上 下
209 / 240
48・お嬢様、全てを知る。

07極端に優れた者たち。

しおりを挟む
 思い当たるふししかない。
 他ならぬアビィの家、バセット伯爵家がまさにそうだった。

 確かに理解できなかった。
 なんであんなに愚かだったのか、頭が悪かったのか。
 

 この国の人間の教養きょうようについては、会談でも触れるくらいに悪い。
 やっぱあれがこの星の人類におけるニュートラルだったのか……。

「さらに、平均的には異世界人類とほとんど変わらない能力値ではあるものの極端きょくたんに愚かな者たちと極端きょくたんに優れた者たちに差が出てしまった」

 またもや思い当たるふしのあることを言う。

 確かにそうだ。
 どう考えても教会で会ったアンジェラ嬢やワタナベ男爵の婚約者であるタンディ嬢や友人のモーラと、一応姉に当たる学園パーティでヒステリックにわめくメアリー・バセットが同じ貴族令嬢とするには差があり過ぎる。

 もっと言うならナインやアーチさんやキャロライン嬢やアンナ夫人や友人のルーシィのような、超人的な身体能力を持つ人間とそうじゃない私とかの差も凄まじい。

 そりゃトップアスリートとただの女学生では差があるのは当然だとは思っていたけど。
 私が子供の頃から運動にいそしんでいたとしても、ナインのようになれるとはとても思えない。

「この極端きょくたんに優れた者たちが、と呼ばれる存在です。後に勇者となるダグラス・ヴィダルをふくむ、竜と単身で打倒だとうしうる力を持つ竜狩りの民やこの世界のことわりを研究し続けて後に世界の外にいる私という存在にもっと近づいたシェリー・ラスゴーランなどがげられます」

 おとぎ話の登場人物について触れる。

 特異点とくいてん……、思いと想いの重さということわりだけではなく生まれながらのスペックの高さも合わさって生まれた特異な存在か。

「皆さんの中では、前世の記憶を保持ほじして転生を行えるナイン・ウィーバーや竜から由来ゆらいする学習能力で秒単位で強さを更新するアーチボルト・エドワード、未来を見通せるリリィ・アイルワード、この辺りが特異点といえるでしょう」

 さらりと知っている名前が出てきて驚く。

 そうかナインの転生……、あれは特異点としての力なんだ。なんか突然謎が解けた。
 アーチさんの異常な喧嘩の強さも特異点……というか竜由来ゆらいって……なんか謎が増えた。

 それにリリィ・アイルワードって……さっき女神が現れる直前に、そっか確かに女神が現れることを予見よけんしたようなことを言っていた。っていうか何者なのよ、あの人……。

「少し脱線だっせんしてしまいました。話をするのが楽しくて、まあとにかくこの星の人類はかなりピーキーに仕上がってしまったのです」

 女神は嬉しそうに微笑みながら、話を戻す。

「なので、私は人類を正しい道を歩んでもらうべく自身の存在をほんの少しだけ切り離して聖人としてこの世界に顕現けんげん……生命せいめいとしていうなら子を産み落としました」

 またもや神話じみたことを言って。

「それがルカ・キングス・メルバリア、あなたたちが魔王と呼ぶ存在です」

 女神は魔王について語り出す。

「ルカは私の思惑おもわく通り、徹底的てっていてきに人類に加担かたん繁栄はんえいできるように竜を殲滅せんめつし人類の生きやすい環境を整えようとしていた」

 淡々と自身の行った介入かいにゅうについて語る。

「でもルカは竜の女王ニィラとの邂逅かいこうによって、ニィラの思いと想いの重さに干渉かんしょうを受けて、迷って戸惑とまど破綻はたんして、聖人から魔王になってしまった」

 二千年の話、おとぎ話について語る。

 アンジェラ嬢と教会で話した時にも少し触れた、創世神話の一部……でも元々魔王も女神が生み出した存在だったとはおどろいた。

 でもアンジェラ嬢の推測通り、あの話はしっかりと女神につながっていたんだ。

「そんなルカを処理しょりするために竜狩りの民最強のダグラスに勇者の剣を与えました。これはルカと同じ干渉かんしょうけるのと世界への影響を最小限におさえる為の策でした」

 続けて勇者について触れる。

 勇者の剣……ハイテンション大剣少女が持っていたあれか。

「結果、人類は減り竜はニィラを残して滅びダグラスはこの時代に飛ばされルカはこの時代までシェリー・ラスゴーランとマリク・ノアに封印されていた」

 おとぎ話の通りのことを語る。

「その後、私は竜の消えたこの星を人類が繁栄はんえいできるように。残った人類の中で優秀だった者に、啓示けいじとしてコミュニティを作るようにめいじてメルバリアの名前を与えた」

