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47・小娘、何もかもが嫌になる。
05ぐしゃぐしゃに。
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「ケリーすまん、私たちは降りる」
意識を失ったウォールを膝枕し、穏やかに輝きを失ったニィラが私に答える。
負けた……のか?
いやウォールはともかく、竜の女王であるニィラが負ける? あの自動人形はニィラの心を折るほどのハイスペックだったってこと?
状況が掴みきれないけど、少なくとも魔王軍はルカ以外動けてないってことなのは間違いない。
だからまだ慌てるような状況じゃあない。
ルカがいるならどうにでもなる。最強で最凶だから魔王なんだ。
「まあ、いいんじゃない? 多分もうこの件終わるだろうし、後で不老長寿として人間との生き方とか教えてあげるわよ――――あ」
ニィラの言葉に、以前アジトに突然現れた魔女があっけらかんと反応を示す。
なぜに魔女……? いや、そういえば自動人形を壊したら消しに来るとか言ってたっけ。
だから来たってこと? ということは自動人形自体は破壊には成功していて、ニィラは魔女に……いやそういう雰囲気でも――――。
そんな私の思考を、ぶった切るように。
「終わったみたい。相討ちね、魔王と勇者はどっちも死んだ」
「……え?」
放たれた魔女の言葉に、私はマヌケに声を出してしまう。
相討ち……死んだ?
「な、何言ってんの……そんなわけっ、そんなわけないでしょ⁉ 嘘だ……嘘だといいなさいよ‼ 馬鹿にしないで‼」
私は慌てて、魔女を問いただす。
有り得ない、だってルカが……何言ってるんだこの女。おちょくるのもいい加減にしろ。
「お嬢さん、貴女は私がどういう存在かわかってるでしょ? 魔王と勇者を月に跳ばして月面で戦ってたから流石に見えてはないけど、確実に魔王と勇者の反応は消えた。予想外だったわよ、私の予想だと八割方勇者の勝ちだと思ってたから。まさか相討ちなんてね」
魔女は淡々と、荒唐無稽なことを語る。
荒唐無稽……、でもこいつは魔女だ。
存在自体が荒唐無稽で、ルカとは兄妹にあたる。
嘘をつく理由もない。
こいつが魔王と勇者を月に跳ばすことも、魔王と勇者が月で戦うことも、有り得ることだ。
有り得る。有り得る……けど。
「嘘よ……、だって、魔王が…………最強のルカが……世界を、混乱に、ぐしゃぐしゃに………………」
私は一つも信じずに、信じない理由を述べようとするが上手く言葉に出来ない。
だって……嘘だ。
嘘に決まってる……、絶対にそうだ。
でも根拠が……、否定する根拠が見つからない。
肯定する根拠もない。
でも……だって。ルカが。
一瞬のうちに私の頭と心はぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。
歪んで、壊れて、狂って、奇跡的に保っていたバランスが崩れる。
その崩れる寸前で。
「ニィラぁぁあああああああああぁあぁああああッ‼ 今すぐ全員殺せ‼ 息吹で消し飛ばせ‼ 大陸ごと滅ぼせえええ――――――――ぇええっ‼」
私はニィラに向けて叫ぶ。
わからない、わからないけど。
万が一、いや兆が一、本当なら作戦は失敗だ。
だったら全部消し飛ばして、終わらせる。
混乱や女神信仰の排除とか、贅沢いわずに消し飛ばすしかない。
殺せ、壊せ、崩せ、滅ぼせ。
さあやれ、ニィラ。憂さ晴らしの時間だ。
「……ケリー、私は降りたんだ。もう、終わったんだ。私はウォールと共に幸せに生きて死ぬ」
悲しそうな顔で、ニィラは言う。
ああ、何言ってんだこの馬鹿トカゲ。
ふざけんなよ。じゃあ私は、私は――――――。
「……ッ、ぁぁぁぁぁあああああぁああああ――――ッ‼」
私は叫んで、兵士の手を振り解き。
そのまま手足が拘束されたまま、転がるようにブロックに体当たりをする。
「――な……っ」
ブロックは突然の体当たりに驚いて体勢を崩す。
崩れた拍子に、ブロックは私から回収していた無線コントローラーを床に落とす。
私は拘束されたまま、床を芋虫のように這ってコントローラーを奪い返そうとする。
爆弾設置は不完全だ。
でも戦闘によって城はそれなりに壊れている。
起爆出来れば、この城の全員皆殺しに出来るかもしれない。
いや皆殺しに出来る。
皆殺しにするんだ。
信じろ、不完全さは思いと想いの重さで埋め合わせろ。
殺す殺す殺す殺せ殺し死ね殺す死ね死ね殺せ殺す殺し殺す死ね殺せ死ね殺す殺す殺す死ね殺せ殺す殺す殺す殺せ殺す殺す殺せ死ね殺せ死ね殺せ殺しコロころころころここココころろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろ。
歯でも鼻でも舌でも何でもいい、コントローラーの起爆スイッチを――――――。
と、目と鼻の先まで迫ったところで。
コントローラーに剣が突き刺さり、ひしゃげて歪んで壊れた。
「…………すまない、俺は本当に余計なことしか出来ないみたいだな」
剣でコントローラーを突き刺しながらブロックは、私に向かってそう言った。
「………………なんで」
壊れたコントローラーを見ながら、私は大粒の止まらない、止められない涙を流しながらなんの意味もない言葉を漏らした。
絶望、ああなんでルカ。
世界を混乱に、ぐしゃぐしゃに。
結局何も出来なかった。
ああ、嫌になる。
本当に、全部、嫌になる。
世界からの理不尽なほど深い絶望に包まれながら。
魔王軍の侵攻、いや私の物語は。
終わった。
意識を失ったウォールを膝枕し、穏やかに輝きを失ったニィラが私に答える。
負けた……のか?
