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2部 二刀流の魔剣士編

シュレの過去2

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 問われていることはシュレでもなんとなくわかること。

 情報を得ることや運動がしたいなど嘘ではないが、本当でもないと気付いていた。それでも突っ込まないのは、突っ込んではいけないと思っていたから。

 彼は自分達とは違う世界で生きているのだ。こうして話せているだけでも十分だろうと思っていた。

「俺はなにか役に立てるのか」

 しかし、突っ込んでいいと言うなら突っ込みたいと思う。

「わからないが、俺はお前がいてくれるなら助かると思う。ただ…」

「強くなりたいんだ…」

 なぜ突っ込みたいのか知りたいと思っていたが、問いかけるより前にシュレは自嘲気味に言った。

「フィフィリス・ペドランのためにか」

「そうだ」

 惚れた女傭兵のためだろうと思っていたが、それがなぜなのか。気になっていたのはそこだ。

 そして、それはアイカを嫌うことへも繋がるのだろうとも思っていた。

 少しばかり考えていたシュレは、一度息を吐くと話し出す。

「俺は母親がハーフエルフ、父親が人間だ。人間の血が濃くて、魔力は弱く魔法は不得意。傭兵をやるには不向きだとわかっている」

 それでもやらなくてはいけない。そんな状態になってしまったのは、里に流行り病が広がってしまったこと。

 母親と妹のため、治療費を稼ぐのに傭兵組合へ向かった。

「当時のトップ二人には拒否られたが、自分が組むからとフィフィリスが受け入れを認めるよう動いてくれた」

 すでに傭兵組合のトップクラスで仕事をしていたこともあり、絶大な信頼があったフィフィリス。

 彼女が言うならと、常に組むことが条件で傭兵組合へ入ることが許された。

『弓だけじゃな。一人で動けない傭兵は依頼がこないか』

 仕方ないことかもしれない。理不尽だと思うが、組織としてはそのような傭兵を受け入れることはできない、というのもわかる。

 しばらくは二人で組む日々。簡単な魔物退治から始まり、シュレの実力を試すような仕事だった。

「弓しかできなくても、俺は自分の腕を疑いもしなかった。なんでもやれると思っていたし、あのときは感情的だった」

 その言葉で、シュレがアイカにたいしてあのような態度をとる理由がわかった気がする。

 失敗から学んだものがあるのだと。

「商人の護衛をしていたときだ。俺の勝手な行動が、依頼主へ怪我をさせたのは」

 当然ながら、傭兵のミスで怪我をさせてしまえば傭兵に処罰が下る。

 新米だったシュレはなにも言われなかったが、フィフィリスは処罰を受けた。

「傭兵組合の処罰は厳しいだろ。カロルは厳しい奴だったからな」

 グレンはそういったことには関与していなかったこともあり、どのようなものかは知らない。

「俺も正確には知らない。聞いてもフィフィリスは教えなかった」

 それ以降は処罰を受けるようなこともしていなかったからだ。

 そして、処罰を受けるだけではなかったのだとも言う。

「フィフィリスにも怪我を負わせた。それは、俺がやってしまったことだ」

 彼女は責めることはしなかった。責められたほうが楽だったが、楽になるなと言われているのかもしれないと今は思っている。

「勝手な行動と、根拠のない力の過信が起こした結果。同じことが起きるとは限らなければ、これより酷いことが起きるかもしれない」

「だから、アイカにあの態度か」

 シュレなら軽く流すこともできれば、本当に嫌いならもっと冷たくすることも可能だ。

 それをわざと喧嘩という形にしているのは、アイカの性格を理解してのこと。

 なんとなく察していたが、やはりそうだったかと苦笑いを浮かべる。

「わかってて静観していたんだろ」

 呆れながら見ていただけのグレン。止めようと思えば止められるのに、それをしなかったのは察していたからだとシュレも気付いていた。

「さすがに、俺はあそこまでじゃなかったが」

 あれは酷過ぎると言えば、確かにと納得はする。

「悪くはないんだがな…」

 少しだけ経験が足りないとグレンは思う。実力があるからこそ、なんでもできると思っているアイカ。

「昔の俺も思っていたが、結局のところなんでもできるわけじゃないんだ。それを後悔する形で知っても遅い」

「なんでも一人でやろうとするのも問題だけどな」

『それはシオンとリオンだ』

 今ではマシになったが、あの当時はとにかく一人で抱え込む友人に困ったものだ。

 言って直るようなことでもないし、とにかく気を付けて見ているしかない。

「それも面倒だな」

「そうだろ。でも、後悔したくないって気持ちからだからな」

 簡単に止められるものでもないと、グレンは自然に変わるのを待つことにしていた。

 先が無限にあるからできたことだと、これもわかっている。

 人間よりは長生きなんだからゆっくりやっていけばいいと言われてしまえば、シュレも笑うしかない。

 確かにそうかもしれないと思えてしまうのだ。

「俺は強くなりたい」

 強いと思っていた頃、そうではないと思い知った。思い知らされたのだ。

「力だけではなく、本当の意味で強くなりたいと思った」

 今度は彼女に守られるでもなく、対等に戦える存在になりたい。

 守ることはできなくても、対等に戦うことはできるはずだと。

「強さは力だけじゃない、か。本当にそう思うさ」

『アクアか…』

「まぁな。武器が使えなくても、戦うことはできるとも教えられたしな」

 元は神官でしかなかった妻は、三千年経っても武器を手にすることはない。それでも一緒に戦うのだ。

「お前といるには、そうであるべきだと思っているんだろ」

「シュレがフィフィリスへ思うのと同じわけだな」

 これは、会わせたらその部分だけ気が合いそうだと笑う。他はわからないが。




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