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〜第6章〜ラドン編
51話
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無駄話をしている内に精神的ダメージを負っていたシオンとメアリーも回復し、一行はラドンに向かって街道を進む。
「あれがラドンの防壁ですか?」
シオンが指を差してガルムに尋ねる。シーラの手綱を紐代わりに掴むガルムは久しぶりに見るラドンを見て、記憶と一致してるかどうかを思い出す。
「あー、そうだな。固まった溶岩を利用してんだよ」
まだまだだいぶ距離があるが、視界を邪魔する木や地形はないので目的地である温泉都市ラドンの防壁がハッキリと見えた。
真っ黒な黒曜石のような防壁。リメットのように均一な高さのある壁ではなく、デコボコと段差が激しい。
ガルムの言う通り、流れてきた溶岩が冷えて固まったかのような外見をしていた。
否、ようなではなく実際そうなのだろう。
「昔は活火山に囲まれてたらしくてな。よくマグマが流れてくることが日常茶飯事だったそうだ」
「冷えたマグマは頑丈だ。故に削り取って、そのまま壁に利用したのだよ」
ガルムの説明を捕捉するようにメアリーが口を挟む。ラドンのリメットとはひと味違った外壁誕生の顛末を聞いてシオンは「へぇ~」と感心するように見上げた。
「今でも火山って動いてるんですか?」
「いや、そんなことはなかったと思うぞ。地底にまだ残ってるらしいが噴火したことはここ数十年ないって話だ」
「・・・の割には木が少ないですけど」
この土地はリメットと違い背の高い木は少なく、芝生のような草が広大に広がっているだけだ。精々柑橘類でも生やしそうな小さな木が所々に点在している程度。
火山付近の木は噴火で燃え尽きたり、ガスで死んでしまい枯れる。そういった影響を考えれば、植物が少ない理由も納得できただろう。
だがそこまで時間が経っても自然が蘇らないというのも不自然だった。
「元々木材が少ないからな。生えた途端根こそぎ刈られたぞ」
「わぉ、環境破壊・・・」
シオンの疑問に答えたのはメアリーだった。答えを聞いて、シオンも納得した。そりゃハゲる。
「で、我は街に入ればいつも通り黙れば良いのだな?」
会話に割り込んできたのはウロボロスだ。シオンの頭の上に着地し、そこが指定席というように踏ん反る。
・・・が、すぐにシオンの手に捕まり、抱き枕のように抱えられた。ムッと口を膨らます。
「そうですね。窮屈で申し訳ないですけど」
「気にするでない。必要なことである」
「魔法でウーロさんが喋ってるのバレないようにできない?」
サエラがメアリーに尋ねるが、返ってくるのは首を横に降る「NO」という答えだけだった。
「無茶言うな。そもそも音を操るのに長けているのは竜の方だぞ」
そう言ってウロボロスに視線を送るが、ウロボロスは困った顔を浮かべることくらいしかできない。
「我、そんな便利系の魔法は持ってないもん」
音を操る。メアリーの言っているのは竜言語魔法のことだろう。ブレスやスキル。竜の持つ能力の大半は人間では発音できない特殊な言語で詠唱し、発動しているのだ。
声に魔力を乗せ、現象を生み出す。人間も詠唱をして魔法を使うが竜ほど高密度で繊細な真似はできない。
人は言葉の"意味"で魔力に干渉する。竜は声の"音"で干渉する。似ているようで異なるものだ。
ちなみにスプリガンの魔法を応用し、体の小さくなったフィンがガルムのバックの中に隠れているが、それは後ほど。
「俺が常にボイスカットするわけにはいかないしな」
ガルムの魔法で魔力の膜を貼り、音を外に漏らさないという防音魔法がある。
が、発動中は魔力は使うので短時間ならともかく数時間単位となるといくらガルムといえど骨が折れるだろう。
「みな。もうすぐ着くぞ。」
「到着。」
雑談をしている間に目的地へとだいぶ近づいたらしい。ベタとガマの言葉でウロボロスは口をつぐみ、喋らないようにした。
