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第4章〜不死〜
44話
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「うっわ」
サエラがドン引きしたセリフを呟く。だからやめろ!我のメンタル面を攻撃するのは!
爆発で全身炭化したルーデスを尻目に、我はパタパタとサエラの元へ舞い降りた。
臭くないから!鼻摘なくても良いから!
「なんであるかその目は!」
「こういう場面であーゆー技使うと思ってなかった」
どうやら我の戦術はお気に召さなかったらしい。そんなこと言われても、ぶっちゃけあの攻撃超強いぞ?
火炎放射とは違って魔力消費が少ないし、爆発も外側に広がるのではなくてガスの範囲内しか影響が出ないから周りに被害は出ないし。
そのことを熱く語ると、ゴードンが鉄の仮面からでもわかる視線を露骨に向けてきた。
「ネタ技かと思ったけどそんなこと無いのね」
ない。人間と一緒にするでない。確かに下品で他のドラゴンもなかなか使わないが。
すると瓦礫の崩れる音が聞こえ、そちらを向いてみると炭化した肉体を再生させてるルーデスが我を睨みつけていた。
「ゆ、許さない・・・お前は」
ヘイトめっちゃ溜まったである。
「そりゃこっちのセリフだっての!!」
そこに容赦なく突風が襲いかかった。そこらに落ちている石ころが風に吹かれ、矢のように弾き飛ばされる。それは確実に凶器であり、人の身に当たれば皮を貫くだろう。
証明は、ルーデスの身体が物語っていた。
「っ!」
風穴を開けられたルーデスは我の攻撃から学んだのか、すぐに治癒せず地面を蹴って風から逃れようとする。
だが超人的な速さでガルムが追いつく。その秘密は、靴底にあった。
小さな風が靴の裏にくっついていたのだ。走るときに風を起こしてスピードを上げているのだろう。
「こ れ で どうじゃぁぁぁぁぁあ!!」
グレイブの軌道にルーデスが入る。ガルムは刃の先端に膨大な魔力を集中させた。
常人には見えない高圧の風。それが空気中に飛ぶ埃や小石に当たると、一瞬でそれらを砂のように分解させた。
風の向こう側を見ると風景が歪んで見えた。光すら旋風の回転に巻き込まれて屈折しているのだ。
ルーデスはそれを紙一重でかわしたが、見えない刃に当たったのか肩からその先を消失してしまった。
「風魔法・・・厄介なっ!」
失った腕の代わりに粘液を発生させ、義手のように形を整える。しかし、その腕もどきにジャラジャラと鎖が巻きつく。
何事かとルーデスが振り返れば、物陰に隠れていたベタとガマが仲良く手を繋いで現れた。
その手に持つ鎖はルーデスの腕へと繋がっている。
「「ブラッドボム。」」
「がっ・・・!」
また、ルーデスは爆発に包まれた。錆び付いた鉄の匂いが鼻を突く。
血液を爆発させるという、ドラゴンにでもたやすく致命傷を与えることが可能な強力なスキルだ。無機物に対しては効果はないが。
建物や家具に爆発の影響がないのは、血液にだけ反応する特殊な魔力のせいだろう。
我の血を触媒に転生したことで得た能力。それをベタとガマは全身を火傷したルーデスにさらに『ブラッドボム』を連発してみせた。
「ブラッドボム。」
「ブラッドボム。」
「「ブラッドボム。」」
消し炭になった身体がまた爆発に燃やされる。意識のなくなった肉体の残留物は本能的に再生を始めるが、ベタとガマがそれを許さない。
爆発、爆発、爆発。細胞一つでも新鮮な状態になれば引き起こされる。血の爆弾というスキルだが、その実は血でなくても構わないのかもしれない。
永遠に続くと思われた爆発の連続だが、爆風の中から肉の一欠片が宙に舞い上がると今度はそこに瘴気が集まり再生しだした。
「逃がさん。」
目ざとくガマが新たな核を視認して鎖を投げるが、肉片は小さなコウモリへと姿を変えると針の穴に糸を通すように鎖の網をすり抜ける。
逃げようとでもしているのか、向かった先はリメットの門がある方角だ。
「外した。」
「無念。」
鎖の長さの範囲外に逃げられたらしい。コウモリは小さくて素早く、鎖で巻きつけるのは少々難しいかもしれない。
だが残念がる様子は見せず、即座に広げた鎖を収納して走りだす。が、追いかける方法がなんとも奇天烈であった。
「・・・は?」
ベタとガマはコウモリの逃げた方向へ大ジャンプすると、建物の側面に足をつけて壁走りを始めた。
しかし走っているうちに減速して落下しそうになると、反対の建物の壁に飛び移ってまた壁走りをする。それを繰り返してぴょんぴょん跳ねてあっという間にどこかへ行ってしまった。
「なんであるかあの走り方」
「ニンジャ?」
「あれはあの二人特有の移動方法よ」
あれ、前世でもできたのかのぅ?
