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49・総員、クライマックスを駆け抜ける。

04第四陣。

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 第四陣。
 八極令嬢キャロライン・エンデスヘルツ、竜騎士ウォール・バルカード、剣客夫人アンナ・バルカード、騎士団長アーマード・バルカード、騎士シェル・バルカード、発砲令嬢クリスティーナ・フィリップス、ルチャドーラルーシィ・コーディ、大陸一番の悪に仕えるロバート・ワイリー、名無しの殺し屋、組織最強シャリフ・ライオンズ。

 十名の戦闘員。
 リリィ・アイルワードの未来予知と、騎士団長や魔女の戦術論から女神が伏兵ふくへい召喚しょうかんすることを想定し障壁しょうへき破壊は出来ないが戦える人員でスタンバイをしていた。

 しくも……いや、意図的だろう。
 相手の人数も同じ十人。

 女神であれば百人でも千人でも百万人でも召喚しょうかんすることが出来たところを、ピッタリ十名。幕間まくあい余興よきょう程度ていどとしか思っていないのだ。

「ウォール! シェル! 受けるぞッ‼」

「うるせえ! 親父面してんじゃねえっ‼」

「ほら来るぞ兄さん! 後で相手してやるから前見て‼」

 騎士団長が息子たちにげきを飛ばし、息子たちはそれにこたえて前出る。

 ちなみに三男のブロック・バルカードは、王族警護の為に不参加だ。

 前衛として擬似ぎじ魔王たちの攻撃を一身に受け止める。
 この国最強の盾とされるバルカード家の防御性能と、全武装はこの場で魔女が創造と調整をした特別品。

 固く硬く堅い、そんな盾の裏から現れるのは。

「では、

 そう言って、擬似ぎじ魔王たちを一瞬のうちに斬りきざんだのは。

 この国最強の矛とされるバンフィールドの剣をぐもの、剣客夫人アンナ・バルカード。

 斬れると思ったら斬れている、その域までただひたすらに剣を振り鍛錬たんれんを積み確信にいたった剣客。
 防御を全て任し、自身は攻撃にてっする。
 騎士団でも実戦で使われている必殺の連携れんけいである。

 だが、相手は擬似ぎじ魔王。
 必殺とはいかない。

 斬りきざまれた切り口から、直ぐに再生が始まる。
 魔王と同じ姿をしてはいるが復元や復活ではなく、超再生をするらしい。

 その再生中の擬似ぎじ魔王たちの脳天に、発砲音の数だけ風穴が空いていく。

 撃ち抜いたのは、発砲令嬢クリスティーナ・フィリップス。

 かつて冤罪によって糾弾きゅうだんされた際に、拳銃を用いて自身をおとしめた婚約者や平民の女子生徒を撃ち。
 そのまま人質を取って、城へと乗り込もうとしたテロリストだ。

 この国に流通する拳銃のほとんどをフィリップスの工場が製造しており、彼女自身も昔から射撃訓練を行っていた。

 必中必殺、彼女からすれば生まれた時から実家にあって当然だったものだ。フォークとナイフで食事をするのと同じくらい、当たり前に拳銃を触ってきた。

 だが、これも擬似ぎじ魔王には一瞬の隙を生み出す程度の効果しかない。

「さあ、今ですよ」

 発砲令嬢は隙を生み出しそう言うと。

「わかってらぁぁぁいいドロップキイィ――――ックっっ‼」

 飛び出すように、綺麗に両足をそろえて覆面レスラーが擬似ぎじ魔王の顔面を蹴り抜く。

 ルチャドーラ、ルーシィ・コーディだ。

 正直、彼女は今の状況を半分も理解していない。というかどうでもよかった。友人グロリア・クーロフォードを助けるために暴れているだけだ。

「射線に入んなよ! 当てちゃうから‼」

 名無しの殺し屋は、機関銃を乱射しながら叫ぶ。

 正直、彼女も今の状況を半分も理解していない。というかどうでもよかった。組織の仕事としてここにいるだけ、金を稼いで海辺に青い屋根の家を建てて住みたいだけなのだ。

 そんな彼女たちの波状はじょう攻撃も、擬似ぎじ魔王たちには通らない。

 攻撃を受けながら擬似ぎじ魔王は再生し、反撃の為に剣を振ろうとするが。

「こういうやからまとめてしばるんだよ! ロバートぉッ‼」

 一瞬のうちに金属製ワイヤーを複雑にからめて、擬似ぎじ魔王たちをたばねるようにしばり上げて叫ぶ。

 裏組織最強、シャリフ・ライオンズ。

 大陸一番の悪であるリリィが認める技量を持つ、暗殺者。
 しかも名無しの女とは違って、専門は
 情報を吐かせてから殺すタイプの殺し屋。
 残酷ざんこくとか残忍ざんにんとか暗殺を生業なりわいにする者の死生観に、そんな道徳的な観点はない。
 殺すと決めた時に、標的はすでに死んでいるのと同じだからだ。

