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第4章 思い出のマローブルー
§6§
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その日の夜遅く、いつかのように雨が降り出した。とても静かな霧雨は、忍び寄るようにハーブガーデンを濡らす。
雨に気づいた花穂は、カーテンを開けて窓の下を覗き込む。
「やっぱり……」
マオは、傘も差さずに玄関先で佇んでいた。力なく腕をだらりと下げて、遠くを見据えている。
今日、ラウレアに言われた言葉に衝撃を受けて、帰ってからまともにマオと顔を合わせることを避けた。マオとは夕食は一緒に食べたけれど、そのあとは疲れたからと早々に自室へ引き上げたのだ。
自分の現状ももちろんショックだったけれど、そのあとに聞いたマオの待ち人の話は、花穂にはひどく堪えた。
死んだ娘の帰りを待っている。
娘の、死。
親しい人との別れはどんなものでも悲しいに決まっているけれど、我が子の死というのは想像もつかない。どれほどの絶望が襲いくるのか。その喪失はきっと深く心を苛むだろう。
花穂は窓に顔を近づけてマオの様子を窺う。暗くてよく見えないけれど、肩がひどく濡れているようだ。それに秋も深まり、夜は冷え込む。
前のときは、モアに止められた。そっとしておいて差し上げてと言われて。彼女はもしかしたら本人から放っておいて欲しいと言われたことがあるのかもしれない。そしてモアの性格では、マオの言葉を尊重してしまうのだろう。
だけど、自分はモアとは違う。彼女のように思慮深くはないのだ。おせっかいだと思われたってかまうものか。
花穂はパジャマのままカーディガンを羽織り、部屋を出た。
マオは花穂に気づいているのかいないのか、振り向きもせずに眼前を凝視している。薄く唇を開いて、片時も目を離さず、道の向こうに視線を据えていた。まるで、一瞬でも目を離したら見逃してしまうという強迫観念に駆られているような。
そっと近づき、花穂は傘を差し掛けて顔を覗き込む。
「風邪、引きますよ」
いつもくしゃくしゃの髪は、濡れてくるくると巻いている。眼鏡には水滴がたくさんついて、表情は見えない。だけど唇は血の気が引いて、寒そうだった。
「困ります。マオさんに寝込まれたら。モアさんだってもういないのに」
声をかけてみても、マオは動かなかった。花穂は辛抱強く、隣で傘を差し続けた。自分の肩が濡れるのも厭わずに。
雨降る空には少し欠けた月がぼんやりと輪郭を滲ませている。雨粒は弱々しい月光とポーチの灯りを受けてさらさらと降り注いでいた。花穂は慎ましく光を放っては落ちる雫に見入っていた。
雨って、こんなに綺麗だったんだな……。
今までは嫌いだった。じめじめして冷たくて、服も靴も濡れるし髪はまとまらないし、傘は邪魔になる。
そういえば、ここにくる前は、ずっと雨に降られていたような気がする。
とても惨めで嫌な気持ちで雨に濡れながら歩いていた。ずいぶん、長い間そうしていたように思う。
どれくらい時間が経ったのだろう。
まだ雨は止まない。傘を持つ手が冷えて痺れて、持ち替えようとしたとき、不意にマオは口を開いた。
「……すみません。中に入りましょう、今度は花穂さんが風邪を引いてしまいます」
無理矢理に唇の端を引き上げて笑顔を作る。痛々しいほど下手なマオの作り笑いに、花穂はなんだか泣きたくなってしまう。
店内に入ってお茶を煎れようとすると『わたしがやります』と言ってマオが代わってくれた。店内の椅子に腰かけて待っていると、トレイにティーポットを載せてマオがキッチンから戻ってきた。
ガラス製のティーポットを満たしているのは、青い液体。マロウブルーというお茶だ。口にするのをためらうほどに鮮やかな青色をしている。薄紅葵という花を乾燥させたお茶だ。
