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6部 星の女神編
精霊の呼び出し2
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『精霊の巫女は、要はシオンの家系だ。あいつの孫から始まった。その辺りはもう少し複雑だから、後々教えてやるよ』
とりあえず、女神の血が関係しているとだけ理解しろ、と言われれば、わかったと頷く。
おそらく、リオン・アルヴァースが死んだ後のことが関係する。聞く必要がある知識なら、知っておきたいと思うが、今ではないとも思う。
『バルスデの女王なら知ってるだろうが、他は知らねぇだろ。関わるなら知ってる方がいいからな。揃ってからだ』
「わかった」
間違いないとクオンも思った。自分も知りたいが、関わることになるリーナも知る必要がある。
なにも知らずに関わらせることなどできない。知って引くようなこともないだろうが、引いても構わないと思っていた。
「で、ここは?」
最低限の情報は欲しいところだ。まずは場所からと視線を向ける。
『天空城だ。ここは月神のためにとシオンが用意していたところ。つまり、現状としてお前しか使えない』
シオンがそう決めたからだと言われれば、つまり太陽神が使う部分があり、そちらにグレンもいるのだと察した。
天空城は女神メルレールの居城だった場所。今は太陽神であるシオンが住処とし、管理は虹の女神であるイリティスが行っている。
「ん? なんで虹の女神なんだ?」
そこはシオンではないのか、とクオンが不思議そうに相棒を見た。
『それなりに役割分担をしてるんだよ』
一人ですべてをこなせないのではなく、一人でやらせると無茶をするからだ。
理由を知れば、記憶を持つクオンも納得する。なんでも一人でやろうとするのが、シオン・アルヴァースだとわかったのだ。
『この城を管理するのがイリティス。外とのやり取りをメインとするのがシオン。この世界を見ているのがグレンとアクア。これで三千年やってきた』
この先は変わっていくだろうが、と言うことを忘れないヴェガ。クオンが加われば、間違いなく変わってくる。
言われている意味はわかるが、わからない言葉もあった。外、という意味がわからないのだ。
(それが、今回のことであり、リオン・アルヴァースが死んでからのことか)
一体なにがあったのか、と考えた辺りで振り払う。結局のところ、聞かないことにはわからないのだ。ならば考える時間が無駄なだけ。
しばらく滞在することになるのだ。とりあえず、滞在先となるここの情報で満足しておくことにしよう。
クオンがそんなことを考えると、行動に関しての確認を始める。
「で、俺はここでどれぐらい動き回っていいわけ?」
『そりゃ、制限なんてねぇよ。ねぇけど、お前が月神だってことは、すぐにバレちまうだろうから……囲まれるだろうなぁ。ここの奴らは容赦ねぇからさ』
楽しげに言う相棒を見て、頬を引きつらせるクオン。それは勘弁してくれと思ったのだ。
囲まれることには慣れている。慣れているのだが、それはあくまでも仕事上でのことだ。クオンに興味があってという意味ではない。
ここでの囲まれるは、間違いなく好奇心だろうとわかるだけに、外に出たくないとすら思えた。
『この中に関してで言うなら、お前が入れないのはシオンが寝起きしている反対側だな。あっちは、イリティスやグレン達の許可がないと入れないな』
現状だと言われてしまえば、そこは納得できる。シオン・アルヴァースがいないのに、勝手に入ることはできないとクオンでも思うところだ。
入るつもりもない。他人の家に入るようなものなのだから。
暗闇の中、意識だけを外へ向けていたグレンは、何事もないように入ってきた気配に笑う。
「まったく、お前ときたら困った奴だな。お前ぐらいだぞ、そんな風に入ってくるのは」
「だろうな」
他にいたら見てみたいと言いながら近寄るのは、グレンが気に入ってしまったシュレ・エーレルカだ。
「けど、お前の権限内ならなにをしてもいい、と俺に言ったのがいけないな」
そう、グレンが動ける範囲内なら、なにをしても構わないと言われたからこそ入ってきた。本来なら、グレンしか入れない場所まで。
妻であるアクアですら立ち入れないようにしていた。一人になりたいときや、集中してセレンを見るときに使う部屋だから。
なぜ彼を許したのか、それはグレン自身もよくわかってはいない。なんとなく、いいかと思ってしまったのだ。
