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第1章〜ウロボロス復活〜
第41話「KYA」
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「うわぁぁあああああああ!?」
周囲を覆い尽くすほどの大爆発に巻き込まれた我は、ゴロゴロとボールのように地面を転がった。
転がってる最中、小石があったのか地面の出っ張りに当たり、バウンドして後頭部が地面にぶつかる。
それで動きはブレーキして止まったが、頭の受けた衝撃は無視できるものではなかった。
割と死ぬ勢いだったのだが、なんともない。頭を触ってみるともふもふしたものが我の頭をガードしていた。こ、これはアフロ!?
アフロが衝突の衝撃を吸収してくれたのか。た、助かった‥‥‥。
「あははっ、すごーい!これ受けてもまだよゆーなんだー?」
「いや、これはふざけてるんじゃなくて、体質的な問題なのだ!」
愉快そうにケラケラ笑いながら近寄ってくるカスミに、我は慌てて弁解するために叫んだ。
好きでアフロを生やしたわけじゃない。が、今の一撃の効果はわかったのは大きい。
我のアフロは基本的に一瞬高熱に当てられ、爆風が起きるほどの十分な衝撃によって生み出される。
つまりカスミの使う攻撃は炎系ということだ。
ふむふむ、え?属性わかったからどうしろっての?え、え、どうしよう。
我が対策を考える間にも、カスミは幽鬼のようにふらふらとした足取りで距離を詰めてくる。
今の一撃によって、我は確信したのだ。ぜっっっったいに勝てない。全盛期ならともかく、弱体化した我では足元にも及ばないだろう。
こうなったら、我の生き残る手段はただ一つ!説得でなんとかするしかない!!
「待て!カスミ!」
「やだ」
うそん。話し合いにも応じてくれず、困った我は後ずさった。
「ちょちょちょ、まってまってタンマタンマ!取引!取引しないか!?」
「んー?」
我が必死にそう言うと、今度は興味を持ってくれたのかカスミの動きが止まった。よしよし、こうなれば我の圧倒的な話術によって解決できるぞ!
「お、お主の欲しいものはなんだ?金か?竜の素材か?」
まずは懐柔。相手の欲するものを、我が容易に与えてみせるのだ。そうすれば我を倒す理由もなくなるという寸法よ。
「あたしはねぇ、あたしより強い相手がほしいの」
‥‥‥詰んだ。
「だから、ね?ウロボロス。あたしを倒してよ。じゃないと死んじゃうよー?」
「ま、待て!!」
再び剣を振るおうと歩き始めたカスミに対し、我は再び静止するよう手を伸ばした。
先程話を聞いてくれたからか、またカスミは動きを止めてくれた。よしよし、我の術中にハマりおってしめしめ。
我はカスミが止まっている隙に後ろへ振り向き、そのまま有無言わず全力疾走して逃走を図った。後ろからカスミの「あっ」って声が聞こえたが、無視無視!
「うははははははは!!ばーかめ!待てと言われて待つバカがどこにおるかバァァァアカ!!」
「あははー!おもしろいねー、ウロボロス」
「むぎゃん!?」
逃げていたはずだったのだが、カスミのセリフが言い終わるとなぜか我は地面にめり込むように転んでしまった。
しかも不可解なことに、倒れたまま一切動けない。まるで上から重い何かに押しつぶされているかのように。潰れたカエルのような悲鳴をあげ、我は地面に固定されたのだ。
「こ、これは‥‥‥一体‥‥‥!?」
何が起きたのか全くわからず、困惑しているとクスクスと笑うカスミが隣にしゃがんで目線を近づけてきた。
「すごいでしょー?ふふふ、あたし物を重くしたり、軽くしたりできるんだよー。こんな感じに‥‥‥『グラビティ』」
「ぬおおおお!?」
カスミが最後の言葉を強調しながら口にすると、その言葉に連動するように我の体が重みを増した。
そうか、炎系ではない。この娘の得意な魔法は重力系統だったのか‥‥‥!
人間に限らず、魔法が操れる生物は特定の得意分野である魔法の属性がある。
その得意分野は個人によって千差万別だ。だいたい一つの得意があって、サブとして2、3種類の属性魔法が並みに使える。それが魔法使いの常識である。
カスミの魔法は重力系統。サブに炎系を持っている魔法使いなのだ!
