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2部 二刀流の魔剣士編
新たな一歩
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ハーフエルフの里へ行くことになったグレン達。
その最中、目当てのおそらく魔物の姿をした干渉者が現れなければ、またなにかしらの理由をつけて出なくてはいけない。
次はどうするかと考えながら、道中の魔物を倒していた。
そして、街を出た二日後に目当ての干渉者はやってきたのだ。
「無駄にならなかったか」
なんとも言えない空気を感じた瞬間、グレンはニヤリと笑いながら空を見上げる。
「だから、鋭すぎだろ」
異変など感じないとシュレが言えば、同意するように三人が頷く。
三人とはもちろん、アイカ、エシェル、カルヴィブのことだ。
エルフやハーフエルフである三人ですら、なにも感じ取れていない。まだ近くにはいないということだろう。
「とりあえず、ここで待つか」
敵がやってくるとわかっているのだから、先へ進むわけにはいかない。
なにせ、やってくるのは普通ではない魔物だ。周囲が広いほどグレンにとっては戦いやすい。
メンバーがメンバーだからか、アイカはおとなしくしている。
シュレと喧嘩をすることもなく、意味がわからないことだらけだろうになにも問いかけることもない。
グレンはどうなることかと思っていたが、なんとかなりそうだとひと安心した。
「アイカ、あとですべて話してやる。お前も関わってしまったからな」
「ヴィル…」
この戦いが終わったらすべて話す。その後は自分で判断しろと言われれば、アイカは静かに頷く。
「それとな、それは偽名だ。使っておいてなんだが、落ち着かない」
本来の名前はグレンだと言えば、わかったと答える。
特に疑問を持たない辺り、自分の名前はそこまで珍しくないのだなと思ってしまう。
「ありきたりの名前よ」
「そうなのか?」
試しに聞いてみれば、なにを聞くのかというように見られてしまった。
以前シオンが複雑だと言っていたのを思いだし、やっと気持ちが理解できたと苦笑いを浮かべる。
名前の付け方など、そのようなものなのかもしれない。息子の名前を考えたときのことを思いだし、そう納得しようと思うのだった。
「シュレは知ってるわけね」
「あいつは、初めから疑ってたからな。あっさりバレた」
シュレが喧嘩をするときは、ほとんどがグレンに絡んだとき。
振り返ってみれば、彼は自分を遠ざけようとしているように思えていた。そこも彼の秘密にあったのかと思う。
思うことができるようになったのだ。このメンバーで過ごしたことで。
「冷静に判断できるようになれ。そうすれば、お前は頼もしい戦力になる」
だから連れてきたと言われれば、認められたようで嬉しくなる。
(そっか、あたいは…)
彼に認められたかったのだと気付いてしまった。だから、こうも彼に執着していたのだと。
(恋ではないね)
そのことも見抜かれていたのかもしれない。シュレの背中を見ながら、そう思えた。
あれはいつだったかと思いだす。組合に呼び出されたかと思えば、新人と組めと言われたのだ。
今までは新人ではなかった。それが、ついに新人と組めと組合は言う。そこまで自分は評価がないのかと思ったのだ。
実力はあると信じていた。いや、確信していたのだ。
アイカは三人兄弟だったが、傭兵になったのは末っ子のアイカだけ。元傭兵の父親が認めたのが、アイカだけだったのだ。
「あたいは、強い?」
「あぁ。実力だけならな」
ハッキリと言われた言葉に、だからダメだったのかと思う。
つまり、実力以外でダメだったのだ。わかってしまえば、それは仕方ないとすら思えてくるから不思議だった。
「…まだ、間に合うのかな」
「始めることに遅いってことはないだろ。特に、人間じゃない俺達はな」
「そうだね」
グレンがこんな風に話してきたのも、おそらく今なら大丈夫と判断してのこと。アイカにも理解できた。
父親が傭兵としてやっていけると認めたこと、それによって思い違いをしていたのかもしれない。
なぜだかそんなことを考えるようになっていた。たったの二日で、アイカの考えはだいぶ変わっていたのだ。
その変化を察して、グレンは声をかけてきたのだろう。
「シュレも昔はお前に近かったみたいだからな。誰よりもわかるから、あんな態度なんだろう」
「見えない…」
今しか知らないアイカからすれば、ずっと冷静でクールなのだと思っていた。
「だよな。俺でも意外だと思った」
あれだけできるのだから、傭兵になったときから冷静な判断力を持っていると思っていたのだ。
「まぁ、初めから完璧な奴なんていないさ」
笑いながら言えば、アイカも笑って頷く。
確かにそうなのかもしれない。父親も強かったが、最初から強い傭兵をしていたわけではないはずだ。
認めてもらえたのは、あくまでも素質がるという判断がもらえただけだったのかもしれないと思う。
