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27話 淡い夏休み④ 添い寝

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怒った俺は、それからリビングで夏休みの課題を消化していたが、没頭している内にいつの間にか辺りは暗くなっていた。時間を確認すると、もう23時をまわってしまっていた。

さすがに寝ないとな、残りの課題は明日にするか。

そう思い、ノアディアのいる俺の部屋へと戻ろうと椅子から立ち上がる。二階へ続く階段をのぼるが、いささか足取りが重く感じる。





ノックをしてそっとドアを開けると、ノアディアが正座をして俺のことを待ちかまえていた。

・・・俺が戻るまでずっとその姿勢だったんじゃないだろうな?流石にそれはないか。

「ライ、先程はすみませんでした。私は床で寝ますね。・・・おやすみなさい。」

そう言って深々と頭を下げられる。そんな武士みたいな謝り方、初めてされたぞ。

というか床で寝るって言われても、俺の家には生憎あいにく余分な敷布団は無いし、別の場所で寝かせようとも、俺の部屋にソファーなどは置いていないので不可能だ。
だからといって床で寝るなんて絶対やめた方がいい。紳士というか、実直な一面に感心したが、それ以上に心配だ。

「俺、一回床で寝たことがあるけど次の日体が痛くなったから・・・」

ベッドから落ちてそのまま床で寝たことがあるが、次の日肩や腰が痛くて大変だったなと前世を思い起こす。だから・・・

「一緒にベッドで寝てやってもいい・・・。」

直視しないようにして伝えるが、心拍数が高まってしまう。いや、何動揺しているんだ、落ち着け。相手は男だぞ。だから何もおかしくないし、友達だったら普通の事だしな。

「!!!」

「俺、寝相が悪いからベッド広めにして貰っているんだけど、蹴ったりしたらごめん。」

そう言って先にベッドの中へ入る。

無言のままこちらに来ようとしないノアディアに手招きをするが、微動だにしない。・・・いや、来いって。
数分間直立不動にしていたが、観念したのか布団の中に入ってきた。

俺はノアディアに背を向けて寝ることにした。・・・自分で提案しておいて何だが、今日はちゃんと寝れるだろうか。





────あれから何時間が経過したのだろうか、俺はすっかり爆睡してしまったみたいだ。

まだ真夜中だというのに、隣にはノアディアの姿がなかった。こんな時間にどこ行ったんだよ・・・。

喉が乾いてしまったので、なにか飲もうとキッチンへと向かう。

部屋から出て一階に向かうと、リビングから明かりが漏れているのが見えた。音を立てないようにして覗く。

どうやら母さんとノアディアが何かを話し合っているみたいだった。・・・そこにいたのかよ。





「ノアディア様、約束は守って頂けていますか?」

「ええ、とどこおりなく。」

「そう、ですか・・・。ライちゃん・・・いえ、ライヴィル様をこれからも宜しくお願い致しますね。」

「勿論です。」

「そうそう、頼まれた事ですが、許可が下りましたのでいつでも大丈夫ですよ。」

「それはいいしらせですね。ご報告ありがとうございます。」

「ですが、あの子にきちんと────」

何の話しをしているんだ。二人で。

途中から話し声が小さくなってゆき、何も聞こえなくなる。
何の話をしているのか気にはなったが、急に眠くなってきたので目的も忘れて部屋に戻り、そのまま寝てしまった。










────硬めだがいい匂いのする抱き枕に、頭を擦り付ける。もう少し近寄りたいと無意識に思い、脚を絡める。

密着度が増していく。
・・・落ち着く。ずっとここで眠っていたい。

もっと傍に行こうとするとその抱き枕が逃げてしまったので、ぼやける目を少し開けて後を追う。

それ・・に辿り着く前に転んでしまったが、どうやらそれ・・に受け止められたみたいで・・・。

「んぅっ。」

「ぐっ・・・。おはようございます。ライ。」

誰だ・・・俺はまだ眠いんだが。二度寝するか。二度寝、いや、確か昨日ノアディアが俺の部屋でっ────

「おわぁっ!?」

ノアディアか!びっくりした。寝惚けててすっかり俺の部屋で一緒に寝たことを忘れていた。

「お、おはよう。」

もっと寝ていたかったのだが、驚かされたせいですっかり目が覚めてしまったじゃないか。

「今日は休日ですから、もう一度眠っていても問題ありませんよ。」

「いや、いい。」

というかお前の方こそ寝ろよ。目の下にくまができているぞ。ちゃんと眠れていないんじゃないのか。
俺は座っている状態のノアディアの体をベッドへと傾け、布団を掛ける。

「寝ろ。」

動かないように重しのようにノアディアの上に乗っかかる。

「いえ、ですが・・・。この体勢は・・・。」

体勢って、お前はただ寝っ転がっているだけだし別にそのまま眠れる体勢だろ。寝るまで退かんぞ。

「寝ろって。」

まぶたを閉じさせようと手をそっと顔に寄せる。

だが、ノアディアは顔に近付けた俺の手を取り、鼻に引き寄せて匂いを嗅いできやがった。

って、何で臭いを嗅ぐんだよ!?犬なのか!?

「な、何するんだよ!もういい、やっぱり起きろ!」
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