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第1章~我、目覚める~
2話「竜の巫女姫とドラゴン事情②」
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我が名はウロボロス。かつて竜王と呼ばれ、ニンゲンだけではなく全ての種族から恐れおののかれていた存在である。
そんな我が・・・我がァ・・・・!!!
「獲物一匹取れないとはどういう事だぁぁぁぁぁ!!」
安全な洞窟の中で我はたった一匹。誰に気にされるわけでもなく、奇声をあげるように叫ぶのであった。
元の姿を取り戻すためにはまず、膨大な量のエネルギーを摂取する必要がある。エネルギーといっても食べた物をそのまま使うわけではない。
ドラゴンに限らず、生物全ては食べた物質を体の維持に使う物とは別に「魔素」というエネルギーに変換する事が出来る。
これは魔法を使用する際に使われる魔力と呼ばれる成分の源だ。
ニンゲンが魔法として使うことはもちろん、我らモンスターの場合は魔法だけではなく体内に保有することで肉体の強化を可能とする。
もちろん生物が溜め込んで置ける魔力には限りがあるが・・・。
つまりあればあるほど強くなれる。我の場合、自爆する前の成体の時ですら限界量に達していなかった。
うまいこと勇者に駆除されずに済めば、この小さな体でも全盛期以上の能力を得る事も不可能ではないのだ。
どれだけのエネルギーが必要になるか全くわからないが、とにかく喰わなければ我は強くなれなぬ。
だと言うのに・・・!
「全然捕まらぬー!!」
ベヒモスウォールに生息する野生動物やモンスターを喰らってやろうと外に出たのだが、あの畜生ども我の姿を見るだけで逃げ去っていくのだ。
潜在的に潜む我の力を本能で察しているというのか!変なところで賢くなりよってぇ!
我より何十倍も巨大な象型モンスターが大慌てで逃走するのは見てて気持ちが良いが、今は我に挑んで欲しいのだ!我の食料になって欲しいのだ!!
「ちくしょう!このままでは我が飢え死にしてしまうではないか!」
エネルギーを貯めるどころか、今あるわずかな生命力でさえギリギリ。
自殺の次は餓死だと?今までは戦って命を落としてきたというのに、こんなダサい死に方は絶対に嫌だぞ!?
「考えろ・・・考えるのだ・・・!」
我は帰りになんとか手に入れた謎の果物を齧りながら今後について考える。むむ、酸っぱい。
「何としても餌を確保しなければならないが、どうするべきか・・・」
一般的な狩りで野生動物を仕留めるのは不可能だ。赤子同然のこの短い手足ではとてもじゃないが逃げる動物に追いつけない。
なら遠距離から火炎放射で焼き殺すのはどうだろうか?
いや、消費するエネルギーが多い。動物一匹仕留めるのにとてもじゃないが割りに合わないだろう。
罠を仕掛ける?そんなもの作り方がさっぱりだわ!!
「ぐぬぬ~、なにか良いアイディアは・・・」
逃げることもない酸っぱい果実を齧る。齧る齧る齧る。
もう逃げもしない果実が神々しく見えてきたわ。そもそも植物が逃げるなんて事がありえないのだが。
最悪果実だけを喰らっていく事もできるが、成体を目指すなら不足すぎる。全く足りないのだ。
「餌は取れぬ。なら逃げずに挑んでくるニンゲンの村を、逆に襲撃するのも手・・・か?」
たしか近場にレッテルという村があったハズ・・・そこを襲撃してニンゲン(エルフ)も喰らえば十分なエネルギーを確保できるかもしれん。
が、そんな気分にはなれぬな。ただでさえ我のありもしない悪名が広まっているというのに、それ本当にやってしまったら・・・なんだか負けた気がする。
そう!我は被害者!被害者なのだ。決して加害者ではない!
「大体、我は悪いとこ何にもしてないのに・・・どうしてこんな目に合わねばならぬのだ!」
今までのニンゲンからの仕打ちに段々イライラしてきた。果実を齧るスピードも上が・・・酸っぱい!
