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しおりを挟む夜、藍とスマホ越しにその日あった事や愚痴などを話すのは特別な事ではない
ちょっとイラついていたけど、何よりあの人のインスタのフォローに気付かれない事を優先して、いつも通りの対応を選んでいた
多分気付いていない
人数が増えた事に触れては来たけど、新しい環境で当たり前だと思ってくれたんだと思う
そのまま通話を続けていると
スマホがブルルッと震えて
『昼間はどうもありがとう
花香です。でもハナって呼ばれてます』
「!!!」
画面の通知画面に映し出された文字を見た表情は
藍と繋がった画面に映し出されている
「あーつし?何かあった?」
「いや!ちょ…虫がいた」
「は?驚き過ぎw」
「だよなwキルするから切るよ」
「えーこのままで良いじゃん。キルしなよ」
「あー…うるさくなりそうだから」
「良いよ。キルしてる敦が見たいw」
「いいから。じゃおやすみ」
何か言われる前にこちらから強引に終わらせる
ブルルッブルルッ…
藍が折り返しを速攻でかけて来た
誰からかは不明でも
通知された事に気付いているのかもしれない
「はぁ…」
これでは、スマホに触る事が出来ない
それでもその折り返しに応える気にはなれなかった
そのままお風呂に行ってしまおう
湯船に浸かりながら、ニヤける顔を湯船のお湯を掬っては何度も流した
返事が来た
あの人から返事が来た
コレはデカイ
インスタの相互フォローなんて、簡単な繋がりで
そこからやり取りする方がはるかに難易度が高いのに
早く見てやり取りを繋げ続けたい
だけどガツガツしてるのもみっともないから
この風呂時間はきっと大切で正解だ
ありがとう藍!流石俺の彼女
誰もいない敦の部屋では敦のスマホが震え続けている事も知らず、敦は最高の気分でバスタイムを満喫していた
「♪~♫~」
お風呂から上がって鼻歌交じりに
階段を1段抜かしで自室に戻った敦は
満面の笑みでスマホを手に取った
「!」
藍からの着信19回
それに加えて
『まだ?』
『遅いんだけど』
『どうなってんの?』
『ありえないし』
・
・
・
『寝る』
「はぁ…」
気分は有頂天から急降下
高低差激しくて耳キーンってなるわ…
文字だけでこんなに疲れさせる事って出来るんだな
『風呂入ってた』
『ごめん』
『おやすみ』
送ったのは、今度接触した時の面倒な被害を少しでも軽くしたいから
その後『別れよう』と送ろうか一瞬だけ過ぎったが、
敦にはそんな大きな問題を抱える前にやらなきゃいけない事があるのだ
ゆっくりその文字を確認しながら
「花香さん……ハナさんか…」
ハナと映し出されたカタカナが、韓流女優の雰囲気を持つ花香さんにピッタリだと思った
何と送ろうかお風呂で散々考えていた
でも実際送るとなると、やっぱりそれで良いのか迷いもある
普段の敦なら了解の意味で『り』
でも歳上のハナさんに幼いと思われたくない敦は
『了解です』
『おやすみなさい。ハナさん』
おやすみなさいはギャンブルでもあった
これを送ってしまったら本日のやり取りは終了だ
でも、夜ももう遅い時間にやり取りを繋げようとするのは相手への配慮に欠けている
ハナさんのタイミングだって、了解です。の後にするか相当迷った
でも悩んだ末、この並びに決めたのだ
後悔しない為に、言い訳のように自分で自分を納得させていると
ブルルッ
『おやすみなさい。敦くん』
「っ!っしゃぁーっ!!!」
「うるさいよ!敦!」
渾身のガッツポーズは声がデカ過ぎて母親から怒られたが、そんな事はどうでも良い
ギャンブルに勝った
それは逆転の3ポイントブザービーターを決めた時の気持ちとよく似ていた
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