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 ヒューゴと会ってからしばらくして、ふたりは微妙な距離感で交流を重ねることになった。ただ、クレアは応えられないのにどうなのかと当初から思うところがあったのは否めない。ヒューゴの好意を、自分の心のケアに利用するのは躊躇われた。最初にはっきり、今後も期待に添えないと告げたのもある。
 言外にクレアの葛藤と距離を置かれる前兆を感じたのか、ヒューゴの方から断りがあった。
「私がハミルトンさんのお時間をいただいている立場です。もしよければ、ご挨拶したり、ハミルトンさんの気が向いたら、天気の話だけでもしていただけると、とても嬉しい……もちろん、私の勝手な望みですから、無理にお願いするものではありません……」
 ぎこちなく笑みをつくりながら、青年のカップにかけた指が震えているのを見て、クレアは結局黙った。
 番関連で話があったのはそれくらいだ。
 ヒューゴはそれ以上は言わなかった。
 負担になり、クレアが困ると思ったからだろう。
 毎回次の約束はしない。
 カフェで見かけたら挨拶したり、時間があれば友人知人の距離感で相席させてもらうことも少しずつ亀の歩みで増えてはいた。
 彼の方からアクションがあったとすれば、なにか困ったことがあれば、連絡先はこちらですので、遠慮なく使って下さいと言われたくらいか。
 時間を持て余すようになった昼の休憩時間に、もっと別のタイミングでこの人と出会っていたら、色々身分の障害はあるが、恋人になったり、もしかしたら結婚していたかもしれないと想像もすることはあった。
 でも、もし、はない。現在の状況をクレアはそのまま受け入れている。
 クレアは、番というものが受け入れられないと思った。
 ただもう、変に悲観的になったり、罪悪感に囚われたくない。
 クレアが一番嫌なのは、自分らしいとか自分らしくないとかそういうのではなくて、心ががんじがらめになることだった。
 生活スタイルがクレアの意思に反して行動範囲も狭まり、好んでいたものも口にできなくなった。
 本来申し訳ない、と対人関係でこんなに私は罪悪感がまず先に立つ人間だっただろうか。
 嫌なら嫌、と断ったし、希望があれば口にして交渉しただろう。
 今、クレアはどんどん可動域を自分で狭め、息苦しくて、自分が申し訳なくて、下を向いている。
 そんなの嫌だった。
 もし、後遺症がもっと酷いもので、職場を辞めざるを得なくなっていたら。体が動かなくて、家族を頼らなければならない状況になっていたら、とふと思ってぞっとする。
 面倒を見てもらわざるを得ない両親から、動けなくても子供を産んであげられるでしょうと、せめて残りの身体の機能を差し出すよう笑顔で圧力をかけられた場合、代理出産を断れただろうか。
 わからない……ううん、嘘だ。まったく体が動けなくなっていたら、たぶん私……了承していた。そうしないと生きていけないから。選択肢を投げられても、実質イエスしかない。そう思ってクレアは顔色を青くし、休憩時間を終えた。

 業務終了となり、ギルドを出る。日の落ちきる前、明るい内に帰りたい。今日はヒューゴと会いたくなかった。帰路を急ぐと、アパルトメントが見えてくる。ほっとした瞬間、建物の前に見慣れた小柄な人影を見つけ、クレアの足がとまった。クレアの知り合い――妹のコーデリアが、緊張した面持ちで、クレアを待っていたのだ。
 妹のコーデリアは、ハミルトン一家でクレア以外が持つきらきらとするピンク色の髪を、菫色のリボンで一本にまとめている。
 その腰には、上級精霊術師にしか携帯を許されない精霊石の光るワンドがぶら下げられているので、人々は年若い彼女に敬意の目を向けただろう。
