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第五章
葛藤
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雪乃は晃平の部屋を出た後、姉の咲良(さくら)のアパートへ向かう。
咲良は雪乃とは性格もまるで正反対のキャリアウーマンで、これまでも雪乃の相談に乗っては渇を入れてきた。
今回も、一通り話を聞いた咲良は、コーヒーを持ってキッチンから出てくる。
「ほら、これ飲んで少し落ち着いて」
コーヒーを一口飲むと、雪乃は咲良に聞いた。
「私がしたこと、間違ってる…?」
咲良はため息を一つつくと、話し始める。
「あんたのやってることは、最初から間違ってるって私は思ってるよ」
「……」
「いくら一目惚れしたって言っても、傷を理由にして〝結婚して〟なんて馬鹿げてる。振り向かせたいなら、正々堂々と真っ正面から向き合わなきゃ、いつか崩れるに決まってるじゃない」
「だって、あの時はどうしてもそれしかないと思ったんだもん…」
呆れ顔の咲良は雪乃をじっと見つめて言った。
「雪乃、それで本当に幸せになれると思う?」
「…好きになってもらえたら幸せになれるって思ったの…」
「それで?好きになってもらえた?相手には結婚を約束してた人がいるのに?」
咲良は容赦なく問い掛ける。
雪乃には返す言葉が見つからなかった。
思い返せば、いつだって、晃平は空を見上げ切なそうにしている。
優しいけれど、晃平の心はいつも違うところを向いてた。
「それでも…、好きなの」
雪乃の目には涙が溢れる。
自分が言ったあの日の言葉で、晃平を苦しめているかもしれない…
だけど好きという感情が、晃平を自由にさせきれないでいたのだ。
咲良は何も答えず、じっと雪乃の次の言葉を待つ。
「でも……、お姉ちゃん、晃平は私に触れようとしない…」
「…そう」
「それが晃平の答えだと分かってるのに…、イヤなの、離れたくないの…」
目を伏せた咲良は、雪乃の前に腰を下ろして言った。
「ねぇ雪乃、私は…、あんたのことをちゃんと好きでいてくれる人とこの先一緒になってもらいたい」
その言葉に雪乃は顔を上げると、咲良の真っ直ぐな瞳が飛び込んでくる。
頬を涙が伝うと、雪乃は首を振ってまた下を向いてしまった。
「…とりあえず、今日は泊まっていきなさい。何時まででも付き合うからさ!」
勢いよく立ち上がり、布団を敷き始める咲良。
複雑だった。
妹に、好きな人を諦めろとは言いたくない…
だけど、別の誰かを想う人と結婚して、本当の幸せなんて訪れるとは思えなかったからだ。
雪乃がこんなに好きになった相手は、咲良の知ってる限りでは初めてのこと。
応援してあげたい気持ちを、無理矢理にでも抑えなきゃ…、そんな思いで居た。
泣き続ける雪乃を横目で見ながら、また一つため息を溢す。
咲良は雪乃とは性格もまるで正反対のキャリアウーマンで、これまでも雪乃の相談に乗っては渇を入れてきた。
今回も、一通り話を聞いた咲良は、コーヒーを持ってキッチンから出てくる。
「ほら、これ飲んで少し落ち着いて」
コーヒーを一口飲むと、雪乃は咲良に聞いた。
「私がしたこと、間違ってる…?」
咲良はため息を一つつくと、話し始める。
「あんたのやってることは、最初から間違ってるって私は思ってるよ」
「……」
「いくら一目惚れしたって言っても、傷を理由にして〝結婚して〟なんて馬鹿げてる。振り向かせたいなら、正々堂々と真っ正面から向き合わなきゃ、いつか崩れるに決まってるじゃない」
「だって、あの時はどうしてもそれしかないと思ったんだもん…」
呆れ顔の咲良は雪乃をじっと見つめて言った。
「雪乃、それで本当に幸せになれると思う?」
「…好きになってもらえたら幸せになれるって思ったの…」
「それで?好きになってもらえた?相手には結婚を約束してた人がいるのに?」
咲良は容赦なく問い掛ける。
雪乃には返す言葉が見つからなかった。
思い返せば、いつだって、晃平は空を見上げ切なそうにしている。
優しいけれど、晃平の心はいつも違うところを向いてた。
「それでも…、好きなの」
雪乃の目には涙が溢れる。
自分が言ったあの日の言葉で、晃平を苦しめているかもしれない…
だけど好きという感情が、晃平を自由にさせきれないでいたのだ。
咲良は何も答えず、じっと雪乃の次の言葉を待つ。
「でも……、お姉ちゃん、晃平は私に触れようとしない…」
「…そう」
「それが晃平の答えだと分かってるのに…、イヤなの、離れたくないの…」
目を伏せた咲良は、雪乃の前に腰を下ろして言った。
「ねぇ雪乃、私は…、あんたのことをちゃんと好きでいてくれる人とこの先一緒になってもらいたい」
その言葉に雪乃は顔を上げると、咲良の真っ直ぐな瞳が飛び込んでくる。
頬を涙が伝うと、雪乃は首を振ってまた下を向いてしまった。
「…とりあえず、今日は泊まっていきなさい。何時まででも付き合うからさ!」
勢いよく立ち上がり、布団を敷き始める咲良。
複雑だった。
妹に、好きな人を諦めろとは言いたくない…
だけど、別の誰かを想う人と結婚して、本当の幸せなんて訪れるとは思えなかったからだ。
雪乃がこんなに好きになった相手は、咲良の知ってる限りでは初めてのこと。
応援してあげたい気持ちを、無理矢理にでも抑えなきゃ…、そんな思いで居た。
泣き続ける雪乃を横目で見ながら、また一つため息を溢す。
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