50 / 276
2部 二刀流の魔剣士編
永遠の魔剣士3
しおりを挟む
家系としても間違いなく友人の家系だ。北に渡っていたことはさすがに知らなかった。
(シオンとイリティスは知っていただろうが…)
そこまでの情報共有はしていない。知りたい情報は自分達で得るようにしていたからだ。
四人でリオンを待つと決めた。しばらくは自由気ままな日々を過ごしていたのだが、住処をセレンの天空城へ変えた辺りで決まりを作ったのだ。
全員ですべてを見守るのではなく、役割分担をしようと。
(推測通り北に生まれてくるとはな…)
北の大陸にリオンは生まれ変わる。確証はないが、四人ともが思ったことだった。
「これ、正確じゃないな」
データを見ながら言えば、ウドルもよくわかったなというように頷く。これは正確なデータではないと。
「基本的すぎる。そう見せてるんだろうさ」
「あんた、いい目だな。頭の回転がいいのか…」
「無駄に長生きしてるだけだ」
笑いながら言えば、ウドルは年上だったのかと呟く。同族であろうが年齢は見ただけでわかるものではない。
年上なのは間違いないことで、曖昧に笑ってやり過ごすグレン。
とりあえずこれを教えてくれと視線で問いかければ、ウドルも本来の仕事へ戻る。
「曲者みたいでな。イクティス・シュトラウスとは違った意味で情報が得られない相手だ」
情報屋にたいしてというよりは、騎士団の中でも彼のことを知っている者はほとんどいないと言う。
知っていることとは、女王と幼馴染みだということや、騎士団最強の男だと言われていること。女王の妹と付き合っていることも確定だと話す。
「その辺りはわかるのに、実力はわからないのか」
「本気でやれない、というのがひとつの理由だろうが」
「機会があればやってみたいものだ」
ウドルが言うのも理解できる。本気でやれる相手がいなければ実力はわからない。
自分で確かめるのが一番だと思うが、さすがに北へは行けないというのが本音。勘がいいのは気付いてしまうからだ。
バレるのは構わないが、騒ぎになるのは面倒だと思った。
いつか機会が訪れたら、騎士団最強の男と手合わせでもしよう。実力はそのとき確かめればいいのだ。
「強いと言えば、女王も強いみたいだった。魔剣を扱うそうだ」
「珍しいな」
女王が戦うことは別段気にしていないが、女性が魔剣を使うことは珍しい。
グレンが生まれ育った時代では男性が使うのも珍しいものだったが、今の時代では使える者が増えている。
それでも男性にだ。女性はほとんど扱えていない。
「幼馴染みがあの騎士だからな。一緒に鍛えていたのだろう、というのが調査員の考えだ」
ありえなくはないと思う。息子が自分の影響を受けてしまったように、そのまま強くあることが当たり前になってしまったのだろうと。
「相変わらず乱れのない国さ。最年少騎士団長が就任したのは、さすがに荒れたようだけど…」
「最年少騎士団長?」
かつて自分に仕えていた騎士。彼らが最年少騎士団長であった。それを越えることは今までなかっただけに気になる情報だ。
教えてくれと言えば、ウドルはノートを捲り出す。
「一人はソレニムス家の騎士だ。二十歳で騎士団長になった、現在バルスデ王国一番の槍術使い」
(イェルクの影響だな…)
槍術に長けた家となったのは、間違いなくイェルク・ソレニムスの影響だと言い切れた。
「秀才のようだ」
「秀才、か…」
最年少騎士団長となるだけある。しかし、一人はという言い方をしていた。
つまり、もう一人現れたということだ。
「その後、十六で騎士団長になったのがクオン・シリウスだったか。騎士団が荒れたようだった」
その年齢では仕方ないことだと苦笑いを浮かべる。気に入らないという騎士は出てくるだろう。
よくも騎士団長へ就任させたものだと思うが、同時にそれも理解できなくはない。
