52 / 276
2部 二刀流の魔剣士編
傭兵組合2
しおりを挟む
アイカも部屋を出ていけば、それまで黙って見ていたハーフエルフの男性が膝をつく。
「ご挨拶が遅くなりました。現在、傭兵組合を任されているカルヴィブ・セクストと申します」
エルフの血を引く者には珍しくない金髪を短く切り揃え、濃い緑色の瞳をした青年。傭兵だったのかと思うほど穏やかな青年だが、身のこなしは間違いなく傭兵だ。
それなりに場数も踏んでいる。そうでなければ、組合のトップにはなれないのだ。
「カルヴィブ、か。とりあえず、それやめろ」
話はそれからだと言えば、カルヴィブは立ち上がった。
「わかりました。ところで、お話もいいですが手合わせもしてみたいところです」
元は傭兵なのでと言われてしまえば、グレンは声を上げて笑う。
どいつもこいつも物好きばかりだと思うが、時代が変わっても変わらない傭兵達が結構好きだったりする。
(だからやめられないんだ)
ここで傭兵を続けるのは、どうしようもないほど楽しいから。
手合わせは明日以降と言えば、エシェルもクスリと笑う。組んだことがあるだけに、グレンの性格は多少なり理解しているのだ。
「カルヴィブも当然、すべて知っているんだよな」
「はい。外のことも知っています」
北のバルスデ王国で王をしていた元傭兵。グレンが不死としてこの世界で生き続けていることは知っている。
友人のために選んだ道だと。
「なら、話は早い」
その友人が太陽神を示すことも知っており、彼がこうも早く戻ってきたのはその辺りが理由だろうとすら思っていた。
「シオンが外の異変を感じて出掛けてな。だから切り上げたんだが」
そのとき、カルヴィブは傭兵組合の組合長として挨拶回りから帰ってくるところだった為、会うことができなかったのだ。
「…少し、帰りが遅すぎる」
外の異変は何度かあったし、彼ほどの実力ならなにがあっても問題ないと思っている。
すぐに帰ってくると思っていたのだ。
けれど、帰ってこない。理由があるとしたら、簡単には戻れないだけのことが起きているということだけだが、それがこの世界に影響を与えるかもしれないとも思えた。
なぜなら、外からの影響を受けないようにしているのが太陽神だからだ。
「セレンにいると情報が入らない。それで、三人とも外へ出ることを決めたわけだ」
「そうでしたか。我々も気を付けてみましょう」
真っ先に起きる影響としては魔物に関することだろう。魔物が強くなったり、数が多くなったり。
そうなってくると、傭兵をしながら情報を集めるのが一番だと思う。
「なにもなければ、それでいいと思ってる」
「そうですね。注意して損はないです」
傭兵組合が動けば、情報屋をすべて動かすことができる。魔物の動きに関して強化しようとカルヴィブは約束した。
なにかが起きてしまったとき、魔物に関する仕事が増えるのは間違いない。備えておくのだと思えば、動くことに無駄はないとも思ったのだ。
組織としてはカロルがかつて騎士団内に作っていた精鋭部隊に似ているな、とグレンは思っていた。
だからこそいざというとき動かしやすいのだが、それでも限界があることもわかっている。
「もうひとつ頼みがあるんだが」
「可能なことであれば」
傭兵組合は本部を東の大陸へ置いているだけで、実際には支部のようなものが各地にあった。
おそらく、これもカロルが精鋭部隊でやっていたことを組織として広げた結果。窓口を各地に置くことで、仕事の依頼を受けている。
「普通ではない魔物がでたら、どこであっても教えてもらいたい。俺が行く」
三千年前のことを思い返せば、普通では太刀打ちできない魔物が現れることも視野にいれなくてはいけない。
外の影響ということは、つまり外から送り込まれたということになる。この世界にいる魔物とは性質がまったく違うのだ。
さすがに自分が行くしかないと思っていた。
「それだけの魔物、ということですね」
真剣な表情で言われれば、それがどれだけやばいのかわかるというもの。
なにせ二人からすれば目の前にいるのは英雄王、もしくは傭兵王とも呼ばれる存在なのだ。
「三千年前は歯が立たなかったが、今ならやれる」
不敵な笑みを浮かべて言えば、二人は苦笑いしかでない。
「さすがに、魔法がまともに通じないのはでないと思うが」
昔現れた中に、友人の力すら効かない魔物がいた。あれは特殊だということはわかっているだけに、出てこないと思ってはいる。
それでも警戒はするべきだろうし、もっと特殊なのが現れることも考えなくてはいけない。
「魔物の詳細を聞いてもいいかしら」
ここまで黙って聞いていたエシェルは、普通ではない魔物がどのようなものなのか。知っている詳細を求めた。
特徴がわからなければ、これがそうだと判断できないからだ。
聞かれたグレンも、確かに特徴がわからないと判断できないかと思う。
「この世界の魔物は自然発生するものだとは、傭兵組合には伝わっていなかったか」
言いながら不思議そうな表情を浮かべる二人に苦笑い。これも知っているのは神聖国とバルスデ王国だけだったと思いだす。
「世界の成り立ちは、ここでも知られてるよな」
東や南の大陸は文明が少しばかり遅れている。知られていない知識があるのも仕方ないと思うほどに。
けれど東はグレンが活動していたことや、カロルが動いていたこともあって大きく変化しているのだ。
「女神メルレールが創り、三千年前に旅立たれたと」
「そうだな」
エシェルが言えば、間違ってはいないと頷く。
女神メルレールによって創られた世界。女神の加護で守られていた世界は、三千年前に太陽神へ託された。
これが世界へ伝えられている創世記のひとつ。
.
