72 / 276
2部 二刀流の魔剣士編
魔物の異変2
しおりを挟む
この仮定で進めていくなら、魔物はグレンを狙うなにかの影響を受けて強くなっているということ。
とりあえず他に問題がないならいいかと思うことにした。
「外からなにかが入り込んでいる、ということでよろしいですか」
カルヴィブが問いかければ、グレンとヴェガは視線だけで会話をしたあとに頷く。
狙ってくるなにかはわからないが、外からの干渉者であることは間違えようもない。
「街を離れた方がいいな。ここに俺がいると、なにが起きるかわからない」
東にいるとわかっている以上は、それを倒すことが最優先だと思えた。放置して去るわけにはいかない。
「外でキャンプでもするのか」
どうせ付き合わされるんだろと言うようにシュレが見れば、それも悪くないなと笑い返す。
「そのような仕事はありませんからね」
エシェルだけが呆れたように言えば、それもそうだと苦笑いに変わる。
どのような名目で外へ出ようかと考え直す。
ただの傭兵としている以上、さすがにこの状態で無意味に外へは出られない。それも、シュレだけを連れてなど無理だ。
「アイカを連れていくことになるか…」
実力だけなら問題はない。問題はないが不安要素もあるだけに、どうするかは悩みどころだ。
「なら、私と行くというのでどうでしょうか」
カルヴィブが言えば、それしかないかとエシェルも言う。
「ちょうど、ハーフエルフの里へ行く予定があったのです。シュレもいるので、グレン殿達を連れていくのは疑われないでしょう」
シュレは定期的に里帰りをしている。それは傭兵の間でも有名な話だ。
カルヴィブは今回初めて行くので、シュレを連れていくことは問題にならない。
「その間に目的のやつを倒せた場合、俺は一回戻るぞ」
行き先はグレンにとってもちょうどいいと言えた。そこには中央の大陸へ行くための入り口があるからだ。
「そうなったら、私がどうにかしますよ」
それぐらいなら問題ないとカルヴィブは言う。
急ぐ必要があるだろうと、出発を翌日に決めた。それでいいのかと思うところもあったりするのだが、本人がいいならいいのだろうと思う。
「気にしないでください。カルヴィブは適当なんです」
「そうだね。気まぐれで動くなとはよく言われるかな」
「よく、ではなく、いつもの間違えではない?」
ジロリと見れば、カルヴィブは笑って受け流す。慣れた様子に、二人の関係が見えてきたような気がした。
シュレだけが驚いたように見ていたが、グレンはエシェルのことなら理解しているだけに驚きはない。
「だいぶらしくなってきたな」
「あんたと組んでたときはあぁだったのか」
「もっとすごかった」
それはどういうことだと固まるシュレに笑えば、エシェルも咳払いをして誤魔化す。若気の至りですと言うように。
「実力はあったからな。大変だった」
「忘れてください」
突然新米と組まされとても不機嫌だったと言われてしまえば、エシェルは視線を逸らした。
実力がある傭兵ほど、新米と組まされるのを嫌がる傾向にある。別段珍しいことではない。
だからこそ中堅が新米の相手をすることがほとんどなのだが、グレンは組む相手を自分で選ぶようにしていた。
その関係でエシェルとも組んだのだが、見事に嫌がられてしまったという経緯を持つ。
「最初だけです。何回か仕事をすれば、実力がわかってしまいますからね」
隠していてもわかる実力。それが自分よりも強いとわかってしまえば、なにも言えないとエシェルは言う。
むしろ、なぜ傭兵にと思ってしまうほどだ。傭兵にならなくても、護衛として雇ってもらえる実力者だと。
「そこだけは同意します」
同じことを最初に思ったシュレは、自分で何人目かわからないが、組んだ傭兵みんなが思ったのだろうと思う。
グレンの実力はそれだけレベルが違うのだ。それは長く生きてきた経験の違いだけではなく、今の時代にはない修羅場を乗り越えてきた経験が大きい。
「いいな。私も組んでみたかった……」
その中、今回が初対面になるカルヴィブは羨ましいと言う。
『里へ行くまで組んでればいいんじゃね』
ぼそりと言われた言葉に、グレンはそれもいいかもしれないなどと言うから、エシェルはため息を漏らす。
勝手にしてくれと言いたいのかもしれない。
「カルヴィブと手合わせの約束もあったしな。このあとやるか」
「お手柔らかに」
笑みを浮かべながら話す二人に、そんな約束までしていたのかとシュレは呆れている。
彼は弓を使うからか、強い者と手合わせをしてみたいという気持ちだけは理解できなかった。
「なにかあったら、カルヴィブは私が止めますので」
グレンの方は頼んだと言うエシェルに、了承の意味で頷くシュレ。自分で止められるのかどうかは、さすがにわからなかったが。
「疲れる旅路になりそうです」
その表情を見たとき、さすがに言葉はなにもでてこなかった。ただ、この人も大変なんだなと思っただけである。
.