添えてあったくし切りレモンを搾ると、途端に澄んだピンク色になる。初めて見たときには声を上げて驚いて、モアに笑われたのだった。
記憶の中のモアの笑顔に和み、花穂は一口お茶を飲んだ。インパクトの強い色味のわりには癖のない優しい香りだ。
マオも同様にレモンを搾り入れてその変化を楽しんだあと、カップに口をつけた。
「本当に不思議ですよねぇ、このお茶」
「アントシアニンがレモン果汁に反応してアルカリ性から酸性に変わるんですよ」
「ええっと、つまりは、科学の魔法……ですね?」
花穂の無邪気な問いに、マオは微笑みの形のまま顔を強ばらせる。視線を彷徨わせたあと、とても、とても悲しそうに、だけど愛おしそうに声を絞り出した。
「……昔、このお茶を出したら魔法だ魔法だと言って喜んでくれた子がいました」
「娘さん……ですか?」
声にしたあと、後悔した。この言葉を出すべきではなかったか。
不安に思って顔色を窺うと、マオは長いため息をついて苦笑した。
「ラウレアさんから、聞いたんですね」
「……すみません」
「わたしのほうこそ、すみません。知られたくないとか、そういうのではなかったのですが、言いそびれてしまって」
機会を逸していたのだと、マオは詫びる。それから、唇を開いたまましばらく声を発しなかった。言葉にすることをためらい、恐れるように。
「あの、マオさん。無理に話してくれなくても」
気遣いで言ったつもりの声は震えていた。本当は怖かったのだ。その箱を開けるのが。
花穂の怯えを察しているのかどうかはわからないが、マオは少し迷ったあとに静かに首を横に振る。
それから、視線を宙に彷徨わせながら言った。
「娘は、十四歳のときに自ら命を絶ちました」
聞いた途端に、ずんと肩が重くなるような錯覚がした。
十四歳。たった十四歳で。
どうして、とは問えなかった。問うたところで、それを聞いたところで、マオを救うことはできない。
何か、言える言葉はないのだろうか。何か、ほんの少しだけでも。
花穂の逡巡を見て、マオは笑えないまま唇の端を引き攣らせながら持ち上げる。
「とても冷たい雨の降る夜でした」
言葉と共に雫が落ちる。屋根などものともせずに降る雨は、しとしとと二人を濡らす。
「わたしは娘の死を受け入れられませんでした。嘘だ、嘘だ、何かの間違いだと叫び続けました。彼女の肉体が焼かれ白い骨になったのを見てさえ、これは我が娘の遺骨ではないと自分に言い聞かせたんです」
どこかの知らない少女のものなのだと、己を偽った。
そしてそれはとても罪深い。
凍るような声音でマオは空気を震わせる。
過去を語るマオの表情は恐ろしいほど静かだった。
薄氷の上を歩く慎重さで、感情を隠している。ほんの少しでもひびが入れば、取り返しのつかないくらい悲しみが溢れ出してしまうから。
だから感情の呼吸を塞いで息をできなくして、そうして、話している。うっすらと笑みを浮かべた顔のまま。
怖いと思った。彼の悲しみが溢れ出てしまったら、手を差し伸べることもできずに一緒に溺れてしまいそうで。
「すべて、否定したんです。娘が命を絶った事実はもちろんのこと、娘がもういないこと、彼女が悩んでいた、苦しんでいた事実さえ……そんなはずはないと、拒絶した」
残酷なことをしているのだと、マオは独りごちる。
死を選ぶほどの苦しみを、なかったことにしようとした。
今も、彼は娘の死を受け入れられないのだろう。だから雨の夜には玄関先に立って、娘の帰りを待ってしまう。
そうせずにはいられないのだ。
「娘を探しました。学校、友だちの家、好きだったケーキショップや、お気に入りの洋服店、小さい頃によく連れて行った公園や、誕生日祝いをしたレストラン、思いつく限り、色んなところを訪ね歩きました」