(クオン・メイ・シリウス……スレイの家系。リオンか…)
彼がそうである、という情報は知っている。シオンから聞かされていたのだから。
生まれてきたと知ったあとから、リオンがどこに生まれ、どういう状態なのかは調べていた。
(記憶はないし、性格は似ているようだがリオンと言うべきではないだろうな)
記憶が戻ればまた違うのかもしれないが、シオンは今の生活を壊す真似はしたくないと言っている。
(イリティスもそうだが、記憶が戻るということはそれだけのことが起きるということ)
ならば、このままであるのが一番なのだろう。
このままでは済まないということもわかっていた。おそらく彼はリオンとして動く日がやってきてしまうのだと。
「北の情報はこのぐらいだな。変わったこともないし、騎士団で最年少団長がいるぐらいだな」
参考になったのかと言われれば、グレンはお代だとお金を渡す。
彼としては十分な情報だったと思っている。特に騎士団最強の男は、久々に楽しい情報だと思ったほどだ。
家系を知っているだけに、これほど面白いことはない。
空の色が変わりだしているのを見て、この辺りで傭兵組合へ戻るかとその場をあとにした。
ついでに変わったことはないかと聞く予定だったが、時間へ遅れてしまう。さすがに待たせるのはあとが面倒だと思ったのだ。
(それにしても、レインの家系が騎士団最強になるとはな……時代は変わったものだ)
騎士族と呼ばれている家柄があることは知っているが、そこにシーゼルという家系はない。
なぜなら、イリティスが使っていた偽名からくる名前だからだ。
(手合わせしたいな…)
どれほど強いのか。気になって仕方ないが、とりあえずは他に気になることがあるだけに後回しだ。
まずは自分がやらなくてはいけないことをする。彼が留守にしているからこそ、自分がやらなくてはいけないのだ。
(シュレが厄介だが…)
これからしばらく組むことになる傭兵。それが吉となるか凶となるのか、少しだけ悩ましかったりもした。
.
(シオンとイリティスは知っていただろうが…)
そこまでの情報共有はしていない。知りたい情報は自分達で得るようにしていたからだ。
四人でリオンを待つと決めた。しばらくは自由気ままな日々を過ごしていたのだが、住処をセレンの天空城へ変えた辺りで決まりを作ったのだ。
全員ですべてを見守るのではなく、役割分担をしようと。
(推測通り北に生まれてくるとはな…)
北の大陸にリオンは生まれ変わる。確証はないが、四人ともが思ったことだった。
「これ、正確じゃないな」
データを見ながら言えば、ウドルもよくわかったなというように頷く。これは正確なデータではないと。
「基本的すぎる。そう見せてるんだろうさ」
「あんた、いい目だな。頭の回転がいいのか…」
「無駄に長生きしてるだけだ」
笑いながら言えば、ウドルは年上だったのかと呟く。同族であろうが年齢は見ただけでわかるものではない。
年上なのは間違いないことで、曖昧に笑ってやり過ごすグレン。
とりあえずこれを教えてくれと視線で問いかければ、ウドルも本来の仕事へ戻る。
「曲者みたいでな。イクティス・シュトラウスとは違った意味で情報が得られない相手だ」
情報屋にたいしてというよりは、騎士団の中でも彼のことを知っている者はほとんどいないと言う。
知っていることとは、女王と幼馴染みだということや、騎士団最強の男だと言われていること。女王の妹と付き合っていることも確定だと話す。
「その辺りはわかるのに、実力はわからないのか」
「本気でやれない、というのがひとつの理由だろうが」
「機会があればやってみたいものだ」
ウドルが言うのも理解できる。本気でやれる相手がいなければ実力はわからない。
自分で確かめるのが一番だと思うが、さすがに北へは行けないというのが本音。勘がいいのは気付いてしまうからだ。
