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2部 二刀流の魔剣士編
北の港街
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「さっむーい!」
「そりゃ、北の大陸だからな」
当然だろ、と言いながら船を降りていくシュレに、ムッとした表情を浮かべるアイカ。
このまま喧嘩にならなかっただけマシかと苦笑いを浮かべるのはグレンだ。
「依頼主はここで仕入れをするらしい。三日ほど、俺達は暇にしていいってさ」
問題を起こすなよ、と言いたげにシュレはアイカを見ている。彼女は休みを与えたらどうなるか、考えたくもないというのが本音。
なにかやらかしたときには、置いて帰ろうと思っていたほどだ。
「こんな寒いところ、宿にこもってるわよ!」
出歩いたりしないと言うなり、アイカは手配されてた宿へ向けて去っていく。
「宿で問題を起こさないといいがな…」
背中を見ながら、宿の食堂で酒を飲まなければいいがとグレンが言えば、シュレの表情が引きつった。
そのときは、絶対に関わりたくないと思ったことは間違いない。
宿に行けばアイカがいると思えば、しばらくは外にいたいなとシュレは思う。
「お前はどうするんだ? こもってるのか」
北の大陸とはいえ、ここは港街で城があるわけでもない。彼に違和感を覚える者はいないだろう。
それでも警戒して宿にこもるというのは、ひとつの手だと思っていた。
「夜まではこもるつもりだ」
「夜まで?」
「少し出掛ける」
三日しかないというのに、あっさりと言うグレンを見て英雄王はと言いたくなる。
なにかしらの特殊な手段を持っているのだと察したのだ。
「そのために、この依頼を受けたな」
組合のトップはグレンが英雄王だと知っている。依頼は選ぼうと思えば、いくらでも好きなものを受けられるはずだ。
北へ行くなど本来なら一番引き受けたくない内容だっただろう、と考えていたシュレは、納得したというように頷く。
目的があったから引き受けた依頼なのだと。
グレン・バルスデ・フォーランだということを隠しているのだから、北など一番行きたくないはず。
少なくとも、シュレはそう思っていた。だから、この依頼を引き受けたと聞いたときは酷く驚いたのだ。
バルスデ王国へ行く依頼ではないが、本気で引き受けるのかと。
「情報屋から話は聞いたが、現地で情報が欲しくてな」
「ここで手に入るのか?」
グレンが求める情報が手に入るのかという意味で問いかければ、微妙なところだと返す。
手に入るかもしれないが、手に入らないかもしれない。それでいいとも思っていた。
「それにな、今回はこいつに見せたいものがあるだけだ」
肩に乗っているヴェガへ見せたいものがあるだけだと言えば、その方が不思議だったりもする。
友人からの預かりで、喋る獣としかシュレは知らないからだ。
さすがに聖獣だとか月神の力そのものだとかは知らないし、グレンも言ってはいない。
思い出の場所があるのだと濁すと、深くは突っ込んでこなかった。
おそらくなにかを感じているのだろうが、あれ以来深く突っ込むようなことはない。深いところは聞かないようにしているのだろう。
「シュレはどうするんだ」
「買い物でも行ってくるさ。北でしか売ってないのもあるし」
そのまま外食だな、とグレンは苦笑いを浮かべる。アイカを避けているのだ。
「酒場でいいなら付き合うぞ」
「情報を求めて酒場か…まぁ、悪くない」
商人なども多くいる街。酒場へ行けば商人達が情報を交換していたり、商人に雇われた傭兵が話していることは間違いない。
なにかしらの情報は手に入るだろうし、シュレも北の知識は欲しいと思っていた。
「なら、買い物が終わったら声かけろ」
それまでは休ませてもらうと言うから、しっかり寝ろとシュレは言う。睡眠時間が短いことも見抜かれていたのだ。
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「そりゃ、北の大陸だからな」
当然だろ、と言いながら船を降りていくシュレに、ムッとした表情を浮かべるアイカ。
このまま喧嘩にならなかっただけマシかと苦笑いを浮かべるのはグレンだ。
「依頼主はここで仕入れをするらしい。三日ほど、俺達は暇にしていいってさ」
問題を起こすなよ、と言いたげにシュレはアイカを見ている。彼女は休みを与えたらどうなるか、考えたくもないというのが本音。
なにかやらかしたときには、置いて帰ろうと思っていたほどだ。
「こんな寒いところ、宿にこもってるわよ!」
出歩いたりしないと言うなり、アイカは手配されてた宿へ向けて去っていく。
「宿で問題を起こさないといいがな…」
背中を見ながら、宿の食堂で酒を飲まなければいいがとグレンが言えば、シュレの表情が引きつった。
そのときは、絶対に関わりたくないと思ったことは間違いない。
宿に行けばアイカがいると思えば、しばらくは外にいたいなとシュレは思う。
「お前はどうするんだ? こもってるのか」
北の大陸とはいえ、ここは港街で城があるわけでもない。彼に違和感を覚える者はいないだろう。
それでも警戒して宿にこもるというのは、ひとつの手だと思っていた。
「夜まではこもるつもりだ」
「夜まで?」
「少し出掛ける」
三日しかないというのに、あっさりと言うグレンを見て英雄王はと言いたくなる。
なにかしらの特殊な手段を持っているのだと察したのだ。
「そのために、この依頼を受けたな」
組合のトップはグレンが英雄王だと知っている。依頼は選ぼうと思えば、いくらでも好きなものを受けられるはずだ。
北へ行くなど本来なら一番引き受けたくない内容だっただろう、と考えていたシュレは、納得したというように頷く。
目的があったから引き受けた依頼なのだと。
グレン・バルスデ・フォーランだということを隠しているのだから、北など一番行きたくないはず。
少なくとも、シュレはそう思っていた。だから、この依頼を引き受けたと聞いたときは酷く驚いたのだ。
バルスデ王国へ行く依頼ではないが、本気で引き受けるのかと。
「情報屋から話は聞いたが、現地で情報が欲しくてな」
「ここで手に入るのか?」
グレンが求める情報が手に入るのかという意味で問いかければ、微妙なところだと返す。
手に入るかもしれないが、手に入らないかもしれない。それでいいとも思っていた。
「それにな、今回はこいつに見せたいものがあるだけだ」
肩に乗っているヴェガへ見せたいものがあるだけだと言えば、その方が不思議だったりもする。
友人からの預かりで、喋る獣としかシュレは知らないからだ。
さすがに聖獣だとか月神の力そのものだとかは知らないし、グレンも言ってはいない。
思い出の場所があるのだと濁すと、深くは突っ込んでこなかった。
おそらくなにかを感じているのだろうが、あれ以来深く突っ込むようなことはない。深いところは聞かないようにしているのだろう。
「シュレはどうするんだ」
「買い物でも行ってくるさ。北でしか売ってないのもあるし」
そのまま外食だな、とグレンは苦笑いを浮かべる。アイカを避けているのだ。
「酒場でいいなら付き合うぞ」
「情報を求めて酒場か…まぁ、悪くない」
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なにかしらの情報は手に入るだろうし、シュレも北の知識は欲しいと思っていた。
「なら、買い物が終わったら声かけろ」
それまでは休ませてもらうと言うから、しっかり寝ろとシュレは言う。睡眠時間が短いことも見抜かれていたのだ。
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