マオは淡々といくつもの思い出の地を挙げる。そしてどこにも娘はいなかったこと。それでも探し続けるのをやめられなかったと話した。
「そうして彷徨ううちに、気づいたら……ここにいたんです」
雨に気づいた花穂は、カーテンを開けて窓の下を覗き込む。
「やっぱり……」
マオは、傘も差さずに玄関先で佇んでいた。力なく腕をだらりと下げて、遠くを見据えている。
今日、ラウレアに言われた言葉に衝撃を受けて、帰ってからまともにマオと顔を合わせることを避けた。マオとは夕食は一緒に食べたけれど、そのあとは疲れたからと早々に自室へ引き上げたのだ。
自分の現状ももちろんショックだったけれど、そのあとに聞いたマオの待ち人の話は、花穂にはひどく堪えた。
死んだ娘の帰りを待っている。
娘の、死。
親しい人との別れはどんなものでも悲しいに決まっているけれど、我が子の死というのは想像もつかない。どれほどの絶望が襲いくるのか。その喪失はきっと深く心を苛むだろう。
花穂は窓に顔を近づけてマオの様子を窺う。暗くてよく見えないけれど、肩がひどく濡れているようだ。それに秋も深まり、夜は冷え込む。
前のときは、モアに止められた。そっとしておいて差し上げてと言われて。彼女はもしかしたら本人から放っておいて欲しいと言われたことがあるのかもしれない。そしてモアの性格では、マオの言葉を尊重してしまうのだろう。
だけど、自分はモアとは違う。彼女のように思慮深くはないのだ。おせっかいだと思われたってかまうものか。
花穂はパジャマのままカーディガンを羽織り、部屋を出た。
マオは花穂に気づいているのかいないのか、振り向きもせずに眼前を凝視している。薄く唇を開いて、片時も目を離さず、道の向こうに視線を据えていた。まるで、一瞬でも目を離したら見逃してしまうという強迫観念に駆られているような。
そっと近づき、花穂は傘を差し掛けて顔を覗き込む。
「風邪、引きますよ」
いつもくしゃくしゃの髪は、濡れてくるくると巻いている。眼鏡には水滴がたくさんついて、表情は見えない。だけど唇は血の気が引いて、寒そうだった。
「困ります。マオさんに寝込まれたら。モアさんだってもういないのに」
声をかけてみても、マオは動かなかった。花穂は辛抱強く、隣で傘を差し続けた。自分の肩が濡れるのも厭わずに。
雨降る空には少し欠けた月がぼんやりと輪郭を滲ませている。雨粒は弱々しい月光とポーチの灯りを受けてさらさらと降り注いでいた。花穂は慎ましく光を放っては落ちる雫に見入っていた。
雨って、こんなに綺麗だったんだな……。
今までは嫌いだった。じめじめして冷たくて、服も靴も濡れるし髪はまとまらないし、傘は邪魔になる。
そういえば、ここにくる前は、ずっと雨に降られていたような気がする。
とても惨めで嫌な気持ちで雨に濡れながら歩いていた。ずいぶん、長い間そうしていたように思う。
どれくらい時間が経ったのだろう。
まだ雨は止まない。傘を持つ手が冷えて痺れて、持ち替えようとしたとき、不意にマオは口を開いた。
「……すみません。中に入りましょう、今度は花穂さんが風邪を引いてしまいます」
無理矢理に唇の端を引き上げて笑顔を作る。痛々しいほど下手なマオの作り笑いに、花穂はなんだか泣きたくなってしまう。
店内に入ってお茶を煎れようとすると『わたしがやります』と言ってマオが代わってくれた。店内の椅子に腰かけて待っていると、トレイにティーポットを載せてマオがキッチンから戻ってきた。
ガラス製のティーポットを満たしているのは、青い液体。マロウブルーというお茶だ。口にするのをためらうほどに鮮やかな青色をしている。薄紅葵という花を乾燥させたお茶だ。
添えてあったくし切りレモンを搾ると、途端に澄んだピンク色になる。初めて見たときには声を上げて驚いて、モアに笑われたのだった。
記憶の中のモアの笑顔に和み、花穂は一口お茶を飲んだ。インパクトの強い色味のわりには癖のない優しい香りだ。
マオも同様にレモンを搾り入れてその変化を楽しんだあと、カップに口をつけた。
「本当に不思議ですよねぇ、このお茶」
「アントシアニンがレモン果汁に反応してアルカリ性から酸性に変わるんですよ」
「ええっと、つまりは、科学の魔法……ですね?」
花穂の無邪気な問いに、マオは微笑みの形のまま顔を強ばらせる。視線を彷徨わせたあと、とても、とても悲しそうに、だけど愛おしそうに声を絞り出した。
「……昔、このお茶を出したら魔法だ魔法だと言って喜んでくれた子がいました」
「娘さん……ですか?」
声にしたあと、後悔した。この言葉を出すべきではなかったか。
不安に思って顔色を窺うと、マオは長いため息をついて苦笑した。
「ラウレアさんから、聞いたんですね」
「……すみません」
「わたしのほうこそ、すみません。知られたくないとか、そういうのではなかったのですが、言いそびれてしまって」
機会を逸していたのだと、マオは詫びる。それから、唇を開いたまましばらく声を発しなかった。言葉にすることをためらい、恐れるように。
「あの、マオさん。無理に話してくれなくても」
気遣いで言ったつもりの声は震えていた。本当は怖かったのだ。その箱を開けるのが。
花穂の怯えを察しているのかどうかはわからないが、マオは少し迷ったあとに静かに首を横に振る。
それから、視線を宙に彷徨わせながら言った。
「娘は、十四歳のときに自ら命を絶ちました」
聞いた途端に、ずんと肩が重くなるような錯覚がした。
十四歳。たった十四歳で。
どうして、とは問えなかった。問うたところで、それを聞いたところで、マオを救うことはできない。
何か、言える言葉はないのだろうか。何か、ほんの少しだけでも。
花穂の逡巡を見て、マオは笑えないまま唇の端を引き攣らせながら持ち上げる。
「とても冷たい雨の降る夜でした」
言葉と共に雫が落ちる。屋根などものともせずに降る雨は、しとしとと二人を濡らす。
「わたしは娘の死を受け入れられませんでした。嘘だ、嘘だ、何かの間違いだと叫び続けました。彼女の肉体が焼かれ白い骨になったのを見てさえ、これは我が娘の遺骨ではないと自分に言い聞かせたんです」
どこかの知らない少女のものなのだと、己を偽った。
そしてそれはとても罪深い。
凍るような声音でマオは空気を震わせる。
過去を語るマオの表情は恐ろしいほど静かだった。
薄氷の上を歩く慎重さで、感情を隠している。ほんの少しでもひびが入れば、取り返しのつかないくらい悲しみが溢れ出してしまうから。
だから感情の呼吸を塞いで息をできなくして、そうして、話している。うっすらと笑みを浮かべた顔のまま。
怖いと思った。彼の悲しみが溢れ出てしまったら、手を差し伸べることもできずに一緒に溺れてしまいそうで。
「すべて、否定したんです。娘が命を絶った事実はもちろんのこと、娘がもういないこと、彼女が悩んでいた、苦しんでいた事実さえ……そんなはずはないと、拒絶した」
残酷なことをしているのだと、マオは独りごちる。
死を選ぶほどの苦しみを、なかったことにしようとした。
今も、彼は娘の死を受け入れられないのだろう。だから雨の夜には玄関先に立って、娘の帰りを待ってしまう。
そうせずにはいられないのだ。
「娘を探しました。学校、友だちの家、好きだったケーキショップや、お気に入りの洋服店、小さい頃によく連れて行った公園や、誕生日祝いをしたレストラン、思いつく限り、色んなところを訪ね歩きました」
マオは淡々といくつもの思い出の地を挙げる。そしてどこにも娘はいなかったこと。それでも探し続けるのをやめられなかったと話した。
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