74 / 176
第2章〜不死編〜
第73話「役立たず」
しおりを挟む
「え、君話聞いてた?わたしに魔鉱石を流すと、面倒ごとに巻き込まれるかもしれないのよ?」
「うむ。しかし、本当にそうかの?」
我が聞き返すと、マーシーは首を傾げて疑問符を浮かべた。たしかに流通を独占できるほどの大きな商会に目をつけられるのはデメリットかもしれん。
が、決して我らにマイナスばかりが付属するわけではないのだ。
「話を聞く限り、要するに商会が冒険者ギルドから供給される魔鉱石を独占しているのだろ」
「えぇそうだけど」
「つまりだ。それだけだろ。別にマーシーが生産する魔道具が増えたり、儲けを増したところでブリッツ商会が知るすべはないということだ。マーシーが仲介役に魔道具を売ってるのはマンドであるし、ブリッツ商会は関係ないだろう。マーシーが負担を抱える可能性は極めて低いのではないか?」
「‥‥‥わかってるじゃない。そうよ。この提案は、わたしに良いことがあるだけで、アンタたちに負担が残るだけで‥‥‥」
「しかし我らは昨日リメットに来たばかりだぞ」
何がいいたいの?とますます表情を困らせるマーシー。色々感が鈍いの。シオンはすでに我が言いたいことを察したのか「なるほど」と呟いて両手を叩いた。
シオンはなかなか閃きというか、考える力と呼べば良いのか?ともかく賢いので言わずとも理解してくれたようだ。
ちなみにサエラは真顔でうんうんと頷いているが、仕草が我が喋り出したタイミングからスタートしてるので、たぶんわかってない。
アレはわかったフリだ。
「わたしたちは昨日冒険者登録したばかりのFランカー下っ端冒険者。ブリッツ商会さんがわたしたちの存在を知るはずが無いんです。だからわたしたちがダンジョンで魔鉱石を採って、マーシーさんに売っても問題ないってことですね」
シオンが我の代わりに説明してくれた。うむ、その通りである。我らは所詮流れ者。小さな村ならともかく、大都市に拠点を立てる大商会が我らのような一般人を事細かに把握するはずがないし、理由もない。接点もないしの。
仮に我らが昔からこのリメットで活動していた冒険者なら、もしかしたら目をつけられたかもしれんがな。
ブリッツ商会は魔鉱石を独占してるだけで、マーシーの商売を邪魔してるわけではない。販売もマンドが都市の外で行なっている。
だからマーシーが魔鉱石に困らなくなっても、彼らはそんなこと知らないのだ。
そうなると我らは仲介料を通さずにこなした依頼によって、相場よりも高い報酬金を得ることができ、さらには腕の良い魔道具職人とのコネもできるのだ。ほら、良いことづくめではないか。
我がシオンに続けてそう伝えると、サエラはうんうんと無表情で頷いた。
「さすがウーロ。私も同じこと考えてた」
嘘つけ。
「俺も俺も」
ガルム、お前まで。
「いいの?わたし、魔族よ?」
戸惑いを含めた声でそう聞いてくる。うーむ、彼女の言うように、我らが人間であれば違った印象や見方をしていたかもしれん。が、あいにく我らはみんな戦争とは無縁の種族しかおらんので。
「気にせん気にせん。こちとらドラゴンであるし」
「わたしたちもエルフですし、魔族とは敵対関係ではありませんでしたしね」
まぁ、戦争から数百年経ってるというのに、未だに根付いている魔族と人間との溝はおそらく戦争以前の問題なのだろうが。
あえて言う必要もない。そこまで深い事情を知るわけでもないので。
「てゆうかウーロさん、今回は冴えてましたね。珍しくいい意見言っだと思いますよ」
そうだろうそうだろう。シオンに褒められ、我はニマニマと笑みを浮かべて胸を張る。もっと褒めて良いのだぞ。
するとガルムとサエラがほぼ棒読みに近い口調でシオンに同調した。
「私もそう思う」
「俺もそう思う」
「お主らちょいと黙っとれ」
この頭弱い組め。いや、ガルムは頭が悪いわけではないが、今回ばかりは我が上手だったということだ。
「‥‥‥わかった。そこまで言ってくれるなら、あなたたちを頼ってみようと思うわ」
「お、そうかそうか。それはありがたいの」
マーシーの承諾に我は嬉しく笑みを浮かべた。さて、そうなるとここからが問題だ。これから最も重要な質問を彼女にしなければならない。我は改めてマーシーを見上げた。
「ところで魔鉱石って、どうやって入手するのだ?」
サエラ以外の全員がガクンと首を落とした。え、何?みんなどうしたの?