「な、なぜ」
「?」
「なぜ我がウロボロスだとわかったのだ‥‥‥!?」
純粋な疑問をもって尋ねると、カスミは人差し指を口に当て、少し考えるとニコッと微笑みながら答えてくれた。
「神父さまが言ってたんだー。巫女姫って人が、復活のこと教えてくれたの」
脳裏に浮かんだのはあのメリーアという老婆のエルフ。やはりあれのせいで我の存在は露見してしまったらしい。
選択を間違えた。友だのうんぬんを惜しむ前に、この村を立ち去るべきだった。‥‥‥。
「お主は、何処かの国の戦士なのか?」
「あたしはねぇ、ブルム皇国って国の勇者」
‥‥‥勇者?カスミが?そうか、そうだったのか‥‥‥。ならばこの圧倒的な力も頷ける。
世界の最高峰に位置する戦力を、我にぶつけてきたというわけか。我が弱ってるかどうかは二の次で、確実に仕留められるように最高戦力を送ってきたのだ。
たしかに我では勝てない。が、一つ疑問がある。
「ふん!!」
「ぶっ!?」
重力の重りに縛られたまま、我は尻から煙が上がるほどの放屁をかました。ドラゴンはブレスを吐くという性質もあって、体内にはガスが溜まりやすいのだ。
オナラをまともに食らったカスミはギュッと鼻を抑えた。
「くーさーいー!」
その瞬間、グラビティの拘束が解けた。集中力を乱されたためか。我はまた全力で逃走を図った。向かう先は村ではなく、木々の密集した森の中。
すぐ追いつかれるだろうが、時間を稼がねば。
「追いかけっこ?ふふふ、待ってー」
カスミは自分より強い存在を欲していた。多分適当に吐いた言葉ではなく、何処かに本音があったはずだ。
単純に我を仕留めようとしてるわけではない。なら付け入る隙はある。
逃げつつ、カスミをなんとかこちら側に抱き込むことができれば、我にも勝機はある!
今はカスミとどれくらい距離があるのかちょいと確認するために振り返ってみると、彼女はまた大きく剣を振り、そこに膨大なエネルギーを集約させ、解き放っている瞬間だった。
それは最初に我を吹き飛ばした閃光とまるで同じ。
あれ、必殺技じゃないんかい。と思いつつ、我はまた吹き飛ばされ、無様な頭部を晒した。
周囲を覆い尽くすほどの大爆発に巻き込まれた我は、ゴロゴロとボールのように地面を転がった。
転がってる最中、小石があったのか地面の出っ張りに当たり、バウンドして後頭部が地面にぶつかる。
それで動きはブレーキして止まったが、頭の受けた衝撃は無視できるものではなかった。
割と死ぬ勢いだったのだが、なんともない。頭を触ってみるともふもふしたものが我の頭をガードしていた。こ、これはアフロ!?
アフロが衝突の衝撃を吸収してくれたのか。た、助かった‥‥‥。
「あははっ、すごーい!これ受けてもまだよゆーなんだー?」
「いや、これはふざけてるんじゃなくて、体質的な問題なのだ!」
愉快そうにケラケラ笑いながら近寄ってくるカスミに、我は慌てて弁解するために叫んだ。
好きでアフロを生やしたわけじゃない。が、今の一撃の効果はわかったのは大きい。
我のアフロは基本的に一瞬高熱に当てられ、爆風が起きるほどの十分な衝撃によって生み出される。
つまりカスミの使う攻撃は炎系ということだ。
ふむふむ、え?属性わかったからどうしろっての?え、え、どうしよう。
我が対策を考える間にも、カスミは幽鬼のようにふらふらとした足取りで距離を詰めてくる。
今の一撃によって、我は確信したのだ。ぜっっっったいに勝てない。全盛期ならともかく、弱体化した我では足元にも及ばないだろう。
こうなったら、我の生き残る手段はただ一つ!説得でなんとかするしかない!!
「待て!カスミ!」
「やだ」
うそん。話し合いにも応じてくれず、困った我は後ずさった。
「ちょちょちょ、まってまってタンマタンマ!取引!取引しないか!?」
「んー?」
我が必死にそう言うと、今度は興味を持ってくれたのかカスミの動きが止まった。よしよし、こうなれば我の圧倒的な話術によって解決できるぞ!