サエラがドン引きしたセリフを呟く。だからやめろ!我のメンタル面を攻撃するのは!
爆発で全身炭化したルーデスを尻目に、我はパタパタとサエラの元へ舞い降りた。
臭くないから!鼻摘なくても良いから!
「なんであるかその目は!」
「こういう場面であーゆー技使うと思ってなかった」
どうやら我の戦術はお気に召さなかったらしい。そんなこと言われても、ぶっちゃけあの攻撃超強いぞ?
火炎放射とは違って魔力消費が少ないし、爆発も外側に広がるのではなくてガスの範囲内しか影響が出ないから周りに被害は出ないし。
そのことを熱く語ると、ゴードンが鉄の仮面からでもわかる視線を露骨に向けてきた。
「ネタ技かと思ったけどそんなこと無いのね」
ない。人間と一緒にするでない。確かに下品で他のドラゴンもなかなか使わないが。
すると瓦礫の崩れる音が聞こえ、そちらを向いてみると炭化した肉体を再生させてるルーデスが我を睨みつけていた。
「ゆ、許さない・・・お前は」
ヘイトめっちゃ溜まったである。
「そりゃこっちのセリフだっての!!」
そこに容赦なく突風が襲いかかった。そこらに落ちている石ころが風に吹かれ、矢のように弾き飛ばされる。それは確実に凶器であり、人の身に当たれば皮を貫くだろう。
証明は、ルーデスの身体が物語っていた。
「っ!」
風穴を開けられたルーデスは我の攻撃から学んだのか、すぐに治癒せず地面を蹴って風から逃れようとする。
だが超人的な速さでガルムが追いつく。その秘密は、靴底にあった。
小さな風が靴の裏にくっついていたのだ。走るときに風を起こしてスピードを上げているのだろう。
「こ れ で どうじゃぁぁぁぁぁあ!!」
グレイブの軌道にルーデスが入る。ガルムは刃の先端に膨大な魔力を集中させた。
常人には見えない高圧の風。それが空気中に飛ぶ埃や小石に当たると、一瞬でそれらを砂のように分解させた。
風の向こう側を見ると風景が歪んで見えた。光すら旋風の回転に巻き込まれて屈折しているのだ。
ルーデスはそれを紙一重でかわしたが、見えない刃に当たったのか肩からその先を消失してしまった。
「風魔法・・・厄介なっ!」
失った腕の代わりに粘液を発生させ、義手のように形を整える。しかし、その腕もどきにジャラジャラと鎖が巻きつく。
何事かとルーデスが振り返れば、物陰に隠れていたベタとガマが仲良く手を繋いで現れた。
その手に持つ鎖はルーデスの腕へと繋がっている。
「「ブラッドボム。」」
「がっ・・・!」
また、ルーデスは爆発に包まれた。錆び付いた鉄の匂いが鼻を突く。
血液を爆発させるという、ドラゴンにでもたやすく致命傷を与えることが可能な強力なスキルだ。無機物に対しては効果はないが。
建物や家具に爆発の影響がないのは、血液にだけ反応する特殊な魔力のせいだろう。
我の血を触媒に転生したことで得た能力。それをベタとガマは全身を火傷したルーデスにさらに『ブラッドボム』を連発してみせた。
「ブラッドボム。」
「ブラッドボム。」
「「ブラッドボム。」」
消し炭になった身体がまた爆発に燃やされる。意識のなくなった肉体の残留物は本能的に再生を始めるが、ベタとガマがそれを許さない。
爆発、爆発、爆発。細胞一つでも新鮮な状態になれば引き起こされる。血の爆弾というスキルだが、その実は血でなくても構わないのかもしれない。
永遠に続くと思われた爆発の連続だが、爆風の中から肉の一欠片が宙に舞い上がると今度はそこに瘴気が集まり再生しだした。
「逃がさん。」
目ざとくガマが新たな核を視認して鎖を投げるが、肉片は小さなコウモリへと姿を変えると針の穴に糸を通すように鎖の網をすり抜ける。
逃げようとでもしているのか、向かった先はリメットの門がある方角だ。
「外した。」
「無念。」
鎖の長さの範囲外に逃げられたらしい。コウモリは小さくて素早く、鎖で巻きつけるのは少々難しいかもしれない。
だが残念がる様子は見せず、即座に広げた鎖を収納して走りだす。が、追いかける方法がなんとも奇天烈であった。
「・・・は?」
ベタとガマはコウモリの逃げた方向へ大ジャンプすると、建物の側面に足をつけて壁走りを始めた。
しかし走っているうちに減速して落下しそうになると、反対の建物の壁に飛び移ってまた壁走りをする。それを繰り返してぴょんぴょん跳ねてあっという間にどこかへ行ってしまった。
「なんであるかあの走り方」
「ニンジャ?」
「あれはあの二人特有の移動方法よ」
あれ、前世でもできたのかのぅ?
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