68 / 176
第2章〜不死編〜
第67話「見てわかんないの?」
しおりを挟む
「冒険者ギルドっつーのはな、元々の発祥は商業ギルドなんだよ」
あらかた冒険者とのあいさつ?らしきことが済んだガルムは、依頼の完遂や冒険者登録することができる受付まで案内してくれた。
といってもギルドはかなりの広さを誇るので、受付まで結構かかる。受付が遠いのはなかなか謎だが、そういうものなのだからしかたない。
ガルムは受付に到着するまで、冒険者ギルドがどういうものなのかを教えてくれた。
冒険者が誕生したのは戦後直後。
かつて冒険者は単なる傭兵で、商業ギルドという商人たちの組合組織に雇われるだけの存在だった。
商人が街へ移動するときの護衛、薬剤師が危険な森にある植物の採取を頼んだりと、傭兵の存在は欠かせなかったそうだ。
しかし、魔王軍との戦争が終わって状況は一変した。原因は兵士である。
数千と続いた戦争のために過剰なほど増やした兵士たちを、戦いが終わった後も維持し続けるのが不可能だったのだ。
なんでも10のうち8人は兵士という時代だったらしい。国は戦後の立て直しやら復興やらで金がなく、無駄に増やした兵士たちの食い扶持に困ったそうだ。
当然のごとく大量の兵士をクビにしたのだが、仕事がなくなるということは金がないということ。金がなければ飯は食えん。
皆が皆故郷に帰れるわけではなかった。強制的な徴兵は遠い土地からの出身者もいて、彼らは頼れる人たちがいなかった。
戦争帰りで生半可に力のある者たちが飢餓に困れば、その先は野盗まがいの犯罪者である。
そこで商業ギルドは傭兵を独立化させ、あぶれた元兵士たちを吸収して巨大な派遣型の組織を作ったのである。それが冒険者ギルド。
商業ギルドだけではなく、民間や国に傭兵を貸すことで冒険者にも商業ギルドにも利益をもたらした。これによって野盗化した兵士は激減したそうだ。
無論、慈善事業ではない。野盗は交易する商人の天敵であったし、それを減らすことを目的としていたのだ。まぁ結果的に良い方向に転んだ。
「‥‥‥人間ってのは大変であるの」
結構ブラックな設立理由であった。もうちょっとロマンあふれる誕生かと思ってた。
「ドラゴンには、そういう苦労はないんですか?お仕事とか」
シオンが聞いてくるが、そもそも生態系の頂点に君臨するドラゴンは雑食性でなんでも食べてはエネルギーに変える食性なのだ。
環境がより良い場所なら飯を食わずに数年は過ごせる。我のような子竜は話は別だが。
だからドラゴンは大抵は寝ては起きての繰り返しで、あんまり生活に困ってる竜を見かけることはない。
幼年期が大変で、青年期以降はいーじーもーどといったところか。
「完全にニート」
サエラ、それ我も傷つくからやめて。まぁドラゴンにも通貨の概念が生まれたら変わるのだろうが。
そもそも人間ほど数もいないし、群れてもないから難しいだろうな。
「‥‥‥いいなぁ」
メアリーがなんか言ったぞガルム。
そんなこんな話していると、ようやく我らは受付にたどり着いた。入り口から5分くらいか。結構あるな。
まずはガルムたちからの要件を終える。パーティリーダーのガルムがマンドからもらっていた判子付きの用紙を受付嬢に手渡す。
やはり受け付けは組織の顔なのか、なかなか美人なお嬢さんがしてる。彼女はニコリと営業スマイルを浮かべ、ガルムから用紙を受け取った。
見渡すと、受け付けは他にもある。 なーがい机が薄い壁で区切られていて、その数だけ受付嬢が向かい側に座っている。
背後を見ると、そのまま受付嬢の後ろは冒険者ギルドの職員たちの仕事場につながっているのか、慌ただしく動き回る職員の姿とか、机とか書類の山が見えた。
「はい、Sランク冒険者パーティ《カヴァス》の皆さんお疲れ様です。パテラ商会の護衛任務完了です」
受付嬢がおそらく硬貨のつまった袋をガルムに手渡した。ほんほん、ガルムたちはSランクパーティなのか。ぬんぬん。
「「Sランク!?」」
我が頷いていると、シオンとサエラがすごく大きな声で叫んだので、我もびっくりした。なんだなんだ、どうした二人とも!
