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第1章〜ウロボロス復活〜
第34話「もしも」
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強い力で体が押さえつけられる。ある程度の相手であれば子竜の我でも敵ではないのだが、こやつには何も考えずに力を使うことなどできない。
それに、元々力も強かった。我では争うことすらできぬほどに。
我は自分を押さえている人物に向かって、悲痛に叫んだ。
「なぜだ?なぜこんなことを‥‥‥シオン!」
目だけを上に向ける。
我を押さえるシオンは人形のように無表情で、感情を全く感じられない。
いや、感情は伝わる。800年前からずっと向けられ続けてきた、欲にまみれたどす黒い感情。
なぜ、なぜシオンが‥‥‥。
「ごめんなさい。ウーロさん。仕方ないんです」
我が果てしない絶望に溺れていると、前方から刃物を鞘から出す音と、足音が聞こえてくる。
今度はそっちを見ると、シオンと同じような顔をしたサエラが小太刀を抜きながら我に歩み寄ってきていた。
まさか、お主まで‥‥‥。
「ごめんね」
なぜだ‥‥‥なぜだ。信じてたのに、信じてたのにっ!!
「っ!!!?」
眼が覚めると見慣れた光景が視界を覆っていた。
棚を埋め尽くす大量の本。なんだか小難しい文字の羅列が施された文書が乗った机。
そして間抜けそうな顔で我を抱いて寝るシオンの寝顔。
「‥‥‥」
「すぴー、すぴー、ふがっ」
豚みたいなシオンの寝言で我はさっきまでの光景が現実のものではないと理解できた。
ゆ、夢か‥‥‥。そうだ、夢である。我が見ていたものは夢なのだ。こちらが現実で、先ほどの光景は想像の産物である。
我は大きく息を吐いた。
あぁ、とんでもない悪夢であった。
「うぇえへへへ」
そうだ。こんな間抜けな寝言を吐くシオンが、あんな冷酷なことをするはずがないのだ。ははは。
というか、なんとなく後ろを向いてみるとサエラまでもが同じ布団出て寝ていた。こちらは穏やかな寝顔である。普段大人びた顔をしているからか、寝顔は年相応に緩んだものだ。
「うへへ、ダメですよぉ~ウーロさん」
なぜサエラが同じ布団で寝ているのか疑問しかないが、とりあえず些細な問題だと判断した。
普段見せないふぬけた顔をするサエラのほっぺを突いてみたりと遊んでいると、我を抱くシオンから呼ぶ声が聞こえた。
起きてバレたかと思ったが、見てみるとどうやら寝言を吐いただけのようだ。我が夢に出ているらしい。
「うんちは廊下でしちゃダメって、いつも言ってるじゃないですかぁ」
ふっざけんな。
「ふん!」
「うぎゃぁぁあ!!」
シオンドリームでは我は本当にペットらしいが、許しておけんので思いっきり頭を引っ叩いた。するとシオンは槍にでも刺されたような断末魔をあげ、キョロキョロと辺りを見渡した。そして我と目が合う。
「な、なんですか!?敵襲!?敵ですか!」
「ちがう。お主の言ってたUMAのスカイフィッシュとやらが窓から入ってきて、頭に乗ったのだ」
「マジですか!?」
信じるなバカチンめ。
「はぁー」
井戸から水を組み上げ、ばちゃばちゃと乱暴に顔を洗う。空気と水が混じり、肌に弾けて水滴が飛ぶ。
散らばった水がまるで睡魔をも吸い取っていったかのように、我の感覚はまどろみから抜け出した。あぁ、おはよう。
ゴシゴシと布で顔を拭いたら終わりだ。眠気もだるさも消え失せた‥‥‥が、悪夢で感じた不愉快な気分は払拭されない。
「最悪な夢を見たのだ」
ひどい夢だ。まさかシオンとサエラが我を殺そうとする夢を見るなど‥‥‥。
最低だ。最低すぎる。我は心のどこかで彼女らを信じていなかったということなのか?
いや、2人を語れるほど我はあの子らを知っているとも言えない。まだまだ知らないことばかりだ。
でもだからと言って‥‥‥あー!我って奴はぁ!