 無才なクレアと違って、妹も双子の弟たちも才能に恵まれた。いや、天才と言ってもいいだろう。コーデリアは精霊王にアクセスし、契約も可能な魂の衣冠レベルが未来に期待されているし、弟たちはいずれソードマスターも夢ではないと言われている。
 ひるがえって、クレアは特に何らかの秀でた才能というのは生まれ持たなかった。
 でもだからなに? 世の中で必要とされている仕事は無数にある。家族からは大した仕事じゃないと一笑に付されるが、ギルド職員も、パン屋も、兵士も、清掃員、役人、みんな社会で必要とされる仕事に変わりない。必要だからと、その人の尊厳や心身の健康を損なう形で行われる仕事ではないのだ。
 どんなに必要と言われても、従兄弟とその夫の狼獣人の子どもを代理で産まされるのは、それこそ徹底的にクレアの自尊心が摩耗し、心身の健康が損なわれ、貧困となった場合でしかありえないと思う。
 だから、両親たちは、クレアの職場に勝手に退職届を出して選択肢を奪おうとした。そして、クレアの病床で、番のいない彼女の肉体を、後遺症は残るが子どもを産む機能は無事でよかった、と慰めたのだ。お詫びに、リオくんたちの子どもを産んであげたらどうだろうと。
 妹はこれで、みんな仲直りだね、と手を打った。
 その妹のコーデリアが、緊張した面持ちでクレアのアパルトメントの前に立っている。
「お姉ちゃん」
 クレアは問答無用に追い返したかったが、さすがに十歳以上も年の離れた学生の妹にやることではないとこらえた。
 どこまでその忍耐が保つか、自分でもわからんな、と思ったけれど。
「何の用?」
 できるだけ淡々と尋ねると、コーデリアは唇を引き結び、決意したように口を開いた。
「お姉ちゃんが、ヒューゴ……えっと、竜公子のヒューゴ・スターフェローのことね。私たち、同じパーティで……あ、お姉ちゃんは知らないだろうけど、才能のあるアカデミー生は特別枠でパーティを組まされて、国から依頼を受けて実践討伐とかもするの。だから私達、ずっと一緒にやってきたんだ」
「はあ」
 要領を得ないが、クレアは頷く。要するに、ヒューゴとコーデリアは知り合いらしい。なるほど、先日の経済新聞に、魔獣討伐メンバーで名前が並んでいたし、そうなのだろう。
 コーデリアは少し厳しい顔で、決心したように続ける。
「何かの間違い、だとは思うんだけど。お姉ちゃんが、ヒューゴに、番求婚されてたって……聞いて……もちろん本当は全然違うってわかってるつもり。お姉ちゃんも無責任な噂なんか迷惑だよね。ヒューゴって優しいから! そもそもお姉ちゃん適齢期過ぎてるもんね、弱い人をヒューゴって見捨てておけないから、お姉ちゃんほら、後遺症あるし、助けてもらったんでしょ? あはは、ごめん。一応、確認しに来たの」
「……」
 もう何からどう突っ込めばいいかわからない、とクレアは目が死んだ。逆に元気になってきたわ……と思う。妹はカンフル剤だったのかも。
 怒りは健康に効く。あー私、調子戻って来たかも、うん。
 問題は、個人的な番求婚の話を、ヒューゴに無断で、妹に肯定してしまっていいのかわからない点だ。
 クレアは顎に手を当て考えた。
「スターフェローさんに聞けば。私が勝手に答えるわけにもいかないし。彼が私の許しがいるとか言うなら、私は別に聞かれてもいいって言ってたと伝えておいて」
 いや、ヒューゴが逆に困るのではとも思ったが、やはり勝手に答える方がクレアとしては問題に感じたので訂正は控えた。
 対するコーデリアは、その金色の大きな目を見開き、しばし硬直する。クレアの回答が、言外に本当なのだと告げるものになっていたからだろう。
 コーデリアは、次第に事実が飲み込めてきたのか、呆然と口にする。
「なんで、お姉ちゃんなんか……」
