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アダムside
5話 初めての姿(11話後)
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メアリーさんに新しい子が働くことになったから、よろしくねと言われていた。だが、僕は新しい店員さんが入ろうと、そうで無かろうと、そこまで関わる機会はない。
それよりも、店員の方が僕とよろしくしたくないだろうと思える。だからこそ、僕がその新しく働くことになった店員について、メアリーさんにそれ以上言及することはなかった。
しばらく店が休みだったが、久しぶりに店がオープンした。メアリーさんからは2日目から来てくれと言われていたから、店がオープンして2日目に喫茶店へと出勤した。
僕は店の何でも屋のような仕事を任されている。だが、基本的に任されるのは店内業務ではなく、店の裏方仕事だ。畑の世話や、店の椅子や机などの備品整理、その他にも薪割りなどのさまざまな業務を任されている。
「さて、今日は畑の水やりをしたら、薪割りでもするか」
そう独り言ち、作業を開始した。作業開始して畑の水やりが終わり、次は薪を割ろうと畑の近くにある倉庫へと斧を取りに行った。そして、斧を手に取り倉庫から出たところで、ふと畑の方に人の気配がした。
――誰かいるのか?
そう思い、その気配の正体を確かめようと畑の方に視線をやると、まさかのシェリーがそこにいた。
――え……!? シェリーがここにいるってことはもしかして、今日からここで働く子ってシェリーのことだったのか!?
ここ最近、丘の上であった時のシェリーとの会話を思い返してみた。働き始める時期も、店のオープンの情報と合わせると辻褄が合う。
――シェリーと一緒に働けるなんて、すごく喜ばしいことじゃないか!
まさかこんなことがあるなんて……!
シェリーは僕にとっての唯一の友人だ。絶対に声をかけるしかないだろう。そう思い、シェリーに声をかけた。
「シェリー! 今日から働く子って君のことだったんだね!」
そう言いながら手を振ったが、とんでもなく恐ろしいものを見てしまったというような顔をして、シェリーは走って逃げて行ってしまった。
――え、どうしてシェリー逃げるの……。
いつもニコニコと笑いかけて、楽しい話をしてくれるシェリーのあんなに怯えた表情は初めて見た。初めて会ったときも、シェリーは怖がった表情をしていなかった。
手を振りながら声までかけたのに、シェリーが逃げてしまったことにショックを受け、頭に手が触れた瞬間、ハッとその謎が解けた。
――あっ……!
仮面を付けているうえに、斧まで持ってるから僕めちゃくちゃ不審者どころか、凶悪犯罪者みたいじゃないか!
そりゃあ、仮面を付けた僕の姿を知らないシェリーは逃げて当然だ!
シェリーが誤解する前に、追いかけないと……!
そう思い、急いで斧を手放して彼女を追いかけるべく店内へと入って行った。すると、案の定シェリーは怯えて慌てた様子で、メアリーさんに何やら話をしていた。
でも、僕が店内に入ってきたことでメアリーさんはすべてを察し理解してくれた。そして、店の入り口に立っている僕に微笑みかけると、メアリーさんは僕に対しこっちに来るようにと手招いた。
それよりも、店員の方が僕とよろしくしたくないだろうと思える。だからこそ、僕がその新しく働くことになった店員について、メアリーさんにそれ以上言及することはなかった。
しばらく店が休みだったが、久しぶりに店がオープンした。メアリーさんからは2日目から来てくれと言われていたから、店がオープンして2日目に喫茶店へと出勤した。
僕は店の何でも屋のような仕事を任されている。だが、基本的に任されるのは店内業務ではなく、店の裏方仕事だ。畑の世話や、店の椅子や机などの備品整理、その他にも薪割りなどのさまざまな業務を任されている。
「さて、今日は畑の水やりをしたら、薪割りでもするか」
そう独り言ち、作業を開始した。作業開始して畑の水やりが終わり、次は薪を割ろうと畑の近くにある倉庫へと斧を取りに行った。そして、斧を手に取り倉庫から出たところで、ふと畑の方に人の気配がした。
――誰かいるのか?
そう思い、その気配の正体を確かめようと畑の方に視線をやると、まさかのシェリーがそこにいた。
――え……!? シェリーがここにいるってことはもしかして、今日からここで働く子ってシェリーのことだったのか!?
ここ最近、丘の上であった時のシェリーとの会話を思い返してみた。働き始める時期も、店のオープンの情報と合わせると辻褄が合う。
――シェリーと一緒に働けるなんて、すごく喜ばしいことじゃないか!
まさかこんなことがあるなんて……!
シェリーは僕にとっての唯一の友人だ。絶対に声をかけるしかないだろう。そう思い、シェリーに声をかけた。
「シェリー! 今日から働く子って君のことだったんだね!」
そう言いながら手を振ったが、とんでもなく恐ろしいものを見てしまったというような顔をして、シェリーは走って逃げて行ってしまった。
――え、どうしてシェリー逃げるの……。
いつもニコニコと笑いかけて、楽しい話をしてくれるシェリーのあんなに怯えた表情は初めて見た。初めて会ったときも、シェリーは怖がった表情をしていなかった。
手を振りながら声までかけたのに、シェリーが逃げてしまったことにショックを受け、頭に手が触れた瞬間、ハッとその謎が解けた。
――あっ……!
仮面を付けているうえに、斧まで持ってるから僕めちゃくちゃ不審者どころか、凶悪犯罪者みたいじゃないか!
そりゃあ、仮面を付けた僕の姿を知らないシェリーは逃げて当然だ!
シェリーが誤解する前に、追いかけないと……!
そう思い、急いで斧を手放して彼女を追いかけるべく店内へと入って行った。すると、案の定シェリーは怯えて慌てた様子で、メアリーさんに何やら話をしていた。
でも、僕が店内に入ってきたことでメアリーさんはすべてを察し理解してくれた。そして、店の入り口に立っている僕に微笑みかけると、メアリーさんは僕に対しこっちに来るようにと手招いた。
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