バレるのは構わないが、騒ぎになるのは面倒だと思った。
いつか機会が訪れたら、騎士団最強の男と手合わせでもしよう。実力はそのとき確かめればいいのだ。
「強いと言えば、女王も強いみたいだった。魔剣を扱うそうだ」
「珍しいな」
女王が戦うことは別段気にしていないが、女性が魔剣を使うことは珍しい。
グレンが生まれ育った時代では男性が使うのも珍しいものだったが、今の時代では使える者が増えている。
それでも男性にだ。女性はほとんど扱えていない。
「幼馴染みがあの騎士だからな。一緒に鍛えていたのだろう、というのが調査員の考えだ」
ありえなくはないと思う。息子が自分の影響を受けてしまったように、そのまま強くあることが当たり前になってしまったのだろうと。
「相変わらず乱れのない国さ。最年少騎士団長が就任したのは、さすがに荒れたようだけど…」
「最年少騎士団長?」
かつて自分に仕えていた騎士。彼らが最年少騎士団長であった。それを越えることは今までなかっただけに気になる情報だ。
教えてくれと言えば、ウドルはノートを捲り出す。
「一人はソレニムス家の騎士だ。二十歳で騎士団長になった、現在バルスデ王国一番の槍術使い」
(イェルクの影響だな…)
槍術に長けた家となったのは、間違いなくイェルク・ソレニムスの影響だと言い切れた。
「秀才のようだ」
「秀才、か…」
最年少騎士団長となるだけある。しかし、一人はという言い方をしていた。
つまり、もう一人現れたということだ。
「その後、十六で騎士団長になったのがクオン・シリウスだったか。騎士団が荒れたようだった」
その年齢では仕方ないことだと苦笑いを浮かべる。気に入らないという騎士は出てくるだろう。
よくも騎士団長へ就任させたものだと思うが、同時にそれも理解できなくはない。
(クオン・メイ・シリウス……スレイの家系。リオンか…)
彼がそうである、という情報は知っている。シオンから聞かされていたのだから。
生まれてきたと知ったあとから、リオンがどこに生まれ、どういう状態なのかは調べていた。
(記憶はないし、性格は似ているようだがリオンと言うべきではないだろうな)
記憶が戻ればまた違うのかもしれないが、シオンは今の生活を壊す真似はしたくないと言っている。
(イリティスもそうだが、記憶が戻るということはそれだけのことが起きるということ)
ならば、このままであるのが一番なのだろう。
このままでは済まないということもわかっていた。おそらく彼はリオンとして動く日がやってきてしまうのだと。
「北の情報はこのぐらいだな。変わったこともないし、騎士団で最年少団長がいるぐらいだな」
参考になったのかと言われれば、グレンはお代だとお金を渡す。
彼としては十分な情報だったと思っている。特に騎士団最強の男は、久々に楽しい情報だと思ったほどだ。
家系を知っているだけに、これほど面白いことはない。
空の色が変わりだしているのを見て、この辺りで傭兵組合へ戻るかとその場をあとにした。
ついでに変わったことはないかと聞く予定だったが、時間へ遅れてしまう。さすがに待たせるのはあとが面倒だと思ったのだ。
(それにしても、レインの家系が騎士団最強になるとはな……時代は変わったものだ)
騎士族と呼ばれている家柄があることは知っているが、そこにシーゼルという家系はない。
なぜなら、イリティスが使っていた偽名からくる名前だからだ。
(手合わせしたいな…)
どれほど強いのか。気になって仕方ないが、とりあえずは他に気になることがあるだけに後回しだ。
まずは自分がやらなくてはいけないことをする。彼が留守にしているからこそ、自分がやらなくてはいけないのだ。
(シュレが厄介だが…)
これからしばらく組むことになる傭兵。それが吉となるか凶となるのか、少しだけ悩ましかったりもした。
.
