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2部 二刀流の魔剣士編

魔物の異変

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 無事に帰還したグレン達は、その後も何度か魔物討伐に駆り出されていた。どうやら出没が増えているらしいと。

「これは…」

『シオンがいない影響だな』

 少しずつ強くなっている。その事実を知ったグレンは、渋い表情で倒したばかりの魔物を見下ろす。

 今はまだいい。けれど、これがさらに強くなっていくとなれば問題だ。

 傭兵はある程度の強さまで戦えるだろう。しかし、すべての人々が戦えるわけではない。

 魔物だけでも脅威だというのに、それが強くなってしまったらと思えば頭が痛くなる問題だ。

『早く、シオンが戻ることを願うしかないな』

「あぁ…戻ってこれればだが」

 これだけ長期で留守にすることはなかった。長くなりそうなときは、必ず戻ってきてまた出掛ける。

 だから問題が起きることはなかった。魔物が強くなるということも、今回初めて知ったほどだ。シオンがいないだけで世界に影響がでるなど、思いもしない。

 対策を考えなくてはいけない。自分だけではなく、仲間みんなと考える必要がだ。

「それで、俺を巻き込むわけだな」

 ついてこいと言われ、シュレは笑いながらあとを追う。

 すっかり仲間入りしてしまったと歩くが、嫌がっているわけではない。自分から踏み込んだ世界なのだから。

「すべて知ってる奴は都合がいいからな」

「そうだろうとも」

 協力者として使えるものはなんでも使う。その気持ちはわかるし、自分でもやるかもしれないとも思った。

「話が中途半端になったがな」

「仕方ないさ。こうも続くとな」

 依頼も含まれているが、魔物が街へ襲いかかってきているのもあって、仕事を受けていない傭兵達が交代で警戒している状態。

 グレンとシュレも同様に、空いている時間を魔物警戒として街へ出ていることがほとんどだ。話をのんびりとしている余裕はない。

 気になってはいるが、優先順位があるとシュレは考えないことにしていた。

 見覚えのない部屋まで行けば、そこに待っていたのは組合のトップ二人。

 さすがにここへ混ざっていいのだろうかと思う。グレンならわかるが、自分はただの傭兵なのだから。

「やっぱりバレたんですね」

 一緒にいる姿を見て、エシェルが苦笑いを浮かべながら言う。

 わかっていたことだが、こうにも連れて歩くとは思っていなかったのだ。

「バレたついでに、下手したらお前らより詳しいかもしれない」

 だから混ぜるぞと言われれば、カルヴィブとエシェルは笑うしかない。彼が言うなら、二人には断ることなどできるわけがないのだから。

「あと、これは初対面だな」

『これとか言うな』

 抗議するようにヴェガが言うが、小さな獣がなにを言っても怖くなどない。

「月神の聖獣ヴェガだ。今回、なぜか俺のとこについてきていてな」

 戦力外だが知識的なことでは多少は役立つだろう、と苦笑いを浮かべた。提供してくれるかは気まぐれだからだ。

 のんびりと話すわけでもなく、簡単な挨拶をするとすぐさま本題に入った。魔物がどこまで強くなっているのか、正確なことを把握することが先だ。

 傭兵組合なら把握済みだと確信していた。情報の集め方を誰よりも知っているからこそのこと。

「幸いなのかわかりませんが、どうやら魔物が強くなっているのは東だけのようです」

 紙の束を見ながらエシェルが言えば、グレンの表情が変わる。それはつまり、なにかしらの原因があって強くなっているということだと思えたのだ。

(だとしたら、俺か…)

 原因があるとしたら自分かもしれない。正確には、自分が持つ力だと思う。

『考えられる理由は三つだな。ひとつ、原因となるなにかが東へやってきた。二つ、グレンが持つシオンの力。三つ、その両方だ』

 同じ考えをしていたヴェガが言えば、その場にいた全員がグレンを見る。

 三人ともが同じ意見なのかと問いかけているのだ。

「……やっぱ、そうなるか」

 渋い表情で答えるグレン。これが答えだと言うように。

 グレンが持つ力が原因となれば、当然シオンの力を消したいということになる。

 最初の仮定は否定されたなと思う。

「俺は最初、シオンがいない影響だと思っていたんだがな」

『俺もそう思ったさ。あいつは世界の支えとなる存在だ』

 けれどエシェルの話を聞いて考えは変わった。

『シオンがいなくても問題はない。お前がいるからだ』

 ハッキリと言われた言葉に、グレンは苦笑いしかでない。まさか自分がそのような存在になろうとは、思いもしなかったのだ。

 当然ながら、シオンも考えてはいなかったことだろう。

「逆に言えば、グレンを潰さないことには太陽神を完全に潰すことはできないということか?」

 だから狙ってきているのではないかとシュレが言えば、一人と一匹はそうだろうなと頷く。

 それしか考えられないというのが、現状での考えだった。

 そうでなければ、東だけということは理解できなかったのだ。




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