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(日常小話)ささやかな幸せ②

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「あ、新しいメニュー出てるよ」

「お、本当だ。アップルカスダードだって」

鯛焼き屋のメニューを見ながら俺らは会話する。

「こちら期間限定なので是非っ!」

鯛焼き屋のにーちゃんが推してきた。


「じゃあ僕、普通のあんこにする」






えぇぇぇぇ






「結城、この流れはアップルカスタードいくだろ!?」

「アップルカスタードはかなてぃが頼みそうな気がしたから、僕はあえて定番にしとこうかなーって。それに普通の鯛焼き食べたい気分だったし」

と言って、照れ笑いをする空。

うん、可愛いから良いッ!

それに、俺、確かにアップルカスタード頼むつもりだったし。

「じゃあ、それでいくか」

って事でそれぞれ鯛焼きを買い、近くの椅子に並んで座り、鯛焼きを頬張った。

「あっつ!」

猫舌の俺は、熱くてすぐに食べられなかった。

そういや結城も猫舌だったよな、と思い横を見ると一生懸命ふーふーしていた。



超絶かわいいんですけどー!!!



「…なに?かなてぃ」

あまりの可愛さに思わず結城を凝視してしまい、結城は首を傾げながら聞いた。

「いや、一生懸命ふーふーしてるのが可愛すぎてつい…」

「…あつあつの鯛焼き、顔に押し付けるよ?」

「やめとけよ!」

俺らは、そんなふざけ合いをしながら笑った。

そうこうしているうちに、ようやく鯛焼きが冷めてきたので食べてみた。

「お、アップルカスタードうまっ!てか甘っ!」

「かなてぃ、一口ちょーだい」

結城が物欲しそうな顔して言った。

定番の鯛焼きがいいとか言いながら、こっちも気になってんじゃん。

「おー、いいよ。あ…」

手渡ししようと思ったんだけど、その前に結城が俺の手元に前のめりになった。

結城のさらさらの髪の毛が俺の目の前を横切る。

続いて何故かシャンプーの甘い匂いがした。

もう放課後なのに、何でシャンプーの匂いがするんだよ、こいつ。

そして結城は俺の胸元らへんにあった鯛焼きを一口食べた。

「ん!おいしい!」

結城は俺の方を見上げて、目をキラキラさせながら言った。

あー、神様。

俺今死んでもいい。

「…なんかもう、持って帰りてぇ」

心の声が漏れてしまった。

「あ、テイクアウトする?」

「鯛焼きじゃねーよ!結城の事をだよ!」

「えーなにそれ」

結城が笑った。

冗談だと思ったらしい。

なかなか伝わんねーなぁ。

俺の心の中、開けて見せてやりたいよ。

「なぁ、結城のも一口食いたい」

「いいよ、はい」

結城が俺の口元に自分の鯛焼きを差し出した。

俺は結城の手首をさり気なく掴みつつ、ガブッとひとかじりした。

あんこの甘みが口の中に広がる。

「どう?」

「んーうまい!」

「安定のあんこだよね!」

「あぁ、安定の定番だな!」

鯛焼きひとつでこんなに盛り上がれる俺ら。

こんな、何でもないささいなやりとりが俺にとっては凄く楽しいし、幸せだった。

少しずつ、こんな日々を増やしていきたい。

「なぁ、結城」

「なに?」

「高校生活もあと半分くらいだしさ、これからも結城との思い出を沢山作っていきたいな、俺」

結城は、急にどうした?みたいな顔で一瞬俺を見たが、すぐに

「うん、僕もだよ」

と言って、ニコッと笑う。

そのえくぼを指でつついてみた。

「わ、なに?」

「べつにー」

すると結城が仕返しとばかりに俺のほっぺを指でつついた。

「なんだよ」

「べつにー」

そう言って結城はまた鯛焼きを頬張る。

今日もきっと思い出のひとつになるんだろうな。

ささやかで小さな1日だけど、俺にとって大切な1日だ。




END
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