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その最中、目当てのおそらく魔物の姿をした干渉者が現れなければ、またなにかしらの理由をつけて出なくてはいけない。
次はどうするかと考えながら、道中の魔物を倒していた。
そして、街を出た二日後に目当ての干渉者はやってきたのだ。
「無駄にならなかったか」
なんとも言えない空気を感じた瞬間、グレンはニヤリと笑いながら空を見上げる。
「だから、鋭すぎだろ」
異変など感じないとシュレが言えば、同意するように三人が頷く。
三人とはもちろん、アイカ、エシェル、カルヴィブのことだ。
エルフやハーフエルフである三人ですら、なにも感じ取れていない。まだ近くにはいないということだろう。
「とりあえず、ここで待つか」
敵がやってくるとわかっているのだから、先へ進むわけにはいかない。
なにせ、やってくるのは普通ではない魔物だ。周囲が広いほどグレンにとっては戦いやすい。
メンバーがメンバーだからか、アイカはおとなしくしている。
シュレと喧嘩をすることもなく、意味がわからないことだらけだろうになにも問いかけることもない。
グレンはどうなることかと思っていたが、なんとかなりそうだとひと安心した。
「アイカ、あとですべて話してやる。お前も関わってしまったからな」
「ヴィル…」
この戦いが終わったらすべて話す。その後は自分で判断しろと言われれば、アイカは静かに頷く。
「それとな、それは偽名だ。使っておいてなんだが、落ち着かない」
本来の名前はグレンだと言えば、わかったと答える。
特に疑問を持たない辺り、自分の名前はそこまで珍しくないのだなと思ってしまう。
「ありきたりの名前よ」
「そうなのか?」
試しに聞いてみれば、なにを聞くのかというように見られてしまった。
以前シオンが複雑だと言っていたのを思いだし、やっと気持ちが理解できたと苦笑いを浮かべる。
名前の付け方など、そのようなものなのかもしれない。息子の名前を考えたときのことを思いだし、そう納得しようと思うのだった。
「シュレは知ってるわけね」
「あいつは、初めから疑ってたからな。あっさりバレた」
シュレが喧嘩をするときは、ほとんどがグレンに絡んだとき。
振り返ってみれば、彼は自分を遠ざけようとしているように思えていた。そこも彼の秘密にあったのかと思う。
思うことができるようになったのだ。このメンバーで過ごしたことで。
「冷静に判断できるようになれ。そうすれば、お前は頼もしい戦力になる」
だから連れてきたと言われれば、認められたようで嬉しくなる。
(そっか、あたいは…)
彼に認められたかったのだと気付いてしまった。だから、こうも彼に執着していたのだと。
(恋ではないね)
そのことも見抜かれていたのかもしれない。シュレの背中を見ながら、そう思えた。
あれはいつだったかと思いだす。組合に呼び出されたかと思えば、新人と組めと言われたのだ。
今までは新人ではなかった。それが、ついに新人と組めと組合は言う。そこまで自分は評価がないのかと思ったのだ。
実力はあると信じていた。いや、確信していたのだ。
アイカは三人兄弟だったが、傭兵になったのは末っ子のアイカだけ。元傭兵の父親が認めたのが、アイカだけだったのだ。
「あたいは、強い?」
「あぁ。実力だけならな」
ハッキリと言われた言葉に、だからダメだったのかと思う。
つまり、実力以外でダメだったのだ。わかってしまえば、それは仕方ないとすら思えてくるから不思議だった。
「…まだ、間に合うのかな」
「始めることに遅いってことはないだろ。特に、人間じゃない俺達はな」
「そうだね」
グレンがこんな風に話してきたのも、おそらく今なら大丈夫と判断してのこと。アイカにも理解できた。
父親が傭兵としてやっていけると認めたこと、それによって思い違いをしていたのかもしれない。
なぜだかそんなことを考えるようになっていた。たったの二日で、アイカの考えはだいぶ変わっていたのだ。
その変化を察して、グレンは声をかけてきたのだろう。
「シュレも昔はお前に近かったみたいだからな。誰よりもわかるから、あんな態度なんだろう」
「見えない…」
今しか知らないアイカからすれば、ずっと冷静でクールなのだと思っていた。
「だよな。俺でも意外だと思った」
あれだけできるのだから、傭兵になったときから冷静な判断力を持っていると思っていたのだ。
「まぁ、初めから完璧な奴なんていないさ」
笑いながら言えば、アイカも笑って頷く。
確かにそうなのかもしれない。父親も強かったが、最初から強い傭兵をしていたわけではないはずだ。
認めてもらえたのは、あくまでも素質がるという判断がもらえただけだったのかもしれないと思う。
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