22 / 45
21話 騎士団団長の令息 ③
しおりを挟む
「・・・。」
「いやー、強かったな!全然歯が立たなかった!」
「・・・何で嬉しそうなの。」
「だってオレの親父より強い男がいるって知れたから嬉しくってな!」
「・・・。そう。」
グローリオは笑って彼の頭を撫でている。あれこれ言っても結局ソイツに甘いんだな。
幼馴染か、なんかいいな。最近教室で一人になる事は滅多に無くなったが、友人と呼び合える人は未だにいない。
何でも相談できて心の許せる相手がいるってのは羨ましいなと、今更ながらに思う。
「ノアディア、だっけな。手合わせありがとう!オレはまだまだ修行が足りないみたいだ。今回はなんか勝っちまったけど、実質負けたようなもんだ。お互い精進していこうな!」
脳筋のお手本みたいなヤツがそう言ってこちらの方へやって来た。
握手をしようと手を差し出していたが、俺を見た後慌てて手を引っ込める。
それにしてもコイツは基礎体温が高いのだろうか、喋るだけでこちらに熱気が伝わってくる。気のせいだろうか、段々と暑くなってきたので上着を脱ぐ。
「・・・。実質負けではない。負けたんだ。」
グローリオが含みのある言い方をする。
負けたって、そんな謙遜しなくていいんだぞ。
「俺達、というよりもノアディアが二人を蹴飛ばしたりするからルール上ではお前達の勝ちでいいんだぞ。」
いくら強くてもルールを守らないヤツが悪い。キッとノアディアを見据える。相変わらず柔らかい笑顔でこちらを見てくる。
何で睨まれたってのに笑ってるんだよ。
「・・・いや、最後蹴られた時、痛みはなかった。」
「あ、そういえばオレも痛くなかったぞ!」
どういうことだ?
「昏睡させたんですよ。足に魔力を込めて、蹴る直前に御二方の体内魔力を利用して、視床下部の働きを阻害し、一時的にオレキシン分泌量を低下させる事で眠らせたのです。なので実際、私の足は二人に到達していません。」
何言ってんだ・・・意味が分からない。説明されなかった方がありがたかったんだが。
「・・・。」
「なんかスゲー!」
二人共よく分かっていないようだ。初めて聞くもんな、そんな魔力の扱い方。原理を説明されたところで実現できるのは極わずかだろう。
全くタメにならない話を聞いている内に、どうやら女性陣側も勝敗が決した様だ。
勝者はティルミア様だったが、何やら暗い表情をしているように見える。気のせいだろうか。
「そうなるとやっぱりオレらの負けかー。悔しいな!ベイスと一緒に肉食べに行きたかったなー。」
そういえばそんな約束してたな二人共。
「・・・行ってもいい。審判の判定では優勝だったから。」
目を逸らして腕を組みながらそう言っている。お前、そんな寛大な性格してたか?仲良いな二人共。
「ホントか!!やったー!!」
「・・・。」
嬉しそうに無抵抗のグローリオに抱きつく脳筋。大きな胸板にグローリオの頬が密着し、潰れる。
少しは抵抗した方がいいんじゃないのか。頬が変形しているぞ。
「あ、そうだ!ベイスの親父から伝言なんだけどさ、魔法学園に指名手配中の凶悪犯が紛れ込んでいる可能性があるんだってよ。尋常じゃない魔力が探知されたとかで。だから気をつけろよなー。」
ゼリファーが警告してくる。
それってもしかして、俺やノアディアの事だろうか?
最近頻繁に魔法を作ったり使ったりしてたからな。魔術師団の本拠地にある魔力探知機が誤反応したのかもしれない。
自重すべきか・・・。
一方、話を聞いたノアディアは険しい顔をしていた。
「やはりそうですか。情報、感謝します。」
ん?反応的にどうやら犯人は別にいるらしいな。まあ、俺達なら能力も高いし大丈夫だろう。その上魔法学園の警備は徹底されているしな。異変があればすぐに分かるだろう。
「ライ、くれぐれも怪しいモノには近付かないようにして下さいね。」
俺は小学生かよ。子供扱いに怒りを覚えるが、一応危険な事には干渉しないように気を付けておこうか。
「ん。」
ゆっくりと相槌を打つ。
まあ、それはともかく・・・
「いつ降ろしてくれるんだ?」
試合が終了してからというものの、ずっと横抱きにされたままなのだ。俺から離すなと言ってしまったので、今の今まで降ろしてもらい損ねていた。
というか普通に試合が終わった時に離せよ。何で今もお姫様抱っこのままなんだよ。
さっきから胸がうるさく波打って仕方ない。早く降ろしてくれ。ゼリファーとグローリオは敢えてこの状況に触れてこないのが余計に恥ずかしくて身の置き所がない。苦笑いしてないでノアディアに何か言ってやれよ。
「さて、これから一緒に着替えに行きましょうか?」
人の話を聞け!聞き捨てるな!質問に答えろ!それと・・・
「俺は一人で着替えられるッ!!!」
「いやー、強かったな!全然歯が立たなかった!」
「・・・何で嬉しそうなの。」
「だってオレの親父より強い男がいるって知れたから嬉しくってな!」
「・・・。そう。」
グローリオは笑って彼の頭を撫でている。あれこれ言っても結局ソイツに甘いんだな。
幼馴染か、なんかいいな。最近教室で一人になる事は滅多に無くなったが、友人と呼び合える人は未だにいない。
何でも相談できて心の許せる相手がいるってのは羨ましいなと、今更ながらに思う。
「ノアディア、だっけな。手合わせありがとう!オレはまだまだ修行が足りないみたいだ。今回はなんか勝っちまったけど、実質負けたようなもんだ。お互い精進していこうな!」
脳筋のお手本みたいなヤツがそう言ってこちらの方へやって来た。
握手をしようと手を差し出していたが、俺を見た後慌てて手を引っ込める。
それにしてもコイツは基礎体温が高いのだろうか、喋るだけでこちらに熱気が伝わってくる。気のせいだろうか、段々と暑くなってきたので上着を脱ぐ。
「・・・。実質負けではない。負けたんだ。」
グローリオが含みのある言い方をする。
負けたって、そんな謙遜しなくていいんだぞ。
「俺達、というよりもノアディアが二人を蹴飛ばしたりするからルール上ではお前達の勝ちでいいんだぞ。」
いくら強くてもルールを守らないヤツが悪い。キッとノアディアを見据える。相変わらず柔らかい笑顔でこちらを見てくる。
何で睨まれたってのに笑ってるんだよ。
「・・・いや、最後蹴られた時、痛みはなかった。」
「あ、そういえばオレも痛くなかったぞ!」
どういうことだ?
「昏睡させたんですよ。足に魔力を込めて、蹴る直前に御二方の体内魔力を利用して、視床下部の働きを阻害し、一時的にオレキシン分泌量を低下させる事で眠らせたのです。なので実際、私の足は二人に到達していません。」
何言ってんだ・・・意味が分からない。説明されなかった方がありがたかったんだが。
「・・・。」
「なんかスゲー!」
二人共よく分かっていないようだ。初めて聞くもんな、そんな魔力の扱い方。原理を説明されたところで実現できるのは極わずかだろう。
全くタメにならない話を聞いている内に、どうやら女性陣側も勝敗が決した様だ。
勝者はティルミア様だったが、何やら暗い表情をしているように見える。気のせいだろうか。
「そうなるとやっぱりオレらの負けかー。悔しいな!ベイスと一緒に肉食べに行きたかったなー。」
そういえばそんな約束してたな二人共。
「・・・行ってもいい。審判の判定では優勝だったから。」
目を逸らして腕を組みながらそう言っている。お前、そんな寛大な性格してたか?仲良いな二人共。
「ホントか!!やったー!!」
「・・・。」
嬉しそうに無抵抗のグローリオに抱きつく脳筋。大きな胸板にグローリオの頬が密着し、潰れる。
少しは抵抗した方がいいんじゃないのか。頬が変形しているぞ。
「あ、そうだ!ベイスの親父から伝言なんだけどさ、魔法学園に指名手配中の凶悪犯が紛れ込んでいる可能性があるんだってよ。尋常じゃない魔力が探知されたとかで。だから気をつけろよなー。」
ゼリファーが警告してくる。
それってもしかして、俺やノアディアの事だろうか?
最近頻繁に魔法を作ったり使ったりしてたからな。魔術師団の本拠地にある魔力探知機が誤反応したのかもしれない。
自重すべきか・・・。
一方、話を聞いたノアディアは険しい顔をしていた。
「やはりそうですか。情報、感謝します。」
ん?反応的にどうやら犯人は別にいるらしいな。まあ、俺達なら能力も高いし大丈夫だろう。その上魔法学園の警備は徹底されているしな。異変があればすぐに分かるだろう。
「ライ、くれぐれも怪しいモノには近付かないようにして下さいね。」
俺は小学生かよ。子供扱いに怒りを覚えるが、一応危険な事には干渉しないように気を付けておこうか。
「ん。」
ゆっくりと相槌を打つ。
まあ、それはともかく・・・
「いつ降ろしてくれるんだ?」
試合が終了してからというものの、ずっと横抱きにされたままなのだ。俺から離すなと言ってしまったので、今の今まで降ろしてもらい損ねていた。
というか普通に試合が終わった時に離せよ。何で今もお姫様抱っこのままなんだよ。
さっきから胸がうるさく波打って仕方ない。早く降ろしてくれ。ゼリファーとグローリオは敢えてこの状況に触れてこないのが余計に恥ずかしくて身の置き所がない。苦笑いしてないでノアディアに何か言ってやれよ。
「さて、これから一緒に着替えに行きましょうか?」
人の話を聞け!聞き捨てるな!質問に答えろ!それと・・・
「俺は一人で着替えられるッ!!!」
0
お気に入りに追加
1,037
あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる