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39・怪人、着せ替えられる。
08絶好調だ。
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「……ちっ、逃がしたか……。まあ、ほっといていいか」
大の字に倒れていた大男は、そう呟きながらゆっくりと立ち上がる。
こいつはキャロラインの姐さんが相手をしていたウォールとかいう、たしか姐さんを負かしたとかいうやべえ奴だ。
くっそ、動けねえ。姐さんなにやってんだ。
いや剣を奪えてねえ僕がいえた義理はねえが。
「……あ? なんだおまえら、ガキがちょろちょろしてると死ぬぞ。帰れ帰れ」
大男ウォールは大剣を肩に担ぎながら、グロリア嬢たちへ帰宅を促す。
そいつは助かる、僕もグロリア嬢にはさっさと帰ってもらいたい。
「兄さん? ウォール兄さんなのか⁉」
知らない男の間抜け声が聞こえる。
「……ブロックか。久しぶりだな、何やってんだ」
間抜け声とは対照的に、ウォールは冷静な口調で返す。
「今はクーロフォードの娘をエスコートしろと、フィリップスの娘に拳銃で脅されているところ……、って俺の話はどうでも良くて、今まで何やってたんだよ!」
間抜け声は感情的にさらに返す。
フィリップスの娘って、あの発砲令嬢か? グロリア嬢の幼馴染の……、やべえ全然状況がつかめねえ。
「ああ俺は今魔王軍でこの国ぶっ壊す為に王族と主要貴族ぶっ殺しに城を襲撃中だ。うーん……、クーロフォードとフィリップスか……、いやでも発展派はエンデスヘルツと手を結んだから……」
あっけらかんと、ウォールは自身がテロリストであることを明かして考え込む。やっぱ流石にイカれてる。
「まあ後でエンデスヘルツもぶっ殺すって言ってたしいいか……、馬鹿が考えても仕方ねえ。殺すわ」
ウォールは勝手に何かを落とし込んだ様子で呟く。
嫌な予感が止まらねえ、ふざけんなキャロライン・エンデスヘルツ、こんなイカれを放置してどこほっつき歩いてんだ。
「に、兄さん何言って――」
「いやおまえも殺すぞ、ブロック。バルカード侯爵家も立派な主要貴族だ。おまえも騎士を志していたなら覚悟を決めろ、親兄弟でも敵なら殺せ。俺はこの国を脅かす魔王軍であり、犯罪者だ」
冷静に、冷酷にウォールは恐らく弟であろうブロックとやらに騎士道を語る、いや騙る。
「覚悟を決めろブロック、おまえの技量でこの場の令嬢たちの命が――」
ウォールが言い終わる前に、僕は顔面を殴り飛ばす。
多少回復出来た、ギリギリだが動けた。
「……っ、グロリア様を連れて逃げろッ‼ ここは僕が引き受ける‼ 早くしろおッ‼」
僕はブロックとやらに怒鳴り散らす。
鎧なし、身体はボロボロ、相手はキャロラインの姐さんを倒した化け物、背後にはグロリア嬢。
いいね、絶好調だ。
ここで僕がこいつを畳むしかない、ぶっ飛ばす。
「…………アーチ……?」
気合いを込めたところに、グロリア嬢はきょとんとした顔で僕に呟く。
あ、やっべ声でバレちま――。
なんて。
完全に僕の意識がグロリアに向いたその瞬間に、ウォールの剛腕から放たれる大剣薙ぎ払いを思いっきり脇腹にもらう。
僕は衝撃で砕けちった仮面の破片が舞う隙間から、驚いて口を開けたままのグロリアお嬢様と目が合う。
お口が開いていますよ、グロリア様。
ご心配おかけして大変申し訳ございませんでした。
事情は後ほどご説明いたしますので、今はご学友とこの場からお離れください。
なんて。
グロリアに語りかけたつもりで、全く声に出ていないことに気づかないまま。