とりあえず他に問題がないならいいかと思うことにした。
「外からなにかが入り込んでいる、ということでよろしいですか」
カルヴィブが問いかければ、グレンとヴェガは視線だけで会話をしたあとに頷く。
狙ってくるなにかはわからないが、外からの干渉者であることは間違えようもない。
「街を離れた方がいいな。ここに俺がいると、なにが起きるかわからない」
東にいるとわかっている以上は、それを倒すことが最優先だと思えた。放置して去るわけにはいかない。
「外でキャンプでもするのか」
どうせ付き合わされるんだろと言うようにシュレが見れば、それも悪くないなと笑い返す。
「そのような仕事はありませんからね」
エシェルだけが呆れたように言えば、それもそうだと苦笑いに変わる。
どのような名目で外へ出ようかと考え直す。
ただの傭兵としている以上、さすがにこの状態で無意味に外へは出られない。それも、シュレだけを連れてなど無理だ。
「アイカを連れていくことになるか…」
実力だけなら問題はない。問題はないが不安要素もあるだけに、どうするかは悩みどころだ。
「なら、私と行くというのでどうでしょうか」
カルヴィブが言えば、それしかないかとエシェルも言う。
「ちょうど、ハーフエルフの里へ行く予定があったのです。シュレもいるので、グレン殿達を連れていくのは疑われないでしょう」
シュレは定期的に里帰りをしている。それは傭兵の間でも有名な話だ。
カルヴィブは今回初めて行くので、シュレを連れていくことは問題にならない。
「その間に目的のやつを倒せた場合、俺は一回戻るぞ」
行き先はグレンにとってもちょうどいいと言えた。そこには中央の大陸へ行くための入り口があるからだ。
「そうなったら、私がどうにかしますよ」
それぐらいなら問題ないとカルヴィブは言う。
急ぐ必要があるだろうと、出発を翌日に決めた。それでいいのかと思うところもあったりするのだが、本人がいいならいいのだろうと思う。
「気にしないでください。カルヴィブは適当なんです」
「そうだね。気まぐれで動くなとはよく言われるかな」
「よく、ではなく、いつもの間違えではない?」
ジロリと見れば、カルヴィブは笑って受け流す。慣れた様子に、二人の関係が見えてきたような気がした。
シュレだけが驚いたように見ていたが、グレンはエシェルのことなら理解しているだけに驚きはない。
「だいぶらしくなってきたな」
「あんたと組んでたときはあぁだったのか」
「もっとすごかった」
それはどういうことだと固まるシュレに笑えば、エシェルも咳払いをして誤魔化す。若気の至りですと言うように。
「実力はあったからな。大変だった」
「忘れてください」
突然新米と組まされとても不機嫌だったと言われてしまえば、エシェルは視線を逸らした。
実力がある傭兵ほど、新米と組まされるのを嫌がる傾向にある。別段珍しいことではない。
だからこそ中堅が新米の相手をすることがほとんどなのだが、グレンは組む相手を自分で選ぶようにしていた。
その関係でエシェルとも組んだのだが、見事に嫌がられてしまったという経緯を持つ。
「最初だけです。何回か仕事をすれば、実力がわかってしまいますからね」
隠していてもわかる実力。それが自分よりも強いとわかってしまえば、なにも言えないとエシェルは言う。
むしろ、なぜ傭兵にと思ってしまうほどだ。傭兵にならなくても、護衛として雇ってもらえる実力者だと。
「そこだけは同意します」
同じことを最初に思ったシュレは、自分で何人目かわからないが、組んだ傭兵みんなが思ったのだろうと思う。
グレンの実力はそれだけレベルが違うのだ。それは長く生きてきた経験の違いだけではなく、今の時代にはない修羅場を乗り越えてきた経験が大きい。
「いいな。私も組んでみたかった……」
その中、今回が初対面になるカルヴィブは羨ましいと言う。
『里へ行くまで組んでればいいんじゃね』
ぼそりと言われた言葉に、グレンはそれもいいかもしれないなどと言うから、エシェルはため息を漏らす。
勝手にしてくれと言いたいのかもしれない。
「カルヴィブと手合わせの約束もあったしな。このあとやるか」
「お手柔らかに」
笑みを浮かべながら話す二人に、そんな約束までしていたのかとシュレは呆れている。
彼は弓を使うからか、強い者と手合わせをしてみたいという気持ちだけは理解できなかった。
「なにかあったら、カルヴィブは私が止めますので」
グレンの方は頼んだと言うエシェルに、了承の意味で頷くシュレ。自分で止められるのかどうかは、さすがにわからなかったが。
「疲れる旅路になりそうです」
その表情を見たとき、さすがに言葉はなにもでてこなかった。ただ、この人も大変なんだなと思っただけである。
.
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
黒の創造召喚師
幾威空
ファンタジー
