君と、もみじ

Mari

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第三章

女友達からの忠告

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「奏先輩たち、もう自由登校になったんだっけ?」
部活に向かいながら和真が問い掛ける。
「…らしいな、三年生全然見掛けなくなったし」

陽菜と奏が校門で話したあの日以来、響は奏とろくに顔を合わさないまま、時だけが過ぎていた。
卒業間近の三年生は自由登校期間に入り、自由学習や個人指導でもない限り学校に来ることはない。

「そっか…そろそろ卒業しちゃうんだな、奏先輩」
「…」
卒業と聞くと、響には何とも言えない寂しさが沸き上がる。
自分の中途半端な現状と、奏への想いの狭間で葛藤するばかりだった。



「響ー!」
「おぅ、朱音(あかね)」
朱音は中学の頃からの女友達。高校に入ってからそれほど接点はなくなったが、時々こうして声を掛けてくる。

「ねぇ、ちょっと前にさ、校門のとこに小石川陽菜が来てたじゃん?」
「あぁ…」
見られてたかと思わずため息が出た。
「あんた、もしかして小石川と付き合ってんの?」
「…」
小さく頷くと、朱音はあからさまに顔を歪め、大きなため息をつく。
「まじか…。あんたは見抜ける奴だと思ってたわ」
「なになに?どういうこと?」
朱音の意味深な言葉に、隣に居た和真が興味津々に食い付いた。

「小石川、男の前と女の前じゃ全然態度が違うのっ。もちろん、年上に対してもいい子ぶりっ子だけど、それも相手によって態度違うし、私らの中ではあいつ超嫌われてたっ」
一気に言葉を紡ぎ、朱音はもう一度息を吐く。
「まじか…」
和真は引きつった顔で呆然とした。
朱音は更に言葉を続ける。
「いくら男の前でいい子を演じてても、響はそういうの見抜ける奴だと思ってたから、〝こいつも騙されたかー!〟ってショックだったし」
和真と同様に、俺にも衝撃の事実だった。

朱音は昔からサバサバしていて、思ったことはハッキリと言う性格をしている。
女の方が人を見抜く性質を持っているとはいえ、自分が〝騙されたうちの一人〟と言われれば、それはそれでショックだ。

朱音が静かに問う。
「なんで小石川なの?」
「…なんでって…」
〝なんで〟の理由になるような言葉が出てこない。
「…あんたは、奏先輩のこと好きなんだと思ってたのにな…」
朱音がポツリと呟く。
俺の今の状況を知っている和真は、チラリと俺を見た。


「朱音ー!行くよー!」
廊下の端から、朱音を呼ぶ声がする。
「今行くー!」
と、返事をした朱音は最後にもう一度振り返った。
「まぁとにかく、小石川のことちゃんと見定めた方がいいよ!余計なお世話かもしれないけど、これは私からの忠告!あんたには、あんなのと付き合っててほしくないな」
そう言って、朱音はバタバタと帰っていく。

和真はそれを見送りながら呟いた。
「お前の彼女、すっげぇ言われようだな…」
既に苦笑いしか出ない。

「奏先輩が卒業するまでに、彼女と別れられそうか?」
「…どうかな」
「もう、あと二週間もないぞ?」
「…分かってる」

歯切れの悪い響の返事に、和真は一つため息混じりに苦笑いを零した。







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