ただそれだけのこと。深い意味などない。
(いや、あるのかもしれないな。考えないようにしてるだけで)
もしもあるとしたら、その先を見据えてのことだと思った辺りで振り払う。今はどうでもいいことだ。
彼が来たということは、全員が目を覚ましたということだろう。話をする場を設けなくてはいけない。
「思ったよりかからなかったな」
「最後はヴェルトだな。かなり踏ん張ってたんだろ」
早々に眠りへついたメンバーと、そうではないヴェルトでは回復に差が出たとシュレが言う。
もっとも、それだけが差ではないことを理解していた。誰よりも力を使っていただろうシャル・フィアラントが、一番に目を覚ましたのだから。
「どちらにしても、十分早いな。みんな耐性がそれなりにあるのかもしれない」
面白いなと呟くから、なにが面白いのかと怪訝そうに見るシュレ。
「俺とは違うなって話だ。普通に十日ぐらいは寝てたぞ」
「お前が?」
「俺をなんだと思ってるんだ」
ありえないと言いたげにするシュレに、グレンは苦笑いを浮かべる。
今からは想像がつかないのはわかるが、さすがに最初からこうではないとも言いたい。聖剣を使えば眠る。これは誰もが通る道だ。
シオンでもそうなのだから、そういうものなのだと考えている。
「とりあえず、こちら側はいいとして」
あちらはと視線を向けるグレン。意味を理解しているシュレが、苦笑いを浮かべた。
「一応確認してきたが、どう見ても大丈夫じゃないな。話をするときは呼べって感じだったが」
「やれやれ、困った連れだな」
そうは言いつつ、予測範囲内なのかグレンは笑っている。
「クロエ・ソレニムス……やはりそういうことになるのか。ヴァルスの家系に生まれてくるなんて」
彼の秘密とも言える部分に気付いたグレンは、なんだか笑えてくるから困る、というのが本音だ。いつかはこんな日が来るとも思っていた。
だが、さすがにソレニムス家だとは思っていなかったというのも本音。他に適任の家系があるだろ、と思っている。
「とりあえず、セルティへ連絡を入れておいてくれ。明日がいいか。一日あれば時間を作れるだろ」
当日の夜より、翌日がいいだろうと言えば、そんなことを気にする人達ではないだろうと突っ込む。シュレから見ても、あの二人は異常だと思っていたのだ。
「セルティはわからんが、シュトラウス家はあんなもんだぞ」
傭兵組合にもいると言われれば、驚いたように見る。
・
とりあえず、女神の血が関係しているとだけ理解しろ、と言われれば、わかったと頷く。
おそらく、リオン・アルヴァースが死んだ後のことが関係する。聞く必要がある知識なら、知っておきたいと思うが、今ではないとも思う。
『バルスデの女王なら知ってるだろうが、他は知らねぇだろ。関わるなら知ってる方がいいからな。揃ってからだ』
「わかった」
間違いないとクオンも思った。自分も知りたいが、関わることになるリーナも知る必要がある。
なにも知らずに関わらせることなどできない。知って引くようなこともないだろうが、引いても構わないと思っていた。
「で、ここは?」
最低限の情報は欲しいところだ。まずは場所からと視線を向ける。
『天空城だ。ここは月神のためにとシオンが用意していたところ。つまり、現状としてお前しか使えない』
シオンがそう決めたからだと言われれば、つまり太陽神が使う部分があり、そちらにグレンもいるのだと察した。
天空城は女神メルレールの居城だった場所。今は太陽神であるシオンが住処とし、管理は虹の女神であるイリティスが行っている。
「ん? なんで虹の女神なんだ?」
そこはシオンではないのか、とクオンが不思議そうに相棒を見た。
『それなりに役割分担をしてるんだよ』
一人ですべてをこなせないのではなく、一人でやらせると無茶をするからだ。
理由を知れば、記憶を持つクオンも納得する。なんでも一人でやろうとするのが、シオン・アルヴァースだとわかったのだ。
『この城を管理するのがイリティス。外とのやり取りをメインとするのがシオン。この世界を見ているのがグレンとアクア。これで三千年やってきた』
この先は変わっていくだろうが、と言うことを忘れないヴェガ。クオンが加われば、間違いなく変わってくる。
言われている意味はわかるが、わからない言葉もあった。外、という意味がわからないのだ。
(それが、今回のことであり、リオン・アルヴァースが死んでからのことか)
一体なにがあったのか、と考えた辺りで振り払う。結局のところ、聞かないことにはわからないのだ。ならば考える時間が無駄なだけ。
