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46・魔王、決着をつける。

01二千年分後悔して死ね。

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 俺、ルカ・キングス・メルバリアは世界に破壊と混乱をもたらす魔王だ。

 別に俺は俺自身のことを今更語るつもりもねえ。
 嘘と偽装ぎそう虚偽きょぎこそが俺だからな。
 語ったところで悪意でげちまうし、無駄だからな。

 だから、語るとしたら今のことだけ。

 魔女が俺と勇者ダグラスと一緒に、月へと跳ばしたところからだ。

「――――っ」

 声を出そうとするが空気が無くて声が出ねえ。

 ちっ、わずらわしい。
 まあ別に他にも声の出し方はあるからいいか。

「あー、なんだ。丁度いいな、ここならどんだけ暴れても俺とおまえしか死なねえもんな。あの魔女の姉ちゃんは優秀だ」

 俺は月の環境下に適応しようとしている勇者に語りかける。

「……ああ、あれがスペアシェリーの言っていたシェリーとマリクの娘か。確かに似てたね、おっぱいとか」

 月の環境下に適応した勇者が、ほぼ真空の中で声を出して返す。

 そういや確かに容姿ようしも似ていたな。
 あの魔女は俺とは違って、未完成状態から研究者と探求者によって育てられたようだ。
 環境に合わせて、変化して完成して行く中で最も身近な生命に影響されたんだろう。探求者にも良く似ていた、マヌケをさらしたと思わせてまくってくるクソ腹立つところとか。

「あれ一応俺の妹なんだが、勇者的に殺したくなったりとかしねえのか?」

 俺は大して興味もない話題を投げかけて、さっきまで俺たちのいた星を見る。

 こう見ると、青くてでけえよな。
 やろうと思えば二日もかけずに消滅させられる脆弱ぜいじゃくな球体の表面に人類がへばりついて、あのクソ女神を信仰し繁栄はんえいしている。

 こんなもんを望んでいたのか? 女神は、何がしてえんだ。
 世界は無限に広がり続けちぢんでまたふくらんで、そんな繰り返しの中でこんなちっぽけな青い玉に張り付く薄皮一枚の繁栄はんえいなんて世界の流れからすれば一瞬にも満たない。
 コップに注いだ水の泡みたいなもんだ。
 弾けたことにも気づかない、沈んで浮かべば消えてなくなる。

 たわむれにもならない、全く理解できねえ。

「へぇ、全くないね。偉いエロいねーちゃんだなとしか思わなかった」

 勇者は軽薄けいはくにそう返す。

 まあそうだろうな。
 あの剣は俺を殺すためだけのもんだ。うまいことこいつを魔女に誘導ゆうどうしてやり過ごすってことも出来ねえみたいだな。

「じゃあ、邪魔にはなんねえな。これが最終決戦だ」

 俺も適当に勇者へと返す。

 言うほど感慨かんがい深くもない。
 俺は見た目や言葉ほど、物事ものごとに興味があるわけでもないし感情豊かでもない。

 
 自分という存在に対する怒り、自分を生み出した女神に対する怒り、世界に対する怒り。

 それだけで俺は、ここにいる。

「そうだな。二千年ぶり……いや体感としては一年も経ってないけど。ぶっ殺してやるよ‼ 魔王‼」

 勇者は剣を構えて、のたまう。

「はっ、遊んでやるよ。二千年分後悔して死ね」

 俺もそんな風に、のたまって。

 戦いが始まった。

 ほぼ真空の月面上で、初手に俺が行ったのは月の十二分の一を消し飛ばす規模きぼの光線のぶっぱなし。

 何の遠慮えんりょもせず、殺しにいく。
 殺し方にこだわりも何もない、殺せればなんでもいい。
 だから俺の戦い方は、人間たちのそれからすると雑だ。
 技とか術とか方法とか小賢こざかしいことを考える必要がない、羽虫を潰すのに適切な力加減を考えるやつはいない。
 叩きゃあ死ぬなら叩くだけだ。

 音もなく、月面上のとがった砂が舞う。
 それを斬り裂くように、一筋ひとすじ閃光せんこう

 俺はその閃光せんこうかわして、再び二波三波と光線の波状攻撃をしていく。

 その波状攻撃を斬りきながら勇者は剣の間合いまで接近したところで、俺は全身に破壊をまとって剣をかわしながらぐるりと回ってかかとで打ち下ろす。

 勇者は月面に叩きつけられて埋まる。

 間髪かんはつ入れず、月を貫通させる出力で光線を照射し続ける。

 すると月面から二百五十六に分かれた勇者の剣が、触手のようにうねって俺を狙って来る。

 瞬間転移で月の裏側へと移動し。
 裏側から月面に剣を突き刺す勇者に光線を放つ。 

 光線を斬り落として、そのまま俺に剣を伸ばしてくる。

 伸びた突きをかわすが、伸びた剣を収縮しゅうしゅくさせる速度を使って勇者は俺の顔に膝蹴りをかます。

 俺の頭は弾け飛び、勇者の左脚は俺のまとっていた破壊によって砕けて舞う。

 同時に俺の頭は復元され、勇者の脚は再生される。

 間髪かんはつ入れず勇者は超高速でほぼラグなしに三千の斬撃を重ねてくる。
 全てをかわしながら光線を放つ。

 光線は死なない程度に斬って落とされ、多少の被弾ひだんは再生しながら突っ込んでくる。
 俺もかわすのは剣による攻撃のみで、手足の打撃は貰う。
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