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48・お嬢様、全てを知る。

08私の可愛い可愛い。

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 その啓示けいじと名前を受け取ったのが、国王様や王子のご先祖様ってことか……。
 魔王と同じ名前なのは、メルバリアはって意味ってことなんだ。

「その後に、研究者シェリー・ラスゴーランが私がいる場所へ一番近づいたタイミングで信仰の象徴しょうちょうとして聖女を育てるよう私の一部を赤子として渡すも魔女として、サム・ラスゴーラン・ノアとして完成させたり」

 淡々と魔女について語る。

 ちらりとサムさんを見ると、女神をにらみつけるような表情のまま特に否定する様子はない。
 これもアンジェラ嬢の言っていた通り、やっぱり優秀だ。

「シェリー・ラスゴーランが定義ていぎするところの生命せいめい根幹こんかんであるたましいが、異世界人類と互換性ごかんせいがあり少しの干渉かんしょうで異世界の記憶を持つものこちらに誕生させることが出来たので少しずつ異世界転生者をこちらの世界に引き入れて文明の発展を加速させました。この際の選別せんべつは特に行っておりません、無作為むさくいに選んだ魂をこちらに呼び出しました」

 ここで、異世界転生者について語る。

 びっくりした。
 突然私の転生に関する謎が解けてしまった。

 特に私が選ばれたとかってことも、何か具体的な目標を設定されているわけでもなかったんだ。
 以前これを悩んで色々と調べて回ったけど無駄だったのか……いや、それを調べなかったらワタナベ男爵やアンジェラ嬢とは出会えなかったから無駄ではないか。

「さらに、異世界でけて優秀だった知識を持つ天才である渡辺丈を完成体の状態でこちらに転送し文明の発展を啓示けいじとして命じました」

 ここで異世界転移者のワタナベ男爵について触れる。

 ワタナベ男爵に目を向けると、特に表情は変わらない。
 確かにワタナベ男爵はどう考えても優秀すぎる、良くも悪くもこの男一人によってこの国はかなり動いた。
 女神の思惑おもわく通りに。

「だらだらだらだらと……、私の質問に答えろ‼ 話が長え‼ 時間は有限なんだ……っ、私ですら暇じゃないんだいい加減にしとけ馬鹿」

 ここで、魔女のサムさんがしびれを切らして声をあらげる。

 確かに、長い。
 でも異常な状況だからなのか、女神の威光いこうがそうさせるのか話を聞けてしまっている。
 教会派の面々はもちろんのこと、私以外もなんとか女神の話を理解しようとつとめている。
 グロリアも真面目な顔で話を聞いているが、頭の上には疑問符ぎもんふが浮かんで見える。可愛い。

「失礼いたしました。楽しくてつい……、目的は私がさみしかったからと言いました。だから人類の繁栄はんえいを待った。一人だけでも私を受け入れてくれる人が現れるのを待ち続けていたのです」

 女神はサムさんにおだやかに返しつつ、話を続ける。

 自分を受け入れてくれる人間。
 それが現れるのを待ち続けていた……、何百億年もただただ一人で。

「そしてようやく、現れた。永劫えいごうの時の中で、たった一人。唯一の人」

 嬉しそうに、笑顔でそう言う。

 現れた……? 女神のお眼鏡にかなうような人間が……?

「文明や教養や知性などを超越ちょうえつし、愛嬌あいきょうと優しさ、どんな窮地きゅうち困難こんなんも自身に届かず笑顔で、当たり前のように幸せを振りまく、見ているだけで心がおどる」

 うっとりと、嬉々とした様子で語る。
 まるでただの乙女だ。

「ああ、会いたい。私を受け入れてもらいたい」

 楽しそうに嬉しそうに語りは続く。

「共感したい、話を聞きたい、遊びたい、笑い合いたい、笑いかけたい、笑ってもらいたい」

 自身の思いを吐き出していく。

「この思いと想いは、あなた方からすれば恋や愛に近いのでしょう。繁殖はんしょくを必要としない完全に完結した私が誰かを恋しく思い愛して求めるなんて、面白いでしょう」

 笑顔で自身の感情を言語化する。

 確かに、これは恋する乙女だ。
 ティーンエイジャーの初恋のような、学園内にもありふれる。

 時に、過激に世界を回すこともある、ありふれた存在。

「だから会いに来たのです。連れていくことにしたのです」

 はっきりと、女神は自身の顕現けんげん理由をべる。

 待ち望んだ人間が現れたので連れていくことにした。
 世界をかえりみず、この星も人類もかえりみず。

 

 …………誰だ? この場に現れたということはここに居る人間ということだ。

 男性……いや、性別的な概念がいねんはあるのか? 女神だから相手が男ってことでもないかもしれない。
 この女神という文字はではなくの方に重きを置くべきなのかもしれない。

 女神を受け入れる……、教会派? アンジェラ嬢や聖女様? マーク様は信仰心はあるけど、基本的に政治家だ。同じ理由でステイモス侯爵でもなさそうだ。

 まさか……前世で教会にて聖女につかえていたナイン……?
 いやだったら三百年前の時点で顕現けんげんしていなくてはならないし、ナインは女神信仰に熱心だったというより当時の聖女ウェンディ・ロックハートに熱心だった。

 候補としては。
 聖女ジュリアナ・ロックハート。
 侯爵令嬢アンジェラ・ステイモス。

 私はかしずく教会派の面々に視線を向けていると。

あいらしくていとおしい、私の可愛い可愛い――――」

 うっとりと。
 いとおしそうに。

 恋がれて、らない、そんな乙女のような表情で。

「――――

 その名を呼んだ。
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