 しかし、難易度は跳ね上がる。

 標的を生きたまま捕まえらえなくてはならない。
 相手がどんな技量を持とうがどんな屈強くっきょうな護衛がいても、どんなに状況が悪くてもその場で捕えなくては尋問じんもんは行えない。しかも話が出来る程度に外傷を留めなくてはならない。
 その場で動脈をナイフでこすれば終わるだけの馴染なじみの暗殺より、難易度は何倍にも跳ね上がる。

 それを専門として成しげる、シャリフ・ライオンズの技量は人の域を超えているといえる。

 ただしシャリフ・ライオンズは、女子供は標的にはしないという絶対のルールを自らに定めているので汎用性はんようせいは高くないし仕事を選ぶ。
 その選んだ結果、組織からめいじられたアンジェラ・ステイモス暗殺を行えず。バッティングした王妃からの刺客しきゃく退しりぞけて、すったもんだの末に恋仲となった。

 相手は擬似ぎじ魔王、女でも子供でもない。
 なら、彼の力は遺憾無いかんな発揮はっきされる。

 しばり上げた擬似ぎじ魔王たちを、その腕力で引きずるようにぶん回すと。

「わかっ…………て、いるぅあああ――ッ‼ 八極令嬢ぉ‼」

 大男は振り回されるワイヤーを掴み、身体中の筋肉を隆起りゅうきさせ雄叫おたけびを上げながら振り回して投げる。
 裏組織ボスの側近、ロバート・ワイリー。

 組織の黎明期れいめいき、どころかボスのリリィ・アイルワードが幼少の頃よりつかえてきた男。
 ボスの見た気に入らない未来をじ曲げる為に、ロバート・ワイリーは超人にならざる得なかった。
 全てはボスの為に、自身の全てをくす。

 清濁せいだく善悪ぜんあく正誤せいごの区別はない、ただただボスの為に。

 力いっぱい擬似ぎじ魔王たちを振り回し、投げつけた先には最大火力。

「警告……は不要ですね。飛びなさい」

 そう言って、淑女しゅくじょはカーペットを弾き飛ばして大理石の床を砕くほどの踏み込みと共に背中で打つ。

 八極令嬢、キャロライン・エンデスヘルツ。

 眉目秀麗びもくしゅうれい才色兼備さいしょくけんび文武両道ぶんぶりょうどう質実剛健しつじつごうけん品行方正ひんこうほうせい、そして

 彼女が使うはらずの八極拳。
 異国の武術を学び、さらにはその始祖しそとされる勇者からも手ほどきを受け。

 その出力は、かつての竜狩りの民に匹敵ひってきする。

 たばねられた擬似ぎじ魔王のかたまりに、これ以上なく自身の思いと想いの重さを乗せた最大出力の発勁はっけいを通す。

 利口な彼女は現在の状況を、あますことなく把握はあく出来ている。
 自分がそれほど関係ないことも気づいている。

 だからこそ勇者が死んだということに対する責任と妹のように可愛がっているグロリア・クーロフォードを狙われたこと。

 それらが怒りとして燃え上がり、出力は更に高まっていく。

 鉄山靠てつざんこう
 八極拳の中では基礎の基礎、簡単にいえば体当たりでしかない。

 でも、これだけは誰にも負けないものだ。
 これだけで、誰にも負けない。

 超弩級ちょうどきゅう発勁はっけいを通された擬似ぎじ魔王たちは、再生が追いつかないほど内部から爆発を繰り返しながら吹き飛んで。

 部屋の壁に突き刺さった。

 それでも、擬似ぎじ魔王たちの再生は止まらない。
 これは時間稼ぎでしかない。

 次に繋げる時間を、稼げれば良い。

 超弩級ちょうどきゅう発勁はっけいを打ち込んだキャロライン・エンデスヘルツの背を踏み台にして。

 鹿
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