※2021/04/12 お気に入り登録数5,000を達成しました!ありがとうございます!
※2021/02/28 続編の連載を開始しました。
■あらすじ■
佐伯継那(さえき つぐな)16歳。彼は偶然とも奇跡的ともいえる確率と原因により死亡してしまう。しかも、神様の「手違い」によって。
そんな継那は神様から転生の権利を得、地球とは異なる異世界で第二の人生を歩む。神様からの「お詫び」にもらった(というよりぶんどった)「創造召喚魔法」というオリジナルでユニーク過ぎる魔法を引っ提げて。
私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。
アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。
【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】
地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。
同じ状況の少女と共に。
そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!?
怯える少女と睨みつける私。
オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。
だったら『勝手にする』から放っておいて!
同時公開
☆カクヨム さん
✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉
タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。
そして番外編もはじめました。
相変わらず不定期です。
皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます🙇💕
これからもよろしくお願いします。
英雄の左遷先~戦争が終わって左遷された英雄は冒険者になってみた~
暁月りあ
ファンタジー
7年に渡る大陸全土を巻き込んだ戦争が終結した。世界が平和となり、英雄が不要になって2年。戦争の兆しも無くなってきた頃合いになると、騎士であるカディアは辺境伯領へと左遷される。「幸せにおなり」そう言われて。記憶を失い、戦争しか知らない英雄は、平和な土地へ赴いても何をすればいいのかわからない。「幸せって、なんだろう」──これは、かつての英雄が自由を許されながらも幸せを探す物語
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
騎士団に入る事になりました
セイラ
恋愛
私の名前はレイラ・エバーガーデン。前世の記憶を持っている。生まれは子爵家で、家庭を支える為に騎士団に入る事に。
小さい頃から、師匠に鍛えられていたレイラ。マイペースで無自覚な性格だが、悪戯を企む時も。
しかし、周りから溺愛される少女の物語。
精霊のジレンマ
さんが
ファンタジー
普通の社会人だったはずだが、気が付けば異世界にいた。アシスという精霊と魔法が存在する世界。しかし異世界転移した、瞬間に消滅しそうになる。存在を否定されるかのように。
そこに精霊が自らを犠牲にして、主人公の命を助ける。居ても居なくても変わらない、誰も覚えてもいない存在。でも、何故か精霊達が助けてくれる。
自分の存在とは何なんだ?
主人公と精霊達や仲間達との旅で、この世界の隠された秘密が解き明かされていく。
小説家になろうでも投稿しています。また閑話も投稿していますので興味ある方は、そちらも宜しくお願いします。
勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します
華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~
「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」
国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。
ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。
その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。
だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。
城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。
この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる