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第3章 フィガロは広場に行く1 ニコラス・コレーリャ

コンドッティエーレの憂鬱 1509~10年 カンブレー同盟戦争

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<アルフォンソ・デステ、教皇ユリウス2世、フランス王ルイ12世、神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世、ニッコロ・デ・ピティリアーノ、ジョン・ホークウッドなど傭兵隊長>

 1509年5月14日、ヴェネツィア共和国対カンブレー同盟(教皇、神聖ローマ帝国、フランス、スペイン、フェラーラ、マントヴァなど)の初戦はヴェネツィア側の足並みの乱れが原因で勝敗を決した。しかし、これで決着がついたわけではない。まだ初戦に過ぎないのだ。

 このとき、アルフォンソ・デステはミラノ方面に出兵していたが、妻子はフェラーラで平穏に過ごしていた。
 ヴェネツィアにほど近いフェラーラである。街の城壁は固く閉ざされ留守居の者らが守っていたが、ヴェネツィアがフェラーラに襲い掛かることはこの時点ではないようだ。何しろ、前線の方向を決定するのに、本国の元首(ドージェ)まではるばるご意見伺いをしに行かねばならない。武器や人は十分に用意していたが、海の戦いとは勝手が違ったのだろう。本戦地以外を急襲するほどの余裕はなかったに違いない。

 そして、フェラーラとマントヴァは当主と当主夫人(アルフォンソとイザベッラ・デステ)がきょうだいで強い協力関係にあるため、お互いに情報をやりとりしている。


 ルクレツィア・ボルジアは再び大きくなりはじめたお腹を抱えながら、夫と領民の無事を祈り過ごしている。前回の妊娠時に体調がよくなかったので、安静にしながらも中庭を散策するなどの軽い運動は欠かさない。それにはソッラも付き添っていた。
 ルクレツィアの息子エルコレは1歳になったが、まだソッラが乳をやっている。ソッラの息子ニコラスにやっているのを見ると、「自分に与えられないのは不平等だ」と言わんばかりに不機嫌になるのでいたし方ないことだった。
 乳母がよい話し相手を兼ねているせいだろうか。ルクレツィアも戦時というストレスを強く感じずにいられる。かつての女傑カテリーナ・スフォルツァは戦いの最中で子どもを捕えられたりしていたのだ。そんなことが自分に起こったら……と思うと気が気ではない。

「大丈夫ですよ。アルフォンソ様は最高の騎士ですからね。フェラーラには一切手出しをさせないでしょう」とソッラが元気よく言う。
「ソッラ、騎士なんだけど、コンドッティエーレ(傭兵隊長)なのよ」とルクレツィアが笑う。
「コンドッティエーレ、領主さまが担っていることの多いお役目ですね。よくよく考えてみたことがなかったですけれど」とうなずきながら、ソッラが寝付いたエルコレを寝台にそっと移す。

「そうね、傭兵隊長というのはイタリア半島では栄誉ある称号なのよ」

「あ、アルフォンソ様とジョン・ホークウッドの話をしたことがあります」とソッラが思い出したように言う。ルクレツィアは目を丸くする。
「ジョン・ホークウッド? 知らないわ。まぁ、妬けること」とルクレツィアがくすくす笑う。ソッラは慌てて否定する。
「いえ、ルクレツィア様、違うんです。いつかミケーレがその話をしていたと言ったら、聞いてくださっただけで……お疑いになられるようなことはこれっぽっちもないですからね」

 ルクレツィアは眠っているエルコレの額を撫でながら笑う。
「分かっているわ。あなたってかわいいわね。それにしても、あなたは乳母ではなくフェラーラの軍事学の教授になったほうがいいかもしれないわ。傭兵隊長は勧めないけれど」

 ソッラは苦笑いをする。ルクレツィアが夫を案じているのが分かっているからだ。
「それにしても、今度の戦争は長くなるのでしょうか。アルフォンソ様とフェラーラ市民がみな無事でお戻りになられることを祈るばかりです」とソッラがしんみりして言う。