「うわぁびっくりした!どうしたのだ」
「え、えええSランクですよ!Sランク!なんでウーロさん平然としてるんですか!?」
「えぇ?」
シオンがあり得ないという目で見てくるが、だってA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K‥‥‥めちゃくちゃ下ではないか。
あれ?でもゴードンはAランカー冒険者であったよな?あれ?
「Sランクは、冒険者の最高ランク」
「‥‥‥サエラよ。それはAではないのか?なんでSなのだ?」
「す‥‥‥」
「す?」
「S冒険者?」
「なるほどわかった」
わからんということがわかった。
「はっはー!驚いたか?そうだ俺様がSランクパーティ《カヴァス》のリーダーで、なんとSランカー冒険者だったのさ!」
「ガルムちゃん、この反応が見たいから黙ってたのよね」
「意地悪だ」
ガルムのドヤ顔か腹立つし、ゴードンとメアリーがジト目でガルムをにらんでいる。
そしてなぜか、シオンとサエラはガルムがSランカーと聞いてまた焦ってるし。すっげーあわあわしてる。サエラまでもが取り乱すとは‥‥‥。
「どのくらい強いのだ?Aランカーで勇者の半分じゃろ?」
「Sランカーとして認められる最低基準は、過去の勇者の戦闘レベルのラインなんですよ」
マジかよ。我は思わず息を飲んだ。ということは、あれか?ガルムは勇者並みの戦闘力を有しているということか?うっそんマジで?
「そんなに強かったのお主?」
「‥‥‥ウーロさん中ボス枠なのに、相手の強さとか見てわかんないんですか」
中ボスとか認めたくないが、まぁ竜王倒した後にラスボスの魔王がいるから納得はしといてやる。
「‥‥‥そんなんフィクションである。見るだけで強さなんか分かるわけないのだ」
見るだけで相手の動作とかオーラとか見て‥‥‥ほぉ。とかできるわけないじゃん。
戦わなきゃわかんないって。それにガルムの魔力は並程度だし。するとサエラがとんでもないことを口にした。
「中ボスは所詮中ボス」
だまりやがれ。
あらかた冒険者とのあいさつ?らしきことが済んだガルムは、依頼の完遂や冒険者登録することができる受付まで案内してくれた。
といってもギルドはかなりの広さを誇るので、受付まで結構かかる。受付が遠いのはなかなか謎だが、そういうものなのだからしかたない。
ガルムは受付に到着するまで、冒険者ギルドがどういうものなのかを教えてくれた。
冒険者が誕生したのは戦後直後。
かつて冒険者は単なる傭兵で、商業ギルドという商人たちの組合組織に雇われるだけの存在だった。
商人が街へ移動するときの護衛、薬剤師が危険な森にある植物の採取を頼んだりと、傭兵の存在は欠かせなかったそうだ。
しかし、魔王軍との戦争が終わって状況は一変した。原因は兵士である。
数千と続いた戦争のために過剰なほど増やした兵士たちを、戦いが終わった後も維持し続けるのが不可能だったのだ。
なんでも10のうち8人は兵士という時代だったらしい。国は戦後の立て直しやら復興やらで金がなく、無駄に増やした兵士たちの食い扶持に困ったそうだ。
当然のごとく大量の兵士をクビにしたのだが、仕事がなくなるということは金がないということ。金がなければ飯は食えん。
皆が皆故郷に帰れるわけではなかった。強制的な徴兵は遠い土地からの出身者もいて、彼らは頼れる人たちがいなかった。
戦争帰りで生半可に力のある者たちが飢餓に困れば、その先は野盗まがいの犯罪者である。
そこで商業ギルドは傭兵を独立化させ、あぶれた元兵士たちを吸収して巨大な派遣型の組織を作ったのである。それが冒険者ギルド。
商業ギルドだけではなく、民間や国に傭兵を貸すことで冒険者にも商業ギルドにも利益をもたらした。これによって野盗化した兵士は激減したそうだ。
無論、慈善事業ではない。野盗は交易する商人の天敵であったし、それを減らすことを目的としていたのだ。まぁ結果的に良い方向に転んだ。
「‥‥‥人間ってのは大変であるの」
結構ブラックな設立理由であった。もうちょっとロマンあふれる誕生かと思ってた。
「ドラゴンには、そういう苦労はないんですか?お仕事とか」
シオンが聞いてくるが、そもそも生態系の頂点に君臨するドラゴンは雑食性でなんでも食べてはエネルギーに変える食性なのだ。
環境がより良い場所なら飯を食わずに数年は過ごせる。我のような子竜は話は別だが。
だからドラゴンは大抵は寝ては起きての繰り返しで、あんまり生活に困ってる竜を見かけることはない。
幼年期が大変で、青年期以降はいーじーもーどといったところか。
「完全にニート」
サエラ、それ我も傷つくからやめて。まぁドラゴンにも通貨の概念が生まれたら変わるのだろうが。
そもそも人間ほど数もいないし、群れてもないから難しいだろうな。
「‥‥‥いいなぁ」
メアリーがなんか言ったぞガルム。
そんなこんな話していると、ようやく我らは受付にたどり着いた。入り口から5分くらいか。結構あるな。