ガルムが我にこう言ってきた。
「お前、魔鉱石の入手方法もわからねえのにあんな自信満々に言ってたのかよ」
「だって知らんもん。ダンジョンで、どのように手に入れれば良いのだ?」
「そりゃ、掘るんだよ」
掘る?我はガルムの言ってることがわからずに首を傾げた。ガルムは手の動作で簡易的に教えようと努力した。
ツルハシという棒の先端に鋭く尖ったと平べったく伸びたシャベルに似た部分がある採掘用の道具らしい。
冒険者はそれを小型化したピッケルなるもので地面や岩を掘り、魔鉱石を採掘するのだという。
ふむふむなるほど。我は頷き、あることに気付いた。
「あれ、我掘れなくね?」
それは明らかに我の手では握ることができない道具であった。‥‥‥詰んだ。
「うむ。しかし、本当にそうかの?」
我が聞き返すと、マーシーは首を傾げて疑問符を浮かべた。たしかに流通を独占できるほどの大きな商会に目をつけられるのはデメリットかもしれん。
が、決して我らにマイナスばかりが付属するわけではないのだ。
「話を聞く限り、要するに商会が冒険者ギルドから供給される魔鉱石を独占しているのだろ」
「えぇそうだけど」
「つまりだ。それだけだろ。別にマーシーが生産する魔道具が増えたり、儲けを増したところでブリッツ商会が知るすべはないということだ。マーシーが仲介役に魔道具を売ってるのはマンドであるし、ブリッツ商会は関係ないだろう。マーシーが負担を抱える可能性は極めて低いのではないか?」
「‥‥‥わかってるじゃない。そうよ。この提案は、わたしに良いことがあるだけで、アンタたちに負担が残るだけで‥‥‥」
「しかし我らは昨日リメットに来たばかりだぞ」
何がいいたいの?とますます表情を困らせるマーシー。色々感が鈍いの。シオンはすでに我が言いたいことを察したのか「なるほど」と呟いて両手を叩いた。
シオンはなかなか閃きというか、考える力と呼べば良いのか?ともかく賢いので言わずとも理解してくれたようだ。
ちなみにサエラは真顔でうんうんと頷いているが、仕草が我が喋り出したタイミングからスタートしてるので、たぶんわかってない。
アレはわかったフリだ。
「わたしたちは昨日冒険者登録したばかりのFランカー下っ端冒険者。ブリッツ商会さんがわたしたちの存在を知るはずが無いんです。だからわたしたちがダンジョンで魔鉱石を採って、マーシーさんに売っても問題ないってことですね」
シオンが我の代わりに説明してくれた。うむ、その通りである。我らは所詮流れ者。小さな村ならともかく、大都市に拠点を立てる大商会が我らのような一般人を事細かに把握するはずがないし、理由もない。接点もないしの。
仮に我らが昔からこのリメットで活動していた冒険者なら、もしかしたら目をつけられたかもしれんがな。
ブリッツ商会は魔鉱石を独占してるだけで、マーシーの商売を邪魔してるわけではない。販売もマンドが都市の外で行なっている。
だからマーシーが魔鉱石に困らなくなっても、彼らはそんなこと知らないのだ。
そうなると我らは仲介料を通さずにこなした依頼によって、相場よりも高い報酬金を得ることができ、さらには腕の良い魔道具職人とのコネもできるのだ。ほら、良いことづくめではないか。
我がシオンに続けてそう伝えると、サエラはうんうんと無表情で頷いた。
「さすがウーロ。私も同じこと考えてた」
嘘つけ。
「俺も俺も」
ガルム、お前まで。
「いいの?わたし、魔族よ?」
戸惑いを含めた声でそう聞いてくる。うーむ、彼女の言うように、我らが人間であれば違った印象や見方をしていたかもしれん。が、あいにく我らはみんな戦争とは無縁の種族しかおらんので。
「気にせん気にせん。こちとらドラゴンであるし」
「わたしたちもエルフですし、魔族とは敵対関係ではありませんでしたしね」
まぁ、戦争から数百年経ってるというのに、未だに根付いている魔族と人間との溝はおそらく戦争以前の問題なのだろうが。
あえて言う必要もない。そこまで深い事情を知るわけでもないので。
「てゆうかウーロさん、今回は冴えてましたね。珍しくいい意見言っだと思いますよ」
そうだろうそうだろう。シオンに褒められ、我はニマニマと笑みを浮かべて胸を張る。もっと褒めて良いのだぞ。
するとガルムとサエラがほぼ棒読みに近い口調でシオンに同調した。
「私もそう思う」
「俺もそう思う」
「お主らちょいと黙っとれ」
この頭弱い組め。いや、ガルムは頭が悪いわけではないが、今回ばかりは我が上手だったということだ。
「‥‥‥わかった。そこまで言ってくれるなら、あなたたちを頼ってみようと思うわ」
「お、そうかそうか。それはありがたいの」
マーシーの承諾に我は嬉しく笑みを浮かべた。さて、そうなるとここからが問題だ。これから最も重要な質問を彼女にしなければならない。我は改めてマーシーを見上げた。
「ところで魔鉱石って、どうやって入手するのだ?」
サエラ以外の全員がガクンと首を落とした。え、何?みんなどうしたの?
ガルムが我にこう言ってきた。
「お前、魔鉱石の入手方法もわからねえのにあんな自信満々に言ってたのかよ」
「だって知らんもん。ダンジョンで、どのように手に入れれば良いのだ?」
「そりゃ、掘るんだよ」
掘る?我はガルムの言ってることがわからずに首を傾げた。ガルムは手の動作で簡易的に教えようと努力した。
ツルハシという棒の先端に鋭く尖ったと平べったく伸びたシャベルに似た部分がある採掘用の道具らしい。
冒険者はそれを小型化したピッケルなるもので地面や岩を掘り、魔鉱石を採掘するのだという。
ふむふむなるほど。我は頷き、あることに気付いた。
「あれ、我掘れなくね?」
それは明らかに我の手では握ることができない道具であった。‥‥‥詰んだ。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
たとえ番でないとしても
豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」
「違います!」
私は叫ばずにはいられませんでした。
「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」
──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。
※1/4、短編→長編に変更しました。
婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?
荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」
そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。
「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」
「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」
「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」
「は?」
さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。
荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります!
第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。
表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる