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〜第6章〜ラドン編
66話
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「とも・・・だち?。」
「意味不明。」
首を傾げたベタとガマに、ラスは「あぅ」と気圧されて数歩下がった。ラスなりに勇気を振り絞ってお願いした要求だったのだろう。ベタとガマの疑問が、拒否からなるものだと勘違いしたようだ。ウロボロスは慌てて三人の間に入った。
「まてまてまて、ベタ、ガマ。そう言ってやるな」
「で、でも竜王様。」
「友達。何故?。」
「な、なぜと聞かれてものぅ」
ラスの思惑を察することができないウロボロスは、純粋に疑問を浮かべるベタとガマの視線から顔を逸らした。
ウロボロスとしては、ベタとガマが首を傾げている理由はわかる。二人にしてみれば、脅してた相手に友好関係を切り出すなど正気の沙汰ではないということだろう。
それなのにこの少女はベタとガマと仲良くなることを望んでいる。その理由はわからない。ウロボロスも困り果て、チラッとラスの方へ向いた。
「・・・っ」
ベタ、ガマ、ウロボロスの視線が集中されたラスはあわわと汗をかきながらも、その疑問に答えるため藁にすがるように衣服を握りしめた。
「こ、ここ、わたし以外に子供いないの。だ、だから」
「あぁ、たしかにお主以外に子は見なかったな」
納得がいったようで、ウロボロスがポンと手を叩いて頷いた。そんなウロボロスをノアの箱舟を見るような目でラスが激しく首を上下に振る。
中身を気にせず外見だけ見れば、ラスとレッド・キャップは同世代に見えるだろう。この地下都市は人口が少なく、ウロボロスが見る限り女性が多く、男性がほとんどいない。子も産まれにくいのかもしれない。
なのでラスには友達と呼べる存在がいなかったのだ。それは一種の憧れのようなものだったのかもしれない。
「そ、それに、あなたたちがほんとはいい子だって、サエラお姉ちゃんが、言ってたの」
シオンがベタとガマを連れてくる間、どうやらサエラは軽くフォローしておいてくれたらしい。影で話を聞いていたシオンは「ナイス」と呟きながらサエラを小突いた。無表情のサムズアップが返ってくる。
「どう・・かな?」
「「・・・。」。」
ベタとガマは互いの顔を見合わせ、どうすれば良いか迷っている様子だった。そもそもベタとガマも同世代の友人というものが存在しない。
親しい間柄といえば誰も彼もが年上で、気安さはあるが友人と言うにはどこかが違う。
二人の視線がウロボロスの元へいくが、親代わりの竜はずっと目を閉じ鼻息を吹いた。好きにしなさいということだ。放り出された二人はおずおずとラスの方を向いた。
「・・・」
ラスは唇を内側に噛み、緊張した顔で二人を見つめている。時折体が震えているのは怯えではなく、おそらく正座している足のせいだろう。
ベタとガマも釣られるように正座をする。なんだこれ。なんでお見合いみたいになっておるのだ。ウロボロスは謎の重圧感を含む空気に黙り込んだ。
しかし、ベタとガマにとってはお見合い以上の緊張を感じていた。なぜなら彼女ら自身にも友人はおらず、こうして面と向かって友達にならないかと誘われるのは初めての経験であったのだ。これならAランク級の魔物と戦った方が随分とマシだというのが二人の心情である。
普段であるなら平然と「よろしく」と手を出せただろう。だが二人の中にはまだ威圧による精神攻撃の罪悪感が居座っており、それが彼女らの手を引いていた。
果たして自分たちが友人になって良いのか?それはその少女に対する害にならないか。緊張が手汗となって滲む。
硬直した両者の視線の中、ベタがボソッとか細い声でラスに言った。
「・・・了承した。」
「カタワレ。しかし・・・。」
相方のセリフにガマが弱音を吐くが、ベタが被せるように口から言葉を吐く。
「償いとして。願いを言うように頼んだのは我ら。ならばその願いに応えるべき。」
「・・・。」
まっすぐした視線を向けられ、言葉が詰まるガマ。だがその通りかもしれないと心の中で同意する自分もいた。
償いとして、ラスは友人になることを望んでいる。だというのに別の願いを要求するのはお門違いだ。ギュッと小さな手を握りしめる。
「・・・わかった。」
「っ!それじゃぁ」
「我ら。ともだち。」
「・・・よろしく。」
二人が手を差し出すと、ラスは花が咲いたような笑顔を浮かべた。普段人見知りの彼女だが、興奮したためか勢いのままベタとガマの手を掴むと、思いっきり上下に振り抱きつく勢いで近づく。
「うん・・・うん!よろしく!」
純粋な喜びと好意を向けられ、ベタとガマは慣れていないためぎこちない表情を作る。が、ラスの手を握り返す様子から心の中で喜びはあるのだろう。
彼女らも、年相応の子供であるのだ。
するとベタとガマがウロボロスの方へ向き、もどかしげにしながら頭を下げる。
「竜王様。無礼。ごめんなさい。」
「ごめんなさい。」
「い、いや、我も言い過ぎた。お主らの心情をよく理解しておくべきであった」
二人の謝罪にウロボロスもペコペコと頭を下げる。影で見ていたシオンとサエラも、ようやく騒動も終わりかと安堵の息を吐いた。が・・・、ラスの一言がその場を凍りつかせた。
「ところで、りゅうおうさまって何?」
「ウム。それは・・・」
