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第2章〜不死編〜
第92話「遭遇」
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「さて、我らも帰るか」
「換金もしましたしねー」
ゴーレムの核は150シルバーとなった。訓練に1日費やしたとしても、十分すぎる額である。
もっとも、通常は武器の手入れなどで消費してしまうのがほとんどだろうが。そういった整備はサエラくらいのものだから、これらもほとんど貯金に回して良いだろうな。
「ぬふふ、お金が貯まるのはなかなか心地よいものだな」
「ウーロさんお金とか好きなんですか?」
「いやそういうわけではないが‥‥‥なんというか、硬貨ってキラキラしてるじゃろ?山ほど蓄えたら気分良くならないか?」
財宝が貯まるのが気持ち良いのかもしれない。
「珍しくドラゴンっぽいこと言ってますね」
シオンよ。それは逆に我が普段ドラゴンっぽくないと言ってるのと同義なのだが?
「光り物が好き‥‥‥カラスみたい」
「一気にドラゴンっぽくなくなりましたね」
「やめい二人とも!我を竜種から遠ざけるでない!」
全く!鳥類ではないのだぞ我は!
しかし、人間たちから見たドラゴンへの一つのイメージは、財宝を集めるというモノもあるのか。
たしかに懐に金銀財宝を溜め込む個体は多く見られた。それはすでに住処を得て、放浪しなくなった竜に見られた特徴である。
なぜドラゴンは宝を集めるのか‥‥‥我もわからん。金を使わない竜にとって、宝など価値のない代物だが。
とりあえず、キラキラしてるものは知的生命体にとって均等な価値がある。多くが貴重だと口にするから、レア物だと感じてるのだろうか。
それをコレクションすることで、他への優位性や自己満足を満たしているのかも。
案外ドラゴンも人間と変わらんのかもしれんな。
「ウーロさんはお金貯まったら何か欲しいものでもあるんですか?」
シオンがそんな質問を飛ばしてくる。そうじゃのぅ。
「ステーキとか、霜降り肉とか、熟成肉とか、そういうのが食べたいのぅ」
「‥‥‥竜王とは名ばかりですね」
どうして?
「あ、いた。サエラさん!シオンさん!」
他愛もない会話をしていると、だいぶ聴き慣れてきた女性の声が、我らを呼び止めるように聞こえてきた。
振り返ると、我らの冒険者登録を担当してくれた受付嬢のターナが小走りでこちらに向かって来ていたのである。
なんだなんだ。どうしたのだ?もしかして売却した核に不備でもあったのかの?
「良かった。もうお帰りになったのかと」
我らが立ち止まり、追いつけたターナは少し呼吸を整えながらホッと息をついた。
なにやら急いでたらしいが、一体どうしたというのだ。
「どうかしました?」
シオンが小首を傾げると、ターナは我らを引き止めた理由を説明してくれた。
「実は、皆さんに会いたいという方がありまして、可能なら面会していただきたいのですが‥‥‥」
とのことである、はて、我らに会いたい人がいると?知り合いとか多くないし、第一受付嬢を使いに出すなんてそれなりに権力を持つ人間しかできないことではないか?
つまり、冒険者ギルドで何かしらの力と立場を持つ人間が、我らと顔を合わせたいと言ってるのだということがわかる。
うーむ。まさかガルムの言っていた血濡れの赤帽子か?