くそぅ!我の鱗やら爪やら持っていくのならせめて食い物くらい貢げって話である!我がドラゴンだからってちょーしにのりやがってぇえぇえ!
そうして、我はどうやって狩りをするかという当初の目的も忘れ、ただただ果物を貪り喰って愚痴をこぼすのであった。
そしてそのまま惰眠。今日は山を歩き回って疲れたわい。
☆☆☆☆☆
「竜王ご復活・・・ねぇ」
レッテル村の狩人、サエラは小型の弓を背負いながら周辺の森を散策していた。
いつもは考え事をする事もなく、自然の空気を堪能し、有意義な時間を過ごしていたハズだった。
しかし今朝、竜王ウロボロスが復活したなどと言っていた自分の姉の様子をサエラは忘れられずにいた。
(ありえるのかな・・・私はお伽話かと思ってたけど・・・)
サエラとシオンはレッテルで産まれたエルフの中でもかなり若い部類に入る。
大抵長寿のエルフは見た目に対して、その掛ける10倍以上の年齢ということは珍しくない。しかしこの姉妹、シオンが16歳サエラが15歳という、外見と実年齢が釣り合った今時珍しい若いエルフであった。
そんな2人であったために、レッテル村に伝わる竜王ウロボロスの伝説は、どうも現実味を感じることができなかった。
曰く、不老不死の存在である。曰く、その爪や鱗からは強力な装備になる。曰く、その存在は勇者でなければ倒すことはできない、など。
語り継がれるウロボロスの特徴が胡散臭くて仕方がなかった。
(とゆうか、不老不死なのになんで死ぬの?)
最大の疑問はそこだった。
サエラ個人は、ウロボロスは不老不死の化け物ではなく、単純に希少性の高い生物だと思っている。
100年に一度というのも、結局はそれくらいの頻度でしか見つからず、あくまで世代交代。復活しなくなったのも、単に数が少ないウロボロスを狩り尽くしただけだろうと考えていた。
それもあくまで「いたとして」の想像であり、サエラ自身はウロボロスの存在を信じてすらいなかったのだが。
(姉さんは夢がないっていうかもしれないけど・・・)
事実、サエラの仮説は半分あっていた。ウロボロス不老不死の正体は、高い再生能力と死んだ自分の魂を蘇らせる転生能力であるのだから。
つまりそれほどまでに今の若い世代には、ウロボロスは未確認生物扱いされているのだ。
新しい竜の巫女姫であるシオンでさえ、巫女姫の「情報を売買する」という本来の仕事を把握していなかったりする。
(まぁ変な夢でも見たんでしょ・・・きっと)
イエティなる謎の生物を探しに山に登るような姉だ。ウロボロスブームもすぐに収まるだろうと、サエラはそう納得した。
するとサエラは茂みの中で微かに動く動物の影を見つける。大きさや形状からして野うさぎだろう。
エルフは生来少食だ。このうさぎ一羽あれば、晩御飯の具材どころか、明日の朝食までもつ。
(あーでも、姉さんがいるから無理か)
姉はエルフとは思えないほど大食感である。
(一体どこに栄養が集中してるか知りたくないけど)
気を取り直し、夕食の一品になるであろう獲物を見つけたサエラは、気づかれないよう腰を低く屈め、背負っている小型の弓を取り出して狙いを定めた。
このエルフ製の弓は、密林の中でも取り扱いを簡単にするために通常の弓よりも軽量化が施されている。
当然その威力は人間の弓には劣るし、壊れやすくもある。しかし、エルフにはエルフ独自の魔法がある。
『エンチャント・ウィンド』
自分の耳にすら届かない、霞のように微かな詠唱をサエラが唱える。
短く唱えられたサエラの魔法は、装填された矢に巻き付くように現れた。一時的に、矢そのものに風の力が宿ったのだ。
ギリギリと、動物の腱で作られた弓の弦を引き延ばし、矢を飛ばす標的へと照準を合わせる。
シュッ
伸ばした弦を手放し、風を切る音を立てて魔法で強化された矢が発射された。
「ッ!?」
獲物が気づいたときにはもう手遅れである。なぜなら既に放たれた矢がその首を貫き、次の瞬間には獲物の視界は暗く暗転したのだから。