「ご挨拶が遅くなりました。現在、傭兵組合を任されているカルヴィブ・セクストと申します」
エルフの血を引く者には珍しくない金髪を短く切り揃え、濃い緑色の瞳をした青年。傭兵だったのかと思うほど穏やかな青年だが、身のこなしは間違いなく傭兵だ。
それなりに場数も踏んでいる。そうでなければ、組合のトップにはなれないのだ。
「カルヴィブ、か。とりあえず、それやめろ」
話はそれからだと言えば、カルヴィブは立ち上がった。
「わかりました。ところで、お話もいいですが手合わせもしてみたいところです」
元は傭兵なのでと言われてしまえば、グレンは声を上げて笑う。
どいつもこいつも物好きばかりだと思うが、時代が変わっても変わらない傭兵達が結構好きだったりする。
(だからやめられないんだ)
ここで傭兵を続けるのは、どうしようもないほど楽しいから。
手合わせは明日以降と言えば、エシェルもクスリと笑う。組んだことがあるだけに、グレンの性格は多少なり理解しているのだ。
「カルヴィブも当然、すべて知っているんだよな」
「はい。外のことも知っています」
北のバルスデ王国で王をしていた元傭兵。グレンが不死としてこの世界で生き続けていることは知っている。
友人のために選んだ道だと。
「なら、話は早い」
その友人が太陽神を示すことも知っており、彼がこうも早く戻ってきたのはその辺りが理由だろうとすら思っていた。
「シオンが外の異変を感じて出掛けてな。だから切り上げたんだが」
そのとき、カルヴィブは傭兵組合の組合長として挨拶回りから帰ってくるところだった為、会うことができなかったのだ。
「…少し、帰りが遅すぎる」
外の異変は何度かあったし、彼ほどの実力ならなにがあっても問題ないと思っている。
すぐに帰ってくると思っていたのだ。
けれど、帰ってこない。理由があるとしたら、簡単には戻れないだけのことが起きているということだけだが、それがこの世界に影響を与えるかもしれないとも思えた。
なぜなら、外からの影響を受けないようにしているのが太陽神だからだ。
「セレンにいると情報が入らない。それで、三人とも外へ出ることを決めたわけだ」
「そうでしたか。我々も気を付けてみましょう」
真っ先に起きる影響としては魔物に関することだろう。魔物が強くなったり、数が多くなったり。
そうなってくると、傭兵をしながら情報を集めるのが一番だと思う。
「なにもなければ、それでいいと思ってる」
「そうですね。注意して損はないです」
傭兵組合が動けば、情報屋をすべて動かすことができる。魔物の動きに関して強化しようとカルヴィブは約束した。
なにかが起きてしまったとき、魔物に関する仕事が増えるのは間違いない。備えておくのだと思えば、動くことに無駄はないとも思ったのだ。
組織としてはカロルがかつて騎士団内に作っていた精鋭部隊に似ているな、とグレンは思っていた。
だからこそいざというとき動かしやすいのだが、それでも限界があることもわかっている。
「もうひとつ頼みがあるんだが」
「可能なことであれば」
傭兵組合は本部を東の大陸へ置いているだけで、実際には支部のようなものが各地にあった。
おそらく、これもカロルが精鋭部隊でやっていたことを組織として広げた結果。窓口を各地に置くことで、仕事の依頼を受けている。
「普通ではない魔物がでたら、どこであっても教えてもらいたい。俺が行く」
三千年前のことを思い返せば、普通では太刀打ちできない魔物が現れることも視野にいれなくてはいけない。
外の影響ということは、つまり外から送り込まれたということになる。この世界にいる魔物とは性質がまったく違うのだ。
さすがに自分が行くしかないと思っていた。
「それだけの魔物、ということですね」
真剣な表情で言われれば、それがどれだけやばいのかわかるというもの。
なにせ二人からすれば目の前にいるのは英雄王、もしくは傭兵王とも呼ばれる存在なのだ。
「三千年前は歯が立たなかったが、今ならやれる」
不敵な笑みを浮かべて言えば、二人は苦笑いしかでない。
「さすがに、魔法がまともに通じないのはでないと思うが」
昔現れた中に、友人の力すら効かない魔物がいた。あれは特殊だということはわかっているだけに、出てこないと思ってはいる。
それでも警戒はするべきだろうし、もっと特殊なのが現れることも考えなくてはいけない。
「魔物の詳細を聞いてもいいかしら」
ここまで黙って聞いていたエシェルは、普通ではない魔物がどのようなものなのか。知っている詳細を求めた。
特徴がわからなければ、これがそうだと判断できないからだ。
聞かれたグレンも、確かに特徴がわからないと判断できないかと思う。
「この世界の魔物は自然発生するものだとは、傭兵組合には伝わっていなかったか」
言いながら不思議そうな表情を浮かべる二人に苦笑い。これも知っているのは神聖国とバルスデ王国だけだったと思いだす。
「世界の成り立ちは、ここでも知られてるよな」
東や南の大陸は文明が少しばかり遅れている。知られていない知識があるのも仕方ないと思うほどに。