まずはガルムたちからの要件を終える。パーティリーダーのガルムがマンドからもらっていた判子付きの用紙を受付嬢に手渡す。
やはり受け付けは組織の顔なのか、なかなか美人なお嬢さんがしてる。彼女はニコリと営業スマイルを浮かべ、ガルムから用紙を受け取った。
見渡すと、受け付けは他にもある。 なーがい机が薄い壁で区切られていて、その数だけ受付嬢が向かい側に座っている。
背後を見ると、そのまま受付嬢の後ろは冒険者ギルドの職員たちの仕事場につながっているのか、慌ただしく動き回る職員の姿とか、机とか書類の山が見えた。
「はい、Sランク冒険者パーティ《カヴァス》の皆さんお疲れ様です。パテラ商会の護衛任務完了です」
受付嬢がおそらく硬貨のつまった袋をガルムに手渡した。ほんほん、ガルムたちはSランクパーティなのか。ぬんぬん。
「「Sランク!?」」
我が頷いていると、シオンとサエラがすごく大きな声で叫んだので、我もびっくりした。なんだなんだ、どうした二人とも!
「うわぁびっくりした!どうしたのだ」
「え、えええSランクですよ!Sランク!なんでウーロさん平然としてるんですか!?」
「えぇ?」
シオンがあり得ないという目で見てくるが、だってA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K‥‥‥めちゃくちゃ下ではないか。
あれ?でもゴードンはAランカー冒険者であったよな?あれ?
「Sランクは、冒険者の最高ランク」
「‥‥‥サエラよ。それはAではないのか?なんでSなのだ?」
「す‥‥‥」
「す?」
「S冒険者?」
「なるほどわかった」
わからんということがわかった。
「はっはー!驚いたか?そうだ俺様がSランクパーティ《カヴァス》のリーダーで、なんとSランカー冒険者だったのさ!」
「ガルムちゃん、この反応が見たいから黙ってたのよね」
「意地悪だ」
ガルムのドヤ顔か腹立つし、ゴードンとメアリーがジト目でガルムをにらんでいる。
そしてなぜか、シオンとサエラはガルムがSランカーと聞いてまた焦ってるし。すっげーあわあわしてる。サエラまでもが取り乱すとは‥‥‥。
「どのくらい強いのだ?Aランカーで勇者の半分じゃろ?」
「Sランカーとして認められる最低基準は、過去の勇者の戦闘レベルのラインなんですよ」
マジかよ。我は思わず息を飲んだ。ということは、あれか?ガルムは勇者並みの戦闘力を有しているということか?うっそんマジで?
「そんなに強かったのお主?」
「‥‥‥ウーロさん中ボス枠なのに、相手の強さとか見てわかんないんですか」
中ボスとか認めたくないが、まぁ竜王倒した後にラスボスの魔王がいるから納得はしといてやる。
「‥‥‥そんなんフィクションである。見るだけで強さなんか分かるわけないのだ」
見るだけで相手の動作とかオーラとか見て‥‥‥ほぉ。とかできるわけないじゃん。
戦わなきゃわかんないって。それにガルムの魔力は並程度だし。するとサエラがとんでもないことを口にした。
「中ボスは所詮中ボス」
だまりやがれ。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
たとえ番でないとしても
豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」
「違います!」
私は叫ばずにはいられませんでした。
「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」
──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。
※1/4、短編→長編に変更しました。
婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?
荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」
そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。
「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」
「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」
「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」
「は?」
さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。
荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります!
第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。
表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる