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第2章〜不死編〜

第73話「役立たず」

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「え、君話聞いてた?わたしに魔鉱石を流すと、面倒ごとに巻き込まれるかもしれないのよ?」

「うむ。しかし、本当にそうかの?」

 我が聞き返すと、マーシーは首を傾げて疑問符を浮かべた。たしかに流通を独占できるほどの大きな商会に目をつけられるのはデメリットかもしれん。
 が、決して我らにマイナスばかりが付属するわけではないのだ。

「話を聞く限り、要するに商会が冒険者ギルドから供給される魔鉱石を独占しているのだろ」

「えぇそうだけど」

「つまりだ。それだけだろ。別にマーシーが生産する魔道具が増えたり、儲けを増したところでブリッツ商会が知るすべはないということだ。マーシーが仲介役に魔道具を売ってるのはマンドであるし、ブリッツ商会は関係ないだろう。マーシーが負担を抱える可能性は極めて低いのではないか?」

「‥‥‥わかってるじゃない。そうよ。この提案は、わたしに良いことがあるだけで、アンタたちに負担が残るだけで‥‥‥」

「しかし我らは昨日リメットに来たばかりだぞ」

 何がいいたいの?とますます表情を困らせるマーシー。色々感が鈍いの。シオンはすでに我が言いたいことを察したのか「なるほど」と呟いて両手を叩いた。
 シオンはなかなか閃きというか、考える力と呼べば良いのか?ともかく賢いので言わずとも理解してくれたようだ。

 ちなみにサエラは真顔でうんうんと頷いているが、仕草が我が喋り出したタイミングからスタートしてるので、たぶんわかってない。
 アレはわかったフリだ。

「わたしたちは昨日冒険者登録したばかりのFランカー下っ端冒険者。ブリッツ商会さんがわたしたちの存在を知るはずが無いんです。だからわたしたちがダンジョンで魔鉱石を採って、マーシーさんに売っても問題ないってことですね」

 シオンが我の代わりに説明してくれた。うむ、その通りである。我らは所詮流れ者。小さな村ならともかく、大都市に拠点を立てる大商会が我らのような一般人を事細かに把握するはずがないし、理由もない。接点もないしの。

 仮に我らが昔からこのリメットで活動していた冒険者なら、もしかしたら目をつけられたかもしれんがな。
 ブリッツ商会は魔鉱石を独占してるだけで、マーシーの商売を邪魔してるわけではない。販売もマンドが都市の外で行なっている。
 だからマーシーが魔鉱石に困らなくなっても、彼らはそんなこと知らないのだ。

 そうなると我らは仲介料を通さずにこなした依頼によって、相場よりも高い報酬金を得ることができ、さらには腕の良い魔道具職人とのコネもできるのだ。ほら、良いことづくめではないか。

 我がシオンに続けてそう伝えると、サエラはうんうんと無表情で頷いた。

「さすがウーロ。私も同じこと考えてた」

 嘘つけ。

「俺も俺も」

 ガルム、お前まで。

「いいの?わたし、魔族よ?」

 戸惑いを含めた声でそう聞いてくる。うーむ、彼女の言うように、我らが人間であれば違った印象や見方をしていたかもしれん。が、あいにく我らはみんな戦争とは無縁の種族しかおらんので。

「気にせん気にせん。こちとらドラゴンであるし」

「わたしたちもエルフですし、魔族とは敵対関係ではありませんでしたしね」

 まぁ、戦争から数百年経ってるというのに、未だに根付いている魔族と人間との溝はおそらく戦争以前の問題なのだろうが。
 あえて言う必要もない。そこまで深い事情を知るわけでもないので。
 
「てゆうかウーロさん、今回は冴えてましたね。珍しくいい意見言っだと思いますよ」

そうだろうそうだろう。シオンに褒められ、我はニマニマと笑みを浮かべて胸を張る。もっと褒めて良いのだぞ。
 するとガルムとサエラがほぼ棒読みに近い口調でシオンに同調した。

「私もそう思う」

「俺もそう思う」

「お主らちょいと黙っとれ」

 この頭弱い組め。いや、ガルムは頭が悪いわけではないが、今回ばかりは我が上手だったということだ。

「‥‥‥わかった。そこまで言ってくれるなら、あなたたちを頼ってみようと思うわ」

「お、そうかそうか。それはありがたいの」

 マーシーの承諾に我は嬉しく笑みを浮かべた。さて、そうなるとここからが問題だ。これから最も重要な質問を彼女にしなければならない。我は改めてマーシーを見上げた。

「ところで魔鉱石って、どうやって入手するのだ?」

 サエラ以外の全員がガクンと首を落とした。え、何?みんなどうしたの?
 ガルムが我にこう言ってきた。

「お前、魔鉱石の入手方法もわからねえのにあんな自信満々に言ってたのかよ」

「だって知らんもん。ダンジョンで、どのように手に入れれば良いのだ?」

「そりゃ、掘るんだよ」

 掘る?我はガルムの言ってることがわからずに首を傾げた。ガルムは手の動作で簡易的に教えようと努力した。
 ツルハシという棒の先端に鋭く尖ったと平べったく伸びたシャベルに似た部分がある採掘用の道具らしい。
 冒険者はそれを小型化したピッケルなるもので地面や岩を掘り、魔鉱石を採掘するのだという。

 ふむふむなるほど。我は頷き、あることに気付いた。

「あれ、我掘れなくね?」

 それは明らかに我の手では握ることができない道具であった。‥‥‥詰んだ。





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