藍色の空を越えて

Mari

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第三章

隆康と俺

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あの日、俺と美咲が前世にタイムスリップした意味。
それが何なのか、俺はずっと考えていた。


「前世…か…」



「前世?とは?」

ん?

「うぉっ!?…びっくりした…隆康殿か…」
「すまない。随分物思いに耽っていたようなので、声を掛けづらくてね。」

奈都といい、隆康といい、なんなんだ!
急に出てくると心臓に悪いぜ、まったく。


「ところで、前世とは?」
「生まれ変わる前の世のことだ。」
「ははっ、生まれ変わる前の世が本当にあるなら、随分と古い時代になるんでしょうね」


あぁ、そうか。
この時代からすれば、生まれ変わる前って言ったらかなり古いな。
想像もつかねぇ…。


「前の世のことよりは、私は後の世のことをよく考えるようになりましたよ。
優太朗殿は、私に仰いましたよね。後の世で結ばれたいと願うのは誰かと。」
「…あぁ。」
「後の世が本当にあるのなら、私の答えは決まっていますよ。…だけど、優太朗殿は今が変わらなければ同じことを繰り返すと仰いました。」

俺が言った一言を、隆康はずっと考えていたのだろう。

「……あの言葉、少々堪えました。」
そう言って遠くを見つめる隆康。

この時代で生きているこいつも、色んな葛藤と闘っている。
隆康の横顔を見ながら、そう思えた。

奈都だって、そうだ。


俺は…
二人の運命を狂わせたいわけじゃない。
運命には、どうにもならない流れというものがあるだろう。
それがきっと、隆康と咲の祝言だ。
だけど、その流れを"違う"と気付き、自分の意思を尊重出来た時、運命は変えられるような気がするんだ。

隆康と奈都には本当に幸せになってほしい。

お互いを想う気持ちに嘘は無いはずなのに、流れのままに、自分の本当の気持ちを閉じ込めている二人が、もどかしくて、腹が立つ。

想い合う二人が結ばれないのは見ていられない…


ん?
余計なお世話って、もしかしてこういうこと言うんじゃないのか?
俺こんなお節介だったっけな?



「優太朗殿、ありがとう。」
「え?何が?」
「いや、優太朗殿の優しさにただそう伝えたかっただけです」
一瞬、心の中で思っていたことが隆康に聞こえたのかと思った。
急にありがとうとか言われても…
俺まだ何もしてあげられてねぇし…。


笑った隆康が、隆也の笑った顔とかぶった。

やっぱり隆也の前世なんだなって、少し嬉しくなった。
こいつとは、何度生まれ変わっても親友になりてぇな。

まぁ、本人には絶対言わねぇけどな。



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