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終・お嬢様、全てを踏み台に。

01おおよそおしまいである。

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 私、アビゲイル・バセットは幸せ向かって進むお嬢様だ。

 クライマックスを駆け抜けて。
 私が全てを踏み台に幸せになる話はおおよそおしまいである。

 その後のことをいて語らせてもらうのなら。

 あれから。
 あの、女神が現れて去っていったあの日から三ヶ月が経った。

 この度の出来事で発生した被害の復興ふっこうを続けている。

 あの会談と同時刻で、国内の何ヶ所かで発展派貴族による武装決起ぶそうけっきが起こっていた。
 兵士や騎士はそちらに人数をかれていたので、魔王軍の襲来しゅうらい時に城へ集まれなかったみたい。

 でも武装決起ぶそうけっきは病院から抜け出した正規騎士団副団長の剣豪子爵バンフィールド氏が単独で三箇所さんかしょを制圧し、主犯格であるエンデスヘルツ公爵の逃亡、主要人物であるジョー・ワタナベ男爵の逮捕によって失敗に終わったようだ。

「うーん、威厳いげん……ないよなぁ。ひげでもたくわえようかな」

 鏡の前で自身の姿を見ながら第二王子がつぶやく。

 復興ふっこうの指揮は第二王子ジャレッド・メルバリア様が行って、復興ふっこうが落ち着き次第に現国王の退位と王位の継承けいしょう、そして聖女様との婚姻を行うらしい。

「……本当に料理や洗濯や掃除が必要なのですか? 一般的な婚姻ではなく私は王妃になるのですが、王妃もこのように家事をこなすのでしょうか。全然やりますけども、一応ヴァネッサ王妃に問い合わせをしておいてください」

 タライに水を張って洗濯板で服をこすりながら聖女は聖職者たちへとたずねる。

 聖女ジュリアナ・ロックハート様は教会内にて急ピッチで花嫁修行中とのこと、千五百年続く聖女の中でも初めてのことなので教会内はてんやわんやな状況とのこと。

「フィリップスの工場ライン人員はなんとしてでも規定数を集めてください。うちの道場からも何人か働き口を探している者がいますので、そちらも回します。ゴールドマン邸周辺の瓦礫撤去がれきてっきょを手伝って頂いていたクーロフォードの鉱夫たちは鉱山に戻してください、お礼も忘れずに。撤去てっきょした瓦礫がれきは――」

 報告書を確認しつつ、八極令嬢……いやは部下に指示を出す。

 キャロライン嬢はエンデスヘルツ公爵位を継承けいしょうし、メルバリアに残って復興ふっこう作業と武装決起ぶそうけっきに参加しなかった発展派貴族や罪をつぐなった者たちの統括とうかつを行うことになった。

 武術家としてのイメージが強い彼女だが、元々はこういう発展派貴族の統括とうかつやインフラ整備などを取り仕切るよう教育されてきた公爵令嬢。この国で彼女以上にそれが出来る人間はいない。

 異国に残してきた道場の門下生はメルバリアに呼び寄せて道場を開き直し、流派名りゅうはめいを勇者八極拳とした。
 プロレス最強をうたうルチャドーラのルーシィ・コーディも修行の為に何度も道場破りに行っては門下生たちと激闘を繰り広げている。

「強度の問題か……、だがこれ以上の軽量化は材質から見直す必要があるな」

 作業着姿で蒸気が吹き出すパイプのバルブを閉めながら国外逃亡者はつぶやく。

 前公爵であるブライアン・エンデスヘルツ氏はどさくさに紛れ、魔王軍所属のケリー・パウンダー嬢と共に国外逃亡をしたらしい。
 キャロライン嬢いわく、異国で再起をはかろうと技術者を集めて色々と画策かくさくしているとのこと。

「再計算するわよ。材質じゃなくて構造で負荷ふかを逃がせればいいんでしょ」

 バルブを閉める姿を横目に、作業着姿の小娘が机に広げた紙に計算式を書き始める。

 どうにもエンデスヘルツ氏とケリー嬢は有人宇宙飛行を目指しているとかで、最終目標は月面への有人飛行としている。

「ウォール! 仕事が来たぞ! なんか集めた瓦礫がれきを消し飛ばせば金が貰えるらしい!」

「……きゃ、キャロラインからの依頼かよ……。まあ、背に腹は変えらんねえか」

 竜の女王は届いた手紙を嬉々として見せて、竜騎士はそれを見ながらため息をつく。

 同じく、魔王軍所属だった竜の女王ニィラと竜騎士ウォール・バルカードはこの国の僻地へきちつつましく暮らしている。

 竜の女王を法でさばいたり武力でおさえ込むことは不可能と判断して保護対象とされ。
 ウォール氏には罰として僻地へきちに飛ばされ、ニィラの世話をめいじられた。
 たまに魔女のサムさんや、グロリアも遊びに行って色々とお話をしているみたい。
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