忠告されてすぐなんてかなり早いのだが‥‥‥。
「誰が私たちに会いたいって言ってるの?」
今度はサエラが質問を飛ばす。するとターナは別に隠すことでもないのかアッサリと面会希望者の正体を明かしてくれた。
「ブリッツ商会の幹部の方です」
「なんでやねん」
我、思わずツッコミを入れてしまう。なぜだ。なぜブリッツ商会が我らと会いたいと?関わったことなど一度もないではないか。
まさか、我らが魔鉱石をマーシーの元に運んでいたことがバレたのか?いや、袋の魔道具のおかげでそれば見られてないはず。
「えぇと?なんでそんなお偉いさんがわたしたちに?」
シオンの疑問はこの場にいる我ら全員のものと同じであった。サエラもうんうんと頷いている。
しかしそこまではターナもわからないようで、困った顔を浮かべていた。
「私も詳しくは‥‥‥ガルムさん関連だと思うんですけど」
まぁ、そうだよな。魔鉱石の件がバレてるはずないしの。はっはっは。
「仕方ない。会うとしよう」
「いいの?」
「サエラよ、ここは逆に会わない方が不自然じゃて」
ガルムから聞いた話では、金儲けを狙う冒険者の中には商会の関係者を目指して志す者もいるという。
個人的な雇用契約を結べば、安定した収入も入るし、コネも充実するし、何より冒険者を引退した後も場合によっては商会から仕事をもらえたりする。
だから商会から声をかけられた冒険者の大半は、よほど忙しい仕事でもない限り、必ずと言っていいほど面会を受けるのだ。
我らはガルムの紹介があるとはいえ、新人冒険者だ。それが商会と面会を望まれたというのに受けないのは、側から見れば怪しく感じてしまうだろう。
ここはおとなしくブリッツ商会の幹部とやらに会ってみて、話を聞いた方が良いだろう。それに、もし、万が一に魔鉱石のことがバレていたら、しらばっくれれば良いのだ。幸いにも今日の魔道具袋の中身は空である。
「では、二階の客間まで案内します」
ターナがそう言い、我らを誘導する。警備が立ち、普段は冒険者が通ることもない階段に向かい、そこを上がる。
‥‥‥ギルドの端っこに、階段などあったのだな。初めて知ったぞ。
ともあれ警備と思われる武装した男の横を通った我らは、少しだけギシッと音がする木製の階段を進み、二階へとたどり着く。客間はすぐ近くで、ターナがドアをノックすると途端に返事が返って来た。
聞こえて来たのは歳若い青年の声だ。変声期を通る中間といったところか。
我らはちょっぴり緊張しながら、部屋の中に入った。
「はじめまして皆さん。私はブリッツ商会のラウルと申します。以後お見知り置きを」
部屋にいたのはやはり若い少年だった。黒い服を見に包み、髪型は清潔そうに長くもなく短くもなく切りそろえている。
顔立ちは整っており、細い目は冷徹というよりかは物静かな印象を受ける。
頭を下げて挨拶してきたラウルは、素人目から見ても綺麗な姿勢だ。相当な教育を受けてきたと思われる。
「‥‥‥」
「‥‥‥」
そして頭をあげたラウルは、サエラと視線が重なった。サエラの眠そうな目と、ラウルの目が互いを見つめる。
まるで互いを牽制しあう獣のような雰囲気を一瞬作り上げたのだが‥‥‥タイプが似てるからか。おい、ライバル視するでない。
「換金もしましたしねー」
ゴーレムの核は150シルバーとなった。訓練に1日費やしたとしても、十分すぎる額である。
もっとも、通常は武器の手入れなどで消費してしまうのがほとんどだろうが。そういった整備はサエラくらいのものだから、これらもほとんど貯金に回して良いだろうな。
「ぬふふ、お金が貯まるのはなかなか心地よいものだな」
「ウーロさんお金とか好きなんですか?」
「いやそういうわけではないが‥‥‥なんというか、硬貨ってキラキラしてるじゃろ?山ほど蓄えたら気分良くならないか?」
財宝が貯まるのが気持ち良いのかもしれない。
「珍しくドラゴンっぽいこと言ってますね」
シオンよ。それは逆に我が普段ドラゴンっぽくないと言ってるのと同義なのだが?
「光り物が好き‥‥‥カラスみたい」
「一気にドラゴンっぽくなくなりましたね」
「やめい二人とも!我を竜種から遠ざけるでない!」
全く!鳥類ではないのだぞ我は!
しかし、人間たちから見たドラゴンへの一つのイメージは、財宝を集めるというモノもあるのか。
たしかに懐に金銀財宝を溜め込む個体は多く見られた。それはすでに住処を得て、放浪しなくなった竜に見られた特徴である。
なぜドラゴンは宝を集めるのか‥‥‥我もわからん。金を使わない竜にとって、宝など価値のない代物だが。
とりあえず、キラキラしてるものは知的生命体にとって均等な価値がある。多くが貴重だと口にするから、レア物だと感じてるのだろうか。
それをコレクションすることで、他への優位性や自己満足を満たしているのかも。
案外ドラゴンも人間と変わらんのかもしれんな。
「ウーロさんはお金貯まったら何か欲しいものでもあるんですか?」
シオンがそんな質問を飛ばしてくる。そうじゃのぅ。
「ステーキとか、霜降り肉とか、熟成肉とか、そういうのが食べたいのぅ」
「‥‥‥竜王とは名ばかりですね」
どうして?