「お、お主の欲しいものはなんだ?金か?竜の素材か?」
まずは懐柔。相手の欲するものを、我が容易に与えてみせるのだ。そうすれば我を倒す理由もなくなるという寸法よ。
「あたしはねぇ、あたしより強い相手がほしいの」
‥‥‥詰んだ。
「だから、ね?ウロボロス。あたしを倒してよ。じゃないと死んじゃうよー?」
「ま、待て!!」
再び剣を振るおうと歩き始めたカスミに対し、我は再び静止するよう手を伸ばした。
先程話を聞いてくれたからか、またカスミは動きを止めてくれた。よしよし、我の術中にハマりおってしめしめ。
我はカスミが止まっている隙に後ろへ振り向き、そのまま有無言わず全力疾走して逃走を図った。後ろからカスミの「あっ」って声が聞こえたが、無視無視!
「うははははははは!!ばーかめ!待てと言われて待つバカがどこにおるかバァァァアカ!!」
「あははー!おもしろいねー、ウロボロス」
「むぎゃん!?」
逃げていたはずだったのだが、カスミのセリフが言い終わるとなぜか我は地面にめり込むように転んでしまった。
しかも不可解なことに、倒れたまま一切動けない。まるで上から重い何かに押しつぶされているかのように。潰れたカエルのような悲鳴をあげ、我は地面に固定されたのだ。
「こ、これは‥‥‥一体‥‥‥!?」
何が起きたのか全くわからず、困惑しているとクスクスと笑うカスミが隣にしゃがんで目線を近づけてきた。
「すごいでしょー?ふふふ、あたし物を重くしたり、軽くしたりできるんだよー。こんな感じに‥‥‥『グラビティ』」
「ぬおおおお!?」
カスミが最後の言葉を強調しながら口にすると、その言葉に連動するように我の体が重みを増した。
そうか、炎系ではない。この娘の得意な魔法は重力系統だったのか‥‥‥!
人間に限らず、魔法が操れる生物は特定の得意分野である魔法の属性がある。
その得意分野は個人によって千差万別だ。だいたい一つの得意があって、サブとして2、3種類の属性魔法が並みに使える。それが魔法使いの常識である。
カスミの魔法は重力系統。サブに炎系を持っている魔法使いなのだ!
「な、なぜ」
「?」
「なぜ我がウロボロスだとわかったのだ‥‥‥!?」
純粋な疑問をもって尋ねると、カスミは人差し指を口に当て、少し考えるとニコッと微笑みながら答えてくれた。
「神父さまが言ってたんだー。巫女姫って人が、復活のこと教えてくれたの」
脳裏に浮かんだのはあのメリーアという老婆のエルフ。やはりあれのせいで我の存在は露見してしまったらしい。
選択を間違えた。友だのうんぬんを惜しむ前に、この村を立ち去るべきだった。‥‥‥。
「お主は、何処かの国の戦士なのか?」
「あたしはねぇ、ブルム皇国って国の勇者」
‥‥‥勇者?カスミが?そうか、そうだったのか‥‥‥。ならばこの圧倒的な力も頷ける。
世界の最高峰に位置する戦力を、我にぶつけてきたというわけか。我が弱ってるかどうかは二の次で、確実に仕留められるように最高戦力を送ってきたのだ。
たしかに我では勝てない。が、一つ疑問がある。
「ふん!!」
「ぶっ!?」
重力の重りに縛られたまま、我は尻から煙が上がるほどの放屁をかました。ドラゴンはブレスを吐くという性質もあって、体内にはガスが溜まりやすいのだ。
オナラをまともに食らったカスミはギュッと鼻を抑えた。
「くーさーいー!」
その瞬間、グラビティの拘束が解けた。集中力を乱されたためか。我はまた全力で逃走を図った。向かう先は村ではなく、木々の密集した森の中。
すぐ追いつかれるだろうが、時間を稼がねば。
「追いかけっこ?ふふふ、待ってー」
カスミは自分より強い存在を欲していた。多分適当に吐いた言葉ではなく、何処かに本音があったはずだ。
単純に我を仕留めようとしてるわけではない。なら付け入る隙はある。
逃げつつ、カスミをなんとかこちら側に抱き込むことができれば、我にも勝機はある!
今はカスミとどれくらい距離があるのかちょいと確認するために振り返ってみると、彼女はまた大きく剣を振り、そこに膨大なエネルギーを集約させ、解き放っている瞬間だった。
それは最初に我を吹き飛ばした閃光とまるで同じ。
あれ、必殺技じゃないんかい。と思いつつ、我はまた吹き飛ばされ、無様な頭部を晒した。
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