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2部 二刀流の魔剣士編

傭兵組合2

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 アイカも部屋を出ていけば、それまで黙って見ていたハーフエルフの男性が膝をつく。

「ご挨拶が遅くなりました。現在、傭兵組合を任されているカルヴィブ・セクストと申します」

 エルフの血を引く者には珍しくない金髪を短く切り揃え、濃い緑色の瞳をした青年。傭兵だったのかと思うほど穏やかな青年だが、身のこなしは間違いなく傭兵だ。

 それなりに場数も踏んでいる。そうでなければ、組合のトップにはなれないのだ。

「カルヴィブ、か。とりあえず、それやめろ」

 話はそれからだと言えば、カルヴィブは立ち上がった。

「わかりました。ところで、お話もいいですが手合わせもしてみたいところです」

 元は傭兵なのでと言われてしまえば、グレンは声を上げて笑う。

 どいつもこいつも物好きばかりだと思うが、時代が変わっても変わらない傭兵達が結構好きだったりする。

(だからやめられないんだ)

 ここで傭兵を続けるのは、どうしようもないほど楽しいから。

 手合わせは明日以降と言えば、エシェルもクスリと笑う。組んだことがあるだけに、グレンの性格は多少なり理解しているのだ。

「カルヴィブも当然、すべて知っているんだよな」

「はい。外のことも知っています」

 北のバルスデ王国で王をしていた元傭兵。グレンが不死としてこの世界で生き続けていることは知っている。

 友人のために選んだ道だと。

「なら、話は早い」

 その友人が太陽神を示すことも知っており、彼がこうも早く戻ってきたのはその辺りが理由だろうとすら思っていた。

「シオンが外の異変を感じて出掛けてな。だから切り上げたんだが」

 そのとき、カルヴィブは傭兵組合の組合長として挨拶回りから帰ってくるところだった為、会うことができなかったのだ。

「…少し、帰りが遅すぎる」

 外の異変は何度かあったし、彼ほどの実力ならなにがあっても問題ないと思っている。

 すぐに帰ってくると思っていたのだ。

 けれど、帰ってこない。理由があるとしたら、簡単には戻れないだけのことが起きているということだけだが、それがこの世界に影響を与えるかもしれないとも思えた。

 なぜなら、外からの影響を受けないようにしているのが太陽神だからだ。

「セレンにいると情報が入らない。それで、三人とも外へ出ることを決めたわけだ」

「そうでしたか。我々も気を付けてみましょう」

 真っ先に起きる影響としては魔物に関することだろう。魔物が強くなったり、数が多くなったり。

 そうなってくると、傭兵をしながら情報を集めるのが一番だと思う。

「なにもなければ、それでいいと思ってる」

「そうですね。注意して損はないです」

 傭兵組合が動けば、情報屋をすべて動かすことができる。魔物の動きに関して強化しようとカルヴィブは約束した。

 なにかが起きてしまったとき、魔物に関する仕事が増えるのは間違いない。備えておくのだと思えば、動くことに無駄はないとも思ったのだ。

 組織としてはカロルがかつて騎士団内に作っていた精鋭部隊に似ているな、とグレンは思っていた。

 だからこそいざというとき動かしやすいのだが、それでも限界があることもわかっている。

「もうひとつ頼みがあるんだが」

「可能なことであれば」

 傭兵組合は本部を東の大陸へ置いているだけで、実際には支部のようなものが各地にあった。

 おそらく、これもカロルが精鋭部隊でやっていたことを組織として広げた結果。窓口を各地に置くことで、仕事の依頼を受けている。

「普通ではない魔物がでたら、どこであっても教えてもらいたい。俺が行く」

 三千年前のことを思い返せば、普通では太刀打ちできない魔物が現れることも視野にいれなくてはいけない。

 外の影響ということは、つまり外から送り込まれたということになる。この世界にいる魔物とは性質がまったく違うのだ。

 さすがに自分が行くしかないと思っていた。

「それだけの魔物、ということですね」

 真剣な表情で言われれば、それがどれだけやばいのかわかるというもの。

 なにせ二人からすれば目の前にいるのは英雄王、もしくは傭兵王とも呼ばれる存在なのだ。

「三千年前は歯が立たなかったが、今ならやれる」

 不敵な笑みを浮かべて言えば、二人は苦笑いしかでない。

「さすがに、魔法がまともに通じないのはでないと思うが」

 昔現れた中に、友人の力すら効かない魔物がいた。あれは特殊だということはわかっているだけに、出てこないと思ってはいる。

 それでも警戒はするべきだろうし、もっと特殊なのが現れることも考えなくてはいけない。

「魔物の詳細を聞いてもいいかしら」

 ここまで黙って聞いていたエシェルは、普通ではない魔物がどのようなものなのか。知っている詳細を求めた。

 特徴がわからなければ、これがそうだと判断できないからだ。

 聞かれたグレンも、確かに特徴がわからないと判断できないかと思う。

「この世界の魔物は自然発生するものだとは、傭兵組合には伝わっていなかったか」

 言いながら不思議そうな表情を浮かべる二人に苦笑い。これも知っているのは神聖国とバルスデ王国だけだったと思いだす。

「世界の成り立ちは、ここでも知られてるよな」

 東や南の大陸は文明が少しばかり遅れている。知られていない知識があるのも仕方ないと思うほどに。

 けれど東はグレンが活動していたことや、カロルが動いていたこともあって大きく変化しているのだ。

「女神メルレールが創り、三千年前に旅立たれたと」

「そうだな」

 エシェルが言えば、間違ってはいないと頷く。

 女神メルレールによって創られた世界。女神の加護で守られていた世界は、三千年前に太陽神へ託された。

 これが世界へ伝えられている創世記のひとつ。




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