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第2章〜不死編〜
第81話「お金」
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我のボケを華麗にスルーしやがる。こやつら。
まぁ良い。我はドラゴンだからな。懐深いからな。今回は見逃してやる。‥‥‥もうすこしギャグをまじめに考えるべきか。
「そうですか。ガルムさんが‥‥‥」
我らが魔鉱石を納品すると聞いて、グロンは複雑そうな顔をしていた。
見た感じ気の弱い自己主張の少ない性格と見える。鬼人族は力自慢として有名なので、こうも気弱な青年を見てるとイメージが狂ってくる。
しかしマーシーは典型的な鬼人族な分、受ける印象は大きい。
元気な姉に大人しめな弟。シオンとサエラに似ているが、タイプは全く異なる。
だからか、サエラは同じ姉持ちの立場として興味が湧いているようなのだ。グロンの言いようのない不安げな顔に小首を傾げた。
「なんでそんな顔するの?」
「いや、だって、明らかにギルドに売却した方が利益は多いですよ?なのに姉さんなんかに売ってくれるなんて‥‥‥」
「なんかって何よ」
マーシーの肘がグロンの横頭部にぶち当たる。「いたっ」という悲鳴を聞きつつ、我は「ふむ」と腕を組んだ。
「まぁ、彼女に魔鉱石を売る子で我らにもメリットはあるのだ。気にせんで良いぞ」
「そうですか。ありがとうございます」
我らを信用した‥‥‥というよりは、ガルムの紹介があってこそ信用してくれたという感じか。我が言ったセリフにグロンは不安さをまだ残しつつも、表情に明るみを増やした。
そして、聞いて当然な疑問を我らに投げたのだ。
「ところで、なぜ姉さんは気絶してたんでしょうか?」
あー、うん。まぁまぁ。我はチラリとマーシーの方を見た。
「‥‥‥なんでだっけ?」
ショックのあまり記憶がぶっ飛んだらしい。
「それは、見せた方が早かろう。シオン」
「ですねー。今度は気絶しないでくださいよ」
廊下に魔鉱石を出しっぱというわけにはいかないので、一度出した魔鉱石は全てまた袋にしまっておいたのだ。
我が促すとシオンは再び袋の口を床に向けて、入り口を塞いでいた紐を緩める。
そして魔鉱石が温水のごとく落ちていったのだ。
「「‥‥‥!?!!?」」
マーシーとグロンが、この光景をありえないと言った表情で見ながら固まった。
相当な量の魔鉱石は山のように積み上げて、だいたいシオンの膝の真ん中くらいまで積み上がる。
マーシーはなぜ自分が意識を失ったのかを思い出したようで、プルプルと震えながら魔鉱石を手に取った。
「ほ、本物‥‥‥本物の魔鉱石がこんなにも」
「こんなにあるのだからな。コイツに火の魔法を与えて、ライトにしても良いのだぞ?ほぉら明るくなったろう?」
「ウーロさん?その魔鉱石‥‥‥誰がどんな思いをして採掘したか知ってますよね?無駄遣いしたらマジでキレますよ」
ははは、未遂未遂。ノーカンノーカン。
「こ、こここ、こんなに沢山の魔鉱石が‥‥‥一体どうやって」
グロンもこの光景は目を疑うレベルのようだ。メガネを何度か拭き、恐る恐る魔鉱石を触っている。
「鉱脈を見つければ、これくらい簡単に手に入るだろう?」
「人間じゃ鉱脈は視認できないんです!普通一度にこんなに手に入ることなんてないですよ!」
え、そうなの?グロンの言葉に納得できず、我は小首を傾げた。
だってシオンもサエラも見えてたではないか。魔鉱石も魔力に長けた人間なら簡単に見つけ‥‥‥あぁ、2人ともエルフだから濃い魔力の線を視認できたのか。
グロンの言ってることがわかった。
「で、どう?買い取ってくれる?」
サエラが問うと、マーシーは大興奮しながら我らの方を向いた。
「買い取るに決まってるじゃない!こんなの、数ヶ月分の魔鉱石よ!これだけあれば魔道具もたくさん作れるし、新しい研究だってできるわ!ありがとうみんな!」
魔鉱石を抱きしめながらくるくるとその場で踊るように回転しだすマーシー。それが人形だったら可愛らしい少女だったかもしれないが、あいにく無骨な鉱石の塊である。
「やったであるなぁ。で、これいくらくらいになるのだ?」
完全に自分の世界に入ってしまったマーシーを放って、グロンの方に問いかけてみる。グロンは外れかけたメガネをかけ直し、ひどく冷静な口調で返答してくる。
「そうですね。このレベルの魔鉱石一つでおおよそ5000シルバー、つまり5ゴールド。この場にある魔鉱石の純度はほとんど変わらないみたいですね。で、この量ですと‥‥‥たぶん100ゴールドにはなると思いますよ」
ほー、ほー、それってどんくらい?」
「家が1件買えます」
ふーん、そーなんだ。すげえ。我はいつのまにか後頭部を床に打ち付けていた。