温泉都市ラドン。観光名所と言う割には門には人の数は少なく、近寄っても衛兵の姿しか見れない。
きっと冬で客も移動できず、来ている人数も少ないのだろう。ウロボロスは少々そう納得し、固まった溶岩の外壁を見上げた。
「あれがラドンの防壁ですか?」
シオンが指を差してガルムに尋ねる。シーラの手綱を紐代わりに掴むガルムは久しぶりに見るラドンを見て、記憶と一致してるかどうかを思い出す。
「あー、そうだな。固まった溶岩を利用してんだよ」
まだまだだいぶ距離があるが、視界を邪魔する木や地形はないので目的地である温泉都市ラドンの防壁がハッキリと見えた。
真っ黒な黒曜石のような防壁。リメットのように均一な高さのある壁ではなく、デコボコと段差が激しい。
ガルムの言う通り、流れてきた溶岩が冷えて固まったかのような外見をしていた。
否、ようなではなく実際そうなのだろう。
「昔は活火山に囲まれてたらしくてな。よくマグマが流れてくることが日常茶飯事だったそうだ」
「冷えたマグマは頑丈だ。故に削り取って、そのまま壁に利用したのだよ」
ガルムの説明を捕捉するようにメアリーが口を挟む。ラドンのリメットとはひと味違った外壁誕生の顛末を聞いてシオンは「へぇ~」と感心するように見上げた。
「今でも火山って動いてるんですか?」
「いや、そんなことはなかったと思うぞ。地底にまだ残ってるらしいが噴火したことはここ数十年ないって話だ」
「・・・の割には木が少ないですけど」
この土地はリメットと違い背の高い木は少なく、芝生のような草が広大に広がっているだけだ。精々柑橘類でも生やしそうな小さな木が所々に点在している程度。
火山付近の木は噴火で燃え尽きたり、ガスで死んでしまい枯れる。そういった影響を考えれば、植物が少ない理由も納得できただろう。
だがそこまで時間が経っても自然が蘇らないというのも不自然だった。
「元々木材が少ないからな。生えた途端根こそぎ刈られたぞ」
「わぉ、環境破壊・・・」
シオンの疑問に答えたのはメアリーだった。答えを聞いて、シオンも納得した。そりゃハゲる。
「で、我は街に入ればいつも通り黙れば良いのだな?」
会話に割り込んできたのはウロボロスだ。シオンの頭の上に着地し、そこが指定席というように踏ん反る。
・・・が、すぐにシオンの手に捕まり、抱き枕のように抱えられた。ムッと口を膨らます。
「そうですね。窮屈で申し訳ないですけど」
「気にするでない。必要なことである」
「魔法でウーロさんが喋ってるのバレないようにできない?」
サエラがメアリーに尋ねるが、返ってくるのは首を横に降る「NO」という答えだけだった。
「無茶言うな。そもそも音を操るのに長けているのは竜の方だぞ」
そう言ってウロボロスに視線を送るが、ウロボロスは困った顔を浮かべることくらいしかできない。
「我、そんな便利系の魔法は持ってないもん」
音を操る。メアリーの言っているのは竜言語魔法のことだろう。ブレスやスキル。竜の持つ能力の大半は人間では発音できない特殊な言語で詠唱し、発動しているのだ。
声に魔力を乗せ、現象を生み出す。人間も詠唱をして魔法を使うが竜ほど高密度で繊細な真似はできない。
人は言葉の"意味"で魔力に干渉する。竜は声の"音"で干渉する。似ているようで異なるものだ。
ちなみにスプリガンの魔法を応用し、体の小さくなったフィンがガルムのバックの中に隠れているが、それは後ほど。
「俺が常にボイスカットするわけにはいかないしな」
ガルムの魔法で魔力の膜を貼り、音を外に漏らさないという防音魔法がある。
が、発動中は魔力は使うので短時間ならともかく数時間単位となるといくらガルムといえど骨が折れるだろう。
「みな。もうすぐ着くぞ。」
「到着。」
雑談をしている間に目的地へとだいぶ近づいたらしい。ベタとガマの言葉でウロボロスは口をつぐみ、喋らないようにした。
温泉都市ラドン。観光名所と言う割には門には人の数は少なく、近寄っても衛兵の姿しか見れない。
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