「そうね……女には祈ることしかできないものね」とルクレツィアもうなずく。


 ルクレツィアが口にした「コンドッティエーレ」、すなわちイタリア半島における傭兵隊長は特別な称号であった。本来は「契約するもの」という意味である。

 大小の国々で構成されるイタリア半島は中世からこの時期にいたるまで、近隣国あるいは他国の侵入を受けることが頻繁だった。したがって、その時々の必要に応じて傭兵団を雇い入れる必要があった。その際に有能な他国の軍人を傭兵隊長として受け入れることもあった。戦争はどこにでもあって、それが終われば兵士たちは元の生活に戻るか、あるいはまたどこかの戦争で別の地域に行く。その中で、戦争を渡り歩くのが傭兵という仕事である。

 イタリア半島においては、教皇の名のもと、イギリス人ながら、フィレンツェの傭兵隊長・最高司令官として反乱鎮圧の指揮を取ったジョン・ホークウッドが有名である。イタリア読みではジョヴァンニ・アクートと呼ばれていた。彼は1359年に彼はこの世を去っているが、フィレンツェの守護軍人(という言葉があるならば)のためにフィレンツェ政府はサンタ・マリア・デル・フィオーレ聖堂で壮大な国葬を執り行ったのである。その葬儀の様子を綴った詩人の言葉がある。

 勝利とともに生きし彼には
 死後も天なる栄光を与えたまえ

 フィレンツェでしばらくの間、同じ役目を担っていたミケーレ・ダ・コレーリア。彼がこの外国人の傭兵隊長について考えたことがあってもまったく不思議ではない。

 中世後期になると、イタリア半島各国の領主の命でイタリア人の有能な軍人がめきめきと頭角を現し、直属の傭兵隊長が多く現れた。アルベリコ・ダ・バルヴィアーノ、フランチェスコ・カルマニョーラ、カストルッチョ・カストラーニ、バルトロメオ・コッレオーニなどが有名だが、もっとこの頃の例を挙げたほうがいいだろう。
 のちにヴェネツィア海軍を任されるアンドリア・ドーリアについては先の章でも出した。そして、チェーザレに地団駄を踏まされたウルビーノ公グイドバルドを覚えておられるだろうか。彼の父フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロは15世紀に教皇領、ミラノ、ヴェネツィア、フィレンツェの傭兵隊長を務め、領国ウルビーノでも善政を敷いた将である。そしてたびたびこの話で名前を出しているカテリーナ・スフォルツァの祖父・フランチェスコ・スフォルツァは傭兵隊長からミラノ公に出世した大物だ。

 傭兵隊長は世襲されることも多かった。そこから領主となった場合の爵位も含めて。
 アルフォンソ・デステもそうである。
 そしてフェラーラのコンドッティエーレはこの後たいへん悩ましい事態に陥ることになるのだ。


 カンブレー同盟戦争について続けよう。ヴェネツィアとの戦いはもう少し続く。

 1509年5月のヴェネツィア敗走の処理が続いている。

 ヴェネツィアはさらなる大国の介入によって事態が収拾できなくなるのを恐れた。そこで神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世に申し入れをする。先に譲渡されたゴリツィア・トリエステ・フィウメの3都市を返還することで軍事的な介入を止めてほしいと。しかし、神聖ローマ皇帝は断ってきた。
 一方、ローマの教皇庁にもヴェネツィアの特使が派遣され、和睦についての話し合いに臨んだ。しかし教皇の態度はけんもほろろで、全面的な敗北宣言をするならば和睦に応じるという。その敗北宣言の中身は――罪を全世界に謝罪する、イタリア半島内に持つ領土を全て放棄する、神聖ローマ皇帝の領土も全て返還する、アドリア海の制海権を放棄する、ヴェネツィア国内の聖職者人事権を放棄する、ヴェネツィア国内の聖職者・修道院などに課していた税金を廃する――というものだった。
 新たに獲得したものだけではなく、かねてから手にしているものまで放棄しろということである。ヴェネツィアが承服するはずはない。これまで長く独立国として保ってきたプライドがそれを許すはずがない。和睦の場ではない、決裂の場となるのである。ヴェネツィアにしてみたら、従来からの敵、オスマン・トルコに助けを求めたほうがいいぐらいのものである。さすがにそれをしたら、後々相当な混乱を引き起こしたに違いない。それは賢明なことだった。