「我らが父は偉大なる」
「すとぉぉぉおおおおおっぷ!!!」
シオンは隠れていたことも忘れ、飛び出した。それに驚いたウロボロスは腰を悪くした。
「意味不明。」
首を傾げたベタとガマに、ラスは「あぅ」と気圧されて数歩下がった。ラスなりに勇気を振り絞ってお願いした要求だったのだろう。ベタとガマの疑問が、拒否からなるものだと勘違いしたようだ。ウロボロスは慌てて三人の間に入った。
「まてまてまて、ベタ、ガマ。そう言ってやるな」
「で、でも竜王様。」
「友達。何故?。」
「な、なぜと聞かれてものぅ」
ラスの思惑を察することができないウロボロスは、純粋に疑問を浮かべるベタとガマの視線から顔を逸らした。
ウロボロスとしては、ベタとガマが首を傾げている理由はわかる。二人にしてみれば、脅してた相手に友好関係を切り出すなど正気の沙汰ではないということだろう。
それなのにこの少女はベタとガマと仲良くなることを望んでいる。その理由はわからない。ウロボロスも困り果て、チラッとラスの方へ向いた。
「・・・っ」
ベタ、ガマ、ウロボロスの視線が集中されたラスはあわわと汗をかきながらも、その疑問に答えるため藁にすがるように衣服を握りしめた。
「こ、ここ、わたし以外に子供いないの。だ、だから」
「あぁ、たしかにお主以外に子は見なかったな」
納得がいったようで、ウロボロスがポンと手を叩いて頷いた。そんなウロボロスをノアの箱舟を見るような目でラスが激しく首を上下に振る。
中身を気にせず外見だけ見れば、ラスとレッド・キャップは同世代に見えるだろう。この地下都市は人口が少なく、ウロボロスが見る限り女性が多く、男性がほとんどいない。子も産まれにくいのかもしれない。
なのでラスには友達と呼べる存在がいなかったのだ。それは一種の憧れのようなものだったのかもしれない。
「そ、それに、あなたたちがほんとはいい子だって、サエラお姉ちゃんが、言ってたの」
シオンがベタとガマを連れてくる間、どうやらサエラは軽くフォローしておいてくれたらしい。影で話を聞いていたシオンは「ナイス」と呟きながらサエラを小突いた。無表情のサムズアップが返ってくる。
「どう・・かな?」
「「・・・。」。」
ベタとガマは互いの顔を見合わせ、どうすれば良いか迷っている様子だった。そもそもベタとガマも同世代の友人というものが存在しない。
親しい間柄といえば誰も彼もが年上で、気安さはあるが友人と言うにはどこかが違う。
二人の視線がウロボロスの元へいくが、親代わりの竜はずっと目を閉じ鼻息を吹いた。好きにしなさいということだ。放り出された二人はおずおずとラスの方を向いた。
「・・・」
ラスは唇を内側に噛み、緊張した顔で二人を見つめている。時折体が震えているのは怯えではなく、おそらく正座している足のせいだろう。
ベタとガマも釣られるように正座をする。なんだこれ。なんでお見合いみたいになっておるのだ。ウロボロスは謎の重圧感を含む空気に黙り込んだ。
しかし、ベタとガマにとってはお見合い以上の緊張を感じていた。なぜなら彼女ら自身にも友人はおらず、こうして面と向かって友達にならないかと誘われるのは初めての経験であったのだ。これならAランク級の魔物と戦った方が随分とマシだというのが二人の心情である。
普段であるなら平然と「よろしく」と手を出せただろう。だが二人の中にはまだ威圧による精神攻撃の罪悪感が居座っており、それが彼女らの手を引いていた。
果たして自分たちが友人になって良いのか?それはその少女に対する害にならないか。緊張が手汗となって滲む。
硬直した両者の視線の中、ベタがボソッとか細い声でラスに言った。
「・・・了承した。」
「カタワレ。しかし・・・。」
相方のセリフにガマが弱音を吐くが、ベタが被せるように口から言葉を吐く。
「償いとして。願いを言うように頼んだのは我ら。ならばその願いに応えるべき。」
「・・・。」
まっすぐした視線を向けられ、言葉が詰まるガマ。だがその通りかもしれないと心の中で同意する自分もいた。
償いとして、ラスは友人になることを望んでいる。だというのに別の願いを要求するのはお門違いだ。ギュッと小さな手を握りしめる。
「・・・わかった。」
「っ!それじゃぁ」
「我ら。ともだち。」
「・・・よろしく。」
二人が手を差し出すと、ラスは花が咲いたような笑顔を浮かべた。普段人見知りの彼女だが、興奮したためか勢いのままベタとガマの手を掴むと、思いっきり上下に振り抱きつく勢いで近づく。
「うん・・・うん!よろしく!」
純粋な喜びと好意を向けられ、ベタとガマは慣れていないためぎこちない表情を作る。が、ラスの手を握り返す様子から心の中で喜びはあるのだろう。
彼女らも、年相応の子供であるのだ。
するとベタとガマがウロボロスの方へ向き、もどかしげにしながら頭を下げる。
「竜王様。無礼。ごめんなさい。」
「ごめんなさい。」
「い、いや、我も言い過ぎた。お主らの心情をよく理解しておくべきであった」
二人の謝罪にウロボロスもペコペコと頭を下げる。影で見ていたシオンとサエラも、ようやく騒動も終わりかと安堵の息を吐いた。が・・・、ラスの一言がその場を凍りつかせた。
「ところで、りゅうおうさまって何?」
「ウム。それは・・・」
「我らが父は偉大なる」
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