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49 戻るための方法
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頭のてっぺんからつま先まで、絶望という絶望が私を襲った。
二度と戻りたくないと思っていた陛下の元に、また戻って来るだなんて……。
受け入れたくない現実に頭を抱える。だが、我に返った私は辺りを見回した。
「アール、ベリー、どこ?」
誰かが来てはいけないと、小さな声で二人の名を呼ぶ。
すると、突然私のポケットがムズムズと動き始めた。かと思えば、まるでシマエナガのような見目をした、金色の鳥が飛び出した。
「キャッ」
驚き過ぎて出た声を押さえるように、慌てて自分の口を両手で塞ぐ。すると、その金色の鳥はぴょんぴょんと飛んで、私の目の前へと移動した。
「オーロラ、無事でよかったわ」
「えっ、もしかして……ルニーさん?」
なぜこんなに小さくなっているのだろうか。そもそも、いつの間に私のポケットの中に入っていたのだろう。
「なんでっ……」
「ヴァルド様にオーロラを見守るよう頼まれていたのよ」
「でも、今日はヴァルド様について行きましたよね?」
「ええ。でも、途中で様子を見に行ったら家に居ないから、飛んで探してたの」
何か異変を感じたのだろうか。運がよかったというべきか、悪かったというべきか……。
「そしたら、双子とオーロラが光の檻に囲まれるのが見えて、急いであなたのポケットに入り込んだの」
ルニーさんはそう言うと、小さい羽で飛び上がり、私の肩にちょこんと止まった。
突然誰かがこの部屋に入ってきたとして、もしこの状況を見たらどう思うだろうか。
鉄格子があって窓を開けられない部屋なのに、どこからともなくやってきた鳥。不審以外の何ものでもない。
「ルニーさん、もし誰かに見られたら困ります。とりあえず隠れてください」
どこか隠れられる場所はないだろうかと、私は部屋をぐるりと見回す。
すると突然、私の視界をルニーさんが遮った。
「大丈夫。私は姿を隠せるわ」
彼女がそう言うと、私の視界を遮るものはなくなり、ルニーさんの向こう側の景色が明瞭に見えた。
「ほんとだ」
「でしょう? ちなみにだけれど、今目覚めたこの子たちは姿を顕現させられないから、目で探しても見つからないわよ」
「この子たち?」
誰のことを言っているのか。そう首を傾げた時、私の耳元で聞き馴染みのある声がささやいた。
「ボクたちは、ここでは肉体を保てないから思念体になって見えなくなるんだ」
「オーロラさん、安心してくださいです」
二人の声が聞こえ、姿が無かった理由が分かり、私はホッと胸を撫でおろした。
「よかった。ベリーとアールもいたのね!」
小声で叫ぶと、二人の肯定する声が両サイドから聞こえた。
そのときだった。
ガチャ――
本能的に嫌悪を抱く音に、思わず背筋が凍り付く。
直後、私がもっとも見たくなかった顔が、扉の隙間からにゅっと現れた。
「オーロラっ!」
彼を直視するのが辛すぎて、軽く目を伏せる。ふと、シドが結んでくれたリボンが目に入った。
――隠さないと!
焦りながら、それとなくリボンをポケットに入れる。
するとちょうどそのタイミングで、私の名を呼ぶなり駆けだした陛下が、断りもなくギュッと抱き締めてきた。
陛下独特の甘ったるい香りが鼻腔に充満する。
その瞬間、今までのトラウマが一気に蘇り、目の前が真っ暗になるような気持ちになった。
そこからは、私は無の境地を徹底した。
一方的な話を聞いていると、どうやら私がいなくなってからも、日付は進んでいるようだと判明した。
また驚くべきことに、ロイス陛下たちの中では、私も普通に生活を送っていたと記憶されていた。
よって、私が消えたことにより罰せられた人は、一人もいなかった。それが分かり、私の心には安堵の念が広がった。
――本当によかった……。
そう一安心していると、陛下が口を開いた。
「オーロラ、少しだけまた席を外さないといけないんだ。寂しい思いをさせてすまないが、待っていてくれ」
誰が寂しいものか。一生席を外してくれ。
そう思うも言葉にはせず、私は部屋を出る彼をそれは丁寧に見送った。
――今のうちに、シドのところに戻る方法を考えないと!
姿を消していたルニーさんが顕現したのを合図に、私は秘密の作戦会議を開いた。
「ルニーさん、どうやったらシドのところに戻れるか分かりますか? すぐに行かないといけないんですっ……」
どうやってするのかは分からないが、早く戻らないとシドが死神姫と結婚させられてしまう。
それだけは、なんとしてでも避けなければ。
どうか知っていて。
そう念じながらルニーさんの言葉を待っていると、彼女は少し間を置き、口を開いた。
「天界や中有界に行くには、神殿の中の礼拝堂に行かないといけないの。あちらと繋がりやすい場所だから」
「繋がりやすい場所?」
いきなりスピリチュアルなうさん臭い話をされて、本当かと疑ってしまいそうになる。
しかし、中有界にいた身分としては、信じざるを得なかった。
「この近くにそう言った場所はある?」
「確か、この城に繋がる神殿で、前にチラッと礼拝堂を見かけました」
「じゃあ、場所はそこで問題ないわね。ただ……一つほかにも問題があるの」
正直いって、この監禁されている状態で礼拝堂に行くだなんて、至難の業だ。
行ける可能性よりも、行けない可能性の方がずっと高い。
それだけでもとてつもない障害だというのに、まだ超えるべき障害があるのかと気が遠くなる。
しかし、シドを助けるためにはそんな泣き言なんて言っていられない。
「問題とはいったいどのような……?」
気を引き締めてルニーさんに訊ねる。
すると、彼女は鳥とは思えないほど困った顔になり、気まずそうに告げた。
「礼拝堂に行ったとしても、天界か中有界にあったモノが無ければあちらに行くことはできないの。戻りたいなら、あちらの世界のモノが必要よ」
二度と戻りたくないと思っていた陛下の元に、また戻って来るだなんて……。
受け入れたくない現実に頭を抱える。だが、我に返った私は辺りを見回した。
「アール、ベリー、どこ?」
誰かが来てはいけないと、小さな声で二人の名を呼ぶ。
すると、突然私のポケットがムズムズと動き始めた。かと思えば、まるでシマエナガのような見目をした、金色の鳥が飛び出した。
「キャッ」
驚き過ぎて出た声を押さえるように、慌てて自分の口を両手で塞ぐ。すると、その金色の鳥はぴょんぴょんと飛んで、私の目の前へと移動した。
「オーロラ、無事でよかったわ」
「えっ、もしかして……ルニーさん?」
なぜこんなに小さくなっているのだろうか。そもそも、いつの間に私のポケットの中に入っていたのだろう。
「なんでっ……」
「ヴァルド様にオーロラを見守るよう頼まれていたのよ」
「でも、今日はヴァルド様について行きましたよね?」
「ええ。でも、途中で様子を見に行ったら家に居ないから、飛んで探してたの」
何か異変を感じたのだろうか。運がよかったというべきか、悪かったというべきか……。
「そしたら、双子とオーロラが光の檻に囲まれるのが見えて、急いであなたのポケットに入り込んだの」
ルニーさんはそう言うと、小さい羽で飛び上がり、私の肩にちょこんと止まった。
突然誰かがこの部屋に入ってきたとして、もしこの状況を見たらどう思うだろうか。
鉄格子があって窓を開けられない部屋なのに、どこからともなくやってきた鳥。不審以外の何ものでもない。
「ルニーさん、もし誰かに見られたら困ります。とりあえず隠れてください」
どこか隠れられる場所はないだろうかと、私は部屋をぐるりと見回す。
すると突然、私の視界をルニーさんが遮った。
「大丈夫。私は姿を隠せるわ」
彼女がそう言うと、私の視界を遮るものはなくなり、ルニーさんの向こう側の景色が明瞭に見えた。
「ほんとだ」
「でしょう? ちなみにだけれど、今目覚めたこの子たちは姿を顕現させられないから、目で探しても見つからないわよ」
「この子たち?」
誰のことを言っているのか。そう首を傾げた時、私の耳元で聞き馴染みのある声がささやいた。
「ボクたちは、ここでは肉体を保てないから思念体になって見えなくなるんだ」
「オーロラさん、安心してくださいです」
二人の声が聞こえ、姿が無かった理由が分かり、私はホッと胸を撫でおろした。
「よかった。ベリーとアールもいたのね!」
小声で叫ぶと、二人の肯定する声が両サイドから聞こえた。
そのときだった。
ガチャ――
本能的に嫌悪を抱く音に、思わず背筋が凍り付く。
直後、私がもっとも見たくなかった顔が、扉の隙間からにゅっと現れた。
「オーロラっ!」
彼を直視するのが辛すぎて、軽く目を伏せる。ふと、シドが結んでくれたリボンが目に入った。
――隠さないと!