「あ、いた。サエラさん!シオンさん!」
他愛もない会話をしていると、だいぶ聴き慣れてきた女性の声が、我らを呼び止めるように聞こえてきた。
振り返ると、我らの冒険者登録を担当してくれた受付嬢のターナが小走りでこちらに向かって来ていたのである。
なんだなんだ。どうしたのだ?もしかして売却した核に不備でもあったのかの?
「良かった。もうお帰りになったのかと」
我らが立ち止まり、追いつけたターナは少し呼吸を整えながらホッと息をついた。
なにやら急いでたらしいが、一体どうしたというのだ。
「どうかしました?」
シオンが小首を傾げると、ターナは我らを引き止めた理由を説明してくれた。
「実は、皆さんに会いたいという方がありまして、可能なら面会していただきたいのですが‥‥‥」
とのことである、はて、我らに会いたい人がいると?知り合いとか多くないし、第一受付嬢を使いに出すなんてそれなりに権力を持つ人間しかできないことではないか?
つまり、冒険者ギルドで何かしらの力と立場を持つ人間が、我らと顔を合わせたいと言ってるのだということがわかる。
うーむ。まさかガルムの言っていた血濡れの赤帽子か?
忠告されてすぐなんてかなり早いのだが‥‥‥。
「誰が私たちに会いたいって言ってるの?」
今度はサエラが質問を飛ばす。するとターナは別に隠すことでもないのかアッサリと面会希望者の正体を明かしてくれた。
「ブリッツ商会の幹部の方です」
「なんでやねん」
我、思わずツッコミを入れてしまう。なぜだ。なぜブリッツ商会が我らと会いたいと?関わったことなど一度もないではないか。
まさか、我らが魔鉱石をマーシーの元に運んでいたことがバレたのか?いや、袋の魔道具のおかげでそれば見られてないはず。
「えぇと?なんでそんなお偉いさんがわたしたちに?」
シオンの疑問はこの場にいる我ら全員のものと同じであった。サエラもうんうんと頷いている。
しかしそこまではターナもわからないようで、困った顔を浮かべていた。
「私も詳しくは‥‥‥ガルムさん関連だと思うんですけど」
まぁ、そうだよな。魔鉱石の件がバレてるはずないしの。はっはっは。
「仕方ない。会うとしよう」
「いいの?」
「サエラよ、ここは逆に会わない方が不自然じゃて」
ガルムから聞いた話では、金儲けを狙う冒険者の中には商会の関係者を目指して志す者もいるという。
個人的な雇用契約を結べば、安定した収入も入るし、コネも充実するし、何より冒険者を引退した後も場合によっては商会から仕事をもらえたりする。
だから商会から声をかけられた冒険者の大半は、よほど忙しい仕事でもない限り、必ずと言っていいほど面会を受けるのだ。
我らはガルムの紹介があるとはいえ、新人冒険者だ。それが商会と面会を望まれたというのに受けないのは、側から見れば怪しく感じてしまうだろう。
ここはおとなしくブリッツ商会の幹部とやらに会ってみて、話を聞いた方が良いだろう。それに、もし、万が一に魔鉱石のことがバレていたら、しらばっくれれば良いのだ。幸いにも今日の魔道具袋の中身は空である。
「では、二階の客間まで案内します」
ターナがそう言い、我らを誘導する。警備が立ち、普段は冒険者が通ることもない階段に向かい、そこを上がる。
‥‥‥ギルドの端っこに、階段などあったのだな。初めて知ったぞ。
ともあれ警備と思われる武装した男の横を通った我らは、少しだけギシッと音がする木製の階段を進み、二階へとたどり着く。客間はすぐ近くで、ターナがドアをノックすると途端に返事が返って来た。
聞こえて来たのは歳若い青年の声だ。変声期を通る中間といったところか。
我らはちょっぴり緊張しながら、部屋の中に入った。
「はじめまして皆さん。私はブリッツ商会のラウルと申します。以後お見知り置きを」
部屋にいたのはやはり若い少年だった。黒い服を見に包み、髪型は清潔そうに長くもなく短くもなく切りそろえている。
顔立ちは整っており、細い目は冷徹というよりかは物静かな印象を受ける。
頭を下げて挨拶してきたラウルは、素人目から見ても綺麗な姿勢だ。相当な教育を受けてきたと思われる。
「‥‥‥」
「‥‥‥」
そして頭をあげたラウルは、サエラと視線が重なった。サエラの眠そうな目と、ラウルの目が互いを見つめる。
まるで互いを牽制しあう獣のような雰囲気を一瞬作り上げたのだが‥‥‥タイプが似てるからか。おい、ライバル視するでない。
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