探検の書

ぶちゃ丸/火取閃光

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第1章 転生直後は罠だらけ

1-5 若いって凄い

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 次の日朝、2日酔いから復活した父に叩き起された。理由は母が俺に魔法の修業をした事への嫉妬心だそうだ。相変わらず父は明るく元気である。

「(それにしても叩き起こされたのは地味に痛かった……父ちゃん、理不尽でだよ……)」

「わっはっは! 朝っぱらから悪かったな、リオ。昨日出来なかった修業をこれからするぞ」

 父は笑いながら俺の頭をわしゃしゃと撫でる。

「父ちゃん! 起きんのも、修行すんのも良いけどせめて起こすなら叩き起こすのはやめてよ! 地味にいたかったんだからね!」

 そんな父に俺はプイッと顔を逸らしふくれっ面になりながら答えた。

「すまん、すまん! 悪かったから後で母ちゃんには内緒に何か食い物買ってやるからな。なっ? それで許してくれよ」

 父は謝っている最中も笑顔だったが、自身の顔の前で右手を前後な動かしながら謝罪した。

「本当! じゃあ、許す。何買ってもらおうかなぁ~」

 俺はさっき迄の怒りは頭の外へ行きウキウキしながら買い食いを楽しみにする。

「(自分でもチョロい性格していると思う。それでも、前世でも今世でも食うことは楽しみなんだよ……合併症引き起こしてからは制限あったから……制限のない今は楽しみたいんだ……! それに、中世ヨーロッパみたいな世界観、技術力のくせに食文化だけなんか分かんねぇけど前世基準でレベルが高ぇんだよなぁ。出店でも値段の割には良いもの売っているし不思議だと思う)」

 この国がおかしいのか、それともこの世界がおかしいのか建造物や製造技術は中世に近い感じがする。しかし、食へのこだわりは前世とも張り合うほど高い為にチグハグ感があった。

「わっはっは! 俺に似て単純だなぁ。じゃあ、修行すっかー。今日から俺がリオに教えるのは体術だ。母ちゃんから頭が良いことは聞いているが、武器は流石に危ねーし、前衛にも後衛にも必要な体術を学べば無駄にはなんねーだろ。」

 父は笑っていた顔を引き締めて真面目な表情で俺に語りかけた。俺は正直似合わない。父は笑っていた方が父らしいと思った。

「先ずは、体を温めてから走るか。これを続けていくと"筋力向上Ⅰ"の技能が得られる。この技能は強度が上がるときに能力補正をかけてくれるから取るに越したことは無いんだぜ。技能にもレベルがあるのは知っているだろ?"筋力向上Ⅰ"を上限まで上げると強度が1上がるにつれて最大で5追加で補正が入る」

「それは凄すぎない? その技能って走らなくちゃ上がらないの? 型の練習や素振りとかでも上がるの?」

 俺はそのヤバさに驚きながら父に疑問を投げかけた。

「いや、勿論上がるぞ。でも今は走った方が効果的なんだよ。1番は戦闘時が上がりやすい事で、2番目は海って言うとてもでっかい水溜りで動いたときなんだ。走るのは3番目くらいに上がりやすくて、素振りの様な変に癖を付けず、年齢に見合わない負荷を体に掛けるよりかは強くなるには効果あるんだよ」

 父はやっぱり似合わないくらい論理的に一つ一つ話し俺の疑問を解消していき俺に準備が出来たかを聞いてきた。

「よし。少し歩いて体の節々を温めて走るかー。準備は良いか? リオ」

「おう、父ちゃん。今日はよろしくな!」

「こちらこそ、よろしくな! リオ」

 俺と父は互いに笑いながら、挨拶を行い走り出した。

 俺は50m走っては歩いて走っては歩いてを繰り返しておそよ500~600mくらい走ったところで力尽き、父に背負われていた。正直5歳だから200m行ったから良いのかなと思っていたが意外と走れた。

 俺が300mくらい走った所でもう無理と思った矢先突然体が軽くなり、呼吸が楽になった。結果調子に乗って走ったらぶっ倒れてしまった。その後に俺を背負って果物ジュースみたいなものを買ってくれた父は俺を見て笑いながら、褒めてくれた。

「わっはっは! よく頑張ったな、リオ。その年にしちゃよく走ったもんだ」

 俺はジュースを飲みながら体力回復に努めた。決してにやけていない。いないったらいない!

「リオ。そう言えば、途中無理そうだったけど、突然体が軽くなる様な感覚は無かったか?」

「えっ!? なんで分かったの?」

 俺はジュースを吹き出さない様にしつつ父の問いに驚きながら答えた。

「そりゃ多分"筋力向上Ⅰ"の技能が発現したんだよ。後で家に帰ったか確認してみると良い。今はやめておけよ。折角の買い食いだからそっちに集中しとけ。な?」

 俺は父の言葉に頷き、確認しようとしていたステータスをやめて買い食い集中した。

「うん。分かったよ。さてと、何食うかな~。あっはっは。」

 俺は歩く父の背中からキョロキョロと周囲の店を見て回りる。

「父ちゃん。待って! あの紫色の丸っぽい果物って何?」

 偶々見かけた果物屋を通り過ぎようとしていた時に紫色の林檎っぽい形の果物が気になり声を上げた。

「あれはな~リゴンって言ってな~……見た目が悪いのに甘酸っぱくて美味いんだぜ! 俺も母ちゃんも好きなんだが、皮だけではなく実の方まで紫色だからあまり子供に人気なくてな。ただ、よく育つもんだから、低価格で市場にもよく出る果物なんだよ。リオはそう言うの気にしないのか?」

 父は笑みを浮かべていたが少しだけ残念そうにリゴンについて教えてくれた。

「俺はそう言うの気にしないかなぁ~。父ちゃんや母ちゃんが美味いって言うなら、リゴンが食いたい! あれを買って帰ろう」

 俺がそう言うと残念そうな顔をやめて嬉しそうな表情でリゴンを買ってくれた。

「それじゃぁ、買って帰るか。リゴンなら買い食いせずに母ちゃんの分も買って家で食おうぜ。序でに家帰って朝飯を食べようぜ。腹減ったぜ」

 そう言うと俺たちは一緒に家に帰る。しかし、朝修行する事を母に伝えていなかった父と俺は母に説教を食らって朝飯食ったのはだいぶ後の話だった。
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