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6部 星の女神編

光との対話2

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 クオンの言葉に意を決したレインが呼びかけ、イリティスとグレンの二人が中央の塔にやってきたのは深夜のこと。

「俺まで呼ぶとはな」

 レインの姿を見るなり、苦笑いを浮かべるグレン。本当に自分も来ていいのかと思ったが、呼ばれている以上は行くしかないと思ったのだ。

『だって、父さんのために外へ行くんだろ』

 だから会おうと思ったのだと言われれば、そういうことにしておこうと頷く。

 これは彼なりの言い訳だとわかっているのだ。だから、イリティスもクスクスと笑っている。こういったところは変わらないと。

『あの、さ……』

「言わなくてもわかってるわよ。あなたも、レインであってレインではないのでしょ」

 イェルクやフェーナと話したことを知っていることから、イリティスもレインの存在を理解していた。

 息子であって息子ではない。彼は、息子と同じ姿をしていて、同じ考えを持つだけであると。

「まったく……くだらないことで悩む辺りは変わらないわね」

 わかっていて、イリティスは思うのだ。では、彼は息子となにが違うのかと。

 答えは、なにも違わない。ただそれだけだ。

 結局のところ、彼らは本人となにも変わらない存在だということ。

「私はイリティス・シルヴァンと同じ魂で同じ名前だけど、別人よ。だって、考え方も性格も違うもの」

 けれど、あなたはどうかと問いかけられれば、レインは少し考えてみたが違いが見つからない。

 なにせ、レインそのままが複写されてしまったようなものなのだから。目の前にいるイリティスは母親だと思っているし、レイン・アルヴァースが特別に思っていたグレンも同じように特別だ。

「くだらないことで悩まないの」

「……うん」

 確かに、父親でも同じことを言いそうだと思えた。きっと困ったような表情で言われるだろうと。

「まぁ、レインらしくていいがな。変わらないというのも」

 最後に会ったときもこうだったと、グレンが笑いながら言う。

「そうね。最後に会ったとき、年を気にしてグダグダしてたわね」

 不死となったことで、いつまでも老いることのない二人。けれど老いていく息子は、会いたいけど会えないと、グダグダやっていたことを知っている。

 精霊からその話を聞き、呆れたのは言うまでもない。

 二人から笑われて、気まずそうに視線を逸らすレイン。

『さっき、クオンにすべてを話してはあるんだけど、外へ行くならグレンさんも知っておくべきだよね』

 天空城の中に関して、レインはすべてを把握していた。どこにいても会話は聞こえているのだ。

「そうだな。情報はあって損しない。お前はどこまで動けるんだ?」

 一度イェルクやシリンと話しているだけに、目の前にいるレインはどこかが違うと感じていた。

『んー……試したことがないからわからない。でも、このセレンだったらある程度は動けると思うよ。限界は、あるかもしれないけど』

 正直なところ、なぜこうなっているのかわからないと言う。ここに聖剣は残されていないし、他の仲間達とは違うのだ。

 スレイとも話すが、結局のところはなにもわかっていない。

「なるほどな。これをどう捉えたらいいのかは、シオンでもないとわからないというわけだ」

『うん。父さんも一度だけ呟いてたよ。たぶん、俺達は新しい月神が目覚めるまでの存在だろうって。それも確証があってのことじゃないみたいだけど』

 だから、そうだと思うことにしている。レインはそう言った。

 いつか戻ってくる月神。それまで、この世界を守りたいと願った二人の気持ち。

 おそらくそうだろう、と思っている以上、いつかは消えてしまう存在だということも認識している。月神は甦ったのだから。

「それがいつなのか、が問題だな」

『大丈夫。父さんが戻ってくるまでは、頑張ってみるよ。俺達の存在がこの世界を守るためなら、この状況で消えないと思ってる』

 あくまでの可能性だが、それはあり得るとグレンも頷く。世界を守るべく双神がいないのだから。

 もうしばらく猶予があると思えば、あとは問題の外だけだ。

「お前らは、外にいるシオンを感じ取れないのか?」

 誰よりも外を感じることのできる存在。グレンは少なくとも、そう思っていた。

『感じることはできた。でも、それは父さんが意図的に感じられるようにしてたんだと思う。向こうでなにかがあった後、父さんを感じなくなった』

「力の使い過ぎで休眠に入った可能性もある、か」

 わざと感じ取れるようにしていた、ということは、力を放出していたのではないのか。外での戦いで力を使い過ぎ、それができなくなってしまった。

「もうひとつ、お前らを消さないためという可能性もあるな」

 真剣な表情で言えば、それは考えたとレインも頷く。あの父親なら、存在を完全に消すという可能性は低いと思っていたのだ。

「そうね、あり得そうだわ。シオンが向こうで動けないのも事実なのかもしれないけど、助けのためにこちらから誰かを送れば、手薄になる」

 外から攻めてくれと言っているようなもの。そんな真似はできない。

 シオン・アルヴァースがそのような真似をするわけもないと、三人ともが理解していた。

『うん。父さんが休眠しているか、それともローズが休眠しているか』

 こちらに存在を感じさせないということは、聖獣が眠っている可能性もあると言われれば、その可能性もあったかと頷く二人。

「ローズが眠ると、シオンの力は半減するんだったな」

「つい忘れちゃうのよね。シオンって、規格外だから」

 苦笑いを浮かべるイリティス。基本的には聖獣と太陽神は繋がりを持つ。どちらかが死ねば死んでしまうし、力を使えなくなれば、もう片方も使えなくなる。

 とはいえ、聖獣が死んでしまった場合どうなるかはわかっていないのだが、その可能性は考えないことにした。






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