探検の書

ぶちゃ丸/火取閃光

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第3章 Iランク冒険者

3-29 Iランク中層探索①

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 今日は、反省会からおよそ1ヶ月の月日が経った、ヘビのツキ・9日・コウテイのヒだ。最近まで天候が崩れ、雨の日が多く、少しジメジメとした日が続いた。

 結局、先月ドラゴンのツキでは、両親達一団の予定を変更する事が出来無かった。

 予定の空いた日程が、ヘビのツキ・12日・カンダイのヒ以降となり、その日から本格的に野営等の訓練を行う予定だ。今日は、その日に向けて実際にIランク迷宮中層を探索する予定だ。

 今日までのおよそ1ヶ月間に、各々の反省点や課題を行いながら、道具などの準備をしてきた。まず、前回の換金で得た報酬で、迷宮探索専用の大きな鞄を購入した。

「素材や魔石を入れる為の鞄を誰が持つか……つまり、荷物持ちを誰にするかなんだけど、暫定的に俺が持とうと思うんだけど、どう思う?」

 迷宮探索専用鞄を持った俺は、他のメンバーの役割上荷物持ちが難しいと考え、立候補する。

「いや、これは、みんなで交代して持った方が公平だと思うんだにゃ。リオ君ばかりに持たせたら、申し訳ないにゃ」

「だけどさ、ラート君やシルルちゃんは、前衛で荷物を持ったら役割を果たせないよ? ナートは中衛だから状況によっては、前衛に参加するよな?」

「そうだにゃ。う~ん、そうなると申し訳ないけど荷物持ちは、現状後衛のリオとメルルちゃんに、お願いする事になるにゃ。2人ともよろしくお願いしますにゃ」

「あはは~。別に良いよ~。でも、そうすると一団解散後は、荷物持ち専用の仲間も検討しなくちゃいけないね~。それか、父さんや母さんが持っている魔法鞄を購入するかの検討が必要だね~」

「確かにそうだねー。魔法鞄は、野営の準備物等や素材と魔石の2つは必要になるよね。冒険者ってお金掛かるわ」

 魔法鞄とは、空間魔法で鞄内の空間を拡張して、より沢山の荷物を収納出来る魔道具の分類に分けられている。

 一般的に①背負い鞄タイプと②腰ベルトポーチタイプの2つに分類されていて、どちらも見た目の数十倍の荷物を持ち運びする事が出来る。その為に、迷宮のランクが上がるほど必須となる道具の代名詞と言われている。

「シルルちゃん、本当それね。でも、昔アラン爺ちゃんが、Gランクで持っていなかったら似非Gランク冒険者だって言っていたから、多分俺達じゃ購入出来ないと思うよ」

「えー? リオ、それマジ? あーあ、お古で良いから父さん達、1つ譲ってくれないかなー?」

「シルルちゃんが、ガルダさんに言うと、本当に貰えそうだから怖いよ」

「みんな、話がズレているにゃ! リオ君とメルルちゃん、本当に荷物持ちを良いかにゃ? 嫌だったら、オイラも交代してやるから、しっかりと言うにゃ」

 "荷物持ちをどうするか?"から、魔法鞄の話題に話が変わったことをラートが指摘して、話の修正を行った。ラートは、年下の俺達に面倒事を押し付けてしまったと思ったのか何度も心配そうに確認した。

「だから、大丈夫だって!!」

「そうだよ~! ラート君は、アタイらに気にせず前衛に集中するんだよ~?」

「分かったにゃ。それと、荷物持ちありがとうにゃ」

「どういたしまして! それよりも、今日は、3日後の野営訓練前に、俺達だけで野営やってみる?」

 荷物持ちの件に納得したラートを他所にして、俺は3日後に控える両親達による、野営実地訓練の予行演習をするか否かを幼馴染達に問いかけた。

 俺は、今後野営をするであろう迷宮内での経験を積みたいと思うと同時に、初の中層探索に余計な思考を奪われる事は危険だと思っていた。だから、みんなの意見次第では、どっちに変わっても良いと思った。

「アタイは、やったほうが良いって言うか、やってみたいって言うのが本音かな? 実際にやってみたほうが、訓練の時に状況の比較が出来て、より覚えやすくなると思うんだけど、どうかな?」

「僕も賛成にゃ。でも、やるなら場所は大切にゃ。中層の転移陣付近か、上層の街に近い森の中の方が良いにゃ。そうすれば、例え最悪の事態でも切り抜ける事が出来ると思うにゃ」

