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2部 二刀流の魔剣士編

光の英雄2

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 少し戻ると前置きをして一人の少女の話がされる。シオンと会うため、バルスデにやってきた少女メディス。

 レイン達が戻ってきてすぐのことだった。その少女は、流れ星と共にシオンの元へ現れた子で、イリティスが娘同然で育てていたという。

「女神の力を使える謎の子。けれど、害はないと判断していたのだけど、外見は女神にそっくりだとシオンは言っていたわ」

 前世の記憶に触れたくなかったイリティスは当時わからなかったが、今ならわかる。娘として育てた少女は女神に瓜二つだと。

「魔物は最初、あの子を狙っていた。そして、精霊達はシオンなら守ってくれると思ってあの子を託してきた」

「一体……」

 その少女は何者なのだとシュレの視線が言っている。

 魔物が狙うなど普通ではない。それでいて守れというなどと。失われたらどうなるのか。

「女神の切り離した力。それがメディスだった。メディスは世界を支える力なのだと」

 女神が放棄した中、この世界が滅ばなかった理由のひとつとしてメディスの存在があった。

 言うまでもなく、もうひとつの理由はシオンとリオンであると言えば、シュレとエシェルは理解したようだ。

 長い間、ただの力としていたメディスは、精霊達の言葉を聞きながら自我を得て感情を得た。

 太陽神の子供が産まれたと知り、見てみたいと願った彼女と、妹が欲しいと願った幼いレインの願いが起こした奇跡。

「覚えておいて損はないだろう。この世界は強い願いが奇跡を起こせるようだ」

 笑いながら言うから、どこまで本気なのかと疑う三人。さすがにそれはないだろうと言いたいのだ。

「この話し合いのあと、問題がひとつ起きた。西で魔物と戦った際にイェルクが怪我をしていたのだが、それが原因で起きたことだった」

 今は魔物の情報は可能な限り共有している。植物系の魔物が人の身体に種を植え付けることも、当たり前の情報だ。

 しかし、この当時にはまったくない情報。シオンに言われ初めて知ったことだった。

「種を植え付けられ、弱ったイェルクを助けるためにスレイの力を分け与えた」

 この力が月神の力。今現在も氷の塔にあるだろうものだと聞けば、シュレは自分の持つ力と同じだと気付く。

 女神の力を得たことで死を免れたイェルク。それと同時に、ライバルが強い力を得て差がついたことを悔しいと思ったディアンシが、レインから力を得た。

「外からの最後の魔物襲撃があったとき、イェルクの力がフェーナへ、ディアンシの力がシリンへ分けられた。これによって、魔物を撃退した」

 魔物は今までにないほど強いもので、シオンの力すらも効かないほどだったと言われれば、三人とも息を呑む。

 話を聞いていれば、この世界でシオン・アルヴァースより強い者はいないと思えたからだ。

「外の者から接触を受けたとき、その魔物は本来なら世界の守護者となる存在と聞いた」

 つまり、この世界に現れた魔王も同様の存在だと。それが送り込まれ、撃退したことで外からの干渉はとりあえずしないという判断になった。

 しかし、それは絶対の約束ではなく、それを絶対にするための条件を示されたのだ。

 女神メルレールを倒すという条件が。

「シオン・アルヴァースにか?」

 母親を殺せと外の者が言ってきたのかという確認で、グレンは肯定するように頷く。

 女神メルレールを許すことはできない。それだけは絶対だったのだ。

「外にはこの世界を滅ぼしたいのと守りたいのがいた。守りたいと言ってくれたのが、メルレールの妹となる大地の女神」

 妹であっても、妹だからこそかもしれない。メルレールがやったことを許すわけにはいかないと。本人が改心したとしてもだということだった。

「父親と母親を殺すこと。この世界をシオンが見守ることが条件だ」

 その条件を満たして、妹はこの世界を守ると約束したのだ。

「まぁ、そうだよな。やっていいことと悪いことがあって、その神様達にも決まりなんかがあるんだろ」

「だろうな。あの連中は世界を創り、それを見守るのが役目らしいから」

 壊すということ以前に、放置した時点で役目放棄をしたことになり、彼らの決まり事を破ったことになるのだろう。その上での罪となれば、許せないと言われても仕方ない。

 その結果に、この世界を破壊したいという者達がいるのかもしれない。そんな納得の仕方をした。

 すべてが敵ではなかったのだから、まだよかったと考えるべきことだろう。すべてを相手にしていては、さすがにきりがない。

「回答は数日後ということにしてもらったが、シオンは迷わなかったな」

『一度決めたら、あいつは迷うような奴じゃねぇ。どんなことでもやってみせる』

 当然だと言うようにヴェガが言えば、それができるのはそういないとグレンは苦笑いを浮かべる。

 さすがに親を殺せと言われれば迷う。少なくとも、グレンは迷うと言いきれた。

「最初はレイン達になにも言う気はなかったが、メディスがこのタイミングで自分の存在を知った。そのまま子供達は子供達で考えて決めていた」

 決意を知ったのは回答の前日だったと言えば、それは初耳とイリティスは笑う。

「どうやら、言わずに行こうとしていたようだ。悪くない手だろ」

 誰の案だかわからないが、もしもこれを提案したのがいたなら、それは間違いなく息子だろうとは思っていた。こういったことに頭が働くのだ。

 それぞれの戦いへ向かった。

「俺達は、シオンの父親がいる場所へ行った。そこは女神の力で保護された死者の箱庭」

 死者の箱庭という言葉に、三人ともが不快そうな表情を浮かべている。

 詳細を聞かなくても、言葉の響きだけでも嫌なものだと思ったのだ。

「死んだ奴らが魂のまま生きている、とんでもない場所だった。そこで、リオンと再会したのは悪くなかったけどな」

 女神の子供であったが故に、死んだあとに引き込まれてしまった存在。それがリオン・アルヴァースだった。

 思わぬ再会だったが、女神との戦いを目前としていたことから、頼もしい戦力だったとグレンは言う。

 死んでいる。けれど、その空間では肉体を持っていて、力を使えることも確認済みだったリオン。

 自分の置かれている状況を理解したうえで、シオンが来ると信じて準備していたのだ。やれるところまでやろうと、待ち構えていた。

 それにどれほど助けられたことか。彼がいなければ、全員無事で帰ることなどできなかっただろう。





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