「え、ウーロさん!?ウーロさん!!」
「今度はウーロが気絶した‥‥‥!」
‥‥‥きゅぅ。
まぁ良い。我はドラゴンだからな。懐深いからな。今回は見逃してやる。‥‥‥もうすこしギャグをまじめに考えるべきか。
「そうですか。ガルムさんが‥‥‥」
我らが魔鉱石を納品すると聞いて、グロンは複雑そうな顔をしていた。
見た感じ気の弱い自己主張の少ない性格と見える。鬼人族は力自慢として有名なので、こうも気弱な青年を見てるとイメージが狂ってくる。
しかしマーシーは典型的な鬼人族な分、受ける印象は大きい。
元気な姉に大人しめな弟。シオンとサエラに似ているが、タイプは全く異なる。
だからか、サエラは同じ姉持ちの立場として興味が湧いているようなのだ。グロンの言いようのない不安げな顔に小首を傾げた。
「なんでそんな顔するの?」
「いや、だって、明らかにギルドに売却した方が利益は多いですよ?なのに姉さんなんかに売ってくれるなんて‥‥‥」
「なんかって何よ」
マーシーの肘がグロンの横頭部にぶち当たる。「いたっ」という悲鳴を聞きつつ、我は「ふむ」と腕を組んだ。
「まぁ、彼女に魔鉱石を売る子で我らにもメリットはあるのだ。気にせんで良いぞ」
「そうですか。ありがとうございます」
我らを信用した‥‥‥というよりは、ガルムの紹介があってこそ信用してくれたという感じか。我が言ったセリフにグロンは不安さをまだ残しつつも、表情に明るみを増やした。
そして、聞いて当然な疑問を我らに投げたのだ。
「ところで、なぜ姉さんは気絶してたんでしょうか?」
あー、うん。まぁまぁ。我はチラリとマーシーの方を見た。
「‥‥‥なんでだっけ?」
ショックのあまり記憶がぶっ飛んだらしい。
「それは、見せた方が早かろう。シオン」
「ですねー。今度は気絶しないでくださいよ」
廊下に魔鉱石を出しっぱというわけにはいかないので、一度出した魔鉱石は全てまた袋にしまっておいたのだ。
我が促すとシオンは再び袋の口を床に向けて、入り口を塞いでいた紐を緩める。
そして魔鉱石が温水のごとく落ちていったのだ。
「「‥‥‥!?!!?」」
マーシーとグロンが、この光景をありえないと言った表情で見ながら固まった。
相当な量の魔鉱石は山のように積み上げて、だいたいシオンの膝の真ん中くらいまで積み上がる。
マーシーはなぜ自分が意識を失ったのかを思い出したようで、プルプルと震えながら魔鉱石を手に取った。
「ほ、本物‥‥‥本物の魔鉱石がこんなにも」
「こんなにあるのだからな。コイツに火の魔法を与えて、ライトにしても良いのだぞ?ほぉら明るくなったろう?」
「ウーロさん?その魔鉱石‥‥‥誰がどんな思いをして採掘したか知ってますよね?無駄遣いしたらマジでキレますよ」
ははは、未遂未遂。ノーカンノーカン。
「こ、こここ、こんなに沢山の魔鉱石が‥‥‥一体どうやって」
グロンもこの光景は目を疑うレベルのようだ。メガネを何度か拭き、恐る恐る魔鉱石を触っている。
「鉱脈を見つければ、これくらい簡単に手に入るだろう?」
「人間じゃ鉱脈は視認できないんです!普通一度にこんなに手に入ることなんてないですよ!」
え、そうなの?グロンの言葉に納得できず、我は小首を傾げた。
だってシオンもサエラも見えてたではないか。魔鉱石も魔力に長けた人間なら簡単に見つけ‥‥‥あぁ、2人ともエルフだから濃い魔力の線を視認できたのか。
グロンの言ってることがわかった。
「で、どう?買い取ってくれる?」
サエラが問うと、マーシーは大興奮しながら我らの方を向いた。
「買い取るに決まってるじゃない!こんなの、数ヶ月分の魔鉱石よ!これだけあれば魔道具もたくさん作れるし、新しい研究だってできるわ!ありがとうみんな!」
魔鉱石を抱きしめながらくるくるとその場で踊るように回転しだすマーシー。それが人形だったら可愛らしい少女だったかもしれないが、あいにく無骨な鉱石の塊である。
「やったであるなぁ。で、これいくらくらいになるのだ?」
完全に自分の世界に入ってしまったマーシーを放って、グロンの方に問いかけてみる。グロンは外れかけたメガネをかけ直し、ひどく冷静な口調で返答してくる。
「そうですね。このレベルの魔鉱石一つでおおよそ5000シルバー、つまり5ゴールド。この場にある魔鉱石の純度はほとんど変わらないみたいですね。で、この量ですと‥‥‥たぶん100ゴールドにはなると思いますよ」
ほー、ほー、それってどんくらい?」
「家が1件買えます」
ふーん、そーなんだ。すげえ。我はいつのまにか後頭部を床に打ち付けていた。
「え、ウーロさん!?ウーロさん!!」
「今度はウーロが気絶した‥‥‥!」
‥‥‥きゅぅ。
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