魔法で強化された矢の威力は絶大である。サエラが行ったエンチャントは、発射した時の弦の反動を減少させる効果と、放たれた矢の空気抵抗を消す効果だ。
この技術によって、サエラの放つ矢は一瞬で獲物を射抜くことが可能となる。
誰にでもできることではない。よく手入れされ親和性が増した自分の武器に、訓練された魔法や身体能力によって成せる技なのだ。
「・・・よし」
獲物を仕留めたことを遠目で確認したサエラは、身軽な動きで獲物の元へ駆け寄る。
仕留めた獲物はやはりうさぎであった。しかし、その頭部に動物らしからぬ奇妙な特徴があったことを除いて。
「一角兎?・・・どうして魔物がこんなところに?」
サエラは小首を傾げ、死骸をまじまじと見つめる。
その兎の額には、鋭い角が一本生えていたのだ。一般的に魔物と呼ばれる生命体の一種、ホーンラビットだということは間違いない。
通常、このベヒモスフォールに生息する魔物はレッテル村の周辺の森林に姿を現わすことはない。普段は山の頂上かそのあたりの洞窟などで動物と干渉せずに暮らしているモノが大半だ。
戦闘能力のない村人がその姿を目にすることは滅多にない。狩人のサエラでさえ、今日産まれて初めてその姿を見ることができたのだ。
そんな魔物がどうしてここに?
「ギャーッ!ギャーッ!」
サエラがそう疑問を感じたことを皮切りに、森がざわめき始めた。
動物たちが怯え、気配を消し、鳥たちが羽ばたき森から離れようとする。
動物たちが・・・否、それ以上にまるで森そのものが逃げ出そうとているようにも感じた。
そしてサエラは疑問の答えを見つける。このホーンラビットは、何かから逃げてきたのでは?
魔物が縄張りを手放してでも逃げなければならない、「何か」が出現したのでは?
それは?一体どんな捕食者だというのか。
竜王ウロボロス
「・・・まさか」
そう呟くと、サエラはホーンラビットの死骸を掴み、村へと急いで走り去って行った。この不気味な現象から遠ざかりたい一心で。
そんな我が・・・我がァ・・・・!!!
「獲物一匹取れないとはどういう事だぁぁぁぁぁ!!」
安全な洞窟の中で我はたった一匹。誰に気にされるわけでもなく、奇声をあげるように叫ぶのであった。
元の姿を取り戻すためにはまず、膨大な量のエネルギーを摂取する必要がある。エネルギーといっても食べた物をそのまま使うわけではない。
ドラゴンに限らず、生物全ては食べた物質を体の維持に使う物とは別に「魔素」というエネルギーに変換する事が出来る。
これは魔法を使用する際に使われる魔力と呼ばれる成分の源だ。
ニンゲンが魔法として使うことはもちろん、我らモンスターの場合は魔法だけではなく体内に保有することで肉体の強化を可能とする。
もちろん生物が溜め込んで置ける魔力には限りがあるが・・・。
つまりあればあるほど強くなれる。我の場合、自爆する前の成体の時ですら限界量に達していなかった。
うまいこと勇者に駆除されずに済めば、この小さな体でも全盛期以上の能力を得る事も不可能ではないのだ。
どれだけのエネルギーが必要になるか全くわからないが、とにかく喰わなければ我は強くなれなぬ。
だと言うのに・・・!
「全然捕まらぬー!!」
ベヒモスウォールに生息する野生動物やモンスターを喰らってやろうと外に出たのだが、あの畜生ども我の姿を見るだけで逃げ去っていくのだ。
潜在的に潜む我の力を本能で察しているというのか!変なところで賢くなりよってぇ!
我より何十倍も巨大な象型モンスターが大慌てで逃走するのは見てて気持ちが良いが、今は我に挑んで欲しいのだ!我の食料になって欲しいのだ!!
「ちくしょう!このままでは我が飢え死にしてしまうではないか!」
エネルギーを貯めるどころか、今あるわずかな生命力でさえギリギリ。
自殺の次は餓死だと?今までは戦って命を落としてきたというのに、こんなダサい死に方は絶対に嫌だぞ!?