「おはよ」
むがぁ!と頭を抱えて唸っているとサエラが目元をこすりながら近寄ってきた。
半目であったいつもの目は完全に閉じられていて、ふらふらと歩く様子は転びそうで危なっかしいが、そこは体が無意識にバランスをとっているようにと見えた。
おそらく肉体の練度があるから成せるのだろう。
意識は完全になまこであるが。
「お、おはようである」
「使っても良い?」
「‥‥‥うむ」
サエラは我から許可をとると、我が井戸から汲み上げ使ったバケツを手に取り、中にある余った水で顔を洗い始めた。
そうして何度か顔を濡らしたが、途端に動きを止めたと思うと口をキュッと縮めた。なんだどうした。
「布忘れた」
何も持ってないからまさかとは思ったが‥‥‥。
「‥‥‥我のでよければ使うか?」
「お願い」
目を閉じた顔を我の方に向けてくる。無言で「拭いて」と頼まれていることを察した我は、タオルの濡れてない部分でサエラの顔を拭った。
全く大きなペットの顔を拭いてる気分である。それくらい自分でしなさいな。
「ありがと」
「うむ」
あらかた拭き終わるとサエラからお礼を言われた。が、もう用はないはずのサエラは顔の洗浄が終わったというのにその場にとどまった。
ぼーっと何も考えてないタイプの無表情で、何もない先をジッと見てる。なにしてんのお主。
犬が天井とか廊下を見てとどまってる感じ。
‥‥‥今なら、少し聞いても良いかも知れん。タイミングだと我は思った。
もし、我が‥‥‥。
「のう、サエラ」
「ん?」
「もし我が、竜王ウロボロスだったら、どうする?」
「‥‥‥んー?ウーロがウロボロスだったら?」
「うむ」
今しがた開いて目を再び閉じて、うーんと思考に集中するサエラ。彼女も知ってるはずだ。我の素材が巨万の富を生み出し、それを何度も採取が可能。
眼が眩んでも仕方がない。それにこれは例え話。サエラがどんな回答をしてきても受け止める覚悟はできて
「食べる」
なぁに言ってんだおめぇ。
「寝起きのサエラはおバカなので、あんまりまともな答えは期待しない方が良いですよー」
シオンがあくびをしながらこちらに近寄ってくる。先ほどから我の言ったホラ話を信じ、スカイフィッシュなるものを探しに行ってたのだが戻ってきたらしい。
見つからんかったか、そりゃそうだ。だって嘘だもん。
そういえば、サエラは朝が苦手であったな。よし、ならばシオンに聞いてみよう。
「シオン。もし我がウロボロスだったら、どうする?」
「え、ウーロさんが竜王?」
唇に指を当て、空を見上げて考えるシオン。サエラよりかはまじめに考えてくれているようだ。
しかし次第に困った顔を作りだし、冷や汗がダラダラと溢れてくる。
何を想像しているのか知らんが、しばし間をおいてシオンの中で答えが浮かんだらしく、迷った表情で我を見た。
「た、たべる?」
お前ら一体竜王をなんだと思ってんの?
「意味がわからんわ!何だ食べるって!我を食う気か貴様ら!」
「ち、違いますよ!ほら、ウロボロスって不死身じゃないですか!だから尻尾の先を少しづつ切り取れば再生して、無限にお肉が取れるかなって」
家畜じゃんそれ!シオンのむちゃくちゃな言い草に我はムキー!と地団駄を踏み、不満をあらわにした。
「姉さん、それはひどいよ」
するとサエラがムッとした表情でシオンを見た。珍しくサエラがちょっとだけ怒った顔をしてシオンは驚く。
そうだ!サエラの言う通りだ!可哀想と思わないのか!一番最初に食べるって言ったのこいつだけど!
「食べるなら、屠殺までしっかりして」
ロクな意見じゃねぇ。
「なんなのだお主らー!結局我を食べるのかー!ムキィ!!」
「だ、だってウーロさんが竜王とか想像つかないんですもん!」
「それな」
失敬な!
「どこがだ!我めっちゃ威厳とかあるだろ!喋り方とか!」
であるという語尾とか、我とか一人称はめちゃくちゃ威厳が出てると思うのだ!これで喋ればすごく偉い感じに見えると思ってるのだ!完璧ではないか!
しかし、なぜかシオンは可哀想なモノを見るような目で我を見下ろすと、優しく肩に手を当てて言い聞かせる感じで我に語りかけた。
「ウーロさん。なんでわたしが敬語使ってるかわかりますか?」
「しらんわ!なんかあるのか?」
「小さい頃、頭いい子に見られたかったんです」
なにその頭わるい願望。
「もー!我はまじめに聞いてるのだぁ!我が竜王だったら売り払うとか、殺して素材を剥ぐとかあるだろ!」
我が叫ぶと、今度はサエラが諭すように我の方にポンと手を置いて、キリッとした顔でこう言った。
「ウーロ、こんな村じゃ金なんてケツ拭く紙にもならないよ」
そんなこと言うなよ。お金って大切だぞ。
「結局、ウーロさんが竜王だろうがどうしようもないですよね?」
「うん。だから何って感じ」
「別に態度とか変えませんし」
「むしろ誘拐されないか心配」
最終的にペチャクチャと2人で会話し始め、その内容を聴きながら我は空を大きく仰いだ。
なんか、まじめに悩んでたのがバカらしくなってきた‥‥‥。竜王って、なんだっけ?