 それはクレアが聞きたい。
 コーデリアの小さな唇がわななき、彼女は大きな金色の目に、みるみる涙を溜めた。
「酷い……お姉ちゃん酷いよ、私の方が先にヒューゴのこと好きだったのに……」
 恨みがましい目で、彼女はクレアを睨んだ。
「ヒューゴ、誰よりも私に優しくしてくれるんだ。うまくいってたのに、姉のくせに妹の番候補にちょっかいかけて恥ずかしくないの?! 年齢考えなよ、お姉ちゃんみっともない!」
 クレアはもう、聞き流している。本当に元気になってきたわ、とむしろ思っていた時だった。
のくせに……!」
 身体の欠損や、機能の不具合が出ている人に対して、侮蔑の意味で投げられる差別用語だ。
 しばらく意味が通らなくて、クレアは頭が空白になった。
 実の妹に、禁止された差別用語で、クレアは言われたのか。
 理解がようやく追いついてくる。
 思わずクレアは心臓のあたりを確かめた。
 心臓に、氷のナイフが突き刺さったかと思うような痛みだった。
 何か言おうとして、言葉につまる。
 クレアはびっくりしていた。 
 それは、クレア自身が、自分の後遺症を恥じていたからなのかもしれない。何一つ恥じることなく、被害者だと胸を張っているべきなのに、クレアの中の差別心が身体の障害を恥ずかしいと思わせ、自らに切りつけたのだ。
 後遺症が出ているのに、職場にしがみついていいのか。
 視力は、左目の視界欠損に釣られて、右目もこれから悪化すると医者に言われている。最悪失明する可能性があった。
 必要でないとされるのではないか。
 同僚たちの負担になっていないか。
 今はよい、これからは? 将来どうなる? 老後は? 目が見えなくなったらどうしよう。
 ……生きていていいのか。
 そんな不安や、自尊心の低下が、コーデリアが口にした侮蔑で、白日の下に腑分けするよう中身を剥き出しにされている。
 クレアは、自分の中から出てきたグロテスクな臓物を直視させられた。
 自分自身の差別意識、うしろめたさ、他人に迷惑をかけているのではないかという心配、将来への不安と恐怖心、あらゆるものがクレア自身に突き付けられている。
 クレアの動揺に気づいたのか、コーデリアは言い聞かせるように繰り返した。
「……皆きっと迷惑してるよ……ヒューゴは竜公子様なんだから、お姉ちゃんも、自分のまともじゃない体と年を考えて少しはわきまえなよ……若い男に舞い上がるのほんと恥ずかしい、みっともないよ」
 それから、急に罪悪感を覚えたのか、「今日はもう、帰るから。お姉ちゃんは、ちゃんと身を引いたほうがいいよ。ヒューゴにはふさわしい相手があると思う。傷つくのはお姉ちゃんだから、お姉ちゃんのことを思って言ってるから。年も年なんだし、ヒューゴにつきまとうのは止めてね」と早口で言うと、ワンドを腰から引き抜いた。あっという間にワンドを上位精霊術師の錫杖に変形させると、優雅な円の動きでふるう。
 風の精霊、シルフィードが空から落下し、白と緑の衣、領巾をたなびかせ、コーデリアの周りをくるくると旋回した。
 クレアには聞こえない、楽しそうに無音声で笑いながら、白と緑のらせんが渦巻く。高く、高く、やがて消え去った時には、コーデリアの姿はもう路上からいなくなっていた。
 転移術まで取得しているらしい。世間の人たちが言う通り、妹は天才だ。
 クレアはじっとコーデリアのいなくなったあたりを見つめていた。
 段々と視線は足元へ下がって来る。
 ぽつ、と黒い染みが路上にでき、ぽつ、ぽつ、と増えていく。
 クレアは、右手でぬぐおうとして、動かないのに耐えられなくなり、とうとうしゃくりあげた。
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