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
異世界転生者の図書館暮らし1 モフモフと悪魔を添えて
パナマ
ファンタジー
「命大事に」がモットーの、異世界召喚を夢みる厨二病の少年が、異世界転生し、倒壊した世界樹跡に建てられた図書館で、悪魔を従えてモフモフの精霊獣と暮らし、難敵を攻略する冒険譚。明るめ、ギャグ寄り。
精霊のジレンマ
さんが
ファンタジー
普通の社会人だったはずだが、気が付けば異世界にいた。アシスという精霊と魔法が存在する世界。しかし異世界転移した、瞬間に消滅しそうになる。存在を否定されるかのように。
そこに精霊が自らを犠牲にして、主人公の命を助ける。居ても居なくても変わらない、誰も覚えてもいない存在。でも、何故か精霊達が助けてくれる。
自分の存在とは何なんだ?
主人公と精霊達や仲間達との旅で、この世界の隠された秘密が解き明かされていく。
小説家になろうでも投稿しています。また閑話も投稿していますので興味ある方は、そちらも宜しくお願いします。
夢の硝子玉
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
少年達がみつけた5色の硝子玉は願い事を叶える不思議な硝子玉だった…
ある時、エリオットとフレイザーが偶然にみつけた硝子玉。
その不思議な硝子玉のおかげで、二人は見知らぬ世界に飛ばされた。
そこは、魔法が存在し、獣人と人間の住むおかしな世界だった。
※表紙は湖汐涼様に描いていただきました。
転生したら侯爵令嬢だった~メイベル・ラッシュはかたじけない~
おてんば松尾
恋愛
侯爵令嬢のメイベル・ラッシュは、跡継ぎとして幼少期から厳しい教育を受けて育てられた。
婚約者のレイン・ウィスパーは伯爵家の次男騎士科にいる同級生だ。見目麗しく、学業の成績も良いことから、メイベルの婚約者となる。
しかし、妹のサーシャとレインは互いに愛し合っているようだった。
二人が会っているところを何度もメイベルは見かけていた。
彼は婚約者として自分を大切にしてくれているが、それ以上に妹との仲が良い。
恋人同士のように振舞う彼らとの関係にメイベルは悩まされていた。
ある日、メイベルは窓から落ちる事故に遭い、自分の中の過去の記憶がよみがえった。
それは、この世界ではない別の世界に生きていた時の記憶だった。
こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記
陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
※コミカライズ進行中。
なんか気が付いたら目の前に神様がいた。
異世界に転生させる相手を間違えたらしい。
元の世界に戻れないと謝罪を受けたが、
代わりにどんなものでも手に入るスキルと、
どんな食材かを理解するスキルと、
まだ見ぬレシピを知るスキルの、
3つの力を付与された。
うまい飯さえ食えればそれでいい。
なんか世界の危機らしいが、俺には関係ない。
今日も楽しくぼっち飯。
──の筈が、飯にありつこうとする奴らが集まってきて、なんだか騒がしい。
やかましい。
食わせてやるから、黙って俺の飯を食え。
貰った体が、どうやら勇者様に与える筈のものだったことが分かってきたが、俺には戦う能力なんてないし、そのつもりもない。
前世同様、野菜を育てて、たまに狩猟をして、釣りを楽しんでのんびり暮らす。
最近は精霊の子株を我が子として、親バカ育児奮闘中。
更新頻度……深夜に突然うまいものが食いたくなったら。
私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。
アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。
【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】
地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。
同じ状況の少女と共に。
そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!?
怯える少女と睨みつける私。
オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。
だったら『勝手にする』から放っておいて!
同時公開
☆カクヨム さん
✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉
タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。
そして番外編もはじめました。
相変わらず不定期です。
皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます🙇💕
これからもよろしくお願いします。
異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます!】
ちっき
ファンタジー
異世界に行った所で政治改革やら出来るわけでもなくチートも俺TUEEEE!も無く暇な時に異世界ぷらぷら遊びに行く日常にちょっとだけ楽しみが増える程度のスパイスを振りかけて。そんな気分でおでかけしてるのに王国でドタパタと、スパイスってそれ何万スコヴィルですか!
当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる