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42・お嬢様たち、奮闘す。

02アーチのお姉様。

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「うん。超大ピンチ……だけど、アーチさんが戦えたらなんとかなるかもしれない」

 モーラは真っ直ぐ私の目を見てそう続けた。

「なんで、アーチが……? ただの執事で――」



 私の疑問ぎもんにモーラは真摯しんしに答え。

「アーチさんはグロリアを守る為のボディーガードをかねねていたんだと思う。バレないように顔を隠して、グロリアに意地悪しようとする奴らをぶっ飛ばして回っていたみたい」

 そんな衝撃的な事実を明かす。

 ……?
 私に関わると怪人に顔が無くなるまで叩かれるという怖い話の、怪人。

 モーラの婚約者であるザックさん人質事件の時にも現れたらしいのと、最近だと学園のパーティーにも現れた怪人ですの。

 あれが……アーチ? だからいつも怪我してたの……? じゃあアーチは階段が苦手じゃないってことなの?

 一応わかったけど頭にハテナがあふれて止まらないのですわ。

「なんでアーチさんが出ていって、なんでここに居るのかとかはわからない。でも今この状況をなんとか出来るのは凄腕ボディーガードのアーチさんしかいない」

 混乱する私にモーラが力強くそう言うと。

「なるほどね。把握はあくしたわよん」

 と、突然私たちの隣になんの気配もなく女の人が現れた。

「だ、誰ですの……っ?」

「ああ、ごめん。私は……あー今名前なんだっけ、まあいいや。私は名無しの殺し屋よ。私じゃナンバーシリーズ相手には力不足だから、ボスから適当に彷徨うろついてろって言われてたけど……まさかこんな状況にかち合うなんてね。ウケる」

 おどろく私の質問にヘラヘラと名無しの女性は返して、そのまま続けて。

「まさか馬鹿喧嘩馬鹿のアーチボルトがクーロフォードの覆面野郎だったなんてね……。それスラム時代に私の弟だったのよ、全然忘れてて今思い出したけど。ちょっと私が混ざる理由ができちゃったわ」

 そんな衝撃的なことを名無しさんはべた。

「アーチのお姉様……っ、どうも私はクーロフォード伯爵家のグロリア・クーロフォードですの。よしなに願います」

「ああどうも。でもマジで十年以上くらい一秒も思い出してないくらいの感じだけどね、私割と普通に薄情者なのよ。だが流石にこれは腹が立つ……ボス風に言うなら

 私の挨拶に、淡々と大きな銃を両手に構えて名無しさんは返す。

「あれ多分八極令嬢級でしょ、まともにやり合ってたらまず殺れないバケモンだ。でもアーチボルトが起きるまでの時間稼ぎなら私にも手伝える――――」

 名無しさんはそう言いながら、瓦礫がれきの山を登って。

「――――あ! キャロライン・エンデスヘルツだ‼」

 大きな声で遠くを指さしてさけんだ。

「――ッ⁉」
「えっ! お姉様っ⁉」

 大男と私は名無しさんの声に反応して指した方を向く。

 と、同時に連続する発砲音。

「ハーハッハッハァーっ! バカが見るぶったのけつう‼」

「……っぐうぅぅ」

 名無しさんは嬉々としながら、悲痛な顔でくやしそうな声を上げる大男を嘲笑あざわらう。

 だ、だまされたのですわ!
 なんてたくみな……本当にお姉様が来たのかと思いました。

 そんな隙をついて。

「隙ありドラゴンスクリュ……っ、回んね――――」

 大男の脚に飛びついてぐるりと回ろうとしたルーシィが、回れずに慌てたのと同時。

「借りますね。フィリップス44……、ロマンチズムを形にした銃。センスが良い」

 さらっと、笑みを浮かべながらそう言ってクリスは名無しさんの腰のホルスターから無骨ぶこつに輝く拳銃を抜いてそのまま大男へと発砲した。

「いっで……ぇっらぁッ」

 肩と腕に弾丸を受け声を漏らし苦い顔の大男は、脚に組み付いていたルーシィをそのまま蹴り飛ばす。

「うおおおおおおおおおおっ……ぎゃあ……!」
「……ぐっ」
「がっ……!」

 ルーシィは名無しさんとクリスに激突して、三人が吹っ飛び。

 入れ替わるように。

「兄さんもうやめろおおおおおおおおおおらあああああ――――――ッ‼」

 ブロックさんが剣を抜いて、叫びながら大男へといどんでいくも前蹴りで吹っ飛んで直ぐに視界から消えてしまう。

「……グロリアはアーチさんを叩き起して、グロリアの為ならアーチさんは生き返るから」

 モーラは立ち上がって、瓦礫がれきの山を登りながら呆気あっけにとられている私に向けて言う。

「も、モーラはどうするのですの……?」

 瓦礫がれきを登るモーラに私はたずねると。

「……決まってるでしょ。歌うのよ」

 にやりと不敵に笑ってモーラは返して。

「――――サァームウェーオーヴァザレンボゥーウェイァープハァイ……」

 瓦礫がれきの上で、き通る腹の底にひびき渡る声で歌い出しました。
 これは虹の彼方を目指す歌、私も大好きなモーラの十八番オハコですわ。
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