「考えろ・・・考えるのだ・・・!」
我は帰りになんとか手に入れた謎の果物を齧りながら今後について考える。むむ、酸っぱい。
「何としても餌を確保しなければならないが、どうするべきか・・・」
一般的な狩りで野生動物を仕留めるのは不可能だ。赤子同然のこの短い手足ではとてもじゃないが逃げる動物に追いつけない。
なら遠距離から火炎放射で焼き殺すのはどうだろうか?
いや、消費するエネルギーが多い。動物一匹仕留めるのにとてもじゃないが割りに合わないだろう。
罠を仕掛ける?そんなもの作り方がさっぱりだわ!!
「ぐぬぬ~、なにか良いアイディアは・・・」
逃げることもない酸っぱい果実を齧る。齧る齧る齧る。
もう逃げもしない果実が神々しく見えてきたわ。そもそも植物が逃げるなんて事がありえないのだが。
最悪果実だけを喰らっていく事もできるが、成体を目指すなら不足すぎる。全く足りないのだ。
「餌は取れぬ。なら逃げずに挑んでくるニンゲンの村を、逆に襲撃するのも手・・・か?」
たしか近場にレッテルという村があったハズ・・・そこを襲撃してニンゲン(エルフ)も喰らえば十分なエネルギーを確保できるかもしれん。
が、そんな気分にはなれぬな。ただでさえ我のありもしない悪名が広まっているというのに、それ本当にやってしまったら・・・なんだか負けた気がする。
そう!我は被害者!被害者なのだ。決して加害者ではない!
「大体、我は悪いとこ何にもしてないのに・・・どうしてこんな目に合わねばならぬのだ!」
今までのニンゲンからの仕打ちに段々イライラしてきた。果実を齧るスピードも上が・・・酸っぱい!
くそぅ!我の鱗やら爪やら持っていくのならせめて食い物くらい貢げって話である!我がドラゴンだからってちょーしにのりやがってぇえぇえ!
そうして、我はどうやって狩りをするかという当初の目的も忘れ、ただただ果物を貪り喰って愚痴をこぼすのであった。
そしてそのまま惰眠。今日は山を歩き回って疲れたわい。
☆☆☆☆☆
「竜王ご復活・・・ねぇ」
レッテル村の狩人、サエラは小型の弓を背負いながら周辺の森を散策していた。
いつもは考え事をする事もなく、自然の空気を堪能し、有意義な時間を過ごしていたハズだった。
しかし今朝、竜王ウロボロスが復活したなどと言っていた自分の姉の様子をサエラは忘れられずにいた。
(ありえるのかな・・・私はお伽話かと思ってたけど・・・)
サエラとシオンはレッテルで産まれたエルフの中でもかなり若い部類に入る。
大抵長寿のエルフは見た目に対して、その掛ける10倍以上の年齢ということは珍しくない。しかしこの姉妹、シオンが16歳サエラが15歳という、外見と実年齢が釣り合った今時珍しい若いエルフであった。
そんな2人であったために、レッテル村に伝わる竜王ウロボロスの伝説は、どうも現実味を感じることができなかった。
曰く、不老不死の存在である。曰く、その爪や鱗からは強力な装備になる。曰く、その存在は勇者でなければ倒すことはできない、など。
語り継がれるウロボロスの特徴が胡散臭くて仕方がなかった。
(とゆうか、不老不死なのになんで死ぬの?)