いやウォールはともかく、竜の女王であるニィラが負ける? あの自動人形はニィラの心を折るほどのハイスペックだったってこと?
状況が掴みきれないけど、少なくとも魔王軍はルカ以外動けてないってことなのは間違いない。
だからまだ慌てるような状況じゃあない。
ルカがいるならどうにでもなる。最強で最凶だから魔王なんだ。
「まあ、いいんじゃない? 多分もうこの件終わるだろうし、後で不老長寿として人間との生き方とか教えてあげるわよ――――あ」
ニィラの言葉に、以前アジトに突然現れた魔女があっけらかんと反応を示す。
なぜに魔女……? いや、そういえば自動人形を壊したら消しに来るとか言ってたっけ。
だから来たってこと? ということは自動人形自体は破壊には成功していて、ニィラは魔女に……いやそういう雰囲気でも――――。
そんな私の思考を、ぶった切るように。
「終わったみたい。相討ちね、魔王と勇者はどっちも死んだ」
「……え?」
放たれた魔女の言葉に、私はマヌケに声を出してしまう。
相討ち……死んだ?
「な、何言ってんの……そんなわけっ、そんなわけないでしょ⁉ 嘘だ……嘘だといいなさいよ‼ 馬鹿にしないで‼」
私は慌てて、魔女を問いただす。
有り得ない、だってルカが……何言ってるんだこの女。おちょくるのもいい加減にしろ。
「お嬢さん、貴女は私がどういう存在かわかってるでしょ? 魔王と勇者を月に跳ばして月面で戦ってたから流石に見えてはないけど、確実に魔王と勇者の反応は消えた。予想外だったわよ、私の予想だと八割方勇者の勝ちだと思ってたから。まさか相討ちなんてね」
魔女は淡々と、荒唐無稽なことを語る。
荒唐無稽……、でもこいつは魔女だ。
存在自体が荒唐無稽で、ルカとは兄妹にあたる。
嘘をつく理由もない。
こいつが魔王と勇者を月に跳ばすことも、魔王と勇者が月で戦うことも、有り得ることだ。
有り得る。有り得る……けど。
「嘘よ……、だって、魔王が…………最強のルカが……世界を、混乱に、ぐしゃぐしゃに………………」
私は一つも信じずに、信じない理由を述べようとするが上手く言葉に出来ない。
だって……嘘だ。
嘘に決まってる……、絶対にそうだ。
でも根拠が……、否定する根拠が見つからない。
肯定する根拠もない。
でも……だって。ルカが。
一瞬のうちに私の頭と心はぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。
歪んで、壊れて、狂って、奇跡的に保っていたバランスが崩れる。
その崩れる寸前で。
「ニィラぁぁあああああああああぁあぁああああッ‼ 今すぐ全員殺せ‼ 息吹で消し飛ばせ‼ 大陸ごと滅ぼせえええ――――――――ぇええっ‼」
私はニィラに向けて叫ぶ。
わからない、わからないけど。
万が一、いや兆が一、本当なら作戦は失敗だ。
だったら全部消し飛ばして、終わらせる。
混乱や女神信仰の排除とか、贅沢いわずに消し飛ばすしかない。
殺せ、壊せ、崩せ、滅ぼせ。
さあやれ、ニィラ。憂さ晴らしの時間だ。
「……ケリー、私は降りたんだ。もう、終わったんだ。私はウォールと共に幸せに生きて死ぬ」
悲しそうな顔で、ニィラは言う。
ああ、何言ってんだこの馬鹿トカゲ。
ふざけんなよ。じゃあ私は、私は――――――。
「……ッ、ぁぁぁぁぁあああああぁああああ――――ッ‼」
私は叫んで、兵士の手を振り解き。
そのまま手足が拘束されたまま、転がるようにブロックに体当たりをする。
「――な……っ」
ブロックは突然の体当たりに驚いて体勢を崩す。
崩れた拍子に、ブロックは私から回収していた無線コントローラーを床に落とす。
私は拘束されたまま、床を芋虫のように這ってコントローラーを奪い返そうとする。
爆弾設置は不完全だ。
でも戦闘によって城はそれなりに壊れている。
起爆出来れば、この城の全員皆殺しに出来るかもしれない。
いや皆殺しに出来る。
皆殺しにするんだ。
信じろ、不完全さは思いと想いの重さで埋め合わせろ。
殺す殺す殺す殺せ殺し死ね殺す死ね死ね殺せ殺す殺し殺す死ね殺せ死ね殺す殺す殺す死ね殺せ殺す殺す殺す殺せ殺す殺す殺せ死ね殺せ死ね殺せ殺しコロころころころここココころろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろ。
歯でも鼻でも舌でも何でもいい、コントローラーの起爆スイッチを――――――。
と、目と鼻の先まで迫ったところで。
コントローラーに剣が突き刺さり、ひしゃげて歪んで壊れた。
「…………すまない、俺は本当に余計なことしか出来ないみたいだな」
剣でコントローラーを突き刺しながらブロックは、私に向かってそう言った。
「………………なんで」
壊れたコントローラーを見ながら、私は大粒の止まらない、止められない涙を流しながらなんの意味もない言葉を漏らした。
絶望、ああなんでルカ。
世界を混乱に、ぐしゃぐしゃに。
結局何も出来なかった。
ああ、嫌になる。
本当に、全部、嫌になる。
世界からの理不尽なほど深い絶望に包まれながら。
魔王軍の侵攻、いや私の物語は。
終わった。
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