しばらく滞在することになるのだ。とりあえず、滞在先となるここの情報で満足しておくことにしよう。
クオンがそんなことを考えると、行動に関しての確認を始める。
「で、俺はここでどれぐらい動き回っていいわけ?」
『そりゃ、制限なんてねぇよ。ねぇけど、お前が月神だってことは、すぐにバレちまうだろうから……囲まれるだろうなぁ。ここの奴らは容赦ねぇからさ』
楽しげに言う相棒を見て、頬を引きつらせるクオン。それは勘弁してくれと思ったのだ。
囲まれることには慣れている。慣れているのだが、それはあくまでも仕事上でのことだ。クオンに興味があってという意味ではない。
ここでの囲まれるは、間違いなく好奇心だろうとわかるだけに、外に出たくないとすら思えた。
『この中に関してで言うなら、お前が入れないのはシオンが寝起きしている反対側だな。あっちは、イリティスやグレン達の許可がないと入れないな』
現状だと言われてしまえば、そこは納得できる。シオン・アルヴァースがいないのに、勝手に入ることはできないとクオンでも思うところだ。
入るつもりもない。他人の家に入るようなものなのだから。
暗闇の中、意識だけを外へ向けていたグレンは、何事もないように入ってきた気配に笑う。
「まったく、お前ときたら困った奴だな。お前ぐらいだぞ、そんな風に入ってくるのは」
「だろうな」
他にいたら見てみたいと言いながら近寄るのは、グレンが気に入ってしまったシュレ・エーレルカだ。
「けど、お前の権限内ならなにをしてもいい、と俺に言ったのがいけないな」
そう、グレンが動ける範囲内なら、なにをしても構わないと言われたからこそ入ってきた。本来なら、グレンしか入れない場所まで。
妻であるアクアですら立ち入れないようにしていた。一人になりたいときや、集中してセレンを見るときに使う部屋だから。
なぜ彼を許したのか、それはグレン自身もよくわかってはいない。なんとなく、いいかと思ってしまったのだ。
ただそれだけのこと。深い意味などない。
(いや、あるのかもしれないな。考えないようにしてるだけで)
もしもあるとしたら、その先を見据えてのことだと思った辺りで振り払う。今はどうでもいいことだ。
彼が来たということは、全員が目を覚ましたということだろう。話をする場を設けなくてはいけない。
「思ったよりかからなかったな」
「最後はヴェルトだな。かなり踏ん張ってたんだろ」
早々に眠りへついたメンバーと、そうではないヴェルトでは回復に差が出たとシュレが言う。
もっとも、それだけが差ではないことを理解していた。誰よりも力を使っていただろうシャル・フィアラントが、一番に目を覚ましたのだから。
「どちらにしても、十分早いな。みんな耐性がそれなりにあるのかもしれない」
面白いなと呟くから、なにが面白いのかと怪訝そうに見るシュレ。
「俺とは違うなって話だ。普通に十日ぐらいは寝てたぞ」
「お前が?」
「俺をなんだと思ってるんだ」
ありえないと言いたげにするシュレに、グレンは苦笑いを浮かべる。
今からは想像がつかないのはわかるが、さすがに最初からこうではないとも言いたい。聖剣を使えば眠る。これは誰もが通る道だ。
シオンでもそうなのだから、そういうものなのだと考えている。
「とりあえず、こちら側はいいとして」
あちらはと視線を向けるグレン。意味を理解しているシュレが、苦笑いを浮かべた。
「一応確認してきたが、どう見ても大丈夫じゃないな。話をするときは呼べって感じだったが」
「やれやれ、困った連れだな」
そうは言いつつ、予測範囲内なのかグレンは笑っている。
「クロエ・ソレニムス……やはりそういうことになるのか。ヴァルスの家系に生まれてくるなんて」
彼の秘密とも言える部分に気付いたグレンは、なんだか笑えてくるから困る、というのが本音だ。いつかはこんな日が来るとも思っていた。
だが、さすがにソレニムス家だとは思っていなかったというのも本音。他に適任の家系があるだろ、と思っている。
「とりあえず、セルティへ連絡を入れておいてくれ。明日がいいか。一日あれば時間を作れるだろ」
当日の夜より、翌日がいいだろうと言えば、そんなことを気にする人達ではないだろうと突っ込む。シュレから見ても、あの二人は異常だと思っていたのだ。
「セルティはわからんが、シュトラウス家はあんなもんだぞ」
傭兵組合にもいると言われれば、驚いたように見る。
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