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第2章〜不死編〜

第67話「見てわかんないの?」

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「冒険者ギルドっつーのはな、元々の発祥は商業ギルドなんだよ」

 あらかた冒険者とのあいさつ?らしきことが済んだガルムは、依頼の完遂や冒険者登録することができる受付まで案内してくれた。
 といってもギルドはかなりの広さを誇るので、受付まで結構かかる。受付が遠いのはなかなか謎だが、そういうものなのだからしかたない。
 ガルムは受付に到着するまで、冒険者ギルドがどういうものなのかを教えてくれた。

 冒険者が誕生したのは戦後直後。
 かつて冒険者は単なる傭兵で、商業ギルドという商人たちの組合組織に雇われるだけの存在だった。
 商人が街へ移動するときの護衛、薬剤師が危険な森にある植物の採取を頼んだりと、傭兵の存在は欠かせなかったそうだ。

 しかし、魔王軍との戦争が終わって状況は一変した。原因は兵士である。
 数千と続いた戦争のために過剰なほど増やした兵士たちを、戦いが終わった後も維持し続けるのが不可能だったのだ。
 なんでも10のうち8人は兵士という時代だったらしい。国は戦後の立て直しやら復興やらで金がなく、無駄に増やした兵士たちの食い扶持に困ったそうだ。

 当然のごとく大量の兵士をクビにしたのだが、仕事がなくなるということは金がないということ。金がなければ飯は食えん。
 皆が皆故郷に帰れるわけではなかった。強制的な徴兵は遠い土地からの出身者もいて、彼らは頼れる人たちがいなかった。
 戦争帰りで生半可に力のある者たちが飢餓に困れば、その先は野盗まがいの犯罪者である。

 そこで商業ギルドは傭兵を独立化させ、あぶれた元兵士たちを吸収して巨大な派遣型の組織を作ったのである。それが冒険者ギルド。
 商業ギルドだけではなく、民間や国に傭兵を貸すことで冒険者にも商業ギルドにも利益をもたらした。これによって野盗化した兵士は激減したそうだ。

 無論、慈善事業ではない。野盗は交易する商人の天敵であったし、それを減らすことを目的としていたのだ。まぁ結果的に良い方向に転んだ。

「‥‥‥人間ってのは大変であるの」

 結構ブラックな設立理由であった。もうちょっとロマンあふれる誕生かと思ってた。

「ドラゴンには、そういう苦労はないんですか?お仕事とか」

 シオンが聞いてくるが、そもそも生態系の頂点に君臨するドラゴンは雑食性でなんでも食べてはエネルギーに変える食性なのだ。
 環境がより良い場所なら飯を食わずに数年は過ごせる。我のような子竜は話は別だが。
 だからドラゴンは大抵は寝ては起きての繰り返しで、あんまり生活に困ってる竜を見かけることはない。
 幼年期が大変で、青年期以降はいーじーもーどといったところか。

「完全にニート」

 サエラ、それ我も傷つくからやめて。まぁドラゴンにも通貨の概念が生まれたら変わるのだろうが。
 そもそも人間ほど数もいないし、群れてもないから難しいだろうな。

「‥‥‥いいなぁ」

 メアリーがなんか言ったぞガルム。
 そんなこんな話していると、ようやく我らは受付にたどり着いた。入り口から5分くらいか。結構あるな。
 まずはガルムたちからの要件を終える。パーティリーダーのガルムがマンドからもらっていた判子付きの用紙を受付嬢に手渡す。

 やはり受け付けは組織の顔なのか、なかなか美人なお嬢さんがしてる。彼女はニコリと営業スマイルを浮かべ、ガルムから用紙を受け取った。
 見渡すと、受け付けは他にもある。 なーがい机が薄い壁で区切られていて、その数だけ受付嬢が向かい側に座っている。
 背後を見ると、そのまま受付嬢の後ろは冒険者ギルドの職員たちの仕事場につながっているのか、慌ただしく動き回る職員の姿とか、机とか書類の山が見えた。

「はい、Sランク冒険者パーティ《カヴァス》の皆さんお疲れ様です。パテラ商会の護衛任務完了です」

 受付嬢がおそらく硬貨のつまった袋をガルムに手渡した。ほんほん、ガルムたちはSランクパーティなのか。ぬんぬん。

「「Sランク!?」」

 我が頷いていると、シオンとサエラがすごく大きな声で叫んだので、我もびっくりした。なんだなんだ、どうした二人とも!

「うわぁびっくりした!どうしたのだ」

「え、えええSランクですよ!Sランク!なんでウーロさん平然としてるんですか!?」

「えぇ?」

 シオンがあり得ないという目で見てくるが、だってA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K‥‥‥めちゃくちゃ下ではないか。
 あれ?でもゴードンはAランカー冒険者であったよな?あれ?

「Sランクは、冒険者の最高ランク」

「‥‥‥サエラよ。それはAではないのか?なんでSなのだ?」

「す‥‥‥」

「す?」

Sスーパー冒険者?」

「なるほどわかった」

 わからんということがわかった。

「はっはー!驚いたか?そうだ俺様がSランクパーティ《カヴァス》のリーダーで、なんとSランカー冒険者だったのさ!」

「ガルムちゃん、この反応が見たいから黙ってたのよね」

「意地悪だ」

 ガルムのドヤ顔か腹立つし、ゴードンとメアリーがジト目でガルムをにらんでいる。
 そしてなぜか、シオンとサエラはガルムがSランカーと聞いてまた焦ってるし。すっげーあわあわしてる。サエラまでもが取り乱すとは‥‥‥。

「どのくらい強いのだ?Aランカーで勇者の半分じゃろ?」

「Sランカーとして認められる最低基準は、過去の勇者の戦闘レベルのラインなんですよ」

 マジかよ。我は思わず息を飲んだ。ということは、あれか?ガルムは勇者並みの戦闘力を有しているということか?うっそんマジで?

「そんなに強かったのお主?」

「‥‥‥ウーロさん中ボス枠なのに、相手の強さとか見てわかんないんですか」

 中ボスとか認めたくないが、まぁ竜王倒した後にラスボスの魔王がいるから納得はしといてやる。

「‥‥‥そんなんフィクションである。見るだけで強さなんか分かるわけないのだ」

 見るだけで相手の動作とかオーラとか見て‥‥‥ほぉ。とかできるわけないじゃん。
 戦わなきゃわかんないって。それにガルムの魔力は並程度だし。するとサエラがとんでもないことを口にした。

「中ボスは所詮中ボス」


 だまりやがれ。


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