けれど東はグレンが活動していたことや、カロルが動いていたこともあって大きく変化しているのだ。
「女神メルレールが創り、三千年前に旅立たれたと」
「そうだな」
エシェルが言えば、間違ってはいないと頷く。
女神メルレールによって創られた世界。女神の加護で守られていた世界は、三千年前に太陽神へ託された。
これが世界へ伝えられている創世記のひとつ。
.
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う
馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない
そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!?
そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!?
農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!?
10個も願いがかなえられるらしい!
だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ
異世界なら何でもありでしょ?
ならのんびり生きたいな
小説家になろう!にも掲載しています
何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ
ひるま(マテチ)
SF
空色の髪をなびかせる玉虫色の騎士。
それは王位継承戦に持ち出されたチェスゲームの中で、駒が取られると同事に現れたモンスターをモチーフとしたロボット兵”盤上戦騎”またの名を”ディザスター”と呼ばれる者。
彼ら盤上戦騎たちはレーダーにもカメラにも映らない、さらに人の記憶からもすぐさま消え去ってしまう、もはや反則レベル。
チェスの駒のマスターを望まれた“鈴木くれは”だったが、彼女は戦わずにただ傍観するのみ。
だけど、兵士の駒"ベルタ”のマスターとなり戦場へと赴いたのは、彼女の想い人であり幼馴染みの高砂・飛遊午。
異世界から来た連中のために戦えないくれは。
一方、戦う飛遊午。
ふたりの、それぞれの想いは交錯するのか・・・。
*この作品は、「小説家になろう」でも同時連載しております。
空間魔法って実は凄いんです
真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?
前世で眼が見えなかった俺が異世界転生したら・・・
y@siron
ファンタジー
俺の眼が・・・見える!
てってれてーてってれてーてててててー!
やっほー!みんなのこころのいやしアヴェルくんだよ〜♪
一応神やってます!( *¯ ꒳¯*)どやぁ
この小説の主人公は神崎 悠斗くん
前世では色々可哀想な人生を歩んでね…
まぁ色々あってボクの管理する世界で第二の人生を楽しんでもらうんだ〜♪
前世で会得した神崎流の技術、眼が見えない事により研ぎ澄まされた感覚、これらを駆使して異世界で力を開眼させる
久しぶりに眼が見える事で新たな世界を楽しみながら冒険者として歩んでいく
色んな困難を乗り越えて日々成長していく王道?異世界ファンタジー
友情、熱血、愛はあるかわかりません!
ボクはそこそこ活躍する予定〜ノシ
チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~
クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。
だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。
リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。
だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。
あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。
そして身体の所有権が俺に移る。
リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。
よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。
お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。
お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう!
味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。
絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ!
そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる