もちろん、お医者様にも診ていただいているのですが…」
「そんな…おばあさまはどんな病気なのですか?」
「病気…というか、魔法で良くなるらしいのです。魔導士が言うには、白竜の住む谷の湖にある宝玉の光を浴びれば治るかもしれないと…」
「白竜の住む谷って、何処にあるんですか? どんな色や形の宝玉なのですか?」
「それは…私にはわかりかねます…」
執事は己の無力さを残念に思い、詫びるように答えた。
おばあさまの部屋を訪ねると、ベッドで休んでいて顔色も少し悪い。
シャルルは心配で、ベッドに駆け寄った。
「おばあさま。シャルルです。お会いしたかった。お体は大丈夫ですか?」
そっと目を開けたおばあさまは、嬉しそうに笑ってシャルルの手を握った。
「シャルル。会いたかったわ。あなたに会えて嬉しい…」
痩せた手と握力の無さに、シャルルは大きな不安を覚える。
「おばあさま、白竜の住む谷の湖にある宝玉の光を浴びたら、おばあさまの体は良くなるのですか?」
シャルルは、おばあさまの儚げな手をそっと握り返す。
「…わからないわ。そんな危険な所へ行っては駄目よ。シャルルには安全な所で幸せでいてほしい…」
「でも、おばあさま…」
「心配しないで。大丈夫よ…」
大丈夫なわけなどないのに、大丈夫なふりをして微笑むおばあさまを見ているのがつらくて、シャルルは長居できずにおばあさまの家をあとにした。
門の外へ出た途端、心配で足元をふらつかせ倒れそうなシャルルをサファーロが抱きとめる。
「シャルル嬢。僕が探してきます。白竜の住む谷の湖にある宝玉を」
シャルルは信じられないという表情で、サファーロを見つめる。
「すぐには無理ですが、なるべく早く。明日の朝にでも出発します」
「…そんな…そこまで甘えられません! 私が行きます。
サファーロ様には関係の無いことです。こんな危険に巻き込むわけには…」
「僕が、自分の意志で行きたいのです。
シャルル嬢、あなたのためなら何だってしたい。
あなたが宝玉を探しに行くなら、勝手に護衛しますよ」
サファーロの熱意と熱い視線に、説得は無理かもしれないと思うシャルル。
でも、彼を危険な目に遭わせるわけにはいかない。
そう思いながらも、宝玉を見つける自信もなくて不安に揺れるシャルルを、サファーロは強く抱きしめるのだった。
0
お気に入りに追加
100
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜
みおな
恋愛
転生したら、乙女ゲームのモブ令嬢でした。って、どれだけラノベの世界なの?
だけど、ありがたいことに悪役令嬢でもヒロインでもなく、完全なモブ!!
これは離れたところから、乙女ゲームの展開を楽しもうと思っていたのに、どうして私が巻き込まれるの?
私ってモブですよね?
さて、選択です。悪役令嬢ルート?ヒロインルート?
婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
いつかの空を見る日まで
たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。
------------
復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。
悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。
中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。
どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。
(うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります)
他サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる