レモネードのように。

はる

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ちゃんと伝わったから(※微)

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スパの脱衣ルームに入ると、外に広がる景色に驚いた。本物の温泉が湧き出ているのか、テーマパークのプール並みに大きい露天風呂があった。

「風呂、大きいんだね。」

「そう?普通じゃない?早く入ろうよ。普段来れないんだからさ。」

「普段来れない?値段が高いから?」

「ううん。前に1人で行ったらセクハラ?されちゃった事があって、それ以来おじいちゃんが1人で行くなって。」

「えぇ!?」

マジかよ。でもまぁ、そりゃそうか。こんな美少年が一糸まとわぬ姿で風呂に入っていたら無理もない。それにしても、なんて変態オヤジだ。なんか腹が立ってきた。

「大丈夫だったの?その変態オヤジには何されたの?」

「えっと…、おじさんもいたけど若い人もいて…。」

「え、何人いたの!?」

「3人かな?なんか1人が変なことしてきて、嫌がってたら増えてきちゃったの。」

許せない。こんな華奢な子に寄ってたかって…。

「ねぇ、そんな話いいから、早く入ろうよ!」

ルナはさりげなく話を逸らすと、自らの服に手をかけると、待ちきれないとばかりにさっさとシャツとズボンを脱いだ。

いや、ルナ本当に無自覚!おじいちゃんも苦労してるだろうなぁ…。でも、そんなことを考える傍ら、正直、俺は興奮を抑えられなかった。だって、アイドルのような美少年が自分の目の前でパン一の裸体を晒しているのだから…。

俺は、ルナの体に釘付けになった。透き通るように色が白くて、細いけど肉付きが良く、柔らかそうな体。筋肉なんて見る影もなかった。しなやかで、腰は細くて、触れてしまいそうになる衝動を堪えるのに必死だった。白い胸の上には小さな胸の突起が…。男の乳首がなんであんなに綺麗なピンク色なんだ…。その下に目をやると、なだらかなお腹の中心に縦長の形の良いおへそがあった。

さらにその下は…

「リク?」

声をかけられハッとすると、ルナが怪訝そうな顔で俺を見ていた。

「何ボーッとしてるの?」

「あ、ごめん…!なんでもない!」

俺は慌てるが、体は正直で、俺のそこはズボンの上からでもわかるくらいビンビンに固くなっていた。

ルナもそれに気付いたみたいで、慌てたように両手で自分の体を隠した。

「ち、違うんだ、ルナ!」

「何が違うのさー。リクのえっちぃ。」

ルナは少し顔を赤らめて、頬を膨らませて言った。

「ごめん…。こんな可愛い男の子の裸を目にすることなんて普段ないからさ…。」

ここまでくると、自分のバカ正直な発言に呆れさえする。

それを聞いたルナはププッと笑い、目にも止まらぬ早さでパンツを脱ぎ去ると、俺が見る前にタオルで隠し、「先に行ってるからすぐ来てね!」と言い残し、颯爽と行ってしまった。

俺はポカーンとしながらも、慌てて服を脱いだ。浴場に入ると、ルナは先に温泉に浸かっていた。

「リク、こっち!」

ルナに手招きされて俺も温泉に入る。

「おー、丁度いい湯加減だね。」

屋外に広がる広大な露天風呂は絶妙な湯加減で、柔らかい風が心地よかった。

「気に入った?」

「うん、気に入ったよ。結構人が多いんだね。」

「ここら辺で一番大きなスパだからね。」

ルナは久方ぶりの温泉にご満悦の表情だった。剥き出しの白くて華奢な肩にどうしても目がいってしまう。水面から可愛い乳首が見え隠れし、俺のあそこはまた元気になりかけていた。

「あれ、ルナじゃん。」

ふと低めの声が響き、俺とルナは声のする方向を見た。そこには短髪で長身の男がタオルも巻かずに仁王立ちしていた。

「…マサ…」

ルナが小さく口にしたのは、恐らくその男の名前だろう。マサと呼ばれた男はずいずいとルナに近付く。

「会いたかったんだぞ、ルナ。」

キスしそうな距離にまで近づくと、マサは言った。誰なんだ…もしかしてルナの彼氏…?でも付き合ったことないって言ってたし…。俺はドキドキしながらも成り行きを見守る。

「悪いけど、僕はちっとも会いたくなかったよ。」

ルナの鋭い一言が空気を引き裂いた。

「なんだよ、久しぶりに会ったのによ。俺の事避けてんだろ?お前のじいちゃんこえーから店には行けねぇしよ。」

「僕、もう行くね。」

ルナは足早にその場を去ろうとする。

「おい、待てよ!」

マサと呼ばれた男は、ルナの細い腕をぎゅっと掴む。

「…離してよ。」

ルナはマサをキッと睨んだ。さっきまでの陽気なルナとはまるで別人のようだった。

「ったく、可愛い顔してんのに本当気のつえー奴だよな。まぁ俺はそこに惚れてんだけどさ。」

マサがルナの顔をじーっと見つめながら言った。

「…見ないで…」

顔を見つめられる事に嫌悪したらしいルナは顔を反らそうとするが、マサに顎を掴まれ前を向かされる。

「よく見せろよ。ほんとちっちぇ顔だな。色も白くて目が大きくて、マジで俺好みの顔してるよ、お前。それにしても、まさか風呂で会えるなんてな。ついてるぜ。」

そう言うと、マサはあろうことか、ルナの可愛い乳首をピンッと弾いた。

「やんっ…!」

ルナは一際高い声をあげ、慌てて手で口を塞ぐ。そして、体を隠すように首までお湯に浸かる。

「ハハッ、可愛い声!もっと聞かせろよ!乳首感じちゃったのか?」

「変態!」

ルナは顔を赤らめながらもマサに言い放つ。

「おもしれぇ。」

マサがまたルナの体に手を伸ばそうとしたが、その手を俺が掴んだ。

「事情は知らないけど、ルナが嫌がってるから、その辺にしてあげてくれないかな?」

俺は諭すような口調で言った。普段、俺は喧嘩の仲裁に入るようなキャラじゃないし、正直緊張した。でも、それに勝る憤りが俺の体を動かした。

「は?お前、何?」

「何でもいいだろ?その手を離してあげてくれ。」

揉め事に見えたのか、周りからも人が集まり始めると、マサはチッと言ってルナの手を離した。

「ルナ、行こう。」

すかさず俺はルナの手を引いて、その男から離れた。

「ルナ、俺から逃げられると思うなよ!」

後ろから声が聞こえたが、とにかくルナを守りたい。その一心だった。



テーマパークの如く広いお風呂の奥の方、かつ人が多くいる方に移動し、マサが追いかけて来ないことを確認すると、ようやく落ち着いて、湯に浸かった。

「リク、ありがとう。それと、ごめんね。」

ルナは感謝と申し訳なさが同居したような表情で言った。

「謝る事なんてないよ。俺の方こそもっと早く割って入ればよかった。」

「ううん、助けてくれて嬉しかったよ。それに、こういうの慣れてるから大丈夫だよ。」

ルナはニッコリと笑う。慣れてるという言葉に胸が痛む。

「あいつ、一体なんなんだ?」

俺はまだ憤りを抑えられず、聞いた。

「前に街でナンパされたんだ。一回ご飯食べに行ったら、その日のうちに好きって言われて、断ったんだけどすごくしつこくて…。僕が『スノースマイル』で働いてることも調べたみたいでさ。」

「スノースマイル?」

「あ、お店の名前ね。その日はおじいちゃんが鬼の形相で追っ払ってくれたんだけど。」

「ルナ、俺から離れちゃダメだよ。」

「リク…?」

「今日もそうだし、これから街に行ったりする時も俺と一緒に行動しよう。さっき慣れてるって言ったけど、そんなの嘘だよね。ちゃんと俺が…」

守るから、と言いかけて言葉に詰まった。会ったばっかりの俺が何を言ってるんだ。しかも、ついさっきルナの裸を見て興奮した。そんなのマサと同類じゃないか。おこがましいにも程がある。

内心忸怩たるものを感じ、黙りこくった俺を、ルナは少し不思議そうに眺めると、いきなり両掌で頬をむぎゅっとされた。

「ひゅ、ひゅな?(ル、ルナ?)」

「何で黙り込むの?最後まで言ってよ。って言いたいところだけど、いいや。ちゃんと伝わったから。ありがとうね、リク。」

ルナを守りたい気持ちと邪な気持ちとが葛藤する俺に対して、そんなのどうでもいいよと語りかけるような表情で、ルナは言ってくれた。俺は、それが凄く嬉しかった。
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