薙ぎ払いで吹き飛ばされて叩きつけられた柱から、ずり落ちるように、僕は崩れた。
大の字に倒れていた大男は、そう呟きながらゆっくりと立ち上がる。
こいつはキャロラインの姐さんが相手をしていたウォールとかいう、たしか姐さんを負かしたとかいうやべえ奴だ。
くっそ、動けねえ。姐さんなにやってんだ。
いや剣を奪えてねえ僕がいえた義理はねえが。
「……あ? なんだおまえら、ガキがちょろちょろしてると死ぬぞ。帰れ帰れ」
大男ウォールは大剣を肩に担ぎながら、グロリア嬢たちへ帰宅を促す。
そいつは助かる、僕もグロリア嬢にはさっさと帰ってもらいたい。
「兄さん? ウォール兄さんなのか⁉」
知らない男の間抜け声が聞こえる。
「……ブロックか。久しぶりだな、何やってんだ」
間抜け声とは対照的に、ウォールは冷静な口調で返す。
「今はクーロフォードの娘をエスコートしろと、フィリップスの娘に拳銃で脅されているところ……、って俺の話はどうでも良くて、今まで何やってたんだよ!」
間抜け声は感情的にさらに返す。
フィリップスの娘って、あの発砲令嬢か? グロリア嬢の幼馴染の……、やべえ全然状況がつかめねえ。
「ああ俺は今魔王軍でこの国ぶっ壊す為に王族と主要貴族ぶっ殺しに城を襲撃中だ。うーん……、クーロフォードとフィリップスか……、いやでも発展派はエンデスヘルツと手を結んだから……」
あっけらかんと、ウォールは自身がテロリストであることを明かして考え込む。やっぱ流石にイカれてる。
「まあ後でエンデスヘルツもぶっ殺すって言ってたしいいか……、馬鹿が考えても仕方ねえ。殺すわ」
ウォールは勝手に何かを落とし込んだ様子で呟く。
嫌な予感が止まらねえ、ふざけんなキャロライン・エンデスヘルツ、こんなイカれを放置してどこほっつき歩いてんだ。
「に、兄さん何言って――」
「いやおまえも殺すぞ、ブロック。バルカード侯爵家も立派な主要貴族だ。おまえも騎士を志していたなら覚悟を決めろ、親兄弟でも敵なら殺せ。俺はこの国を脅かす魔王軍であり、犯罪者だ」
冷静に、冷酷にウォールは恐らく弟であろうブロックとやらに騎士道を語る、いや騙る。
「覚悟を決めろブロック、おまえの技量でこの場の令嬢たちの命が――」
ウォールが言い終わる前に、僕は顔面を殴り飛ばす。
多少回復出来た、ギリギリだが動けた。
「……っ、グロリア様を連れて逃げろッ‼ ここは僕が引き受ける‼ 早くしろおッ‼」
僕はブロックとやらに怒鳴り散らす。
鎧なし、身体はボロボロ、相手はキャロラインの姐さんを倒した化け物、背後にはグロリア嬢。
いいね、絶好調だ。
ここで僕がこいつを畳むしかない、ぶっ飛ばす。
「…………アーチ……?」
気合いを込めたところに、グロリア嬢はきょとんとした顔で僕に呟く。
あ、やっべ声でバレちま――。
なんて。
完全に僕の意識がグロリアに向いたその瞬間に、ウォールの剛腕から放たれる大剣薙ぎ払いを思いっきり脇腹にもらう。
僕は衝撃で砕けちった仮面の破片が舞う隙間から、驚いて口を開けたままのグロリアお嬢様と目が合う。
お口が開いていますよ、グロリア様。
ご心配おかけして大変申し訳ございませんでした。
事情は後ほどご説明いたしますので、今はご学友とこの場からお離れください。
なんて。
グロリアに語りかけたつもりで、全く声に出ていないことに気づかないまま。
薙ぎ払いで吹き飛ばされて叩きつけられた柱から、ずり落ちるように、僕は崩れた。
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