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6部 星の女神編

顔合わせ3

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 話を戻そうとグレンが言えば、自分の番だなとフィーリオナが頷く。

「私はフィーリオナ・バルスデ・フォーランだ。気軽にフィオナと呼んでくれて構わない」

「はっ?」

「えっ?」

 何事もないように言われたが、名を聞いただけで全員わかる。彼女が、バルスデの女王だと。

 まさか、このような場に女王自らいるとは思わないだろう。しかも先立っての戦闘では、普通に戦っていた。

 一瞬にして、その場の空気が固まる。

「深く気にするな。それは、ただのじゃじゃ馬だ」

「待て……扱いがさらに雑になっていないか?」

 自分の扱いがさらに雑になったと、セルティへ抗議するフィーリオナ。

 素知らぬ顔で流すセルティに、これでいいのかと思った者は少なくない。相手は女王なのだから、こうも雑にしていいのだろうか。

「これは、ただの戦闘好きのじゃじゃ馬女王だ。敬う必要とかはない」

「セルティ……お前って奴は」

「嘘は言ってないだろ。どこの世界に、魔物討伐ばかりする女王がいる」

「……」

 誰もが言葉を詰まらせている。さすがに、魔物討伐ばかりしている王、とは聞いたことがなかったのだ。これでは、じゃじゃ馬女王と言われても仕方ない、とすら思っただろう。

 なにも言えなくなったのはフィーリオナも同じで、視線を逸らすことでやり取りをやめた。

「では、こちら側だね。バルスデ王国、陽光騎士団を束ねる団長、イクティス・シュトラウスだ。セルティが面白いところへ行くから、便乗させてもらってるだけかな」

 人当たりのいい笑みを浮かべながら言っているが、その裏はまるで読めない。本当にそれだけなのかすら、わからないのだ。

 他にもなにかしらの意味があるかもしれない。ないかもしれない。

「グレン殿にはすぐバレてしまうでしょう。僕の使う剣は、クレド・シュトラウスが使っていた魔剣です」

「……なるほどな。それでその力か」

 魔物との戦いを聞いていたグレンは、シュレからイクティスの力が謎だと言われていた。どのような力を使っているのかわからないと。

 けれど、クレド・シュトラウスが使っていたと聞けば、どのような力なのかは明確だ。

「うちの家系は、これを使えるかが重要になっています。そうなってしまったというべきですかね」

 一瞬見せた苦笑いは、彼にしては珍しい本来の姿。なぜそうなったのかはわからないが、それに伴う苦労があるのだろう、とグレンは察した。

「最後は俺か。聖虹騎士団を束ねるセルティ・シーゼルだ。表向きはこれでいっている。本来は王家の裏で動いてきた、アルヴァースの名で」

 これが本来の名だと言うようにセルティがグレンへ視線を向ける。

 名に関しては、南で戦ったメンバーだけにしか伝えていなかったのだ。自分から話すまでは言うなと、口止めをした。

「なっ…セルティ様、こっち側なのか」

 驚いたように見るクオンとリーナ。まさか、彼がアルヴァースの名を持つとは思わない。

「あれ、クロエは知ってた感じかな」

「はい。お代として頂きました」

「お代?」

 さすがに意味がわからない、とイクティスがセルティを見る。どういうことなのかと。

「不快にさせたからな。そのお代として、教えたのです。まだ黙っているつもりだったのですがね」

 なるほど、と今度は納得したように頷くイクティス。彼らを観察していたことへのお代、ということなのだと理解したのだ。

 こればかりは、知ればクロエが不快に思うのも当然なだけに、自分もなにか手を打つかと思う。

「俺は、太陽神の家系に当たる。精霊の巫女が本家で俺が分家のような関係だ。故に、リーシュとは定期的に連絡を取り合っている」

 セルティと精霊の巫女の繋がりに関しては、女王にも伏せられていたこと。誰にも知られることなく、今までやってきていた。

 このような事態にならなければ、言うこともなかったであろう。

「リーシュから緊急の連絡があり、南の一戦にも参加した。ヴェルトには見せたが、ここで秘密にしておくわけにはいかないだろう」

 一本の剣をテーブルに置くセルティ。見覚えのない剣に、フィーリオナはそんなの持っていたのかと見ている。

「ディアンシ・ノヴァ・オーヴァチュアが使っていた聖剣だ。俺が、受け継いだ」

「そんなのありかよ!」

 ただでさえ強いのに、聖剣まで使えるとなれば自分では手も足も出ない。また振り出しだとクオンが拗ねた。

 それが面白かったのか、セルティは笑っている。

「そうだな、あと百年は負けてやる気がない。さすがに、百年ぐらいあれば強くなるだろ。月神なのだから」

 不敵な笑みを浮かべるセルティに、やってやると睨むクオン。騎士団最強の男を倒すのが、騎士になったときからの目標なのだ。

「とりあえず、俺も手合わせはしたいな。騎士団最強の男にはずっと興味があったんだ」

 その上、聖剣を使うとなれば最高の相手だとグレンが言う。

「そうだねぇ。グレン君、シオン君とやるときは聖剣でやるもんね」

 聖剣を使って手合わせができる相手となれば、最高だよね、とニコニコ笑うアクア。

「最高だろ」

「うんうん。グレン君、最近つまらなそうだったし」

 太陽神不在となり、手合わせに関しては物足りないというのが本音。だからこそ、強い者の情報を求めていたのだ。

「俺も、英雄王と呼ばれたあなたと手合わせはしたいものだ。面白そうだからな」

「悪かったな。楽しませてやれなくて」

 不服そうにフィーリオナが言えば、セルティは笑うだけ。十分、彼女は強いと思っている。思っているのだが、それが困るのも事実。

「俺に関しては、これでいいだろうか」

「いや、もうひとつ確認しておきたいな。お前が、魔力装置を使っているのかどうか」

 それだけは確認しておきたい、とグレンが言う。使っているならば、少し問題だと思っていたのだ。

 グレンの言葉に、よく調べているなとセルティも言う。

「これは正確に言えば魔力装置ではない」

 知られて困ることでもないと、セルティが取り出した二つの宝石。

 一見、宝石に見えるそれは、クロエには馴染みのあるものだ。自分が持っているのと同じだと、すぐさま察していた。

「ソレニムス家とオーヴァチュア家にも同じものがあるはずだ。これは、出所が同じだからな」

「やはり、そういうことか。属性を聞いたときから、そうではないかと思っていたが」

 だからこそ、魔力装置ではないと思っていたのだが、確証もない。会うことがあれば確認しようと思っていた。

「両家はそれぞれの武器に使っていると思うが、俺はこいつで使う。銃という代物だ」

 見慣れないものを取り出せば、苦笑いを浮かべるグレン。あれもクレド・シュトラウスの考えていたものだと、知っているのだ。

「これは、なんなのだ?」

 両家がなにかを受け継いでいることは知っていたが、正確なことは知らない。いい機会だとフィーリオナが問いかける。

「精霊の魂だ。ヴァルスとリオが契約していた精霊の、な」

 おそらく、レイン・アルヴァースと両家に残された物だろうとグレンが言えば、セルティが頷く。間違いはないと。

「もっとも、こちらは両家に継がれた物より力が劣るがな」

 それでも、それなりの威力は持っている代物だ。扱い方を間違えれば大変なことになるだろう。

 情報としては、この辺りで十分だろうと言われてしまえば、グレンも頷くしかない。これ以上は、現状聞き出せないと判断したのだ。

「本題に入ろう」

 これからが本題。誰もが表情を引き締め、グレンを見た。






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