それに、元々力も強かった。我では争うことすらできぬほどに。
我は自分を押さえている人物に向かって、悲痛に叫んだ。
「なぜだ?なぜこんなことを‥‥‥シオン!」
目だけを上に向ける。
我を押さえるシオンは人形のように無表情で、感情を全く感じられない。
いや、感情は伝わる。800年前からずっと向けられ続けてきた、欲にまみれたどす黒い感情。
なぜ、なぜシオンが‥‥‥。
「ごめんなさい。ウーロさん。仕方ないんです」
我が果てしない絶望に溺れていると、前方から刃物を鞘から出す音と、足音が聞こえてくる。
今度はそっちを見ると、シオンと同じような顔をしたサエラが小太刀を抜きながら我に歩み寄ってきていた。
まさか、お主まで‥‥‥。
「ごめんね」
なぜだ‥‥‥なぜだ。信じてたのに、信じてたのにっ!!
「っ!!!?」
眼が覚めると見慣れた光景が視界を覆っていた。
棚を埋め尽くす大量の本。なんだか小難しい文字の羅列が施された文書が乗った机。
そして間抜けそうな顔で我を抱いて寝るシオンの寝顔。
「‥‥‥」
「すぴー、すぴー、ふがっ」
豚みたいなシオンの寝言で我はさっきまでの光景が現実のものではないと理解できた。
ゆ、夢か‥‥‥。そうだ、夢である。我が見ていたものは夢なのだ。こちらが現実で、先ほどの光景は想像の産物である。
我は大きく息を吐いた。
あぁ、とんでもない悪夢であった。
「うぇえへへへ」
そうだ。こんな間抜けな寝言を吐くシオンが、あんな冷酷なことをするはずがないのだ。ははは。
というか、なんとなく後ろを向いてみるとサエラまでもが同じ布団出て寝ていた。こちらは穏やかな寝顔である。普段大人びた顔をしているからか、寝顔は年相応に緩んだものだ。
「うへへ、ダメですよぉ~ウーロさん」
なぜサエラが同じ布団で寝ているのか疑問しかないが、とりあえず些細な問題だと判断した。
普段見せないふぬけた顔をするサエラのほっぺを突いてみたりと遊んでいると、我を抱くシオンから呼ぶ声が聞こえた。
起きてバレたかと思ったが、見てみるとどうやら寝言を吐いただけのようだ。我が夢に出ているらしい。
「うんちは廊下でしちゃダメって、いつも言ってるじゃないですかぁ」
ふっざけんな。
「ふん!」
「うぎゃぁぁあ!!」
シオンドリームでは我は本当にペットらしいが、許しておけんので思いっきり頭を引っ叩いた。するとシオンは槍にでも刺されたような断末魔をあげ、キョロキョロと辺りを見渡した。そして我と目が合う。
「な、なんですか!?敵襲!?敵ですか!」
「ちがう。お主の言ってたUMAのスカイフィッシュとやらが窓から入ってきて、頭に乗ったのだ」
「マジですか!?」
信じるなバカチンめ。
「はぁー」
井戸から水を組み上げ、ばちゃばちゃと乱暴に顔を洗う。空気と水が混じり、肌に弾けて水滴が飛ぶ。
散らばった水がまるで睡魔をも吸い取っていったかのように、我の感覚はまどろみから抜け出した。あぁ、おはよう。
ゴシゴシと布で顔を拭いたら終わりだ。眠気もだるさも消え失せた‥‥‥が、悪夢で感じた不愉快な気分は払拭されない。
「最悪な夢を見たのだ」
ひどい夢だ。まさかシオンとサエラが我を殺そうとする夢を見るなど‥‥‥。
最低だ。最低すぎる。我は心のどこかで彼女らを信じていなかったということなのか?
いや、2人を語れるほど我はあの子らを知っているとも言えない。まだまだ知らないことばかりだ。
でもだからと言って‥‥‥あー!我って奴はぁ!
