19 / 276
1部 転生する月神編
魔物討伐
しおりを挟む
晴天の下、騎士達が魔物を相手に剣を振るう。さほど強くはないが、数だけは多い。
「植物系はすべて燃やしなさい!」
魔物にはいくつか種類があり、それぞれに警戒するべき点がある。
植物系の魔物には、種を植え付けて繁殖すると言われていた。死体が対象だが、怪我人であれば生きていても可能となるのだ。
「リーナ様、そろそろ休憩です」
「問題ありません。あなた方は下がりなさい」
ずっと魔法を使うことはできず、援護として使っている騎士達は交代制で動いている。
けれど、リーナには問題がない。この程度で疲れるほど、弱くはないとレイピアを握り直す。
「次の部隊、続きなさい」
休憩を終えた騎士達が戻ってくれば、リーナは魔物の群れへと斬りかかった。
魔物討伐として、ローランからランダート周辺の探索に入って十日。魔物との戦いは三度目だった。
これが多いのか少ないのか、判断には迷うところだ。
「それで最後です! 逃さないでください!」
自分から離れている魔物を見て、リーナが他の騎士へと指示を出す。
すぐさま一人の騎士が向かい、この討伐は完了した。
「お疲れさまです。交代までもう少し時間があるので、警戒を怠らないようにお願いします」
日暮れまでは、昼の担当となる。夜を受け持つ仲間へ交代するまで、今日の職務は終わらないのだ。
月光騎士団の人数なら、部隊を三分割もできる。しかし、小隊長ができる人材がいない。
(仕方ないよね)
こればかりは、どうしようもないとリーナはため息を吐く。
隣をちらりと見れば、クオンが鋭い眼差しで周囲を見ている。
若さなど関係ない。けれど、若すぎる団長に不満を持つ者は多く、彼が団長になると同時に辞めた騎士もいた。
「心配なの?」
「シルヴィア…」
近寄ってきた女騎士はシルヴィア・ソレニムス。クロエの妹で、リーナよりは三つ年上。現在二十歳の女性だ。
「クオンなら、大丈夫よ」
一年前ローランから月光騎士団へ配属変更された人物で、二人との交流もある。
おそらく、意図的に配属されたのだろう。わかっているからこそ、クオンも扱いが慎重だった。彼女がいつまでいるかわからないから。
「親の力で騎士になったわけじゃないし、団長になったのも実力よ。私達がわかっていれば、いいの」
微笑むシルヴィアに、リーナも頷いて応える。
多くの騎士を失ったかもしれないが、得たものもたくさんあった。すべてが悪いことではないのだ。
不満を持つ騎士を抱えるぐらいなら、今ぐらいがちょうどいい。それに、すべてが去ったわけでもないのだから。
残った者や新しい者。誰もが一年で気付いたことだろう。若いからでも、親の力でもない。彼の実力と先を見据えた結果、団長となったのだと。
「わかってる者は、みんな残っている。クオンは底知れない強さを秘めてるからね」
笑いながら言うから、リーナはなんのことかと見る。
「そのうちわかるわよ」
残りの職務をこなしましょうと言われれば、ハッとしたように頷く。まだ職務中なのだから、こんなところで話している場合ではない。
もう一度だけクオンを見て、リーナは怪我人の確認を行う。
.
「植物系はすべて燃やしなさい!」
魔物にはいくつか種類があり、それぞれに警戒するべき点がある。
植物系の魔物には、種を植え付けて繁殖すると言われていた。死体が対象だが、怪我人であれば生きていても可能となるのだ。
「リーナ様、そろそろ休憩です」
「問題ありません。あなた方は下がりなさい」
ずっと魔法を使うことはできず、援護として使っている騎士達は交代制で動いている。
けれど、リーナには問題がない。この程度で疲れるほど、弱くはないとレイピアを握り直す。
「次の部隊、続きなさい」
休憩を終えた騎士達が戻ってくれば、リーナは魔物の群れへと斬りかかった。
魔物討伐として、ローランからランダート周辺の探索に入って十日。魔物との戦いは三度目だった。
これが多いのか少ないのか、判断には迷うところだ。
「それで最後です! 逃さないでください!」
自分から離れている魔物を見て、リーナが他の騎士へと指示を出す。
すぐさま一人の騎士が向かい、この討伐は完了した。
「お疲れさまです。交代までもう少し時間があるので、警戒を怠らないようにお願いします」
日暮れまでは、昼の担当となる。夜を受け持つ仲間へ交代するまで、今日の職務は終わらないのだ。
月光騎士団の人数なら、部隊を三分割もできる。しかし、小隊長ができる人材がいない。
(仕方ないよね)
こればかりは、どうしようもないとリーナはため息を吐く。
隣をちらりと見れば、クオンが鋭い眼差しで周囲を見ている。
若さなど関係ない。けれど、若すぎる団長に不満を持つ者は多く、彼が団長になると同時に辞めた騎士もいた。
「心配なの?」
「シルヴィア…」
近寄ってきた女騎士はシルヴィア・ソレニムス。クロエの妹で、リーナよりは三つ年上。現在二十歳の女性だ。
「クオンなら、大丈夫よ」
一年前ローランから月光騎士団へ配属変更された人物で、二人との交流もある。
おそらく、意図的に配属されたのだろう。わかっているからこそ、クオンも扱いが慎重だった。彼女がいつまでいるかわからないから。
「親の力で騎士になったわけじゃないし、団長になったのも実力よ。私達がわかっていれば、いいの」
微笑むシルヴィアに、リーナも頷いて応える。
多くの騎士を失ったかもしれないが、得たものもたくさんあった。すべてが悪いことではないのだ。
不満を持つ騎士を抱えるぐらいなら、今ぐらいがちょうどいい。それに、すべてが去ったわけでもないのだから。
残った者や新しい者。誰もが一年で気付いたことだろう。若いからでも、親の力でもない。彼の実力と先を見据えた結果、団長となったのだと。
「わかってる者は、みんな残っている。クオンは底知れない強さを秘めてるからね」
笑いながら言うから、リーナはなんのことかと見る。
「そのうちわかるわよ」
残りの職務をこなしましょうと言われれば、ハッとしたように頷く。まだ職務中なのだから、こんなところで話している場合ではない。
もう一度だけクオンを見て、リーナは怪我人の確認を行う。
.
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ざまぁ対象の悪役令嬢は穏やかな日常を所望します
たぬきち25番
ファンタジー
*『第16回ファンタジー小説大賞【大賞】・【読者賞】W受賞』
*書籍発売中です
彼氏にフラれた直後に異世界転生。気が付くと、ラノベの中の悪役令嬢クローディアになっていた。すでに周りからの評判は最悪なのに、王太子の婚約者。しかも政略結婚なので婚約解消不可?!
王太子は主人公と熱愛中。私は結婚前からお飾りの王太子妃決定。さらに、私は王太子妃として鬼の公爵子息がお目付け役に……。
しかも、私……ざまぁ対象!!
ざまぁ回避のために、なんやかんや大忙しです!!
※【感想欄について】感想ありがとうございます。皆様にお知らせとお願いです。
感想欄は多くの方が読まれますので、過激または攻撃的な発言、乱暴な言葉遣い、ポジティブ・ネガティブに関わらず他の方のお名前を出した感想、またこの作品は成人指定ではありませんので卑猥だと思われる発言など、読んだ方がお心を痛めたり、不快だと感じるような内容は承認を控えさせて頂きたいと思います。トラブルに発展してしまうと、感想欄を閉じることも検討しなければならなくなりますので、どうかご理解いただければと思います。
夢の硝子玉
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
少年達がみつけた5色の硝子玉は願い事を叶える不思議な硝子玉だった…
ある時、エリオットとフレイザーが偶然にみつけた硝子玉。
その不思議な硝子玉のおかげで、二人は見知らぬ世界に飛ばされた。
そこは、魔法が存在し、獣人と人間の住むおかしな世界だった。
※表紙は湖汐涼様に描いていただきました。
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
転生したら侯爵令嬢だった~メイベル・ラッシュはかたじけない~
おてんば松尾
恋愛
侯爵令嬢のメイベル・ラッシュは、跡継ぎとして幼少期から厳しい教育を受けて育てられた。
婚約者のレイン・ウィスパーは伯爵家の次男騎士科にいる同級生だ。見目麗しく、学業の成績も良いことから、メイベルの婚約者となる。
しかし、妹のサーシャとレインは互いに愛し合っているようだった。
二人が会っているところを何度もメイベルは見かけていた。
彼は婚約者として自分を大切にしてくれているが、それ以上に妹との仲が良い。
恋人同士のように振舞う彼らとの関係にメイベルは悩まされていた。
ある日、メイベルは窓から落ちる事故に遭い、自分の中の過去の記憶がよみがえった。
それは、この世界ではない別の世界に生きていた時の記憶だった。
私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。
アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。
【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】
地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。
同じ状況の少女と共に。
そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!?
怯える少女と睨みつける私。
オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。
だったら『勝手にする』から放っておいて!
同時公開
☆カクヨム さん
✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉
タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。
そして番外編もはじめました。
相変わらず不定期です。
皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます🙇💕
これからもよろしくお願いします。
騎士団に入る事になりました
セイラ
恋愛
私の名前はレイラ・エバーガーデン。前世の記憶を持っている。生まれは子爵家で、家庭を支える為に騎士団に入る事に。
小さい頃から、師匠に鍛えられていたレイラ。マイペースで無自覚な性格だが、悪戯を企む時も。
しかし、周りから溺愛される少女の物語。
当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
ゆとりある生活を異世界で
コロ
ファンタジー
とある世界の皇国
公爵家の長男坊は
少しばかりの異能を持っていて、それを不思議に思いながらも健やかに成長していた…
それなりに頑張って生きていた俺は48歳
なかなか楽しい人生だと満喫していたら
交通事故でアッサリ逝ってもた…orz
そんな俺を何気に興味を持って見ていた神様の一柱が
『楽しませてくれた礼をあげるよ』
とボーナスとして異世界でもう一つの人生を歩ませてくれる事に…
それもチートまでくれて♪
ありがたやありがたや
チート?強力なのがあります→使うとは言ってない
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
身体の状態(主に目)と相談しながら書くので遅筆になると思います
宜しくお付き合い下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる