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続・執事、自らを踏み台に。
02あなたならそれが出来る。
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俺があの日、念の為侍女長も殺しておけば。
バセット家のメアリーが、パーティーで攻撃性を見せてきた時に脅威の排除として使用人たちは皆殺しにしておけば。
幸せに酔いしれず、殺意や悪意にもっと過敏になっていたら。
今からでも他の使用人たちは殺しておくべきか?
いや意味無いか、アビィはもう死んでいる。
アビィが死んだ? なんだこれ、どういうことだ。
いや人は死ぬ、脳幹を撃ち抜かれたり太い動脈を切ったり首の骨を折ったり肺や心臓に穴でも空ければ簡単に人は死ぬ。
俺だろうとアーチだろうとキャロライン嬢だろうと剣客アンナだろうと、死ぬものは死ぬ。
そんなことはわかってる。
前世と併せて六十人は殺しているし、何より俺も一回死んでいる。
全然、そんなことは単なる事実として理解している。
でもアビィは、これから男爵位を得て学園を卒業したら俺と結婚して屋敷に住んで子供をこさえて。
俺はアビィみたいに賢くないから、徹底的にアビィを支えるために雑務を請け負って。
実は自動車の運転も練習しているんだ。これからは自動車の時代だから。
そうやって、俺たちは幸せに暮らしていく。
これはそういう話だっただろうに。
色んなとこに首突っ込んで、色んなことに巻き込まれて、なんだかんだで解決してさ。
後はもう、幸せになるだけだっただろ。
それがこんな、馬鹿みてえな凶行一回で。
騎士でも魔王でも女神でもなく、ただの人間のたった一発の銃弾で。
理解しているのに、現状を否定する材料を探すことを止められない。
そして、そんなものは見つかることはない。
現実は、俺が理解出来ている通りのことでしかないのだから。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
吐き気が凄まじい。
目眩で視界が歪む、平衡感覚がなくなる。
ああ、ダメだ。
色んな感覚が鈍っていくのに、腕の中のアビィがどんどん冷たくなって行くのだけが。
確実に、明確に、伝わってくる。
動けない、動きたくない。
終わった。
本当に好きだったんだ。愛してるんだ。
なんで俺じゃないんだ。
代わりに死んでやるくらいなら出来るのに。
いや出来なかったんだ。
俺のせいだ、俺が全員殺していれば。
俺が代わりに弾丸を受ければ。
ああ、いくら後悔と反省をしても無駄なのに。
涙が止まらない、呼吸や心拍を制御出来ない。
感情の抑制が効かない。
「――インくん! ナインくん‼ ナイン・ウィーバーッ‼」
俺の名を呼びながら、魔女が両手で俺の顔を挟むように強く叩く。
「聞きなさい。彼女は死んだ、もういないの。でも、あなたに限っていうのなら二度と会えないわけじゃあない」
魔女は真っ直ぐ俺と目を合わせて、そのまま語り出す。
「肉体を失った魂は世界の果てを経由して、記憶などの情報を失い新たな生命へと宿り再び生まれてくる。私は彼と何度添い遂げても、何度も魂を探して何度も恋に落ちている。全てを忘れた彼と何度も最初からの恋をして、そうやって千五百年近くを生きてきた」
この世界の理の話、この話はなんとなく知っている。
「私には悠久の時間と魔法があるから輪廻を待つことも世界中を探すことも出来る。一番最初、彼と添い遂げて別れを受け入れられなかった私はそういう生き方を選んでそうやって生きてきたし生きているし生きていく」
魔女は続けて自身の生き方を語る。
「通常、人間には選べない存在しない選択肢。だってどんなに頑張っても百年程度しか生きられないからね、人間には不可能な生き方なんだ」
やや力を込めながら、俺の頭に流し込むように語り続け。
「でも、あなたならそれが出来る」
魔女はそう、断言する。
バセット家のメアリーが、パーティーで攻撃性を見せてきた時に脅威の排除として使用人たちは皆殺しにしておけば。
幸せに酔いしれず、殺意や悪意にもっと過敏になっていたら。
今からでも他の使用人たちは殺しておくべきか?
いや意味無いか、アビィはもう死んでいる。
アビィが死んだ? なんだこれ、どういうことだ。
いや人は死ぬ、脳幹を撃ち抜かれたり太い動脈を切ったり首の骨を折ったり肺や心臓に穴でも空ければ簡単に人は死ぬ。
俺だろうとアーチだろうとキャロライン嬢だろうと剣客アンナだろうと、死ぬものは死ぬ。
そんなことはわかってる。
前世と併せて六十人は殺しているし、何より俺も一回死んでいる。
全然、そんなことは単なる事実として理解している。
でもアビィは、これから男爵位を得て学園を卒業したら俺と結婚して屋敷に住んで子供をこさえて。
俺はアビィみたいに賢くないから、徹底的にアビィを支えるために雑務を請け負って。
実は自動車の運転も練習しているんだ。これからは自動車の時代だから。
そうやって、俺たちは幸せに暮らしていく。
これはそういう話だっただろうに。
色んなとこに首突っ込んで、色んなことに巻き込まれて、なんだかんだで解決してさ。
後はもう、幸せになるだけだっただろ。
それがこんな、馬鹿みてえな凶行一回で。
騎士でも魔王でも女神でもなく、ただの人間のたった一発の銃弾で。
理解しているのに、現状を否定する材料を探すことを止められない。
そして、そんなものは見つかることはない。
現実は、俺が理解出来ている通りのことでしかないのだから。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
吐き気が凄まじい。
目眩で視界が歪む、平衡感覚がなくなる。
ああ、ダメだ。
色んな感覚が鈍っていくのに、腕の中のアビィがどんどん冷たくなって行くのだけが。
確実に、明確に、伝わってくる。
動けない、動きたくない。
終わった。
本当に好きだったんだ。愛してるんだ。
なんで俺じゃないんだ。
代わりに死んでやるくらいなら出来るのに。
いや出来なかったんだ。
俺のせいだ、俺が全員殺していれば。
俺が代わりに弾丸を受ければ。
ああ、いくら後悔と反省をしても無駄なのに。
涙が止まらない、呼吸や心拍を制御出来ない。
感情の抑制が効かない。
「――インくん! ナインくん‼ ナイン・ウィーバーッ‼」
俺の名を呼びながら、魔女が両手で俺の顔を挟むように強く叩く。
「聞きなさい。彼女は死んだ、もういないの。でも、あなたに限っていうのなら二度と会えないわけじゃあない」
魔女は真っ直ぐ俺と目を合わせて、そのまま語り出す。
「肉体を失った魂は世界の果てを経由して、記憶などの情報を失い新たな生命へと宿り再び生まれてくる。私は彼と何度添い遂げても、何度も魂を探して何度も恋に落ちている。全てを忘れた彼と何度も最初からの恋をして、そうやって千五百年近くを生きてきた」
この世界の理の話、この話はなんとなく知っている。
「私には悠久の時間と魔法があるから輪廻を待つことも世界中を探すことも出来る。一番最初、彼と添い遂げて別れを受け入れられなかった私はそういう生き方を選んでそうやって生きてきたし生きているし生きていく」
魔女は続けて自身の生き方を語る。
「通常、人間には選べない存在しない選択肢。だってどんなに頑張っても百年程度しか生きられないからね、人間には不可能な生き方なんだ」
やや力を込めながら、俺の頭に流し込むように語り続け。
「でも、あなたならそれが出来る」
魔女はそう、断言する。
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