「おはよ」
むがぁ!と頭を抱えて唸っているとサエラが目元をこすりながら近寄ってきた。
半目であったいつもの目は完全に閉じられていて、ふらふらと歩く様子は転びそうで危なっかしいが、そこは体が無意識にバランスをとっているようにと見えた。
おそらく肉体の練度があるから成せるのだろう。
意識は完全になまこであるが。
「お、おはようである」
「使っても良い?」
「‥‥‥うむ」
サエラは我から許可をとると、我が井戸から汲み上げ使ったバケツを手に取り、中にある余った水で顔を洗い始めた。
そうして何度か顔を濡らしたが、途端に動きを止めたと思うと口をキュッと縮めた。なんだどうした。
「布忘れた」
何も持ってないからまさかとは思ったが‥‥‥。
「‥‥‥我のでよければ使うか?」
「お願い」
目を閉じた顔を我の方に向けてくる。無言で「拭いて」と頼まれていることを察した我は、タオルの濡れてない部分でサエラの顔を拭った。
全く大きなペットの顔を拭いてる気分である。それくらい自分でしなさいな。
「ありがと」
「うむ」
あらかた拭き終わるとサエラからお礼を言われた。が、もう用はないはずのサエラは顔の洗浄が終わったというのにその場にとどまった。
ぼーっと何も考えてないタイプの無表情で、何もない先をジッと見てる。なにしてんのお主。
犬が天井とか廊下を見てとどまってる感じ。
‥‥‥今なら、少し聞いても良いかも知れん。タイミングだと我は思った。
もし、我が‥‥‥。
「のう、サエラ」
「ん?」
「もし我が、竜王ウロボロスだったら、どうする?」
「‥‥‥んー?ウーロがウロボロスだったら?」
「うむ」
今しがた開いて目を再び閉じて、うーんと思考に集中するサエラ。彼女も知ってるはずだ。我の素材が巨万の富を生み出し、それを何度も採取が可能。
眼が眩んでも仕方がない。それにこれは例え話。サエラがどんな回答をしてきても受け止める覚悟はできて
「食べる」
なぁに言ってんだおめぇ。
「寝起きのサエラはおバカなので、あんまりまともな答えは期待しない方が良いですよー」
シオンがあくびをしながらこちらに近寄ってくる。先ほどから我の言ったホラ話を信じ、スカイフィッシュなるものを探しに行ってたのだが戻ってきたらしい。
見つからんかったか、そりゃそうだ。だって嘘だもん。
そういえば、サエラは朝が苦手であったな。よし、ならばシオンに聞いてみよう。
「シオン。もし我がウロボロスだったら、どうする?」
「え、ウーロさんが竜王?」
唇に指を当て、空を見上げて考えるシオン。サエラよりかはまじめに考えてくれているようだ。
しかし次第に困った顔を作りだし、冷や汗がダラダラと溢れてくる。
何を想像しているのか知らんが、しばし間をおいてシオンの中で答えが浮かんだらしく、迷った表情で我を見た。
「た、たべる?」
お前ら一体竜王をなんだと思ってんの?
「意味がわからんわ!何だ食べるって!我を食う気か貴様ら!」
「ち、違いますよ!ほら、ウロボロスって不死身じゃないですか!だから尻尾の先を少しづつ切り取れば再生して、無限にお肉が取れるかなって」
家畜じゃんそれ!シオンのむちゃくちゃな言い草に我はムキー!と地団駄を踏み、不満をあらわにした。
「姉さん、それはひどいよ」
するとサエラがムッとした表情でシオンを見た。珍しくサエラがちょっとだけ怒った顔をしてシオンは驚く。
そうだ!サエラの言う通りだ!可哀想と思わないのか!一番最初に食べるって言ったのこいつだけど!
「食べるなら、屠殺までしっかりして」
ロクな意見じゃねぇ。
「なんなのだお主らー!結局我を食べるのかー!ムキィ!!」
「だ、だってウーロさんが竜王とか想像つかないんですもん!」
「それな」
失敬な!
「どこがだ!我めっちゃ威厳とかあるだろ!喋り方とか!」
であるという語尾とか、我とか一人称はめちゃくちゃ威厳が出てると思うのだ!これで喋ればすごく偉い感じに見えると思ってるのだ!完璧ではないか!
しかし、なぜかシオンは可哀想なモノを見るような目で我を見下ろすと、優しく肩に手を当てて言い聞かせる感じで我に語りかけた。
「ウーロさん。なんでわたしが敬語使ってるかわかりますか?」
「しらんわ!なんかあるのか?」
「小さい頃、頭いい子に見られたかったんです」
なにその頭わるい願望。
「もー!我はまじめに聞いてるのだぁ!我が竜王だったら売り払うとか、殺して素材を剥ぐとかあるだろ!」
我が叫ぶと、今度はサエラが諭すように我の方にポンと手を置いて、キリッとした顔でこう言った。
「ウーロ、こんな村じゃ金なんてケツ拭く紙にもならないよ」
そんなこと言うなよ。お金って大切だぞ。
「結局、ウーロさんが竜王だろうがどうしようもないですよね?」
「うん。だから何って感じ」
「別に態度とか変えませんし」
「むしろ誘拐されないか心配」
最終的にペチャクチャと2人で会話し始め、その内容を聴きながら我は空を大きく仰いだ。
なんか、まじめに悩んでたのがバカらしくなってきた‥‥‥。竜王って、なんだっけ?
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