 そして戦いが再開される。ルクレツィアはもう臨月を迎えている。

 1509年7月、ヴェネツィアは反撃に出る。北イタリアの都市、パドヴァを同盟軍の手から奪回したのだ。この街はヴェネツィアから6レグア(約30km)しか離れていない。ここを拠点にして、最後の砦として守りきって戦うという並々ならぬ決意がヴェネツィア側にはあった。すでに司令官のひとりダルヴィアーノは敵の捕虜になっている。もうひとりのピティリアーノも文字通り「背水の陣」である。その意気にヴェネツィアの市民も愛国心を大いに高めた。
「傭兵ばかりに任せている場合じゃない。もう大軍がそこまで来ているんだ。俺たちも戦わねば」と貴族も平民も武器を手に取ってパドヴァに向かった。

 このパドヴァにおけるヴェネツィア防衛戦が第二の大きな戦いとなる。
 8月10日には、教皇軍、フェラーラ、マントヴァ、神聖ローマ帝国軍がパドヴァから1レグア(約5km)の位置まで軍勢をすすめ待機する。大砲を大量に用意したフランス軍を待っている。しかし、それを待つ一ヶ月弱の間に、一軍の将であるマントヴァ侯爵のフランチェスコ・ゴンザーガが敵の奇襲によってさらわれ、捕虜となってしまったのである。これは同盟軍にダメージを与えたが、戦いを忌避するものではない。
 9月3日、フランスも加わった同盟軍による一斉砲撃で戦いははじまった。その砲撃は10日あまり繰り返されたが、ヴェネツィア共和国軍ももう後がないのだから必死だ。パドヴァの城砦が崩れる気配は見られない。砲撃で崩された城壁を夜中の間に修繕していたのだ。ここを破壊され、突破されたら一巻の終わりだ。ヴェネツィアは固い一枚岩となっていた。9月20日にはスペイン軍も加わり、一斉に城壁をよじのぼって城を占拠しようとしたものの、激しく弓を射られてスペイン兵250人以上がわずかの時間で壊滅した。9月26日にも同様に城に突入しようとするが、こちらも同盟軍に大きな犠牲を出しただけであった。まったくはかどらない戦況に同盟軍の士気が下がってきている。しかも夜はヴェネツィア側が奇襲を行うので、兵らはおちおち寝てもいられなかった。

 ここでルイ12世とマクシミリアン1世の間に不協和音が響くことになる。
 マクシミリアンはルイ12世に攻勢を強めるために、騎兵隊の派兵を要請した。しかし、ルイ12世はそれをにべもなく拒否した。自分の兵を無駄にしたくない、なぜこちらが負担を重ねなければならないのだーーという本心がありありと見える。
 これが士気の低下しはじめた軍勢に致命的な影響を与えた。マクシミリアン自身の提案がまったく顧みられなかったことに腹を立ててパドヴァ包囲を解き、自身の軍をすべて引き上げてしまった。

 同盟決裂状態である。


 ヴェネツィアにとっては千載一遇のチャンスが来たのである。しかし、ここで反転攻勢に打って出ることはしない。さっそくローマに急使を走らせ、教皇ユリウス2世に講和交渉の再開を申し入れたのである。もちろん、当初教皇の要求した条件をすべて飲むという趣旨も合わせて伝えた。本当にすべての条件を飲むつもりはなかっただろう。それでも、ここでユリウス2世を立てておかねばヴェネツィアはつぶされる。

 ユリウス2世は揺れていた。イタリア半島の大国ヴェネツィアをつぶして他国の介入を強めるのがローマにとって得策なのかということを。それはもとから明らかな話ではあったのだが、つど生じる出来事に振り回されていて見えなかったのかもしれない。

 最終的に教皇はヴェネツィアの破門を解くことを決定する。講和に応じることにしたのである。

 そして、その方向転換がひとりのコンドッティエーレを窮地に陥れることになる。
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