 さらに歴史学を揺るがす衝撃の事実を語り。

「それがこの国、メルバリア王国の成り立ちです」

 この国の始まりを告げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵家御令嬢に転生?転生先の努力が報われる世界で可愛いもののために本気出します「えっ?私悪役令嬢なんですか?」

へたまろ
ファンタジー
ここは、とある恋愛ゲームの舞台……かもしれない場所。 主人公は、まったく情報を持たない前世の知識を持っただけの女性。 王子様との婚約、学園での青春、多くの苦難の末に……婚約破棄されて修道院に送られる女の子に転生したただの女性。 修道院に送られる途中で闇に屠られる、可哀そうな……やってたことを考えればさほど可哀そうでも……いや、罰が重すぎる程度の悪役令嬢に転生。 しかし、この女性はそういった予備知識を全く持ってなかった。 だから、そんな筋書きは全く関係なし。 レベルもスキルも魔法もある世界に転生したからにはやることは、一つ! やれば結果が数字や能力で確実に出せる世界。 そんな世界に生まれ変わったら? レベル上げ、やらいでか! 持って生まれたスキル? 全言語理解と、鑑定のみですが? 三種の神器? 初心者パック? 肝心の、空間収納が無いなんて……無いなら、努力でどうにかしてやろうじゃないか! そう、その女性は恋愛ゲームより、王道派ファンタジー。 転生恋愛小説よりも、やりこみチートラノベの愛読者だった! 子供達大好き、みんな友達精神で周りを巻き込むお転婆お嬢様がここに爆誕。 この国の王子の婚約者で、悪役令嬢……らしい? かもしれない? 周囲の反応をよそに、今日もお嬢様は好き勝手やらかす。 周囲を混乱を巻き起こすお嬢様は、平穏無事に王妃になれるのか! 死亡フラグを回避できるのか! そんなの関係ない! 私は、私の道を行く! 王子に恋しない悪役令嬢は、可愛いものを愛でつつやりたいことをする。 コメディエンヌな彼女の、生涯を綴った物語です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

断罪された商才令嬢は隣国を満喫中

水空 葵
ファンタジー
 伯爵令嬢で王国一の商会の長でもあるルシアナ・アストライアはある日のパーティーで王太子の婚約者──聖女候補を虐めたという冤罪で国外追放を言い渡されてしまう。  そんな王太子と聖女候補はルシアナが絶望感する様子を楽しみにしている様子。  けれども、今いるグレール王国には未来が無いと考えていたルシアナは追放を喜んだ。 「国外追放になって悔しいか?」 「いいえ、感謝していますわ。国外追放に処してくださってありがとうございます!」  悔しがる王太子達とは違って、ルシアナは隣国での商人生活に期待を膨らませていて、隣国を拠点に人々の役に立つ魔道具を作って広めることを決意する。  その一方で、彼女が去った後の王国は破滅へと向かっていて……。  断罪された令嬢が皆から愛され、幸せになるお話。 ※他サイトでも連載中です。  毎日18時頃の更新を予定しています。

ちょっとエッチな執事の体調管理

mm
ファンタジー
私は小川優。大学生になり上京して来て1ヶ月。今はバイトをしながら一人暮らしをしている。 住んでいるのはそこらへんのマンション。 変わりばえない生活に飽き飽きしている今日この頃である。 「はぁ…疲れた」 連勤のバイトを終え、独り言を呟きながらいつものようにマンションへ向かった。 (エレベーターのあるマンションに引っ越したい) そう思いながらやっとの思いで階段を上りきり、自分の部屋の方へ目を向けると、そこには見知らぬ男がいた。 「優様、おかえりなさいませ。本日付けで雇われた、優様の執事でございます。」 「はい?どちら様で…?」 「私、優様の執事の佐川と申します。この度はお嬢様体験プランご当選おめでとうございます」 (あぁ…!) 今の今まで忘れていたが、2ヶ月ほど前に「お嬢様体験プラン」というのに応募していた。それは無料で自分だけの執事がつき、身の回りの世話をしてくれるという画期的なプランだった。執事を雇用する会社はまだ新米の執事に実際にお嬢様をつけ、3ヶ月無料でご奉仕しながら執事業を学ばせるのが目的のようだった。 「え、私当たったの?この私が?」 「さようでございます。本日から3ヶ月間よろしくお願い致します。」 尿・便表現あり アダルトな表現あり

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

処理中です...