最大の疑問はそこだった。
サエラ個人は、ウロボロスは不老不死の化け物ではなく、単純に希少性の高い生物だと思っている。
100年に一度というのも、結局はそれくらいの頻度でしか見つからず、あくまで世代交代。復活しなくなったのも、単に数が少ないウロボロスを狩り尽くしただけだろうと考えていた。
それもあくまで「いたとして」の想像であり、サエラ自身はウロボロスの存在を信じてすらいなかったのだが。
(姉さんは夢がないっていうかもしれないけど・・・)
事実、サエラの仮説は半分あっていた。ウロボロス不老不死の正体は、高い再生能力と死んだ自分の魂を蘇らせる転生能力であるのだから。
つまりそれほどまでに今の若い世代には、ウロボロスは未確認生物扱いされているのだ。
新しい竜の巫女姫であるシオンでさえ、巫女姫の「情報を売買する」という本来の仕事を把握していなかったりする。
(まぁ変な夢でも見たんでしょ・・・きっと)
イエティなる謎の生物を探しに山に登るような姉だ。ウロボロスブームもすぐに収まるだろうと、サエラはそう納得した。
するとサエラは茂みの中で微かに動く動物の影を見つける。大きさや形状からして野うさぎだろう。
エルフは生来少食だ。このうさぎ一羽あれば、晩御飯の具材どころか、明日の朝食までもつ。
(あーでも、姉さんがいるから無理か)
姉はエルフとは思えないほど大食感である。
(一体どこに栄養が集中してるか知りたくないけど)
気を取り直し、夕食の一品になるであろう獲物を見つけたサエラは、気づかれないよう腰を低く屈め、背負っている小型の弓を取り出して狙いを定めた。
このエルフ製の弓は、密林の中でも取り扱いを簡単にするために通常の弓よりも軽量化が施されている。
当然その威力は人間の弓には劣るし、壊れやすくもある。しかし、エルフにはエルフ独自の魔法がある。
『エンチャント・ウィンド』
自分の耳にすら届かない、霞のように微かな詠唱をサエラが唱える。
短く唱えられたサエラの魔法は、装填された矢に巻き付くように現れた。一時的に、矢そのものに風の力が宿ったのだ。
ギリギリと、動物の腱で作られた弓の弦を引き延ばし、矢を飛ばす標的へと照準を合わせる。
シュッ
伸ばした弦を手放し、風を切る音を立てて魔法で強化された矢が発射された。
「ッ!?」
獲物が気づいたときにはもう手遅れである。なぜなら既に放たれた矢がその首を貫き、次の瞬間には獲物の視界は暗く暗転したのだから。
魔法で強化された矢の威力は絶大である。サエラが行ったエンチャントは、発射した時の弦の反動を減少させる効果と、放たれた矢の空気抵抗を消す効果だ。
この技術によって、サエラの放つ矢は一瞬で獲物を射抜くことが可能となる。
誰にでもできることではない。よく手入れされ親和性が増した自分の武器に、訓練された魔法や身体能力によって成せる技なのだ。
「・・・よし」
獲物を仕留めたことを遠目で確認したサエラは、身軽な動きで獲物の元へ駆け寄る。
仕留めた獲物はやはりうさぎであった。しかし、その頭部に動物らしからぬ奇妙な特徴があったことを除いて。
「一角兎?・・・どうして魔物がこんなところに?」
サエラは小首を傾げ、死骸をまじまじと見つめる。
その兎の額には、鋭い角が一本生えていたのだ。一般的に魔物と呼ばれる生命体の一種、ホーンラビットだということは間違いない。
通常、このベヒモスフォールに生息する魔物はレッテル村の周辺の森林に姿を現わすことはない。普段は山の頂上かそのあたりの洞窟などで動物と干渉せずに暮らしているモノが大半だ。
戦闘能力のない村人がその姿を目にすることは滅多にない。狩人のサエラでさえ、今日産まれて初めてその姿を見ることができたのだ。
そんな魔物がどうしてここに?
「ギャーッ!ギャーッ!」
サエラがそう疑問を感じたことを皮切りに、森がざわめき始めた。
動物たちが怯え、気配を消し、鳥たちが羽ばたき森から離れようとする。
動物たちが・・・否、それ以上にまるで森そのものが逃げ出そうとているようにも感じた。
そしてサエラは疑問の答えを見つける。このホーンラビットは、何かから逃げてきたのでは?
魔物が縄張りを手放してでも逃げなければならない、「何か」が出現したのでは?
それは?一体どんな捕食者だというのか。
竜王ウロボロス
「・・・まさか」
そう呟くと、サエラはホーンラビットの死骸を掴み、村へと急いで走り去って行った。この不気味な現象から遠ざかりたい一心で。
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