虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

完・お嬢様、怒りを覚えてる。

01困った話。

　私、小宮こみや七穂なおはいわゆる女子大生だ。

　神奈川県横浜市の一応国立大学に通う、公立高校出身で受験勉強をかなり頑張った花の女子大生。

　経済学部の二年生。
　趣味は運動、走るのも跳ぶのも投げるのも登るのも踊るのも一通りはとりあえずやってきた。
　好きな食べ物は果物を使ったお菓子。
　嫌いな食べ物は臭みが抜けてない魚介類。

　最近は大学に通いつつ、週に三日多くて四日のボウリング場アルバイトをして５０ｃｃの中古オートバイを購入した。可愛いやつ、休日のローマを走るイタリアのスズメバチ。

　任意保険は父親の車両保険に組み込んで貰ったので、かなり安上がりに済んでいる。その辺りは抜かりない。

　もうちょいお金を貯めたら車の免許も取っておくつもり、車自体は買わないけどね。高いし維持いじできないし。

　まあ、普通の女子大生。
　なんだけど……、困った話が一つ。

　私は現在、トラブルに巻き込まれているのだ。

　サークル内での友人関係とか、バイト先に嫌いな奴がいるとかじゃあなくて。
　わりとヘビィな、女子大生のキャパシティを超えたトラブルだ。

　私の子供の頃からの友人、平田みどりが悪い人……よく知らないけど半グレ組織に狙われている。

　みどりは同じ団地に住んでいた幼馴染だ。
　わたしたちはいわゆる団地の子、私の家も裕福といえる家庭ではなかったけどみどりの家はわりと貧困ひんこん家庭だった。

　母子家庭で三人姉弟の長女。
　みどりのお父さんは出張が多く、みどりが小学校に上がる頃に出張先の東北にて大地震に被災し亡くなった。
　お母さんは歯科助手、稼ぎはあるけど子供三人を一人で育てるには心許こころもとなかった。

　みどりは双子の弟と妹を大学に行かせるために、高校からアルバイトで学費を稼ぎ大学もほぼ実費で学費を払っている。
　お父さんの遺族いぞく年金にはなるべく手をつけずに、弟と妹の学費として残しておこうとしているのだ。

　でもみどりは国立や公立の大学ではなく、私立の大学へと進学をした為思った以上にお金が必要になった。

　そんな時、大学の友人から稼ぎ方を教えて貰った。

　いわゆる、パパ活。
　この辺りから話はきな臭くなってくる。

　みどりは何人かの男とデートに行って、お金を貰っていた。
　聞いたところによるとまあまあな額、私のオートバイくらいなら余裕で買えちゃうかも。

　でも身体は許してなかったみたい。
　そっちの方が全然お金は稼げたらしいんだけど、妊娠や病気のリスクを考えてやめておいたらしい。そっちの方がお金かかるからね。
　なんなら歯医者にも行きたくないから、キスすら許してなかったらしい。流石歯科助手の娘。その辺りに抜かりはない。

　わりと、割り切ったパパが多いらしくて一緒に遊んだり食事をしたり趣味の話をしたり疑似ぎじ恋愛的なムーブを楽しんでいく裕福だけど寂さみしいだけのパパが多かったのだけれど。

　一人、マジにヤバいパパがいたらしい。

　そのヤバいパパ、ヤバパパは半グレ組織からお金を借りて逃げていた奴だったみたいだ。人から借りたお金で遊び呆ほうけていたらしい。

　そして、ヤバパパは半グレの人に見つかってボッコボコにされたんだけど。
　お金はもう使い切ってしまっていて、返すことは出来なかったみたい。
　そのまま指や足に保険をかけられて、工場勤務中の不慮ふりょの事故によって適用された保険金でお金を返す運びになったらしいが。

　そこでヤバパパは、苦肉くにくの策さくとしてみどりの名前を出した。

　まあもちろん偽名ではあったんだけど、みどりに繋つながる情報を漏らした。
　恋人でもないのにお金はみどりに渡したと、その場しのぎの嘘を半グレたちに伝えた。

　半グレたちはとりあえず一旦ヤバパパ工場勤務にして保険をかけた上で、みどりの捜索そうさくを行なった。

　そして、みどりは半グレたちに見つかった。
　バイト先にも迷惑をかけられた。
　流石にバイト先から警察へ通報も行ったみたいだけど、物を壊したり暴力を振ふるったわけでも、著いちじるしく業務を妨害ぼうがいしたわけでもなかったので友人同士のトラブルとして片付け民事不介入となった。

　その後もみどりは付きまとわれたり、バイトを辞めることになったりとかなり追い詰められている。
　このままだと家族にも危害を加えられるかもしれないと、不安になったみどりは。

　私に助けを求めてきたのだった。