焦りながら、それとなくリボンをポケットに入れる。
するとちょうどそのタイミングで、私の名を呼ぶなり駆けだした陛下が、断りもなくギュッと抱き締めてきた。
陛下独特の甘ったるい香りが鼻腔に充満する。
その瞬間、今までのトラウマが一気に蘇り、目の前が真っ暗になるような気持ちになった。
そこからは、私は無の境地を徹底した。
一方的な話を聞いていると、どうやら私がいなくなってからも、日付は進んでいるようだと判明した。
また驚くべきことに、ロイス陛下たちの中では、私も普通に生活を送っていたと記憶されていた。
よって、私が消えたことにより罰せられた人は、一人もいなかった。それが分かり、私の心には安堵の念が広がった。
――本当によかった……。
そう一安心していると、陛下が口を開いた。
「オーロラ、少しだけまた席を外さないといけないんだ。寂しい思いをさせてすまないが、待っていてくれ」
誰が寂しいものか。一生席を外してくれ。
そう思うも言葉にはせず、私は部屋を出る彼をそれは丁寧に見送った。
――今のうちに、シドのところに戻る方法を考えないと!
姿を消していたルニーさんが顕現したのを合図に、私は秘密の作戦会議を開いた。
「ルニーさん、どうやったらシドのところに戻れるか分かりますか? すぐに行かないといけないんですっ……」
どうやってするのかは分からないが、早く戻らないとシドが死神姫と結婚させられてしまう。
それだけは、なんとしてでも避けなければ。
どうか知っていて。
そう念じながらルニーさんの言葉を待っていると、彼女は少し間を置き、口を開いた。
「天界や中有界に行くには、神殿の中の礼拝堂に行かないといけないの。あちらと繋がりやすい場所だから」
「繋がりやすい場所?」
いきなりスピリチュアルなうさん臭い話をされて、本当かと疑ってしまいそうになる。
しかし、中有界にいた身分としては、信じざるを得なかった。
「この近くにそう言った場所はある?」
「確か、この城に繋がる神殿で、前にチラッと礼拝堂を見かけました」
「じゃあ、場所はそこで問題ないわね。ただ……一つほかにも問題があるの」
正直いって、この監禁されている状態で礼拝堂に行くだなんて、至難の業だ。
行ける可能性よりも、行けない可能性の方がずっと高い。
それだけでもとてつもない障害だというのに、まだ超えるべき障害があるのかと気が遠くなる。
しかし、シドを助けるためにはそんな泣き言なんて言っていられない。
「問題とはいったいどのような……?」
気を引き締めてルニーさんに訊ねる。
すると、彼女は鳥とは思えないほど困った顔になり、気まずそうに告げた。
「礼拝堂に行ったとしても、天界か中有界にあったモノが無ければあちらに行くことはできないの。戻りたいなら、あちらの世界のモノが必要よ」
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