「そうだね~。中層でも、食べ物があるってワルドさん達が言っていたけど、一応、乾燥果物や保存食、水筒を買っておこうよ~」

「それが良いな。何があるか分かんないし、迷宮だから植物図鑑に載っていない判断出来ない食べ物もあるかも知れないしね。それじゃ、俺が探索専用の鞄を持つから、メルルちゃんは、保存食が入った鞄を持って」

「良いよ~。リオもそっちは任せたよ~」

「おう、任された」

「それじゃ、早速準備して行くにゃ」

「「「「了解!」」」」

 俺達は、まず保存食が売っている店へと向かった。乾燥果物は、種類が豊富だけどその分値段も高い為、必然的に安い乾燥リゴンを5kg購入した。値段は200ロブなので、1kg当たり40ロブとは本当に安い。

 干し肉は、見た目の硬さや匂いからして、あまり美味しそうでは無かった。その為に最低単位1kg購入して、100ロブもした。その他、硬いクッキーみたいな硬麦(こうむぎ)と言うお菓子を1kg、100ロブで購入した。

 飲み水は、俺の水魔法でも代用できるが、俺に何かあった時のために人数分の水筒と井戸水を用意して、Iランク迷宮・城塞都市リントラトビューアへ向かった。

「さてと、これから中層に向かうにゃ。移動の隊列は、前回と同じ並びにゃ。だけど、戦闘の時は、ナートとリオ君の位置を変えるにゃ。ナートは、戦闘時だけ中衛として全体の指示と遊撃を担当するにゃ」

「任せるにゃ」

「うにゃ。リオ君は、メルルちゃんと後衛で魔法攻撃と支援をお願いするにゃ」

「了解。攻撃も支援も任せてよ」

 ラートは、事前に戦闘と移動で、役割や位置関係が変わる俺とナートへ指示を出した。

「それと、リオ、もう1つお願いがあるにゃ」

「うん? なに、ナート?」

「ワルドさん達が、中層は魔物の数が多いって言っていたにゃ。だから、万が一後ろから魔物の群れが来たら、魔法で牽制しながらメルルちゃんの護衛も行って欲しいにゃ。出来るかにゃ?」

「つまり、突発的に前衛と中衛へ変化するかもって事? ああ、了解。俺もその辺頭に入れて警戒してみるよ。ナートの予想通り敵が来たら大声で知らせるよ。だから、指示は任せるよ?」

「了解にゃ」

 ラートの指示の後、ナートは祝宴の際にワルド達から得た情報を元に、最悪の可能性について俺に示唆した。

 上層では無かった後方からの奇襲に対応する為に、現状、前衛、中衛、後衛全てに対応できる俺が、臨機応変に動かなければならなかった。

「それじゃ、そろそろ中層へ向かうにゃ。上層の魔物は、無視して転移陣付近に居る魔物の群れだけを倒すにゃ。素材や魔石は、気にしなくて良いにゃ。

 この前、納品依頼を確認して調べたけど、癒し草や胡椒の実以外で高い素材は、オレンジャッカルとボムトルトの肉だけだったにゃ。それでも、1kgで250ロブだったから、換金するともっと低くなるかも知れないにゃ」

 橙針犬(オレンジャッカル)とは、癒し草の畑を耕し管理する橙色で、背中の太い針の様なものを飛ばして、攻撃する魔物の名称である。対して爆発蕃茄(ボムトルト)は、故障の畑を持ち、赤く大きなトマトの様な魔物である。過去、爆発の瞬間に爆炎と共に肉片を撒き散らした魔物の事だ。

「(そっか……そう言う方法で、換金額を調べる方法があるのか……盲点だった。そう言えば、冒険者ギルドで情報の売買がされているって話だったな。

 今度行った時にでも、どの情報が買えるのか聞いてみよう。もしかしたら、ギルドこそが俺達が求めている情報屋的な役割を果たしているかも知れないし)」

「了解! アタイも靴と籠手、短剣を新調したし、これ装備での調子も確かめたいから望むところだ!」

「僕も短剣よりも少し長い片手剣を購入したから、調整したいですにゃ」

「あ、アタイも~。出来たら上層で確認したいな~」

「それじゃ、早速転移陣に向かうにゃ。上層は、ボムトルトと発光花(ルミナスフラワー)以外は、特に気にしなくて良いから全員、武器の調子を確かめてほしいにゃ」

「「「「了解!」」」」

 城門を出ると俺達はそのまま、西側の転移陣へ走った。
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